株式会社ヒューマントラスト

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2023年現在の最低賃金は、
全国平均時給が961円となりました。

2022年の最低賃金改定では過去最高額の全国加重平均31円アップです

2023年現在の最低賃金は、2022年10月におこなわれた改定額が適用されています。2022年の最低賃金改定では過去最高額の全国加重平均31円アップで、全国平均時給が961円となりました。最低賃金額の上位1位は東京都の1,072円、2位は神奈川県の1,071円、3位は大阪府の1,023円となりました。

(1)最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度です。

最低賃金とは、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の最低額を定めた制度です。最低賃金は、「最低賃金法」という法律で決められています。
 最低賃金額より低い賃金で契約した場合は無効とされ、最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされます。また、使用者が最低賃金以上の賃金を支払っていなかった場合、使用者は労働者にその差額を支払う必要があるとともに、罰則が適用されます。

最低賃金の金額は、都道府県ごとに設置されている、最低賃金審議会による審議を経て毎年改定されます。審議会は、公益委員・労働者側委員・使用者側委員で構成されています。

最低賃金は、都道府県ごとに定められている「地域別最低賃金」と、特定の産業ごとに定められている「特定最低賃金」の2種類あります。「最低賃金」と聞いてイメージするのは、「地域別最低賃金」のことです。「地域別最低賃金」は、2022年10月以降、全国平均で961円(時間額)になります。

「特定(産業別)最低賃金」とは、特定の産業ごとに設定されている最低賃金です。具体的には、産業の労使が、「地域別最低賃金」よりも高い水準で最低賃金を定めることが必要と認めた場合に設定されます。「特定(産業別)最低賃金」を定め、他の産業より高い水準の賃金を設定することで、企業、産業の魅力を高めることができます。
 なお、使用者が「特定(産業別)最低賃金」を下回る賃金しか支払わなかった場合、使用者には上限30万円の罰金が課されます。

「特定(産業別)最低賃金」は、全国で225件あります(※2023年1月現在)。業種ごとに見ると、残念ながら「地域別最低賃金」の水準を下回り、効力を失っているものもあります。

    【2023年】全国都道府県別の最低賃金一覧

  • 北海道 920円
  • 青森 853円、岩手 854円、宮城 883円、秋田 853円、山形 854円
  • 福島 858円、茨城 911円、栃木 913円、群馬 895円
  • 埼玉 987円、千葉 984円、東京1,072円、神奈川 1,071円
  • 新潟 890円、富山 908円、石川 891円、福井888円
  • 山梨 898円、長野 908円、岐阜 910円、静岡 944円、愛知 986円、三重 933円
  • 滋賀 927円、京都 968円、大阪 1,023円、兵庫 960円、奈良 896円、和歌山 889円
  • 鳥取 854円、島根 857円、岡山 892円、広島 930円、山口 888円
  • 徳島 855円、香川 878円、愛媛 853円、高知 853円
  • 福岡 900円、佐賀 853円、長崎 853円、熊本 853円、大分 854円、宮崎 853円、鹿児島 853円、沖縄 853円
  •   

(2)2023年以降も最低賃金の引き上げが予想されます

最低賃金は社会全体に関わる大きな問題です。近年の物価上昇やコロナ禍からの回復を受け、政府も「できる限り早期に全国加重平均 1000 円以上を目指す」方針を掲げています。

しかし、世界と比較してみると日本の最低賃金は国際水準でみれば依然低水準に留まっており、最低賃金が最も高いとされるオーストラリア(21.38豪ドル/約1,984円)は当然として、その他の先進国と比較しても大きく見劣りします。アメリカの最低賃金7.25米ドル(約966円)は一見して日本と同水準にみえますが、実際は州や都市別に最低賃金が定められており、実効最低賃金は11.80米ドル(約1,572円)。チップ文化が浸透している背景もあり、単純比較はできないでしょう。

各国の最低賃金

  • オーストラリア 21.38豪ドル(約1,984円)
  • イギリス 8.91ポンド(約1,442円)
  • ドイツ 10.45ユーロ(約1,425円)
  • フランス 10.25ユーロ(約1,398円)
  • アメリカ 7.25米ドル(約966円)
  • 韓国 9,160ウォン(約940円)
  •   

