2025.12.05
ウィズリコースのファクタリングの特徴は?リスクやノンリコースとの違いについて紹介
事業を経営していると、売掛金の回収までの期間が、資金繰りを圧迫することがあります。こうした状況を解決する手段の一つとして利用されるのがファクタリングですが、ウィズリコースとノンリコースという2つのタイプが存在します。特にウィズリコース型には、手数料が安いものの、リスクを抱えたまま使用しなければならないという特徴があります。
この記事では、ウィズリコース型ファクタリングの基本的な仕組みや、そのメリット・デメリット、ノンリコースとの違いについて詳しく解説します。また、導入時の注意点についても触れ、ウィズリコース型ファクタリングが、自社に適しているかどうかを判断するための情報を提供します。
- ウィズリコースは手数料が安いが、売掛金が回収できない場合は自社に返済義務が生じる。
- 安全性を重視するなら、リスクが自社に及ばない「ノンリコース」か「ビジネスローン」が推奨される。
- 目先のコストだけでなく、取引先の信用リスクを考慮して契約形態を選ぶ必要がある。
ウィズリコースのファクタリングとは
結論:ウィズリコースとは、売掛先が倒産等で未払いとなった際、利用者がファクタリング会社へ売却代金を返済する義務を負う契約です。
ファクタリングの契約形態には、主に2種類ありますが、その中でもウィズリコース型は特徴的な仕組みを持っています。
ウィズリコースとは
ウィズリコース型ファクタリングとは、売掛債権を譲渡した後、その債権が未回収となった場合でも、利用者(売掛金を持つ企業)が返済義務を負う契約形態です。「リコース」とは「償還請求権」を意味し、「ウィズリコース」は「償還請求権付き」という意味になります。
つまり、ファクタリング会社が売掛先企業から代金を回収できなかった場合、ファクタリングを利用した企業に対して、支払った資金の返還を求める権利を持つということです。この点が、未回収リスクをファクタリング会社が負担するノンリコース型との大きな違いとなります。
ウィズリコース型は、主に銀行系や貸金業者系のファクタリング会社で多く採用されており、利用者側がリスクを負担する代わりに低コストでの資金調達が可能になるという特徴があります。
ウィズリコースのファクタリングの契約形態
ウィズリコース型ファクタリングの契約では、通常以下のような流れで取引が進みます。
まず、資金調達を希望する企業(売掛債権を持つ企業)が、ファクタリング会社に売掛債権を譲渡します。ファクタリング会社は債権の評価を行い、その価値の一定割合(概ね70%~90%程度)を前払いします。
その後、ファクタリング会社は、売掛先企業から債権の回収を行いますが、この段階で重要なのは、売掛先企業が支払いを行わなかった場合、最終的な返済責任は、利用者企業に戻ってくるという点です。つまり、ファクタリング会社は回収代行を行うものの、回収できなかった場合には、利用者に対して支払った資金の返還を請求します。
このような契約形態であるため、契約書の内容を十分に確認し、償還請求権の範囲を理解することが非常に重要です。契約によっては、特定の条件下でのみ償還請求権が発生する場合もあります。
債権譲渡契約においては、民法第467条に基づく対抗要件の具備が重要となります。
詳しくは債権譲渡の対抗要件具備とは?の記事で解説しています。
ウィズリコースのファクタリングのメリット
結論:ノンリコース(償還請求権なし)に比べて手数料が低く(1%〜5%程度)、審査基準が緩やかである点が最大のメリットです。
ウィズリコース型ファクタリングには、事業資金調達において注目すべきいくつかの利点があります。その代表的なメリットを詳しく見ていきましょう。
手数料が低い
ウィズリコース型ファクタリングの最大の魅力は、ノンリコース型と比較して手数料が安いという点です。一般的に、ウィズリコース型の手数料は、売掛債権額の1%~5%程度といわれています。これに対して、ノンリコース型では、5%~15%程度の手数料が発生することが多いでしょう。
この手数料の差は、リスク負担の違いから生じています。ウィズリコース型では、未回収リスクを利用者が負担するため、ファクタリング会社はそのリスク分を手数料に上乗せする必要がありません。
