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公開日:2026.10.26

更新日:2026.10.26

日銀の利上げだけでは解決しない|中小企業の資金繰りと資金調達をどう見直すか

「日銀の利上げだけでは解決しない」のタイトルと、金利上昇グラフや書類を前に資金繰りを考える経営者を描いたアイキャッチ画像
三坂 大作
執筆・解説三坂 大作
ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・常務取締役

東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
さらにニューヨーク支店にて国際金融業務も経験し、法務と金融の双方に通じたスペシャリストとして、30年以上にわたり中小企業・個人事業主の“実行型支援”を展開。貸金業務取扱主任者。

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東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
さらにニューヨーク支店にて国際金融業務も経験し、法務と金融の双方に通じたスペシャリストとして、30年以上にわたり中小企業・個人事業主の“実行型支援”を展開。貸金業務取扱主任者。

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日銀の利上げを聞いて、まず「借入金の利息はこれからいくら増えるのか」と考えた経営者は多いでしょう。借入残高が大きい会社ほど、金利の変化は気になります。

しかし、中小企業の資金繰りを考えるうえでは、利息の増加だけを計算しても、今回の変化を十分に捉えたことにはなりません。

仕入価格が上がる。人件費が増える。値上げによって売上高は増えても、売上代金の入金までに必要なお金も膨らむ。こうした変化が重なると、利益が出ている会社でも、手元資金が減ることがあります。

インフレ時代に見直すべきなのは、借入金利だけではなく、事業を動かすためのお金の流れです。「どこなら借りられるか」を探す前に、なぜ資金が必要なのか、いつ、いくら必要なのか、何を原資に返すのかを整理する。その順番が、調達後の経営を左右します。

2026年9月の日銀の利上げをきっかけに、企業の借入金利、増加運転資金、返済原資への影響を分けて考えます。経営者が今確認すべき数字と、慌てて決めなくてよいことを整理します。

▼ この記事で分かること

  • 金利の影響利上げが借入金利に与える影響と確認すべき契約条件
  • 増加運転資金インフレで黒字でも資金不足が起こる理由
  • 返済原資売上高と返済可能な資金の違い、金融機関への説明方法
  • 資金調達の順番3〜6か月先の資金繰りを踏まえた調達手段と出口設計

日銀は政策金利を1.25%へ|中小企業が先に見直すべきこと

結論:日銀の利上げを受け、まず確認したいのは金利予想ではなく、仕入れ・回収・返済を含む資金計画の前提が今も通用するかどうかです。

日本銀行は2026年9月18日の金融政策決定会合で、無担保コールレート(オーバーナイト物)を従来の1.0%程度から1.25%程度で推移させる方針を決定しました。新たな金融市場調節方針の適用は9月24日からです。

日銀は物価の上振れリスクを意識する一方、利上げ後も金融環境は緩和的な状態にあると説明しています。この決定の3日前、9月15日付の米紙『ニューヨーク・タイムズ』は、アベノミクスの形成に関わった浜田宏一氏らの金融・財政政策に対する認識の変化を報じました。

デフレや円高への対応として設計された政策を、物価上昇や円安が課題となる環境でどこまで続けるべきか。記事が示したのは、経済環境の変化に応じて政策の考え方も問い直されているということです。もっとも、金融・財政政策の方向性について専門家や政策関係者の見解が一致しているわけではありません。

ここから中小企業が学べるのは、アベノミクスへの賛否そのものではありません。経営の前提が変わったとき、かつて有効だった資金調達や価格設定の方法を、そのまま続けてよいのかという問いです。

低金利が長く続き、仕入価格も比較的安定していた時期には、前年と同じ売上規模であれば運転資金も大きく変わらないと考えやすい面がありました。しかし、仕入価格、賃金、金利が同時に動く局面では、前年の資金計画を延長するだけでは不足を見落としかねません。

日銀の利上げだけでは、物価高や人手不足は解決しない

結論:利上げは物価の安定に働きかけますが、原材料の供給制約や人手不足を直接解消するものではありません。自社の改善策も必要です。

利上げは資金需要や物価上昇期待に働きかける一方、それ自体が中小企業の人材を増やしたり、生産設備の能力を高めたりするわけではありません。

また、金利差は為替を動かす要因の一つですが、利上げをすれば必ず円高になり、輸入原材料が安くなるとも限りません。海外金利、資源価格、国際情勢なども影響するためです。

