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公開日:2026.06.18

更新日:2026.06.18

事業戦略策定支援の実績|資産売却前に再編後の会社像を固めた理由

事業戦略策定支援と資産売却スキーム設計支援により、再編後の会社像を整理する実績記事のアイキャッチ画像
三坂 大作
執筆・解説三坂 大作
ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・取締役

東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
さらにニューヨーク支店にて国際金融業務も経験し、法務と金融の双方に通じたスペシャリストとして、30年以上にわたり中小企業・個人事業主の“実行型支援”を展開。貸金業務取扱主任者。

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東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
さらにニューヨーク支店にて国際金融業務も経験し、法務と金融の双方に通じたスペシャリストとして、30年以上にわたり中小企業・個人事業主の“実行型支援”を展開。貸金業務取扱主任者。

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▼ この記事で分かること

  • 最初の論点
    事業戦略策定支援で最初に整理すべきこと
  • 資産売却の見方
    単なる資金確保策として見ない方がよい理由
  • 優先順位
    不振部門の整理より先に、再編後の会社像を固める重要性
  • 金融機関対応
    説明できる再編ストーリーを整える考え方

この事例で重要だったのは、資産売却や事業整理を単独で判断しなかったことです。再編後に残す事業の形、資金繰り、金融機関への説明を一体で整理することで、実行可能な事業戦略として組み立てる必要がありました。

事業の一部を見直す場面では、「不採算事業をどうするか」「資産を売却すべきか」「統合や撤退を進めるべきか」といった論点が先に見えやすくなります。

いわゆる事業リストラというと、不採算事業の撤退や縮小を思い浮かべる方も少なくありません。しかし、実務で重要なのは、何を切るかだけではありません。むしろ先に確認すべきなのは、再編後にどの事業を残し、どの体制で会社を成り立たせるかです。

今回取り上げるのは、地域販売網を持つ事業会社における、事業戦略策定支援および資産売却スキーム策定支援の事例です。表面的には、不振部門の整理や資産売却を検討する案件に見えました。

しかし実際に重要だったのは、売却そのものではなく、再編後の営業体制、管理体制、資金繰りをどう成立させるかという全体設計でした。

不振事業を見つけて、そこだけを切る。これは一見分かりやすい判断です。しかし、残す事業の収益構造や資金繰りが整っていなければ、事業は縮小できても、会社の立て直しにはつながりません。

この記事では、事業の見直しや資産売却を検討する際に、なぜ「売る」「切る」よりも先に、再編後の会社像を固める必要があるのかを整理します。

相談時点の課題|不振部門の整理だけではなく、全体再編が論点だった

結論:今回の支援の表面的な課題は不振部門の処理でしたが、本当の論点は、再編後にどの体制で事業を続けるかにありました。

地域販売網を持つ事業体では、収益性が低下している販売部門の扱いが、再編検討の出発点になっていました。もともとは商品ラインナップの強化や顧客接点の拡大を目的として設けられた部門でしたが、実際には売上・収益ともに厳しい状況が続いていました。

そのため、相談時点では「この部門をどう整理するか」が大きなテーマになっていました。ただし、ここで重要なのは、不振部門だけを単独で切り出して判断しなかったことです。

地域販売型の事業では、店舗網、整備・サービス体制、顧客接点、管理機能が一体で動いています。一部門だけを売却・縮小すればよいように見えても、その判断は既存顧客、サービス導線、拠点配置、在庫管理、人員配置、資金繰りに影響します。

したがって、本件は単なる売却支援ではありませんでした。不振部門の処理と、関連部門との統合、再編後の販売体制、管理機能、資金繰りを一体で整理する事業戦略策定支援でした。

本当の課題|「何をやめるか」ではなく「再編後に何を残すか」だった

結論:事業の見直しで重要なのは、撤退判断そのものではなく、残す事業に経営資源を集中させる設計です。

事業の見直しで誤解されやすいのは、「赤字部門を切れば会社が良くなる」という考え方です。もちろん、不採算事業の見直しは必要です。しかし、実務ではそれだけでは足りません。

