公開日:2026.06.24
更新日:2026.06.24
中期事業計画策定支援の実績|駐車場運営会社がIPO前に成長ストーリーを整えた理由

東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
さらにニューヨーク支店にて国際金融業務も経験し、法務と金融の双方に通じたスペシャリストとして、30年以上にわたり中小企業・個人事業主の“実行型支援”を展開。貸金業務取扱主任者。
東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
さらにニューヨーク支店にて国際金融業務も経験し、法務と金融の双方に通じたスペシャリストとして、30年以上にわたり中小企業・個人事業主の“実行型支援”を展開。貸金業務取扱主任者。
▼ この記事でわかること
-
実績の主題
駐車場運営会社のIPO準備における中期事業計画・IPO資料・IR計画素案の作成支援 -
整理の順番
IPO準備で、事業計画と成長ストーリーをなぜ先に整えるのか -
事業の見せ方
駐車場運営を、場所貸しではなく成長事業として説明する論点 -
構想の翻訳
経営者の構想を、投資家が検証できるIPO資料へ翻訳する考え方 -
実績の位置づけ
外部説明に耐える資料作成支援の範囲を明確にする視点
IPO準備で問われるのは、経営者の構想をそのまま資料に並べることではありません。投資家、主幹事証券会社、金融機関、事業パートナーが検証できる形で、事業の定義、成長前提、資金使途、収益化の流れを整理することです。
本件は、ある駐車場運営会社のIPO準備に関連し、中期事業計画、IPO資料、IR計画素案の作成を支援した事例です。
ただし、本件は「IPO成功事例」として結果だけを紹介する記事ではありません。三坂大作側の関与は、事業計画、IPO資料、IR計画素案の作成支援までです。
その後の資本市場上の経過は、同社自身の経営判断、主幹事証券会社、関係者の実行、資本市場環境など、複数の要因によるものです。
この記事では、結果の華やかさではなく、IPO前の重要局面で「経営者の独創的な構想を、どのように資本市場向けの説明へ翻訳したのか」を整理します。
相談時点の課題:IR資料作成が進まない背景にあったもの
結論:表面的な課題は資料作成の遅れでしたが、本当の論点は、経営者の構想を外部説明に耐える事業計画へ整理することでした。
同社は、事業構想力のある経営者を中心に、都市部や近郊都市部の駐車需要を捉えた運営事業を進めていた会社です。IPOによる資金調達力と社会的信用の強化を見据え、外部に向けた事業説明の整備が求められていました。
一方で、IPO準備の現場では、IR関連資料の作成が進みにくい状態にありました。
これは、単なる作業遅延ではありませんでした。経営者の事業構想が強く、独自性も高かったため、どの論点を前面に出し、どの順番で説明するべきかを整理する必要があったのです。
成長企業のIPO準備では、こうした状況がしばしば起こります。経営者にとって当然の前提でも、投資家や主幹事証券会社にとっては説明が必要だからです。
経営者の頭の中では一体となった構想でも、外部の関係者は、市場性、競争優位、資金使途、収益計画、内部管理体制、リスク、成長の再現性を分けて確認します。
本件で資料作成が難しかったのは、事業が弱かったからではありません。むしろ、事業構想に独自性があり、一般的な会社説明の枠に収まりにくかったことが、その難しさの正体でした。
表面的な課題と本当の課題
結論:資料を早く作ることではなく、何を成長ストーリーの中心に置くかを決めることが先でした。
表面的には、IR資料やIPO関連資料の作成が進んでいないことが課題でした。IPO準備では、事業計画、成長可能性の説明、会社説明資料、想定問答、投資家向け説明の骨子など、多くの資料が必要になります。
しかし、本件で重く見たのは、単に「資料を早く作ること」ではありませんでした。資料作成の遅れは、あくまで現象です。本当の問題は、同社の成長ストーリーの中心をどこに置くのかが整理し切れていないことでした。
| 見えていた課題 | 本当の論点 | 整理した方向性 |
|---|---|---|
| IR資料やIPO関連資料の作成が進まない | 説明すべき成長ストーリーの中心が定まりきっていない | 事業の定義、成長前提、資金使途、収益モデルの順番を整理する |
| 経営者の構想が強く、資料に落とし込みにくい | 経営者目線の構想と、投資家が検証する論点にずれがある | 独創性を、収益性・再現性・実行体制に接続して説明する |
