公開日:2026.09.23
更新日:2026.09.23
2026年の「気候不順の夏」を中小企業はどう読むべきか|猛暑・少雨・豪雨を経営判断に変える

東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
さらにニューヨーク支店にて国際金融業務も経験し、法務と金融の双方に通じたスペシャリストとして、30年以上にわたり中小企業・個人事業主の“実行型支援”を展開。貸金業務取扱主任者。
東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
さらにニューヨーク支店にて国際金融業務も経験し、法務と金融の双方に通じたスペシャリストとして、30年以上にわたり中小企業・個人事業主の“実行型支援”を展開。貸金業務取扱主任者。
2026年の夏を「暑かった夏」とだけ捉えると、中小企業経営にとって重要な点を見落とします。気象庁によると、2026年夏の日本の平均気温は平年比+1.02℃で、1898年の統計開始以降5番目の高さでした。
一方、西日本の夏平均気温は1946年以降で3番目に高く、九州北部地方の8月の降水量は1946年以降で最少となりました。東日本太平洋側では、台風や「令和8年8月千葉豪雨」による記録的な大雨も発生しています。
つまり今年の特徴は、全国一律に「さらに暑くなった」ことではありません。西では高温・少雨、東では大雨。さらに台風、物流の寸断、農産物の生育不良、屋外作業の生産性低下など、性質の異なる気象リスクが、場所と時期を変えて企業活動に入り込んできたことにあります。
経営者に必要なのは、来年の天気を正確に当てることではありません。重要なのは、高温・少雨・豪雨のどこへ振れても、売上・原価・稼働時間・資金繰りへの影響を把握し、事業を止めにくい状態をつくることです。
本記事では、2026年夏に何が起きたのかに加え、中小企業が何を確認し、来年までにどこを見直し、どこまで資金計画に反映すべきかを整理します。
▼ この記事で分かること
- 気象の特徴2025年と2026年の夏は何が違ったのか
- 経営への影響気候不順が売上・原価・人員・物流へどう波及するのか
- 自社の確認自社がどの程度気候の影響を受ける会社なのかをどう確認するか
- 投資・資金繰り設備投資や3~6か月先の資金繰りをどう考えるか
2026年夏の本当の特徴は「暑さ」より気象リスクの振れ幅にある
結論:2026年夏は「記録的猛暑の夏」と一括りにするより、高温・少雨・豪雨といった異なるリスクが地域ごとに現れた夏として捉える方が、経営判断には適しています。
日本全体の夏平均気温で比べると、2026年は2025年を上回る暑さではありませんでした。
| 年 | 日本の夏平均気温 |
|---|---|
| 2025年夏 | 平年との差:+2.36℃ 1898年の統計開始以降:最も高い |
| 2026年夏 | 平年との差:+1.02℃ 1898年の統計開始以降:5番目の高さ |
しかし、地域別に見ると様子は大きく異なります。
| 地域 | 2026年夏に起きたこと |
|---|---|
| 西日本 | 夏平均気温が1946年以降で3番目の高さ。梅雨明け後は少雨が続き、九州北部地方の8月の降水量は1946年以降で最少 |
| 東日本太平洋側 | 降水量がかなり多く、台風第15号や「令和8年8月千葉豪雨」により、千葉県では日降水量の観測史上最高を更新した地点も |
| 全国 | 最高気温40℃以上の「酷暑日」を22地点、延べ36地点で観測 |
なお「酷暑日」は、2026年4月に気象庁が正式に定めた名称です。
西では水不足を心配し、東では水害を心配する。同じ日本の同じ夏に、その両方が起きたのです。今後の中小企業経営では、「夏は暑くなる」という一方向の想定だけでは足りません。
会社に入ってくる気象リスク
- 高温になる
- 雨が降らない
- 突然まとまった雨が降る
- 台風で物流が止まる
- 農産物の供給が不安定になる
- 冷却や空調の電力使用量が増える
- 屋外で働ける時間が短くなる
こうした複数のリスクが、異なる場所と時間から会社に入ってくることを前提に考える必要があります。
