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公開日:2026.06.17

更新日:2026.06.17

事業計画策定支援の実績|収益が残るうちに事業ドメインを再定義すべき理由

事業計画策定支援の実績として、収益が残るうちに既存事業の事業ドメインを再定義する判断を表したアイキャッチ画像
三坂 大作
執筆・解説三坂 大作
ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・取締役

東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
さらにニューヨーク支店にて国際金融業務も経験し、法務と金融の双方に通じたスペシャリストとして、30年以上にわたり中小企業・個人事業主の“実行型支援”を展開。貸金業務取扱主任者。

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東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
さらにニューヨーク支店にて国際金融業務も経験し、法務と金融の双方に通じたスペシャリストとして、30年以上にわたり中小企業・個人事業主の“実行型支援”を展開。貸金業務取扱主任者。

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▼ この記事で分かること

  • 向いている会社
    収益は残っているが、既存事業の将来性に不安がある会社
  • 本当の論点
    新事業探しより先に、既存事業の強みをどう再定義するか
  • 確認ポイント
    資金使途・返済原資・社内合意・実行体制がつながっているか
  • 判断の順番
    異業種転換の前に、残す資産・降りる競争軸・投資順序を整理する

成熟した業界にいる会社ほど、将来に不安を感じたとき、「まったく別の新事業を始めるべきではないか」と考えがちです。
しかし、既存事業にまだ収益力、顧客接点、店舗運営のノウハウ、人材基盤が残っているなら、いきなり異業種へ転換することが最善とは限りません。

この記事で取り上げるのは、地域密着型のアミューズメント関連企業に対して、事業計画の策定を支援した実績です。相談時点では主力事業の将来性に不安があったものの、会社全体としては一定の収益を確保しており、直ちに資金繰りに窮する状況ではありませんでした。

この支援で重視したのは、「新しい事業を何にするか」よりも先に、既存事業を次の時代に通用する形へどう再定義するかという点でした。

赤字になってからの改革では、資金調達の余力も社内の実行余力も限られます。だからこそ、収益が残っている段階で、どの資産を残し、どの競争軸から降り、どの顧客層へ広げ、どの順番で投資するかを整理する必要がありました。

相談時の課題は「新事業」ではなく、既存事業の意味を見直すことだった

結論:本件の表面的なテーマは新事業計画でしたが、本当の論点は、既存事業に残る経営資源をどう活かすかにありました。

相談時の企業は、都市近郊の生活圏を主な商圏とし、地域密着型のアミューズメント施設を複数運営していました。創業以来の顧客基盤があり、地域内で一定の認知も得ていました。

一方で、業界全体には構造的な逆風がありました。大型施設との競争、ライトユーザーの減少、利用者層の固定化、社会的イメージの問題など、従来どおりの店舗運営で今後も成長できるのかという不安があったのです。

ただし重要なのは、同社がすでに経営危機に陥っていたわけではないという点です。一定の収益が残っていたため、社内には「まだ大丈夫ではないか」という空気もありました。

三坂大作
執筆者|三坂のコメント

収益が残っていることは、改革を遅らせる理由ではありません。むしろ、改革の原資があり、金融機関や社内に対して将来計画を説明しやすい段階だからこそ、事業の再設計に着手すべき局面だと考えました。

業績が悪化してから新事業へ動こうとすると、返済原資の説明は弱くなり、設備投資や人材投資に使える資金も限られます。さらに社内の雰囲気も守りに入りやすく、前向きな計画を実行しにくくなります。

そのため本件では、「何か別の事業を始める」という発想よりも先に、既存事業をどう捉え直すかを整理しました。

この段階で整理した主な論点

ここで重要だったのは、単に新事業の候補を並べることではありません。既存事業の中に残っている経営資源を確認し、それを次の収益構造や資金計画へどう接続するかを整理することでした。

事業計画策定支援で整理した主な論点
整理項目 確認した内容
表面的な相談テーマ 新事業計画・今後の事業展開の整理
本当の論点 既存事業に残る収益力・顧客接点・店舗運営力を、次の収益構造へどうつなげるか
先に整理したこと 事業ドメイン、競争軸、店舗ごとの役割、人材体制、数値計画
資金調達上の意味 設備投資や運転資金の使途と、将来の返済原資の関係を説明しやすくすること
実務上の示唆 収益が残るうちに、既存事業を残すべきか、変えるべきか、縮小・撤退を含めて判断する視点