| 駐車場事業が一見すると単純に見える | 公共性、開発力、独自システム、管理体制の価値が伝わりにくい | 都市インフラ型の成長事業として再構成する |
- 駐車場の拠点数を増やすことを中心に見せるのか
- 車室数や大型物件の拡大を中心に見せるのか
- 長期賃借や自社物件の増加を収益基盤として見せるのか
- 独自システムを競争優位として打ち出すのか
- 公共性・社会性を企業価値の一部として説明するのか
- IPOによる調達資金を、どの成長施策に接続するのか
これらを整理しないまま資料を作ると、説明は散漫になります。会社の魅力は伝わっても、投資判断に必要な材料としては不十分になります。

本当の論点:独創的な事業構想を、検証できる成長モデルへ翻訳すること
結論:本件の本質は、駐車場事業を単なる場所貸しではなく、都市インフラ型の成長事業として説明し直すことでした。
駐車場事業は、一見すると分かりやすいビジネスです。土地を確保し、設備を設置し、利用者から駐車料金を得る。外から見れば、単純な不動産活用型に映るかもしれません。
しかし、本件の会社が目指していたものは、単なる駐車スペースの提供ではありませんでした。都市部や近郊都市部における駐車需要、独自の運営システム、独自設計の駐車場設備、公共性のある社会インフラとしての駐車場整備を組み合わせた成長事業でした。
問題は、その構想が、そのままでは資本市場に伝わりにくいことでした。
IPOにおいては、「経営者が何をやりたいか」だけでは不十分です。必要なのは、「なぜ市場があるのか」「なぜこの会社が成長できるのか」「調達資金をどこに使うのか」「その資金がどのように収益化されるのか」「成長の再現性はどこにあるのか」を、第三者が確認できる資料として示すことです。
特に本件では、設備設計、稼働状況の管理、料金運用、多拠点管理の仕組みなど、事業の中に多くの独自性がありました。
ただし、独自性は、そのままでは投資家に伝わりません。「独自の構想がある」で終わらせるのではなく、次のように事業計画上の意味へ置き換える必要がありました。
- 01収益性を高める仕組み
- 02開発スピードを支える仕組み
- 03管理コストを抑える仕組み
- 04物件確保における信用補完
- 05都市インフラとしての社会的意義
ここが、本件で最も重く見た論点です。
本件で先に整理した判断軸
結論:先に整えるべきだったのは資料の見栄えではなく、事業の定義、成長前提、資金使途、収益モデル、説明ストーリーの順番でした。
本件で最初に整理すべきだったのは、事業の定義です。同社は何の会社なのか。単なる駐車場運営会社なのか、それとも都市部の交通、土地利用、駐車需要を事業化する開発運営会社なのか。ここを曖昧にしたままでは、投資家向けの説明は安定しません。
次に、成長の前提です。拠点数や車室数が増えることは重要ですが、それだけでは成長モデルにはなりません。賃借地に設置するのか、所有地に設置するのか、既存駐車場の管理運営を受託するのかによって、資金負担、収益性、リスク、開発スピードは大きく異なります。
その次に、資金使途です。IPOで調達する資金を、どの成長施策に充てるのか。資金使途が駐車場開発、設備投資、運営体制の強化などに向かうのであれば、それがどのように収益化し、どのように企業価値向上につながるのかを説明する必要があります。
さらに、収益モデルです。駐車場は、立地、規模、稼働率、賃料、設備投資、管理コストによって収益性が変わります。拠点数が増えれば必ず利益が増えるわけではありません。車室数が増えても、用地取得コストや固定費が重ければ、収益性は下がる可能性があります。
最後に、説明ストーリーです。投資家は、経営者の構想だけで投資判断をするわけではありません。市場環境、競争優位、資金使途、収益化、管理体制、成長の再現性を、一つの流れとして理解します。
| 整理の順番 | 確認した論点 | 資料上の意味 |
|---|---|---|
| 1. 事業の定義 | 同社を何の会社として説明するか | 単なる駐車場運営ではなく、開発運営型の成長事業として位置づける |
| 2. 成長の前提 | 拠点数、車室数、物件類型、開発スピード | 成長可能性を、意欲ではなく事業構造として示す |
| 3. 資金使途 | IPOで調達する資金をどこに投じるか | 成長投資と収益化の接続を明確にする |
| 4. 収益モデル | 立地、稼働率、賃料、設備投資、管理コスト | 拡大すれば利益が出るという単純化を避ける |
| 5. 説明ストーリー | 市場性、競争優位、再現性、管理体制 | 投資家が検証できるIR資料の骨格を作る |
したがって、本件では、事業モデル、開発モデル、収益モデル、資金使途、IRストーリーを順番に整理する必要がありました。