なぜ2026年夏は極端だったのか|今年の原因と来年の予測は分けて考える
結論:2026年夏の気象要因は分析できますが、それを「2027年も同じ天候になる」という予測に置き換えるべきではありません。
気象庁は、2026年夏の特徴について、複数の要因が関係したと分析しています。主なポイントは次のとおりです。
| 主な要因 | 偏西風の大きな蛇行、高気圧の停滞、顕著なエルニーニョ現象など |
|---|---|
| 海面水温 | 7月に太平洋赤道域東部の基準値との差が+2.5℃。1997年と並び、7月として過去最大 |
| 西日本の高温 | 7月中旬~8月上旬の高温は、イベント・アトリビューション解析で、地球温暖化がなかったと仮定した場合には「ほぼ発生し得ない」とされる |
| 夏の台風発生数 | 2026年夏(6~8月)は17個。平年値11.0個を上回り、1951年の統計開始以降で3位タイ。顕著なエルニーニョ現象が影響した可能性も指摘されている |
ただし、経営判断で重要なのはここから先です。「今年こうだったから、来年も同じになる」とは限りません。
- 高温だった場合
- 少雨だった場合
- 豪雨だった場合
経営者が行うべきなのは、特定の気象シナリオを当てにいくことではなく、こうした複数のケースを持っておくことです。

異常気象・気候不順は中小企業経営のどこに影響するのか
結論:業種によって入口は違っても、影響は最終的に売上、粗利益、稼働時間、運転資金のいずれかに表れます。
企業側の実感にも、すでに影響は表れています。帝国データバンクが2026年7月10~14日に全国1,194社を対象に実施したアンケートでは、猛暑日・酷暑日に「業務上の支障が出た」と回答した企業は50.0%でした。
業界別では建設が73.6%、農・林・水産が66.7%と高く、企業の87.8%が最近1~2年以内に猛暑・酷暑への対策を強化・拡充しています。
気候不順の影響の出方は、会社によって異なります。大切なのは、「異常気象だから何となく不安だ」で止めず、自社ではどの数字が動くのかまで落とし込んで考えることです。業種ごとに見るべきポイントは次のとおりです。
| 業種 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 農業・食品 | 仕入価格だけでなく「調達できるか」 |
| 建設・運送・屋外作業 | 猛暑・熱中症対策を「原価」として |
| 物流 | 「商流のどこが止まるか」 |
| 製造・倉庫 | 「品質を維持するためのコスト」 |
| 小売・飲食 | 売上の増減より時間帯 |
| 観光・宿泊 | 全国統計ではなく自社の内訳 |
農業・食品|仕入価格だけでなく「調達できるか」を見る
農林水産省の2026年8月の野菜価格見通しでは、高温等の影響により、ほうれんそう、きゅうり、トマトなど複数の品目で生育や出荷への影響が示されました。
一方、9月になると状況は品目によって分かれています。きゅうりやトマトは前半に平年をやや上回る価格が見込まれた一方、レタス、ばれいしょ、たまねぎなどは平年を下回る見通しとなりました。
「気候不順=食品価格が一律に上昇する」わけではありません。影響は品目、産地、時期によって異なります。
食品製造、飲食、給食、小売などでは、主要原材料について少なくとも次の項目を整理しておく必要があります。
- 通常の仕入価格
- 価格上昇時の採算ライン
- 代替産地
- 代替原料
- 調達リードタイム
単価だけでなく、「必要量を予定どおり確保できるか」まで含めて見ることが重要です。
建設・運送・屋外作業|猛暑・熱中症対策を「原価」として見る
WBGT28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えて行うことが見込まれる作業について、熱中症の重篤化を防ぐための体制整備、手順の作成、関係者への周知が事業者に求められています。
したがって、次のような対応は単なる福利厚生ではありません。工程管理と原価管理の問題です。
- 朝の作業を増やす
- 昼間の屋外作業を減らす
- 休憩を増やす
- 交代要員を配置する
- 冷却設備を設置する