本件で問われていたのも、不振部門をやめること自体ではありませんでした。むしろ重要だったのは、再編後にどの販売機能を残し、どの管理機能を統合し、どこに人員・拠点・資金を集中させるかでした。

再編の検討では、店舗統廃合、本社機能の集約、人件費・設備費の見直し、オペレーション改善、拠点配置、賃料負担、在庫や固定資産の扱いなど、複数の論点が同時に出てきます。

これらを整理せずに売却だけを先に進めると、短期的にはコストが下がっても、再編後の営業力や資金繰りが不安定になることがあります。

三坂大作
執筆者|三坂のコメント事業の見直しで最初に見るべきなのは、どの事業を切るかではありません。切った後に、会社がどの形で成り立つのかです。
残す事業の収益構造と資金繰りが見えていなければ、再編は単なる縮小で終わってしまいます。

資産売却スキームが論点になった理由|財務の重さと経営資源の分散があった

結論:資産売却は単独の処分ではなく、財務負担を軽くし、経営資源を再配置するための選択肢として検討されました。

不振部門の整理が論点になった背景には、単なる売上不振だけでなく、財務面の重さがありました。保有資産、借入負担、累積損失、固定費、在庫や設備の扱いなどを確認すると、事業をそのまま抱え続けること自体が、全体の経営資源を分散させる要因になっていました。

ここで大切なのは、「赤字だから売る」という短絡的な判断にしないことです。実務では、まずその事業が今後もグループ内で戦略的意味を持つのかを確認します。次に、残すべき機能と外すべき機能を分けます。そのうえで、売却・統合後の営業体制、管理体制、資金繰りが成り立つかを検証します。

資産売却は、資金を得るためだけの手段ではありません。不要または過大な資産を整理し、経営資源を残す事業へ寄せるための設計でもあります。

したがって、売却価格だけを見て判断するのではなく、売却後の事業運営、金融機関への説明、再編コスト、返済原資まで含めて見る必要があります。

資産売却スキームで確認すべき視点
見方 短絡的な判断 実務で必要な確認
資産売却 資金を得るために売る 売却後の事業運営、再編コスト、返済原資まで確認する
不振部門の整理 赤字だから切る 残す事業との関係、営業導線、管理機能への影響を確認する
金融機関対応 借入先を探す なぜ再編が必要か、再編後にどう返済原資を作るかを説明する

事業再編で先に整理した3つの論点

結論:売却や統合を決める前に、再編後の会社像、地域の営業導線、資金繰りを先に整理する必要がありました。

事業再編で先に整理した3つの論点
先に整理した論点 確認した内容 整理する理由
再編後の全体像 残す拠点、販売機能、本社・管理機能の再配置 売却後に会社として成り立つ形を先に描くため
地域性と営業導線 顧客接点、拠点配置、サービス導線、地域内での信用 短期的な削減で販売力を落とさないため
資金繰りと金融機関説明 再編コスト、つなぎ資金、返済原資、説明ストーリー 資金調達を再編の後追いにしないため

この3つの論点は、それぞれ別々に判断するものではありません。再編後の全体像が曖昧であれば、地域の営業導線も決められず、資金繰りや金融機関への説明も組み立てにくくなります。

だからこそ、売却や統合の可否を決める前に、全体像、営業導線、資金計画を同時に確認する必要がありました。

再編後の全体像を先に描くこと

事業売却や統合は、単独で成立する判断ではありません。先に描くべきなのは、再編後にどのような会社として成り立たせるかです。

どの拠点を残すのか。どこに販売機能を集約するのか。本社機能や管理機能をどう再配置するのか。これらが曖昧なまま個別部門だけを処分すると、再編後に現場が混乱します。

再編計画では、削る対象よりも先に、残す会社の姿を明確にする必要があります。

地域性と営業導線を無視しないこと

地域販売型の事業は、数字だけで判断できません。顧客接点、拠点配置、サービス導線、地域内での信用が収益性に影響します。

短期的なコスト削減だけを優先して拠点や人員を整理すると、中長期では販売力や顧客対応力が落ちることがあります。そのため、事業の見直しでは、何を外すかと同時に、どの顧客接点を残すかを考える必要があります。