したがって、「いずれ物価が落ち着く」「円高になれば仕入価格が戻る」という期待だけで資金計画を組むことには慎重さが必要です。

国の政策においても、当面の負担を緩和する対応と、生産性や供給力を高める中長期の対応は役割が異なります。企業経営でも同様です。今月の資金不足を埋める対策と、半年後にも同じ不足が起こる原因を改善する対策を分けて考えなければなりません。

政策の効果を待つことと、自社で変えられる取引条件や収益構造を見直すことは別です。経営者が先に着手できるのは、後者の方でしょう。

インフレで運転資金が増える|黒字でも資金不足が起こる理由

結論:物価上昇で仕入額が増えれば、取引量や利益が変わらなくても、回収までの期間を支える増加運転資金が必要になることがあります。

インフレによる資金繰りへの影響を考える際には、仕入価格の上昇だけでなく、仕入代金の支払いから売上代金の回収までの時間差に注目する必要があります。この関係を、具体的な数字で確認してみましょう。

計算例|仕入代金の上昇で増える運転資金

毎月の仕入代金が1,000万円から1,200万円に増えた会社を考えてみます。仕入代金を先に支払い、対応する売上代金を2か月後に回収すると仮定します。

仕入量や支払・回収条件が変わらない場合、毎月の仕入支出は200万円増加し、その増加分を回収までの2か月間、立て替える必要があります。

① 毎月の仕入支出増加額
1,200万円-1,000万円=200万円

② 増加運転資金の目安
200万円×2か月=400万円

この条件では、従来と同じ取引を続けるために必要な運転資金が、単純計算で約400万円増えることになります。

これは、赤字を補うためのお金とは限りません。同じ数量の商品を仕入れ、同じ取引を継続するためにも、以前より多くの現金が必要になるということです。

ただし、実際の増加運転資金は、在庫の回転、仕入代金の支払条件、売掛金の回収時期などによって異なります。400万円という金額は、あくまで条件を単純化した計算例です。売上債権・在庫・仕入債務を使った基本的な計算方法は、増加運転資金の計算方法と対応策で詳しく解説しています。

販売価格を引き上げて採算を維持できていても、値上げ後の売上代金が入るまでには時間があります。その間、仕入代金、給与、外注費が先に出ていけば、利益と現金残高が異なる方向に動くことがあります。

金融機関へ相談するときも、「物価が上がっているので運転資金が必要です」という説明だけでは、必要額や資金が不足する時期を把握しにくいでしょう。増加運転資金の必要性を説明するには、次の5つのポイントを整理しておくことが重要です。

増加運転資金を説明するための5つの確認ポイント
仕入単価の上昇 何の仕入価格が、いつから、何%上昇したのか
仕入支出の増加 仕入数量の変化も含め、毎月の支払額がいくら増えたのか
販売価格への転嫁 販売価格をいつ、どの程度改定できるのか。実施済み・合意済み・交渉中を区別する
支払いと回収の時間差 仕入代金の支払いから売上代金の入金まで、何日かかるのか
不足時期と必要額 どの月にいくら不足し、どの入金で資金不足を解消できる見込みなのか

これらを資金繰り表や仕入明細、売上・入金予定などの資料と照合することで、増加運転資金が必要となる理由と金額を、具体的な根拠に基づいて説明しやすくなります。

説明が明確になることと融資が承認されることは別ですが、少なくとも審査に必要な資金使途と金額の根拠を示しやすくなります。

売上高が増えても、返済原資が増えるとは限らない

結論:値上げで売上高が増えても、粗利益や手元資金が減ることがあります。返済能力は売上の伸びではなく返済原資から確認します。

販売数量が変わらなくても、値上げによって売上高は増えます。しかし、仕入原価などが値上げ分以上に増えれば、粗利益はむしろ減る場合があります。さらに、人件費などの経費負担が増えれば、借入返済に充てられる資金も圧迫されます。

例えば、月商2,000万円、粗利率30%の会社が、値上げで売上高を増やしても原価上昇によって粗利率が25%に下がれば、次のような変化が起こります。

売上高と粗利益の比較(説明用の仮定)
項目 値上げ前 値上げ後
売上高(月商) 2,000万円 2,200万円
粗利率 30% 25%
粗利益(月額) 600万円 550万円