休憩を増やせば、一人当たりの実働時間が短くなる場合があります。交代要員を増やせば人件費が上がり、工期を維持するために外注や残業が増えることもあります。それにもかかわらず見積原価が過去の夏と同じままでは、利益率を圧迫する可能性があります。
| 2025年5~9月 | 全国で100,510人(2008年の調査開始以降で最多) |
|---|---|
| 2026年9月7~13日 | 1週間だけで752人 |
建設、設備、警備、運送、農業などでは、今後「夏季の生産性低下分」を見積原価にどう織り込むかが重要になります。
物流|「自社が被災するか」ではなく「商流のどこが止まるか」を見る
豪雨や台風で影響を受けるのは、自社の工場や店舗が直接被災した会社だけではありません。材料が届かない、商品を出荷できない、従業員が出勤できない、顧客へ納品できない――こうした形でも事業に支障が生じる可能性があります。
中小企業では、BCPというと大規模な計画書を想像しがちですが、私はもっと実務的に考えてよいと思います。最低限、次の程度まで決めておくだけでも対応の速さは変わります。
- 01主要仕入先が3日止まったらどうするのか
- 02主要道路が使えなければ別ルートはあるか
- 03配送拠点が使えなければどこから出荷するか
- 04社員の3割が出勤できなければ、どの業務を止めるか
BCPをもう一段具体化したい場合は、中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」も参考になります。中小企業の実情を踏まえ、重要業務、代替手段、復旧までの対応などを平時に整理するための考え方や様式が示されています。
最初から大規模な計画書を作るのではなく、自社に必要な範囲から整理する際の材料として使えます。
製造・倉庫|電気代より「品質を維持するためのコスト」を見る
食品、化学品、精密機器、電子部品などでは、温度管理そのものが品質に関わります。その場合、確認すべきなのは「今年の電気代がいくら増えたか」だけではありません。
あわせて確認したいこと
- 外気温が高い日に冷却能力が不足していないか
- 設備停止や温度逸脱が増えていないか
- 廃棄率や不良率が上がっていないか
- 予備設備や非常電源が必要ではないか
業種によっては、冷却設備は単なる快適設備ではなく、品質保証設備です。ここは分けて考える必要があります。
小売・飲食|「売上が増えたか減ったか」より時間帯を見る
猛暑で需要が増える商品がある一方、昼間の外出が減れば、店舗の来客数が減ることも考えられます。したがって、「猛暑だった月の売上」だけを見るのではなく、次のように分解して確認します。
- 35℃以上の日とそれ以外の日
- 11~15時と17時以降
- 店頭とEC
- 店内飲食とデリバリー
昼の売上が落ちても、夕方以降やECが伸びているなら、営業時間、人員配置、販促時間、仕込み時間を変える余地があります。気候に合わせて営業モデルを調整するという考え方です。
観光・宿泊|全国統計だけで「暑さの影響」を決めつけない
| 指標 | 数値 | 読み方の注意 |
|---|---|---|
| 訪日外国人数(2026年7月) | 344万2,100人(前年同月比0.1%増) | - |
| 訪日外国人数(2026年8月) | 309万8,900人(前年同月比9.6%減) | JNTOは、旅行需要の季節性や航空便の減便、台風による欠航など複数の要因を挙げている |
| 延べ宿泊者数(2026年7月) | 5,467万人泊(前年同月比3.5%減) | 2026年1月から調査方法が変更されており、観光庁自身が前年比にはその影響が含まれる可能性があると注意している |
したがって、全国統計だけでは「猛暑だから観光客が減った」とも、「猛暑でも観光需要には影響しない」とも判断できません。宿泊・観光事業者も、自社について予約経路、時間帯、地域、キャンセル率、客単価を分けて見る必要があります。
最初にやるべきことは、自社の「気象感応度」を数字にすること
結論:大規模な設備投資を考える前に、2026年夏に自社の売上・原価・稼働が天候によってどの程度動いたのかを数字にすることが先です。