資金調達を再編の後追いにしないこと

再編では、売却や統合の決定より先に、再編コストと再編後の資金繰りを見なければなりません。店舗統廃合、システム移行、人員整理、在庫処理、移転費用などは、再編効果が出る前に発生することがあるからです。

また、再編前には、偶発債務、滞留債権、棚卸資産、減損、不稼働資産、未計上債務、退職給付関連の負担など、後から資金繰りに影響する項目を確認する必要があります。

資金調達を後回しにすると、再編方針は決まっているのに、実行資金やつなぎ資金が不足するという事態になりかねません。再編計画と資金計画は、同時に設計すべきものです。

金融機関の役割|単なる資金供給ではなく、再編の説明可能性を支える

結論:金融機関対応では、融資の有無だけでなく、再編計画の妥当性、返済原資、説明ストーリーの整理が重要になります。

事業再編では、民間金融機関だけでは組みにくい資金が必要になることがあります。再編効果が出るのは将来である一方、再編コストは先に発生するためです。

このような局面では、政府系金融機関を含む外部金融機関の位置づけが論点になることがあります。ただし、重要なのは「どこから借りるか」だけではありません。再編の妥当性を整理し、金融機関が理解しやすい説明枠組みを整えることです。

金融機関に対しては、「なぜこの事業を整理するのか」「なぜこの統合が必要なのか」「再編後にどこから返済原資を生むのか」を説明できなければなりません。経営者の感覚論ではなく、営業体制、収益改善、資金繰り、返済計画をつないだストーリーとして示す必要があります。

また、事業再編は実行して終わりではありません。実行後に計画どおり収益改善が出ているか、追加の整理が必要か、資金繰りが想定どおり回っているかを見続ける必要があります。

外部金融機関の関与には、再編計画が希望的観測で終わらないように、一定の規律を持ち込む意味もあります。

政府系金融機関について誤解されやすい点

政府系金融機関が関与すれば必ず資金調達できる、という意味ではありません。再編計画の妥当性、返済可能性、政策的整合性、地域経済や雇用への影響などは、案件ごとに個別判断が必要です。

支援方針|切る順番ではなく、成立する順番で整理した

結論:今回の支援では、事業を切る順番ではなく、再編が成立する順番で論点を整理しました。

今回の支援で重視したのは、次の順番です。

  • 重視する順番
  • 01不振部門の状況を確認する
  • 02残すべき機能と外すべき機能を分ける
  • 03売却・統合後の営業体制と管理体制を設計する
  • 04再編コストと再編後の資金繰りを確認する
  • 05金融機関に説明できる事業再編ストーリーへ整理する

この順番を守らないと、事業は切れても、会社が立ち直らないことがあります。削減のための削減ではなく、残す事業を立たせるための再設計にしなければ、事業再編の意味は薄れてしまいます。

資産売却、統合、借入、返済計画、金融機関対応は、それぞれ別々の論点に見えます。しかし実務では、すべてがつながっています。

だからこそ、再編支援では、売却価格や削減額だけでなく、再編後の会社がどのように資金を回し、どこから返済原資をつくるのかまで整理する必要があります。

実務上の注意点|事業再編の判断を一般化しすぎないこと

結論:大規模な再編案件だから成り立つ論点と、中小企業にも共通する論点は分けて考える必要があります。

今回のような案件を、そのまま中小企業の事業再編に当てはめるのは適切ではありません。複数拠点、系列関係、大規模な販売網、外部金融機関との協調など、大きな事業体だからこそ生じる論点もあるためです。