この例では、売上高が200万円増えた一方、粗利益は50万円減っています。売上高の伸びだけで返済余力の増加を判断しないことが重要です。

この状態で「売上が増えたから借入返済も増やせる」と考えると、資金計画を誤るおそれがあります。まず粗利益と、人件費や家賃などの経費を反映した利益を確認します。そのうえで、減価償却費などの現金支出を伴わない費用、税金の支払い、設備投資、売掛金や在庫の増減を考慮し、実際に借入返済へ充てられる現金を見積もる必要があります。

損益計算書の利益と、返済に使える現金は一致しません。在庫や売掛金が増えれば、利益が出ていても資金は事業の中にとどまります。

金融機関への説明も、「売上は順調です」で終わらせず、「価格改定後の粗利はいくらか、回収はいつか、返済に回せる資金はいくらか」までつなげることが重要です。

金利が0.25ポイント上がると利息はいくら増える?

結論:金利上昇による支払利息は、借入残高と適用金利の見直し条件で変わります。政策金利の上昇幅を既存借入れに直結させないことが重要です。

金利が上昇した場合、企業の利息負担はどの程度変わるのでしょうか。借入残高と適用金利を使い、具体的な金額で確認してみましょう。

借入残高5,000万円の適用金利が年0.25ポイント上昇し、残高が1年間変わらないと仮定すれば、年間利息の増加は12万5,000円です。

ただし、これは説明用の単純計算です。実際には元金返済による残高減少、金利の見直し時期、固定・変動の別、契約条件によって負担額が変わります。

企業の借入金利が政策金利と同じ1.25%になるわけでもありません。金融機関ごとの条件、信用状況、返済原資、担保・保証の有無などによって適用金利は異なります。

一方、金利だけを見て借入条件を決めるのも適切ではありません。同じ金額を借りても、元金均等返済などでは返済期間が短いほど毎月の元金返済負担が大きくなります。

期間を延ばせば月次資金繰りは緩和されても、条件によっては利息総額が増える場合があります。金利、返済期間、月々の返済額、総支払額、担保・保証、手数料などを合わせて確認すべきです。

前述の400万円は回収までに必要となる立替資金であり、ここで示した年間12万5,000円は支払利息の増加額です。性質と時間軸が異なるため、金額の大小だけで資金調達の優先順位を判断することはできません。

ここで明確にしたいのは、目的が「支払利息の削減」なのか、「当面の月次資金繰りの安定」なのかという点です。金利が上がったからといって、必要な投資や資金相談まで一律に止める必要はありません。逆に、低金利という理由だけで、返済計画に無理のある借入れを選ぶべきでもありません。

三坂大作
執筆者|三坂大作のコメント金利上昇による利息負担と、仕入れ・回収の時間差で必要になる運転資金は、性質の違う問題です。
金利の数字だけで判断せず、「いつ資金が必要なのか」「何を原資に返すのか」「毎月の返済に無理がないか」を整理することが、資金調達の判断では重要です。

影響を受けやすい会社と、投資を検討できる会社は異なる

結論:利上げとインフレへの対応は一律ではありません。回収期間、価格転嫁の進み方、借入残高、利益率によって優先すべき行動が変わります。

注意が必要なのは、仕入れや外注費の支払いから売上代金の回収までの期間が長い会社です。建設業や受注製造業などでは、受注が増えるほど材料費・外注費が先行し、資金需要が膨らむ場合があります。

長期の固定価格契約を結んでいる会社や、主要取引先への依存度が高い会社では、コストが上がっても販売価格へすぐに反映できないことがあります。借入残高が大きく、返済後に残る現金が少ない会社では、利息負担に粗利率の低下や回収遅延が重なることを警戒する必要があります。

反対に、価格改定が進み、継続受注と利益を確保できている会社では、省力化や生産能力の改善に向けた投資を検討できる場合があります。2026年版中小企業白書も、価格転嫁や成長投資による付加価値の増加と、AI活用・デジタル化などによる労働投入量の最適化を重要な方向性として示しています。

ただし、機械やシステムを導入しただけで人件費が減るわけではありません。削減できた作業時間を売上増に結びつけられるのか、外注費や残業代を抑えられるのか、導入・保守費用を回収できるのか。投資効果は、稼働状況と実際の入出金を使って検証する必要があります。

