2025.10.02
督促状の無視はNG!放置したあとに起こることや届いたときの対処方法について紹介
事業を運営している中で、取引先からの請求書や金融機関からのローン返済に関する督促状を受け取ることがあります。このような督促状を後回しにして放置してしまうことは少なくありませんが、そうした対応は遅延損害金の増加や信用情報への悪影響、法的措置へと発展するリスクがあります。督促状への対応を誤れば、その後の経営に深刻な影響を及ぼすことになりかねません。
本記事では、督促状の基本的な知識から、無視した場合のリスク、そして督促状を受け取った際の適切な対応方法まで詳しく解説します
督促状とは
届いた督促状に適切に対応するためには、督促状についてしっかり理解しておくことが欠かせません。
督促状を使用する目的
督促状とは、債権者が債務者に対して支払いの遅延を通知し、支払いを促すために送付する正式な文書です。一般的に、企業間の取引や金融機関からの融資、公共料金の支払いなど、様々な債権・債務関係において使用されます。
督促状の主な目的は、支払いが遅れている事実を債務者に知らせ、速やかな支払いを促すことにあります。法的な手続きに移行する前の警告的な性質を持っており、債務者に自主的な支払いの機会を与える役割を果たしています。
督促状自体には、即時の強制力はありませんが、これを受け取った後の対応によって、その後の展開が大きく変わってきます。債権者側としては、法的手続きに移行する前の段階として、督促状の送付は重要なステップとなっています。
督促状に記載される内容
督促状には、債権者と債務者の関係性や、請求内容を明確にするための情報が記載されています。
まず、債権者と債務者の基本情報として、双方の名称や住所、連絡先などが記載されます。次に、請求の対象となる取引や契約の内容、請求金額と内訳が明記されます。これにより、債務者は何に対する請求なのかを確認できます。
また、支払期限についても書かれており、いつまでに支払いを行うべきかが明示され、この期限を過ぎると次のステップに進む可能性があることを示唆しています。遅延損害金がある場合は、その計算方法や金額も記載されることが一般的です。
請求内容に不明点がある場合の問い合わせ先も記載されているため、疑問点があれば直接確認することが可能です。督促状の最後には、支払いがない場合の次の対応(法的措置など)についての予告が含まれることもあります。
督促状の法的効力
督促状そのものには法的強制力はありませんが、法的手続きの前段階として重要な意味を持ちます。督促状は、債権者が債権の回収に向けて誠実に取り組んでいることを示す証拠となります。
民法上、債権者は債務者に対して履行の請求をすることで、時効の完成を防ぐことができます(民法第147条)。督促状の送付は、この「履行の請求」に該当し、時効の完成を一時的に阻止する効果があります。
特に、内容証明郵便で送られる督促状(催告書)は、送付の事実と内容を法的に証明できるため、後の法的手続きの証拠として重要な役割を果たします。これにより、債権者は督促状の送付日から6ヶ月間、時効の完成を停止させることができます(民法第150条)。
督促状を受け取った後に適切な対応をしなければ、支払督促や訴訟などの法的手続きに発展する可能性があります。そのため、督促状は単なる通知ではなく、法的紛争に発展する可能性を含んだ重要な文書として認識する必要があります。
督促状を放置・無視するリスク
督促状を受け取ったときに、すぐに対応せず放置してしまうケースは少なくありません。しかし、督促状の無視は様々なリスクを伴います。どのような事態に発展する可能性があるのか、詳しく見ていきましょう。
遅延損害金の増加
督促状を無視して支払いを遅らせると、遅延損害金がかかるようになります。遅延損害金とは、支払期日を過ぎた債務に対して日割りで加算される追加料金です。これは、契約書や約款に基づいて計算されます。
事業者間の取引では、商事法定利率(年6%)が適用されることが一般的です。例えば、100万円の債務に対して年6%の遅延損害金が発生する場合、1日あたり約164円、1ヶ月で約4,932円が追加で請求されることになります。
長期間放置すればするほど遅延損害金は膨らみ続け、当初の債務額よりも返済負担が大きく増加してしまいます。特に複数の債務がある場合、それぞれに遅延損害金が発生するため、経営を圧迫する要因となります。