なぜ事業計画とコーポレートストーリーを先に整えたのか
結論:IR資料は事業計画の上に成り立つため、言葉を整える前に、成長の構造を整える必要がありました。
本件では、細かなIR表現を整える前に、事業計画とコーポレートストーリーの骨格を作ることが優先されました。
理由は明確です。IR資料は、事業計画の上に成り立ちます。事業計画が整理されていない状態でIR資料を作ると、言葉だけが先行してしまいます。
たとえば、「成長性が高い」と書くことはできます。しかし、なぜ成長するのかを説明するには、開発候補地、物件類型、収益モデル、資金使途、管理体制が必要です。
「独自システムがある」と書くこともできます。しかし、それが収益性にどう影響するのか、管理コストをどう抑えるのか、拠点拡大時にどのように効くのかを説明しなければ、投資家向けの材料にはなりません。
「公共性が高い」と書くこともできます。しかし、公共性だけでは投資対象としての説明にはなりません。公共性があるからこそ、地主、利用者、地域社会、行政、株主にどのような価値を提供し、それが長期的な物件確保やブランド価値につながるのかを示す必要があります。
つまり、本件で先に整えるべきだったのは、言葉ではなく構造でした。
ここで重視したのは、経営者の構想を弱めることではありません。むしろ、その構想を投資家に伝わる形へ翻訳することでした。
実行支援の内容:中期事業計画、IPO資料、IR計画素案の作成
結論:本件では、経営者の構想を、事業計画上の意味、成長戦略上の位置づけ、資金使途との接続へ分解して整理しました。
- 中期事業計画の作成支援
- IPO資料の作成支援
- IR計画素案の作成支援
- 経営者の構想を、外部説明に耐える事業計画へ整理する支援
本件における三坂大作側の正式な受注範囲は、中期事業計画、IPO資料、IR計画素案の作成支援です。
具体的には、まず同社の事業を、単なる駐車場運営ではなく、開発力、運営力、技術力、財務力、公共性を持つ成長事業として整理しました。
次に、成長戦略を、拠点数・車室数の拡大だけでなく、都市部・近郊都市部での開発力、大型物件への取り組み、長期賃借・自社物件の拡大、情報技術を活用した効率運営、少数精鋭の経営体制として再構成しました。
さらに、経営者の独創的な構想については、個別のアイディアとして見せるのではなく、収益性、効率性、安全性、公共性を支える経営資源として位置づけました。
独自設計の駐車場設備は、単なる設備ではありません。限られた立地をどう効率的に活用するかという、開発戦略の一部です。
運営管理の仕組みは、単なる技術や管理業務ではありません。拠点が増えても管理コストを抑え、稼働状況を把握し、料金運用に対応するための事業基盤です。
また、多拠点展開を前提にする場合、現場管理や回収・点検を含む運営体制も、成長を支える内部管理体制の一部として説明する必要があります。
このように、経営者の構想を一つひとつ分解し、投資家が理解できる事業計画上の意味へ置き換えていきました。



IPO前の説明構造を整えた支援
結論:この事例で記録すべきなのは、資本市場上の結果ではなく、IPO準備の段階で、成長資金の必要性と資金使途を説明できる状態へ整理した点です。
今回の支援範囲は、中期事業計画、IPO資料、IR計画素案の作成支援までです。
IPO準備やその後の資本政策は、企業自身の経営判断、主幹事証券会社をはじめとする関係者の実行、資本市場環境など、複数の要因によって進みます。そのため、この記事では、後年の経過ではなく、IPO前の重要局面でどのように事業計画と説明ストーリーを整理したのかに焦点を当てています。
この支援で重視したのは、経営者の独創的な構想を、第三者が検証できる事業計画とIRストーリーへ整理することでした。
成長企業では、経営者の頭の中には明確な構想があるにもかかわらず、それが社外向け資料に十分落とし込まれていないことがあります。その場合、外部から見ると、事業の魅力や成長可能性が伝わりにくくなります。
今回のケースでは、一見すると分かりやすい事業を、社会インフラ、収益モデル、開発戦略、資金使途、運営体制、公共性という複数の軸で再整理する必要がありました。
そこに、IPO資料作成支援としての実務上の価値がありました。
同様の会社が確認すべきこと
結論:IPOや大規模な資金調達を目指す会社は、まず自社の構想が第三者に検証できる事業計画になっているかを確認すべきです。
IPOを目指す会社、あるいは大規模な資金調達を目指す会社は、まず次の点を確認する必要があります。
IPO・大規模調達を目指す会社が確認すべきこと