資金調達コストを最小限に抑えたい企業にとって有利な選択肢となり、特に取引先の信用力が高く、未回収リスクが低いと判断できる場合は、ウィズリコース型を選ぶことで、コスト面での優位性を得ることができます。
審査に通りやすい
ウィズリコース型ファクタリングは、ノンリコース型と比べて審査が通りやすい傾向があります。これは、ファクタリング会社側のリスクが限定的であるためです。
ノンリコース型では、ファクタリング会社が未回収リスクを全て負担するため、売掛先企業の信用力を厳しく審査します。一方、ウィズリコース型では、最終的な返済責任が利用者にあるため、売掛先企業の信用力に対する審査基準がやや緩和される傾向があります。
このため、取引先の信用力に不安がある場合でも資金調達の選択肢となる可能性が高まります。特に創業間もない企業や、業績変動がある企業にとっては、資金調達の間口が広がるという点で大きなメリットとなります。
資金調達の柔軟性が高い
ウィズリコース型ファクタリングは、資金調達の柔軟性という面でも優れています。短期的な資金需要に対して迅速に対応できるため、緊急の資金需要や一時的な資金不足を解消するのに適しています。
通常、申し込みから資金化までのスピードが速く、最短で当日~数日程度での資金化が可能なケースも多いものです。また、継続的な取引関係を構築すれば、その後の取引はさらにスムーズになります。
急な資金需要に対応できる柔軟性の高さは、特に季節性のある事業や、プロジェクトベースで売上が変動する企業にとって大きな魅力となります。銀行融資などの伝統的な資金調達方法と比較して、必要な時に必要な分だけ調達できる点が評価されています。
ウィズリコースのファクタリングのデメリット
結論:売掛金の未回収リスクを利用者が負うため、資金調達後に売掛先が倒産すれば、多額の返済義務が発生する点が最大のデメリットです。
ウィズリコース型ファクタリングには、多くのメリットがある一方で、利用する際に考慮すべきデメリットも存在します。リスク管理の観点から、以下のデメリットを十分に理解しておく必要があります。
金融庁も、ファクタリング契約の中に「償還請求権(ウィズリコース)」が含まれている場合、それは実質的に貸金業に該当する可能性があるとして注意を促しています。
未回収リスクを抱えたままになる
ウィズリコース型ファクタリングの最大のデメリットは、売掛金が未回収となった場合のリスクを利用者が負うという点です。つまり、売掛先企業が何らかの理由で支払いを行わなかった場合、ファクタリング会社から受け取った資金を返還しなければなりません。
これは実質的に、資金調達後も売掛金の回収リスクが継続することを意味します。売掛先企業が倒産した場合や、取引上のトラブルで支払いを拒否した場合など、予期せぬ状況で資金返還を求められる可能性があります。
未回収時の返済義務を常に念頭に置いた資金計画が必要となるため、万が一の事態に備えて、返還に対応できる資金的余裕をもっておくことが重要です。リスク管理が不十分な場合、思わぬ資金ショートを招く可能性があります。
「手数料が安いから」という理由だけで選ぶのは危険です。ウィズリコースを選ぶなら、それは「借入」と同じ覚悟が必要です。もし負債を増やしたくないなら、ファクタリングではなく、まずは無担保のビジネスローンで手元資金を厚くすることを強くお勧めします。
資金計画の不確実性が高い
ウィズリコース型ファクタリングを利用すると、将来的な資金計画に不確実性が生じる可能性があります。通常、売掛金を譲渡することで一度は資金化されますが、未回収時の返還義務があるため、完全に確定した資金として計画に組み込むことができません。
特に、大口の売掛金を対象としたファクタリングの場合、その未回収リスクは企業の資金繰り全体に大きな影響を与える可能性があります。ファクタリングによって調達した資金を元に新たな投資や支出を行った後に、予期せぬ返還請求を受けると、資金繰りが急激に悪化するケースもあります。
返済リスクを考慮した慎重な資金計画の立案が求められ、単純な資金調達以上の財務管理能力が必要となります。特に、資金繰りが厳しい企業にとっては、この不確実性が経営判断を難しくする要因となり得ます。
信用管理を継続する必要がある