また、遅延損害金は税務上、原則として経費として認められないケースが多いため、実質的な負担はさらに大きくなる可能性があります。資金繰りが厳しい状況でも、遅延損害金の増加を防ぐためには早急な対応が必要です。
分割払い契約の一括返済の請求
分割払いで返済中のローンや債務がある場合、督促状を無視し続けると、契約上の期限の利益を喪失し、残債務の一括返済を求められる可能性があります。期限の利益とは、分割で支払える権利のことで、これを失うと残金を一度に支払わなければならなくなります。
多くのローン契約では、2〜3回の支払い遅延で期限の利益を喪失する条項が設けられています。例えば、月々5万円の返済で残り200万円のローンがあった場合、滞納が続くと200万円全額を一度に支払うよう求められることになります。
資金繰りが厳しい状況での一括返済要求は、事業継続に深刻な影響を与えかねません。特に複数のローンや債務がある場合、連鎖的に一括返済を求められるリスクもあります。
一括返済請求が発生すると、通常の分割払いでの返済計画が崩れ、事業の資金計画全体に影響します。こうした事態を避けるためにも、督促状を受け取った際は早急に対応することが重要です。
信用情報機関への事故情報の登録
督促状を無視し支払いが遅延すると、金融機関からの借入の場合、信用情報機関に事故情報として登録されるリスクがあります。一般的に、支払いが2〜3ヶ月遅延すると、信用情報に「延滞」として記録されます。
信用情報機関には、日本信用情報機構(JICC)、全国銀行個人信用情報センター(KSC)、CIC(シー・アイ・シー)などがあり、これらの機関に事故情報が登録されると、その情報は5〜10年間保存されます。
事故情報が登録されると金融取引に大きな制限がかかります。新規の借入や与信取引が困難になるだけでなく、クレジットカードの更新ができなくなったり、住宅ローンの審査に通らなくなったりする可能性があります。
連帯保証人への請求拡大
事業融資や取引において連帯保証人を立てている場合、督促状を無視し続けると、債権者は連帯保証人に対しても請求を行う可能性があります。連帯保証人は、主債務者(借主)と同等の責任を負うため、督促状の無視による影響は保証人にも及びます。
連帯保証人への請求が始まると、保証人の資産や収入も差押えの対象となり得ます。特に、経営者の親族や取引先の関係者が連帯保証人になっているケースでは、人間関係の悪化や信頼の喪失につながりかねません。
また、保証人が支払いを行った場合、保証人は債務者に対して求償権を持ちます。つまり、保証人が代わりに支払った金額を債務者に請求する権利が生じるため、債務者と保証人の間でも紛争が発生する可能性があります。
保証人に迷惑をかけることは、ビジネス上の信用問題にも発展します。特に、取引先の代表者などが保証人になっている場合、その取引関係全体に悪影響を及ぼす可能性があるため、督促状の適切な対応は非常に重要です。
法的手続きの開始や財産差押え
督促状を長期間無視し続けると、債権者は法的手続きに移行する可能性が高まります。最初のステップとして、裁判所を通じた支払督促や訴訟の提起が行われることがあります。
支払督促は、債権者が裁判所に申立てを行い、裁判所から債務者に対して支払いを命じる手続きです。これに対して、2週間以内に異議を申し立てなければ、債権者は強制執行の手続きに移行できます。
訴訟が提起された場合、出廷して争わなければ欠席判決が下され、債権者の主張がほぼ認められることになります。判決確定後は、債務者の預金口座や不動産、動産などの財産が差し押さえられるリスクがあります。
事業者の場合、会社名義の預金口座が差し押さえられると、取引先への支払いや従業員の給与支払いにも影響が出るため、事業継続が困難になる可能性があります。また、事業用資産が差し押さえられると、通常の営業活動ができなくなるケースもあります。
さらに、法的手続きが開始されると、債務額に加えて裁判費用や弁護士費用なども負担することになり、最終的な返済額はさらに増加します。督促状を無視することで、最終的には事業の存続自体が脅かされる可能性があるのです。
督促状の種類や似ている書類