私は、今年のような夏があったからといって、すべての企業がすぐに大規模な設備投資を行う必要があるとは考えていません。まず、自社が気象条件にどの程度反応する会社なのかを確認するべきです。
本稿で便宜上用いる呼び方です。公的な指標ではなく、自社の経営管理に使うための考え方です。
例えば2026年6~8月について、次の項目を通常時と比較します。
- 35℃以上の日の売上
- 時間帯別売上
- 電気使用量・電気料金
- 残業時間
- 欠勤者数
- 現場の実働時間
- 主要原材料の仕入価格
- 廃棄率・不良率
- 配送遅延件数
大切なのは、「今年は暑かったから大変だった」で終わらせないことです。
– 感覚ではなく金額と比率で –
「35℃を超えると実働時間が平均何%落ちるのか」「主要原材料が10%上がった場合、月間粗利益はいくら減るのか」まで数字にする。そこまで分かれば、対策に使う金額も決めやすくなります。
資金繰りは「売上減」ではなく入金減と支出増が重なるところを見る
結論:気候不順で最も注意したいのは、売上や入金が減る時期に、修理費・代替費・仕入増などの追加支出が重なることです。
例えば、豪雨によって営業を停止したとします。
豪雨で営業を停止した場合
- 売上が減る
- 商品を廃棄する
- 設備を修理する
- 別拠点を借りる
- 配送費が増える
- 従業員の給与は支払う
- 借入金の返済も続く
このとき会社を苦しくするのは、損益だけではありません。「入金が減る時期」と「支出が増える時期」が重なることです。




例えば、次のようなケースです。
| 想定ケース | 確認すること |
|---|---|
| 1か月売上20%減 | 固定費・返済後の現預金残高 |
| 原材料価格10%上昇が3か月継続 | 粗利益と必要運転資金 |
| 設備修理300万円 | 一時支出後の資金余力 |
| 入金が1週間遅延 | 支払日との資金ギャップ |
| 現場稼働時間20%減 | 売上・外注費・残業費への影響 |
– 自社にとって現実的な条件を置く –
20%、10%、300万円などの数字は標準値ではありません。条件は、各社が自社にとって現実的な水準で置きます。
重要なのは、影響を損益計算書だけで終わらせず、「3か月後に現金はいくら残るのか」「6か月後まで通常運転を続けられるのか」まで見ることです。
必要運転資金の考え方や見積もり方を整理したい場合は、「運転資金はどのように見積もればいい?考え方のコツ、計算方法をわかりやすく解説」もあわせて確認できます。
設備投資は「防災費」ではなく、必要性・効果・資金使途・返済原資で考える
結論:安全上必要な措置を前提としたうえで、追加の設備投資は「何を改善し、その効果からどう資金を回収するか」まで数字で整理します。
例えば、500万円の空調・断熱設備を導入するとします。「最近暑いから必要」というだけでは、経営判断としては不十分です。次の点まで整理します。
- 01年間電気料金がどの程度変わるのか
- 02作業停止時間を何時間減らせるのか
- 03残業費や外注費はいくら減るのか
- 04廃棄や不良をどの程度抑えられるのか
例えば、次のような数字が出るなら、投資効果を経営判断に使えます。
| 年間電気代 | 80万円削減 |
|---|---|
| 残業費 | 30万円削減 |
| 廃棄損失 | 20万円削減 |
| 稼働停止 | 50時間削減 |
法令や安全確保のうえで必要な熱中症対策を「採算が合わないから実施しない」という意味ではありません。安全上必要な措置と、それを超える追加設備投資の経済性は、分けて判断します。
金融機関へ説明する場合も同じです。
| 説明の仕方 | 設備を入れたい理由だけを伝える | 改善効果と返済原資まで伝える |
|---|---|---|
| 説明の例 | 「暑くなったので空調設備を入れたい」 | 「稼働停止と外注費を減らし、年間の営業キャッシュフローをこれだけ改善し、そのキャッシュフローを返済原資とする」 |
改善効果と返済原資まで示して説明した方が、資金使途と返済原資が明確になります。
運転資金と設備資金など、資金の使い道をどう整理するかは、「資金使途の基本と種類を徹底解説!適切な活用で資金繰りをスムーズに」で詳しく解説しています。