一方で、中小企業にも共通する論点は明確です。

中小企業にも共通する論点

  • 不振事業だけを見て判断しないこと
  • 売却・撤退の前に、残す事業の収益構造を確認すること
  • 再編後の営業体制、管理体制、資金繰りを先に設計すること
  • 資金調達を再編の後追いにしないこと
  • 金融機関へ説明できる資料とストーリーを整えること

事業の見直しは、急いで進めるほど判断を誤りやすい領域です。まずは、何を残すのか、どの順番で整理するのか、資金繰りと返済原資をどう説明するのかを確認する必要があります。

順番を誤ったときに残りやすい問題

特に、資金繰りが厳しい局面では、「早く売る」「早く借りる」「早く削る」という判断に傾きがちです。しかし、順番を誤ると、再編後に必要な資金が足りない、残した事業の収益が立たない、金融機関への説明が弱い、といった問題が残ります。

よくある質問(FAQ)

結論:事業再編、資産売却、金融機関対応は、個別に判断するのではなく、再編後の事業設計と一体で考える必要があります。

Q事業リストラは、単なる撤退や縮小とは違うのですか。
A違います。撤退や縮小は事業リストラの一部になり得ますが、本来は、残す事業に経営資源を集中させるための再設計です。何を切るかだけでなく、切った後に会社がどう成り立つかを確認する必要があります。
Q資産売却を先に決めてから、資金繰りを考えてもよいですか。
A資産売却は有効な選択肢になることがありますが、先に売却だけを決めるのは危険です。売却後の営業体制、管理体制、再編コスト、返済原資、金融機関への説明まで含めて整理する必要があります。
Q政府系金融機関に相談すれば、再編資金は調達しやすくなりますか。
A政府系金融機関が関与することで、再編計画の説明可能性や民間金融機関との協調を整理しやすくなる場合はあります。ただし、資金調達の可否は、計画の妥当性、返済可能性、政策的整合性、個別事情により判断されます。

まとめ|資産売却の前に、再編後の会社像を固める

結論:事業戦略策定支援で重要なのは、不振事業の整理より先に、再編後に残す事業の形と資金繰りを固めることです。

事業の見直しや資産売却は、今でも有効な経営判断の一つです。ただし、それが活きるのは、単なる不採算事業の処分としてではなく、どの事業を残し、どの機能を統合し、どこに経営資源を集中させるかを全体設計として扱った場合です。

今回の支援でも、本質は不振部門を処分することではありませんでした。資産売却や統合を通じて、残す事業の営業体制、管理体制、資金繰りをどう成立させるかが問われていました。

また、金融機関の役割も、単なる資金供給だけではありません。再編の妥当性を説明できる形に整理し、実行後の規律を持ち込むことにも意味があります。

事業の見直しとは、切る判断ではありません。会社を次にどういう形へ再設計するかを決める判断です。だからこそ、売却や撤退を考える前に、残す事業、再編後の資金繰り、金融機関への説明ストーリーを先に整える必要があります。

そのほかの支援事例については、支援実績一覧ページでも整理しています。事業再編や資金繰りの見直しを検討する場合は、個別の調達手段を選ぶ前に、まず全体の順番を確認することが重要です。

MISAKANOMICS — NEXT STEP
事業再編や資金繰りは、手段選びの前に『順番』を整理する

資産売却、借入、資金繰り改善、金融機関への説明を個別に考える前に、

まずは会社全体として何を残し、どの順番で整えるべきかを確認することが大切です。


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本記事は、当サイトのコンテンツポリシーに基づき、ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・三坂大作が執筆・監修しています。実在の支援事例をもとに、守秘義務に配慮して一部情報を匿名化・抽象化し、事業戦略策定支援と資産売却スキーム策定支援の実務論点として整理しています。

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