守りを優先すべき会社と、投資機会を検討できる会社を分けるものは、景気への印象ではなく、資金繰りと返済原資の見通しです。

銀行融資の相談では「今の経営実態」を資料で示す

結論:金融機関には、前期決算だけでなく、価格改定後の粗利、直近の回収状況、返済見通しを整合した資料で示す必要があります。

前期決算では利益が出ていても、今期に仕入価格や人件費が上がって収益が悪化している会社があります。反対に、前期は厳しくても、価格改定や不採算取引の見直しによって改善が進んでいる会社もあります。変化が大きいときほど、古い数字だけでは現状を説明できません。

直近の試算表、売掛金・買掛金の明細、在庫の状況、借入一覧、受注資料、資金繰り表などを揃え、決算後の変化を整理します。

価格改定についても、「交渉しています」と「合意済みで来月の納品分から適用されます」では、見通しの確かさが異なります。実施済み、合意済み、交渉中を区分し、それぞれ売上や粗利益にいつ反映されるかを示す方が、計画の前提を伝えやすくなります。

資料は新しければよいわけでもありません。試算表の売掛金残高、請求書、入金予定表、通帳の入金履歴が、時期と金額の両面でつながっていることが大切です。差異があれば、締め日、計上時期、相殺、返品、未収などの理由を確認します。

資料の鮮度と整合性は、単なる事務作業ではなく、経営の現在地と将来の返済可能性を説明するための材料です。整った資料が融資の承認を保証するわけではありませんが、資金需要と返済計画の検討には欠かせません。

資金調達は「不足の原因」と「必要な期間」で選ぶ

結論:一時的な回収遅延、増加運転資金、設備投資、恒常的な赤字では、必要額が同じでも選ぶべき調達手段と出口が異なります。

最初に確認したいのは、資金が不足する理由です。仕入価格の上昇によって継続的に必要な運転資金が増えたのか。大口受注への対応で、入金前の支払いが一時的に増えたのか。設備投資の効果が出るまで資金が必要なのか。それとも、赤字が続き、毎月現金が減っているのかを分けます。

資金不足の原因ごとに、確認すべきことと検討の方向性を整理すると、次のようになります。

資金不足の原因と検討の方向性
資金不足の原因 検討の方向性
継続的な増加運転資金 売上・仕入れの循環と回収期間に合う資金調達を金融機関と検討する。
大口受注などによる支払い先行 入金の確度と時期を確認し、必要な期間に応じた資金手当てを検討する。
設備投資 投資効果が現れる時期と、返済開始時期・返済期間の整合性を確かめる。
恒常的な赤字 当面の支払いへの対応と並行して、収益構造や既存借入の返済計画を見直す。

表は判断の出発点です。実際の選択に当たっては、必要額だけでなく、資金が必要な時期と入金・返済の見通しを確認する必要があります。

売掛債権を活用する方法でも、ABLとファクタリングは同じものではありません。ABLは売掛債権等を担保として活用する融資で、返済原資、担保設定・管理、契約条件などの検討が必要です。

一方、ファクタリングは売掛債権を売却して期日前に資金化する手段であり、原則として借入れとは区別されます。個別の契約内容によっては貸金業に該当するおそれがある取引もあるため、契約実態の確認が必要です。

なお、恒常的な赤字を短期資金の調達だけで埋め続ければ、次の資金不足がさらに大きくなるおそれがあります。この場合は資金調達と並行して、粗利率、固定費、不採算取引、既存借入の返済計画を見直す必要があります。

支払いが目前に迫っているときは緊急対応が必要な場合もあります。ただし、その対応と、資金不足が再発する構造を変える取り組みは、別の工程として設計すべきです。

自社の資金不足の原因を整理しても、どの調達手段を優先すべきか判断が難しい場合があります。銀行融資、制度融資、売掛債権の活用など、複数の選択肢を比較・検討する際には、資金調達エージェントの支援内容も参考にしてください。