- 自社の事業を、経営者の言葉ではなく、第三者が理解できる言葉で説明できるか
- 調達資金の使途が、成長戦略と明確に接続しているか
- 売上拡大の根拠が、意欲ではなく、拠点数、顧客数、設備投資、管理体制、収益モデルに分解されているか
- 競争優位が、抽象的な強みではなく、収益性や継続性にどう効くのか説明できるか
- 経営者の独創性を、属人的な魅力ではなく、会社の再現可能な経営資源として説明できるか
- 主幹事証券会社や投資家が確認する論点に対して、資料上の答えが用意されているか
特に、経営者の構想が強い会社ほど注意が必要です。構想は、会社の強みです。しかし、資料作成の現場では、構想が強いほど、説明が経営者目線に偏ることがあります。
資本市場に向けた資料では、経営者の熱量をそのまま出すのではなく、投資家が検証できる材料へ変換しなければなりません。
ほかの支援事例については、ミサカノ実績でも整理しています。個別の結果ではなく、相談時点で何を見て、どの順番で判断したのかを確認することで、自社の資金調達や事業計画にも置き換えやすくなります。
実務上の注意点:経営者の構想は、翻訳して初めて資金調達に接続する
結論:経営者の構想は重要ですが、そのままでは資本市場向けの説明になりません。資金使途、収益性、再現性、実行体制へ接続する必要があります。
本件で注意すべき点は、経営者の構想を否定しないことです。
成長企業の多くは、経営者の強い構想から生まれます。他社には見えない市場機会を見つけ、他社がやらない方法で事業化し、独自の仕組みを作り上げる。そうした力がなければ、IPOを目指すほどの成長は難しい場合もあります。
一方で、IPO準備では、その構想を外部説明に耐える形へ整理する必要があります。
経営者の言葉は、必ずしも投資家の判断材料にはなりません。経営者の構想は、事業モデルに翻訳する必要があります。独創性は、収益性と再現性に置き換える必要があります。将来像は、資金使途と中期計画に接続する必要があります。
この翻訳作業を軽視すると、資料は立派でも、伝わらない資料になります。
本件で重く見たのは、まさにこの点でした。IPO資料の作成とは、単に見栄えの良い資料を作ることではありません。経営者の構想を、資本市場が理解できる論理に変えることです。
そして、その論理が、資金使途、収益モデル、成長戦略、内部管理体制と矛盾なくつながっていることを示すことです。
| 中期事業計画 | 事業の方向性、成長前提、収益モデル、資金使途を整理する土台 |
|---|---|
| IPO資料 | 資本市場や関係者に対して、事業の成長性や再現性を説明する資料 |
| IR計画素案 | 投資家や外部関係者に、何をどの順番で説明するかを整理する計画のたたき台 |
よくある質問(FAQ)
結論:IPO資料や事業計画では、資料の見た目よりも、第三者が検証できる説明構造が整っているかが重要です。
IPO資料作成では、何を先に整理すべきですか?
経営者の構想が明確であれば、事業計画は作りやすいのでしょうか?
中期事業計画とIR資料は、どのように関係しますか?
まとめ
結論:本件は、IPO資料作成の実績であると同時に、経営者の構想を資本市場向けの説明へ翻訳した中期事業計画策定支援の事例です。
本件の表面的な課題は、IR資料やIPO関連資料の作成が進んでいないことでした。
しかし、本当の課題は、経営者の独創的な事業構想を、投資家や主幹事証券会社が検証できる事業計画と成長ストーリーへ整理することにありました。
駐車場事業は、外から見ると分かりやすい事業に見えます。しかし、IPO前の説明では、単なる駐車場数の拡大だけでは不十分です。都市部・近郊都市部の駐車需要、物件開発力、独自システム、管理体制、公共性、資金使途、収益化の流れを、一つの論理として示す必要があります。
本件で行ったのは、経営者の構想を弱めることではありません。その構想を、第三者が理解し、検証できる形へ整理することでした。
IPOや大規模な資金調達を目指す会社にとって重要なのは、資料を早く作ることだけではありません。自社の事業をどう定義し、どの成長前提を置き、どの資金使途を示し、どのように収益化するのか。その順番を整えることが、資金調達や外部説明の土台になります。
本記事は、当サイトのコンテンツポリシーに基づき、ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・三坂大作が執筆・監修しています。実在の支援事例をもとに、守秘義務に配慮して一部情報を匿名化・抽象化し、事業計画策定支援と成長資金の説明に関する実務論点として整理しています。