補助金や災害融資は「あるから使う」のではなく、必要性を整理したうえで確認する
結論:支援制度は資金計画を補完する手段です。補助金や融資の存在から設備投資そのものを決めないことが重要です。
| 実施 | 厚生労働省(2026年度) |
|---|---|
| 申請受付期間 | 2026年10月31日まで(予算額に達した場合は、期間途中でも受付を終了する場合あり) |
| 交付 | 申請内容は審査され、すべての申請者に交付される制度ではない |
一方、実際に災害被害を受けた企業については、日本政策金融公庫が災害ごとに特別相談窓口を設置する場合があります。2026年8月13日からの大雨についても、中小企業・小規模事業者等からの融資や返済に関する相談を受け付ける特別相談窓口が設置されています。
「天候が悪かった会社なら利用できる」という意味ではありません。制度ごとの対象要件や被害状況等を確認する必要があります。また、補助制度では発注時期などが要件に関係する場合もあります。
したがって、検討は次の順番で進めるのが基本です。
- 01投資の必要性を確認する
- 02必要金額を算定する
- 03資金繰りへの影響を見る
- 04返済原資を確認する
- 05利用できる補助金・融資制度があるか確認する
気候不順の影響を受けやすい会社には共通点がある
結論:気候リスクへの対応力には、業種だけでなく、仕入先・販売チャネル・在庫・手元資金・管理体制も影響します。
影響が大きくなりやすい会社
- 屋外作業の割合が高い
- 生鮮食品や農水産物を多く扱う
- 冷蔵・冷凍設備への依存度が高い
- 電気代が原価に占める割合が高い
- 仕入先が一地域に集中している
- 在庫を大量に持っている
- 納期遅延による損失が大きい
- 売上の季節変動が大きい
- 手元資金が少ない
- 保険の補償内容を長期間見直していない
変化に対応しやすい会社
- 仕入先を分散している
- 販売チャネルが複数ある
- 人員配置を柔軟に変えられる
- 月次試算表が早く出る
- 資金繰り表が常に更新されている
気候リスクへの対応力とは、「天気の影響を受けない会社」であることではありません。変化が起きたときに、早く数字を確認して打ち手を変えられる会社であることです。
今確認すべきことと、慌てて決めなくてよいことを分ける
結論:2026年夏の実績を数字にすることは今やるべきですが、今年の気象だけを理由に、来年の経営計画や大型投資を一方向へ振る必要はありません。
今確認すべきこと
- 2026年夏に自社の売上がどう動いたか
- 粗利益率は変化したか
- 電気代はいくら増えたか
- 実働時間や残業時間はどう変わったか
- 原材料価格や廃棄率はどう変化したか
- 配送遅延は増えたか
- 主要仕入先が一地域に集中していないか
- 災害保険の補償内容は現在の設備・在庫額に合っているか
保険については「加入しているか」だけでなく、水災や休業損失等が補償対象になっているか、免責や支払限度額が現在の設備・在庫・事業規模に合っているかまで確認します。補償内容は契約ごとに異なるため、保険証券・約款等で個別に確認する必要があります。
そのうえで、同じ影響が1か月、3か月続いた場合の資金残高まで確認します。
慌てて決めなくてよいこと
- 「来年も40℃になる」「九州ではまた少雨になる」「千葉では再び同じ豪雨が起きる」といった決め打ち
- 「暑かったから空調を増強する」「災害が怖いから借りておく」といった判断
2026年は、顕著なエルニーニョ現象など、その年固有の条件も重なっています。今年の天候を、そのまま来年の予報として使うべきではありません。投資や借入を判断する前に、先に次の点を確認します。
- 自社がどの程度影響を受けたのか
- 今の設備で何が足りないのか
- 必要資金はいくらなのか
- その投資で何が改善するのか
「今年だけ特殊だったから何もしない」のでも、「来年も同じだから急いで投資する」のでもありません。放置も、急ぎすぎもせず、自社への実際の影響を確認したうえで判断することが大切です。
よくある質問(FAQ)
2026年は日本で最も暑い夏だったのでしょうか?