業態転換を急がず、事業ドメインの再定義を先に行った

結論:先に取り組んだのは異業種への転換ではなく、既存事業を地域の日常型アミューズメントとして再定義することでした。

成熟産業の経営者は、将来不安を感じたとき、「今の事業とはまったく違う分野へ出るべきではないか」と考えることがあります。もちろん、業界構造や財務状況によっては、撤退・縮小・売却・異業種転換を検討すべきケースもあります。

しかし本件では、既存事業の中にまだ活用できる経営資源が残っていました。地域顧客との接点、店舗運営の経験、会員管理、接客、周辺サービスとの連携可能性、店舗ごとの商圏理解などです。

これらを十分に評価しないまま、まったく別の事業へ進めば、過去に蓄積してきた強みを断ち切ることになります。
新事業には、新たな市場理解、人材、投資、営業体制が必要です。既存事業の収益を次の投資原資に使える局面では、まず自社が持つ資産をどう再活用できるかを確認するほうが現実的です。

異業種転換と既存事業再定義の比較
比較軸 急な異業種転換 既存事業の再定義
活用できる資産 既存の顧客接点や店舗運営力を活かしにくい 地域顧客、店舗、人材、運営ノウハウを活かしやすい
資金計画 新たな市場理解や投資が必要になり、説明難度が上がる場合がある 既存事業の収益力を投資原資として説明しやすい
社内合意 現場や役員が「今の事業の否定」と受け止める可能性がある 既存事業の価値を認めたうえで変化を共有しやすい
本件での判断 最初に採るべき選択肢とはしなかった 先に整理すべき中核テーマとした

そこで本件では、既存施設を単なる遊技場として捉えるのではなく、地域の生活者が安心して短時間利用できる日常型のアミューズメント施設として位置づけ直しました。

重視したのは、規模で大型施設と競うことではありません。清潔感、安心感、接客、利用しやすさ、地域との接点、そして女性や高齢者、ライトユーザーにも開かれた店舗づくりです。これは単なる店舗改善ではなく、事業ドメインそのものの再定義でした。

大手と同じ土俵で戦うと、設備投資が資金繰りを圧迫する

結論:中堅・中小規模の事業者が大手と同じ競争軸で戦うと、資本力の差がそのまま資金繰りの負担として表れます。

本件で避けるべきだったのは、大型施設と同じ発想で競争することでした。設備の大型化、台数の増加、大規模広告、広域集客を前提にすれば、資本力のある事業者ほど有利になります。

中堅規模の企業が同じ土俵で戦えば、改装費、設備投資、人件費、広告宣伝費が先行しがちです。一時的に集客できたとしても、投資回収の見通しが弱ければ、資金繰りの負担は重くなります。

事業計画で重要なのは、「投資するかどうか」ではなく、「その投資がどの顧客層に届き、どの収益改善につながり、どの程度の期間で回収できるのか」を説明できることです。

資金調達上の見方

設備投資や改装計画は、単に「必要な支出」として示すだけでは不十分です。どの顧客層に働きかけ、どの店舗の収益改善につながり、将来の返済原資をどう支えるのかまで整理して初めて、事業計画として説明しやすくなります。

そこで本件では、競争軸を変えることを重視しました。大型化で競うのではなく、地域密着、日常性、接客品質、店舗ごとの役割整理によって、既存店舗の価値を再設計する方向です。

この判断は、資金調達の観点でも重要でした。金融機関や外部関係者に対して、単に「改装します」「店舗を増やします」と説明するだけでは、資金使途と返済原資の関係が弱くなります。

一方で、どの店舗をモデルにし、どの顧客層を取り込み、どのように収益構造を変えるのかまで整理できていれば、設備投資や運転資金の必要性を説明しやすくなります。
こうした資金使途と説明ストーリーの整理は、資金調達エージェントの支援領域とも重なる論点です。

事業計画では、理念・店舗戦略・人材戦略・数値計画を切り離さなかった

結論:本件の事業計画では、コンセプトだけを作るのではなく、実行体制と数値計画まで一体で整理しました。

事業ドメインを再定義しても、現場で実行できなければ意味がありません。特に、従来の利用者層だけでなく、女性、高齢者、初心者、ライトユーザーにも利用しやすい施設を目指す場合、店舗運営に求められる能力は変わります。