ウィズリコース型ファクタリングを活用する場合、取引先の信用状況を常に把握し、管理する必要があります。未回収リスクを負うため、取引先企業の支払能力や経営状態の変化に敏感になる必要があるのです。
この信用管理は、特に取引先が多い企業や、大口取引先への依存度が高い企業にとって、大きな管理コストとなる可能性があります。取引先の財務状況や市場動向、業界情報などを、定期的に収集・分析し、リスク評価を行う体制が求められます。
取引先の信用状況を継続的にモニタリングする体制構築が重要となり、そのための人的・時間的コストも考慮する必要があります。小規模企業では、この信用管理体制を整えることが難しいケースもあるため、導入前に自社のリソースと照らし合わせた検討が必要です。
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ウィズリコースとノンリコースの違い
(償還請求権あり)
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売掛先が倒産・未払い
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⚠ 御社が買い戻し(返済)義務を負う
(償還請求権なし)
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売掛先が倒産・未払い
⬇
◯ 御社に返済義務なし
(業者がリスク負担)
結論:最大の違いは「未回収リスクの所在」です。ウィズリコースは利用者負担、ノンリコースはファクタリング会社がリスクを負担します。
ファクタリングを検討する際、ウィズリコース型とノンリコース型のどちらが自社に適しているか判断するためには、両者の違いを明確に理解することが重要です。ここでは、主要な相違点について詳しく解説します。
両者の違いをより深く理解するために、ファクタリングの仕組みとノンリコースの特徴についても併せてご確認ください。
リスクの負担の違い
ウィズリコース型とノンリコース型の最も本質的な違いは、売掛金が未回収となった場合のリスク負担者です。ウィズリコース型では、未回収リスクは最終的に利用者(売掛債権を譲渡した企業)が負担します。つまり、売掛先企業が支払いを行わない場合、ファクタリング会社は、利用者に対して資金の返還を求める権利を持ちます。
一方、ノンリコース型では、未回収リスクはファクタリング会社が負担します。売掛先企業が支払いを行わなくても、利用者が返済する義務はありません。この違いは、単なる契約条件の差ではなく、ファクタリングの性質自体を変える重要な要素です。
リスク負担の所在を明確に理解し、自社の状況に合わせた選択をすることが重要です。リスク許容度が低い企業や、取引先の支払い能力に不安がある場合は、ノンリコース型の方が安全かもしれません。一方、コスト重視の判断をする場合は、ウィズリコース型が適している可能性があります。
コスト面での違い
ウィズリコース型とノンリコース型では、手数料率に大きな差があります。一般的に、ウィズリコース型の手数料は、売掛債権額の1%~5%程度であるのに対し、ノンリコース型では、5%~15%程度の手数料が発生することが多いでしょう。
この手数料の差は、リスク負担の違いから生じています。ノンリコース型では、ファクタリング会社が未回収リスクを全て負担するため、そのリスクに見合った対価として高い手数料を設定しています。一方、ウィズリコース型では、未回収リスクを利用者が負担するため、その分手数料が低く抑えられています。
資金調達のコストパフォーマンスを重視した判断が必要です。取引先の信用力が高く、未回収リスクが低いと判断できる場合は、ウィズリコース型を選ぶことで、コスト面での優位性を得ることができます。しかし、リスクヘッジを優先するなら、高い手数料を支払ってもノンリコース型を選択する方が良いでしょう。
審査基準の違い
ウィズリコース型とノンリコース型では、ファクタリング会社の審査基準にも違いがあります。ノンリコース型では、ファクタリング会社が未回収リスクを全て負担するため、売掛先企業の信用力を厳しく審査します。取引先の財務状況や支払い履歴、業界動向など、多角的な観点から審査が行われます。