制度選定や資料整理、申請準備などの支援範囲と報酬条件は、個別の契約内容により異なります。

ファクタリングなどの短期資金化は「出口」まで考える

結論:短期資金化は入金日を前倒しする手段です。将来の回収資金への影響と費用を確認し、確保した時間の使い道を決めておく必要があります。

売掛金の入金までの期間を短縮することが、事業継続に役立つ局面はあります。確定している支払いを守り、大口受注を継続するために、短期資金が必要になることもあるでしょう。

売掛債権を売却して資金を前倒しで受け取った場合、その債権の回収予定額を、自社が自由に使える資金として再度計上することはできません。2者間ファクタリングでは、売掛先から入金された代金を契約に従って買取会社へ送金する場合もあります。

手数料等の費用と翌月以降の入出金を資金繰り表に反映し、支払いに支障が生じないか確認する必要があります。

例えば、額面500万円の売掛債権をファクタリングで売却する場合、手数料などを差し引いた資金を前倒しで得られますが、対応する売掛債権は譲渡されます。将来の入金予定の変化と費用負担を反映した資金繰り表を作り、取引の利益がどの程度残るかを確認することが重要です。

短期の資金化で確保した時間を、何に使うのか。価格改定を実行するのか、滞留売掛金の回収を進めるのか、不採算取引を見直すのか、既存借入の返済方法を金融機関と相談するのか。行動と期限を決めておくことが大切です。

ファクタリングからビジネスローンやABLなどの融資型ファイナンスへ切り替える「ファクタリングからの借り換え」を検討する場合も、実現することを前提に資金計画を組むべきではありません。融資では、売掛金の回収見込みだけでなく、事業全体の財務状況や返済可能性などが審査されます。

融資への切り替えを安易に見込まないことに加え、ファクタリング自体の費用負担にも注意が必要です。金融庁も、次のように注意喚起しています。

金融庁 注意喚起より

金融庁は、ファクタリングについて、高額な手数料や大幅な割引率による契約を締結した場合、かえって資金繰りが悪化し、多重債務に陥る危険性があると注意喚起しています。

本記事の実務上の確認ポイントとして、資金化の早さだけで判断せず、手数料等を差し引いた実際の受取額や、翌月以降の資金繰りへの影響まで確認することが重要です。

出典:金融庁|多重債務防止のための注意喚起(高額な手数料によるファクタリングの利用に関する注意喚起)

補助金を使う投資も、入金までの資金繰りを確認する

結論:補助金は投資負担を軽減する選択肢ですが、設備導入の必要性と、補助金が入る前の支払資金を別々に検討しなければなりません。

インフレへの対応として、省力化、省エネ、デジタル化に投資する会社もあるでしょう。補助金は、その費用の一部を支える選択肢になり得ます。ただし、投資の出発点を「補助金が使えるから」に置くことには注意が必要です。

設備を導入することで何を改善するのか。効果が出るのはいつか。保守費、利用料、教育時間、導入による一時的な稼働低下を含めても、採算は合うのか。まず事業上の必要性を判断します。

補助金を利用する場合は、対象となる経費だけでなく、申請から入金までの手続きと資金の流れを確認する必要があります。特に、次の5つのポイントを整理しておくことが重要です。

補助金を利用する前に確認したい5つのポイント
補助対象経費 導入する設備やシステム、関連費用のうち、何が補助対象となるのか
交付決定と発注時期 いつから契約・発注が認められるのか。交付決定前の契約・発注が対象外とならないか
支払いの条件 対象経費の支払期限や支払方法、必要な証憑書類にはどのような条件があるのか
実績報告・額の確定 事業完了後に必要な報告・確認手続きは何か。補助金額はいつ確定するのか
入金時期・資金手当て 補助金はいつ入金されるのか。それまでの支払いを自己資金や借入資金で賄えるのか

補助金の対象条件や手続きは制度・公募回によって異なります。交付決定前の契約・発注が対象外となる制度や、事業完了後の精算払いとなる制度もあるため、必ず該当する公募要領を確認する必要があります。

採択されない場合、補助金額が申請時の想定を下回る場合、入金時期が想定より遅れる場合も見込んでおきます。補助金による投資負担の軽減と、日々の支払いを守る資金繰りは別の課題です。

経営者が今確認すべきこと・慌てなくてよいこと

結論:今優先するのは3〜6か月先の入出金確認です。金利予想だけを根拠に借り換えや投資中止を決める必要はありません。

今確認すべきこと|資金が不足する時期と原因

金利の先行きを予想する前に、まず次の4項目を順番に確認します。

  • 経営者が確認する4つの順番
  • 013〜6か月先の資金繰り
  • 02借入条件と返済予定
  • 03売掛金の回収見通し
  • 04条件悪化時の資金繰り試算