いいえ。2026年夏の日本平均気温は1898年以降5番目の高さです。ただし、西日本では記録的な高温となるなど、地域差が大きい夏でした。
気候不順の影響を受けやすい業種はありますか?
建設・運送・農業・食品・製造・倉庫などは影響を受けやすい傾向があります。ただし、仕入先や設備、手元資金によって影響度は異なります。
中小企業は最初に何をすればよいでしょうか?
まず、2026年夏の売上、粗利益、電気代、実働時間、仕入価格などを通常時と比較し、自社がどの気象リスクに弱いか確認します。
猛暑対策のために、すぐ設備投資をした方がよいでしょうか?
一律には判断できません。安全上必要な対策を行ったうえで、追加投資は効果・必要資金・資金繰りを確認して判断します。
異常気象に備えるBCPは何から始めればよいですか?
主要仕入先、物流、人員が止まった場合を想定し、優先業務・代替手段・連絡体制から整理するのが実務的です。
まとめ|「天気を当てる経営」から「外れても耐えられる経営」へ
結論:これから必要なのは、来年の天候を言い当てることではありません。想定と違う気象条件になっても、事業と資金繰りを維持できる状態をつくることです。
2026年の夏は、西日本の高温・少雨、東日本太平洋側の大雨、酷暑日や台風など、性質の異なる気象リスクが同じ時期に表れました。重要なのは、今年の天候をそのまま来年の予測に使うことではなく、自社がどの変化に弱いのかを数字で把握しておくことです。
原材料価格が上がった場合、物流が止まった場合、現場の実働時間が減った場合に、売上・粗利益・資金残高がどう動くのか。3か月後、6か月後まで確認しておけば、実際の天候が想定と違っても対応しやすくなります。
資金調達についても同じです。災害や原価上昇が起きてから「いくら借りられるか」を考えるのではなく、平時から試算表、資金繰り表、借入一覧、保険、主要仕入先などを整理し、必要資金・資金使途・返済原資を説明できる状態にしておくことが重要です。
私は、外部環境が不安定になるほど、「どの資金調達手段を使うか」より先に、「何に、いくら必要で、何から返すのかを説明できる状態」をつくることが重要だと考えています。2026年の夏から持ち帰るべきなのは、単に「暑さに備える」ということではなく、予想が外れても動ける余地を経営の中に持つことです。
本記事は、当サイトのコンテンツポリシーに基づき、ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・三坂大作が執筆し、資金調達顧問・丹下浩一が監修しています。
- >気象庁「2026年夏(6~8月)の天候」・「令和8年夏を対象とした異常気象分析検討会の結果」
- >気象庁「日本の夏平均気温」
- >気象庁「最高気温が40℃以上の日の名称を『酷暑日』に決定」
- >帝国データバンク「猛暑・酷暑に関する企業の動向アンケート」
- >農林水産省「野菜の生育状況及び価格見通し(令和8年8月)」
- >農林水産省「野菜の生育状況及び価格見通し(令和8年9月)」
- >厚生労働省・東京労働局「令和7年6月1日施行 改正労働安全衛生規則」
- >総務省消防庁「熱中症情報」
- >中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」
- >JNTO「訪日外客数(2026年7月推計値)」
- >JNTO「訪日外客数(2026年8月推計値)」
- >観光庁「宿泊旅行統計調査」
- >厚生労働省「エイジフレンドリー補助金」
- >日本政策金融公庫「令和8年8月13日からの大雨に伴う災害に関する特別相談窓口」

早稲田大学理工学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。法人営業・国際業務・市場営業・支店長・内部監査を歴任し、退職後は事業会社にて経営企画・業務統括責任者を経験。銀行の審査側の論理と事業会社経営の実情の双方に通じた資金調達のスペシャリストとして、中堅中小企業の"実行型支援"を展開。
早稲田大学理工学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。法人営業・国際業務・市場営業・支店長・内部監査を歴任し、退職後は事業会社にて経営企画・業務統括責任者を経験。銀行の審査側の論理と事業会社経営の実情の双方に通じた資金調達のスペシャリストとして、中堅中小企業の"実行型支援"を展開。