一方、ウィズリコース型では、最終的な返済責任が利用者にあるため、売掛先企業の信用力に対する審査基準がやや緩和される傾向があります。その代わり、利用者自身の信用力や返済能力が重視されることになります。
審査のハードルの違いを考慮した選択が重要です。取引先の信用力に不安がある場合でも資金調達を行いたい場合は、ウィズリコース型の方が審査に通りやすい可能性があります。ただし、その場合は未回収リスクを自社で負担することになるため、そのリスクを許容できるかどうかの判断が必要です。
ウィズリコースのファクタリングを検討しても良い場合
ウィズリコース型ファクタリングは、特定のビジネスシーンや企業の状況において特に効果を発揮します。
短期資金調達の場合
ウィズリコース型ファクタリングは、短期間の資金不足を解消するための手段として非常に有効です。例えば、大型の受注を獲得したものの、仕入れや人件費などの先行投資が必要な場合、売掛金の回収を待たずに資金を調達することができます。
また、季節性のある事業では、繁忙期に向けた準備資金の確保や、閑散期の運転資金の補填などにも活用できます。特に、一時的な資金需要であり、近い将来に売上入金が見込める場合は、ウィズリコース型ファクタリングの短期的なコスト負担は比較的小さく、効果的な選択となります。
一時的な資金需要に対して迅速に対応できる柔軟性が、ウィズリコース型ファクタリングの大きな強みです。銀行融資などと比較して、申込から資金化までのスピードが速いため、急な資金需要に対応しやすいという特徴があります。
取引先の信用度が高い場合
ウィズリコース型ファクタリングは、売掛先企業の信用力が高い場合に特に有利な選択肢となります。大手企業や上場企業、官公庁など、支払能力に問題がなく、支払遅延のリスクが低い取引先との売掛金を対象とする場合、未回収リスクは実質的に低いといえます。
このような状況では、高い手数料を支払ってノンリコース型を選ぶよりも、低コストのウィズリコース型を選択する方が経済的です。信用力の高い取引先との取引がメインの企業にとっては、ウィズリコース型ファクタリングは、資金調達コストを最小限に抑えつつ、資金繰りを改善する効果的な手段となります。
取引先の支払い能力を的確に評価した上での判断が重要です。長期間の取引実績があり、過去に支払遅延などのトラブルがない取引先であれば、ウィズリコース型を選択することで、コスト面での優位性を得ることができます。
銀行融資の補完として利用したい場合
ウィズリコース型ファクタリングは、既存の銀行融資を補完する資金調達手段としても活用できます。銀行融資では対応できない短期的な資金需要や、融資枠の上限に達している場合の追加資金調達手段として、ファクタリングを組み合わせることで、より柔軟な資金調達が可能になります。
特に、銀行融資では審査期間が長かったり、担保設定などの手続きが煩雑だったりするケースがありますが、ファクタリングではそうした制約が少なく、迅速な資金化が可能です。また、銀行融資とは異なり、財務諸表上の負債として計上されないケースもあるため、財務バランスを維持しながら資金調達を行いたい場合にも有効です。
複数の資金調達手段を組み合わせた多角的な財務戦略を構築することが、安定した経営のためには重要です。ウィズリコース型ファクタリングを銀行融資と併用することで、資金調達の選択肢を広げ、状況に応じた最適な資金調達が可能になります。
また、中小企業庁が推奨する売掛債権を活用した融資制度などと比較検討することも一つの手段です。
まとめ
ウィズリコース型ファクタリングは、売掛債権を活用した資金調達方法として、手数料の低さや審査の通りやすさという明確なメリットがあります。一方で、未回収時の返済リスクを利用者が負担するという特徴も理解しておく必要があります。
最適な資金調達方法を選ぶためには、自社の財務状況や取引先の信用力、リスク許容度などを総合的に判断することが重要です。特に取引先の信用力が高く、資金調達コストを抑えたい場合は、ウィズリコース型が有効な選択肢となるでしょう。まずは、複数のファクタリング会社に相談し、自社に最適な条件を比較検討することをお勧めします。
リスクを負いたくない場合は、ファクタリングだけでなく無担保・無保証のビジネスローンも有力な選択肢です。
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