まず、今後3〜6か月の資金繰り表に、入金予定と支払予定を並べます。設備投資や大口の借入更新がある場合は、さらに先まで確認します。月中に資金が不足する可能性がある会社では、月末残高だけでなく、週単位や主要支払日ごとの残高も見ておく必要があります。

次に、借入先、残高、適用金利、金利見直し時期、返済額、最終期日、担保・保証を一覧にします。これにより、金利負担だけでなく、特定の月への返済集中や、更新・借り換えを相談すべき時期を把握できます。

売掛金については、金額だけでなく回収の確かさを確認します。主要売掛先への依存度、検収の未了、請求内容の協議、入金遅延があれば、予定どおり回収できる場合と、遅れる場合を分けて試算します。

そのうえで、価格改定が1か月遅れた場合、主要売掛先からの入金が1か月遅れた場合、借入金の適用金利がさらに上がった場合を試算します。複雑な予測モデルを作ることよりも、どの条件で現金残高が不足するかを把握する方が、次の対応を判断しやすくなります。

資金不足が見込まれる月と金額が明らかになったら、入金予定の確度や支払時期の調整余地を確認します。必要な資金の額と期間を整理し、取引条件の見直しや金融機関への相談をいつ始めるかを決めます。資金繰り表は、不足額を予測するだけでなく、対応の優先順位を判断するための資料です。

慌てて決めないこと|金利だけを理由にした借り換え

利上げがあったからといって、すべての借入れを直ちに借り換える必要があるわけではありません。固定金利の既存借入や、十分な資金余力のある会社まで、同じ対応を急ぐ必要はないでしょう。

反対に、手元資金が薄いにもかかわらず「利上げが落ち着くまで相談しない」と決めることも適切とは限りません。まず現状の契約条件、資金繰りと返済余力を確認し、必要に応じて金融機関や専門家に早めに相談することが重要です。

まとめ|日銀の利上げへの対応は資金繰りの順番から

結論:利上げへの対応は「金利を予想すること」ではなく、必要資金・返済原資・回収予定を確かめ、借りた後も資金が回る状態を設計することから始まります。

日銀の利上げを過度に恐れ、必要な投資や資金相談を一律に止める必要はありません。一方、これまでと同じ条件で借り続けられるという前提にも、頼り過ぎない方がよいでしょう。

インフレ時代には、商品の価格だけでなく、事業を動かすために必要なお金の量も変わります。会社によっては、借入金利の上昇より、粗利率の低下や回収期間の長期化の方が資金繰りへ大きく響く場合があります。

だからこそ、調達手段を探す前に、資金不足の原因、必要額、必要時期、返済原資、回収までの期間を整理することが重要です。短期資金を使う場合も、その資金で確保した時間を、価格改定や利益改善、回収条件の見直しにどう使うかまで考えなければなりません。

日銀の政策判断を自社だけで変えることはできません。しかし、自社のお金の流れを把握し、資料を整え、説明と相談を始めることはできます。経営者が優先すべきなのは、金利の変化への反応に終始せず、借りた後も資金が回り、返済を続けられる経営を設計することです。

MISAKANOMICS — NEXT STEP
利上げ時代の資金調達は、まず『順番』を整理する
金利の上昇だけでなく、仕入れ・入金・返済の時間差にも目を向ける。
増加運転資金はいくら必要か。いつ、何を原資に返せるか。
銀行融資・制度融資・売掛債権の活用など、選択肢を順番から整理しましょう。
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本記事は、当サイトのコンテンツポリシーに基づき、ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・三坂大作が執筆し、資金調達顧問・丹下浩一が監修しています。

丹下 浩一
専門監修丹下 浩一
ヒューマントラスト株式会社 資金調達顧問

早稲田大学理工学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。法人営業・国際業務・市場営業・支店長・内部監査を歴任し、退職後は事業会社にて経営企画・業務統括責任者を経験。銀行の審査側の論理と事業会社経営の実情の双方に通じた資金調達のスペシャリストとして、中堅中小企業の"実行型支援"を展開。

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