求められるのは、接客、清掃、案内、クレーム対応、会員管理、イベント運営、地域との関係づくりです。これらは、設備を変えるだけでは実現できません。そのため本件では、事業理念、事業ドメイン、店舗戦略、人材戦略、数値計画を切り離さずに整理しました。

事業計画に組み込んだ整理項目
整理した要素 事業計画上の意味
事業理念 地域にどのような価値を提供する会社なのかを確認する
事業ドメイン 既存事業を地域日常型のアミューズメント事業として捉え直す
店舗戦略 モデル店舗、収益の軸となる店舗、専門性を持たせる店舗などの役割を分ける
人材戦略 接客、案内、地域対応を実行できる教育・評価・責任体制を整える
数値計画 投資と収益改善の因果関係を説明できる形にする

まず、企業として地域にどのような価値を提供するのかを確認し、既存事業を地域日常型のアミューズメント事業として再定義しました。そのうえで店舗ごとの役割を整理し、モデル店舗、収益の軸となる店舗、専門性を持たせる店舗など、機能を分けて考えました。

人材面では、現場スタッフの教育、責任体制、評価、報酬制度との接続も検討しました。新しい店舗コンセプトを実現するには、経営者の掛け声だけでなく、現場が動ける仕組みが必要だからです。

最後に、改装、出店、ブランド整理、売上・利益目標などを数値計画として整理しました。ここで重要なのは、数値計画を単なる目標表にしないことです。

どの投資が、どの店舗で、どの顧客層に作用し、どのような収益改善につながるのか。その因果関係を説明できる形にして初めて、事業計画は資金調達や社内合意に使える資料になります。

社内合意の前に、危機感を煽るだけの計画にしなかった

結論:危機を強調するのではなく、「利益があるからこそ変える」という形で社内合意をつくることが重要でした。

一定の収益が残っている会社では、改革の必要性を共有することが難しくなります。経営陣の一部が将来不安を感じていても、他の役員や現場幹部が「まだ大丈夫」と考えていれば、改革は進みません。

このような会社で外部環境の厳しさだけを強調しても、社内の納得は得られにくいものです。むしろ「今の事業を否定された」と受け止められ、計画そのものが空中戦になりかねません。

本件で重視したのは、既存事業を否定することではありません。これまで積み上げてきた地域顧客、店舗運営、現場力を、次の形へ接続することでした。

つまり、「このままでは危ないから変える」のではなく、「利益が残っている今だからこそ、次の収益構造へ投資できる」という整理です。

この違いは、計画の受け止められ方を大きく左右します。危機感だけで作った計画は社内で反発を生みやすく、既存事業の価値を認めたうえで再定義する計画は、経営陣や現場が自分ごととして受け止めやすくなります。

同様の会社が確認すべきこと

結論:成熟産業にいる会社は、新事業を探す前に、既存事業のどこに再定義できる余地があるかを確認すべきです。

まず確認すべきは、自社の既存事業が本当に衰退しきっているのか、それとも顧客層、提供価値、見せ方、運営体制を変えれば、まだ再定義できる余地があるのかという点です。

次に、競合と同じ土俵で戦っていないかを確認します。大手と同じ規模、同じ広告、同じ設備投資で戦おうとすると、資本力の差がそのまま資金繰りの差になります。

また、既存事業の収益が次の投資原資として使えているかも重要です。収益が残っていても、それが現状維持のためだけに消費されているなら、将来の選択肢は狭くなります。

さらに、新事業を始める前に、既存事業の顧客接点、地域信用、従業員、店舗、ブランドを活用できる余地を見ているかを確認する必要があります。

最後に、資金使途と返済原資の整合性です。設備投資や新規出店を行う場合、その投資がどの収益改善につながるのかを説明できなければ、事業計画としては弱くなります。

事業計画で整理すべきこと

  • どの資産を残すか
  • どの競争軸から降りるか
  • どの顧客層へ広げるか
  • どの順番で投資するか
  • 資金使途と返済原資を説明できる状態になっているか

事業計画は、見栄えのよい将来像を描くための資料ではありません。社内で合意し、金融機関や外部関係者に説明し、実行後に検証できるようにするための設計図です。

実務上の注意点

結論:既存事業の再定義は有効な選択肢になり得ますが、どの会社にも当てはまる万能策ではありません。

本件から学べるのは、収益が残っている段階で改革を始めることの重要性です。赤字になってからの改革は、資金調達余力も、人材採用余力も、社内の実行余力も限られます。

一方で、既存事業を再定義すれば必ず立て直せるわけではありません。市場縮小の速度、規制環境、設備の老朽化、借入負担、人材流出、競合環境によっては、縮小・撤退・売却・別事業への転換を先に検討すべき場合もあります。