    最低賃金もさることながら、日本の賃金上昇率は長年停滞しており、その主たる原因は労働生産性の低さにあるとされています。

    GDP(国内総生産;Gross Domestic Product)はその国で創出された付加価値の総和であり、付加価値とは生産過程で新たに加えられた価値のことで、総生産額からコスト(原材料費など)を差し引いたもの、すなわち人件費・利子・利潤・税金の合計になります。それを就業者数で割って算出されるのが、労働生産性です。2020 年の日本の1人当たり労働生産性は78,655米ドル。西欧諸国のなかでも水準が低いイギリス(94,763米ドル)やスペイン(94,552米ドル)にも大きく水を空けられており、アメリカ(141,370米ドル)の56%に相当する数字です。
    結果、OECD(経済協力開発機構) 加盟先進38カ国中28位と、不名誉な順位に甘んじています。

    労働生産性の格差はICT導入率の格差であるとも言われています。

    ICTとは、「Information and Communication Technology」の略で、通信技術を活用したコミュニケーションを意味します。 ICTを活用したシステムやサービスが普及することで、社会インフラとして新たなイノベーションを生むことが期待されています。

    ではICTは、実際にどのような業界や事業で活用されているのでしょうか。社会になくてはならないものとしてSNSや動画サイトなどもICTの一部です。無意識のうちに多くの人が関わっていて、必要不可欠なものとなっています。特に教育分野、介護・医療分野、観光分野では今後さらに進化、発展させていくものです。

    (3)企業に求められるもの

    AIの進化により、人が担える仕事が大幅に減る時代がすぐそこまできているとも囁かれています。ICTへと意識的に目を向け今後発展するであろう業界や職種などの情報が把握できれば、自らの未来や将来も輝かせることも可能です。世の中の流れにのり、事業の発展を目指しましょう。

    しかし、人件費の負担が膨らめば採用コストを割くことが難しくなる可能性があります。さらに現在は時給を高く設定していても、周囲の企業も一律に賃金を上げていけば時給の差別化が難しくなり、採用における競争力が低下してしまいます。そのため新しい人材を採用できなくなります。そして良い人材を獲得するためにさらにコストをかけなければいけなくなります。

    また、扶養範囲内で働く方には、時間を減らさないといけない場合もあります。その結果、労働力が不足することも考えられます。

    労働時間を短縮することで、結果的に事業の縮小につながるケースもあります。企業としてAI化を進めることで事業の効率を高める努力も必要になります。

    経営面だけで考えると、全てが良い方向に進むとは言えません。人件費が上がるが生産性は変わらないことも考えられます。

    ITやICTなどに関係しない企業も多くあります。しかし利便性を求めたときに、ITもICTも生活に欠かせないものになります。次世代ではICTを活用する時代になり、加速度的に普及していきます。物価も上がります。それに見合った所得が増えることは、これからの課題とされていますが、今までと同じでは通用しないことは見えています。

    (4)最低賃金法の違反にはペナルティがあります

    たとえ労使双方が合意して最低賃金よりも低い賃金で契約をしたとしても、例外ではありません。法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとみなされます(最低賃金法4条2項)。最低賃金法に違反した場合、まず最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。もし地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められ、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。

    出来高払いでも最低賃金は適用されます。出来高払制の場合、賃金算定期間において出来高払制で働いた総労働時間数で割った金額が、時間当たりの換算額となります。

    試用期間中でも基本的に最低賃金が適用されます。

    最低賃金は日本だけでなく世界的に社会全体に関わる大きな問題です。
    物価上昇やコロナ禍からの回復を受け、政府も「できる限り早期に全国加重平均 1000 円以上を目指す」方針を掲げています。
    2023年以降も最低賃金の引き上げが予想されます。今後はさらに人員配置や生産効率、収益改善などの取組みが重要になっていくと思われます。

    会社の未来にどこまでも必要な人の力と、コンピューターで自動化された技術が関わるのか。今までの常識が変わってしまうのだと思います。最低賃金が上がることを喜ぶ従業員を、どこまで雇用できるのか。双方に真剣に考えないといけない時代になりました。