既存借入や資金繰り負担の再設計が論点になる場合は、HTファイナンスのような借換え・再設計の文脈で確認すべき事項も出てきます。

制度・規制に関する留意点

業界制度や広告規制、営業に関するルールは時期によって変わる可能性があります。現行制度に関わる判断を行う場合は、最新の法令、規制、業界団体の情報、専門家の確認が必要です。

本記事で扱っているのは、あくまで当時の支援判断に基づく事業計画整理の考え方です。個別企業にそのまま当てはめるのではなく、自社の収益力、既存資産、借入負担、組織体制、資金使途、返済原資を確認したうえで判断する必要があります。

よくある質問(FAQ)

結論:ここでは、収益が残る会社の事業計画見直し、異業種転換との違い、金融機関説明で重視すべき点を整理します。

Q収益が出ている会社でも、事業計画を見直す必要はありますか?
Aあります。むしろ、一定の収益が残っている段階だからこそ、次の投資や組織改革を検討しやすくなります。赤字が深くなってからでは、資金調達余力や社内の実行余力が限られ、選択肢が狭くなる場合があります。
Q成熟産業では、早めに異業種へ転換したほうがよいのでしょうか?
A必ずしもそうではありません。既存事業に顧客基盤、地域信用、運営ノウハウ、人材、収益力が残っている場合は、まずそれらをどう再定義できるかを確認する必要があります。
ただし、業界構造や財務状況によっては、撤退や転換を優先すべきケースもあります。
Q事業ドメインの再定義とは、単なるコンセプト変更ですか?
Aいいえ。事業ドメインの再定義は、広告コピーや店舗イメージを変えるだけではありません。どの顧客層に価値を提供し、どの競争軸で戦い、どの投資を行い、どの収益改善につなげるかを整理することです。資金計画や人材戦略とも連動します。
Q事業計画を金融機関に説明する際、何が重要ですか?
A資金使途と返済原資の関係を説明できることが重要です。設備投資や新規出店を行う場合、その投資がどの顧客層、稼働率、売上、利益改善につながるのかを整理する必要があります。
単なる将来像ではなく、実行可能性と検証可能性のある計画にすることが求められます。

まとめ|事業計画は、変える前に残す資産を整理することが重要

本件は、アミューズメント関連企業の新事業計画支援として始まりました。しかし、ここで重視したのは、単に新しい事業を探すことではありません。本当の論点は、収益が残っている段階で、既存事業の意味をどう組み替えるかにありました。

成熟産業では、外部環境の変化を理由に、異業種転換や新規事業へ意識が向きやすくなります。しかし、自社にまだ活用できる顧客接点、地域信用、店舗、人材、運営ノウハウ、収益力が残っているなら、それらを捨てる前に、どう次の収益構造へつなげるかを考える必要があります。

大切なのは、事業を変えること自体ではありません。どの資産を残し、どの競争軸から降り、どの顧客層へ広げ、どの順番で投資するかを整理することです。

その順番を誤れば、収益のある会社でも、次の局面で資金繰りと組織運営に無理が出ます。事業計画を作る目的は、未来の理想像を並べることではなく、経営判断、社内合意、資金調達、実行管理をつなぐことにあります。

成熟産業で次の打ち手を考える会社ほど、まず既存事業の再定義から始めるべきか、それとも縮小・撤退・転換を優先すべきかを、冷静に整理する必要があります。

MISAKANOMICS — NEXT STEP
事業計画と資金調達は、まず『順番』を整理する

新事業を探すべきか、既存事業を再定義すべきか、

設備投資や資金計画をどう組み立てるか。判断に迷う場合は、

まず資金調達全体を見直すことが重要です。


資金調達エージェントに
全体整理を相談する

— 必要に応じてはこちら —

本記事は、当サイトのコンテンツポリシーに基づき、ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・三坂大作が執筆・監修しています。実在の支援事例をもとに、守秘義務に配慮して一部情報を匿名化・抽象化し、事業計画策定支援と資金調達判断の実務論点として整理しています。

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