督促状には様々な種類があり、それぞれ法的意味合いが異なります。どのような種類の督促状が届いたのかを理解することで、適切な対応が可能になります。
通常の督促状と内容証明郵便の違い
督促状は大きく分けて「通常の督促状」と「内容証明郵便による督促状(催告書)」の2種類があります。それぞれの特徴と法的意味合いには、重要な違いがあります。
通常の督促状は、普通郵便やFAX、メールなどで送付される比較的初期段階の催促です。債務者に支払いを促す目的で送られますが、送付の証明や内容の証明機能はありません。法的手続きの前段階としての性格が強く、債務者との関係を維持しながら支払いを促すという側面があります。
一方、内容証明郵便による督促状(催告書)は、郵便局が内容と送付の事実を証明する特殊な郵便です。送った日時、内容、相手方などが公的に証明されるため、後の法的手続きの証拠として非常に重要な役割を果たします。内容証明郵便による督促は、法的手続きへの移行を前提とした、より強い催促の意味合いを持ちます。
内容証明郵便が届いた場合は、債権者が法的手続きを検討している段階であると考えるべきです。通常の督促状と比べて対応の緊急性が高く、放置するリスクも大きくなります。債権者としても、内容証明郵便の利用には一定のコストがかかるため、回収に対する本気度を示すものともいえます。
内容証明郵便による時効の完成猶予
債権には時効があり、一定期間経過すると債権者は請求権を失います。督促状の送付は、この時効に影響を与える重要な行為です。
一般的な債権の消滅時効は、改正民法(2020年4月施行)により、権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年と定められています(民法第166条)。ただし、商事債権の場合は5年の時効が適用されます(商法第522条)。
通常の督促状では、それ自体に時効の完成を猶予したり、時効を更新したりする確実な効力はありません。一方、内容証明郵便による督促(催告)には、時効の完成を一時的に停止させることができます。催告があった場合、その時から6ヶ月間は時効が完成しないとされています(民法第150条)。
ただし、この6ヶ月の間に、債権者が裁判上の請求など**『時効の更新』**事由となる措置を取らなければ、時効の完成猶予の効力は失われます。つまり、内容証明郵便による督促は、時効を『更新』するものではなく、債権者に法的手続きを取るための猶予期間を与える『完成猶予』の効果を持つものと理解できます。
債務者側からすると、内容証明郵便による督促が届いた場合、債権者が時効完成前の最後の手段として、法的措置を検討している可能性が高いことを意味します。長期間取引のない債権者から突然督促状が届いた場合、時効が近づいていることを意識した行動かもしれません。
裁判所からの支払督促との違い
債権者からの督促状と裁判所からの支払督促は、名称は似ていますが全く性質が異なります。両者の違いを理解することは、非常に重要です。
債権者からの督促状は、債権者が直接債務者に対して送付する文書で、法的拘束力はありません。あくまで支払いを促す通知の役割を果たすものであり、これを無視しても直ちに法的な不利益が生じるわけではありません。
一方、裁判所からの支払督促は、債権者の申立てにより裁判所が発行する公的文書です。法的手続きの一環として発せられる強制力のある文書であり、債務者が2週間以内に異議申立てを行わなければ、債権者は強制執行の手続きに移行できます。
裁判所からの支払督促が届いた場合、既に法的手続きが開始されていることを意味します。この段階で無視し続けると、異議申立ての機会を逃し、内容の是非にかかわらず、債権者の請求通りの支払いを強制されるリスクがあります。
支払督促には、「仮執行宣言」が付される場合があり、この場合、異議申立てをしても、債権者は債務者の財産に対して仮の差押えができる可能性があります。そのため、裁判所からの支払督促を受け取った場合は、直ちに法律の専門家に相談することが強く推奨されます。
督促状を受け取ったときの適切な対処法
督促状を受け取った際には、冷静かつ的確な対応が求められます。状況を正しく判断し、適切な手順で対処することで、問題を最小限に抑えることができます。
内容確認と請求の真偽の判断
督促状を受け取ったら、まず内容をしっかりと確認し、請求の真偽を見極めることが重要です。近年は、精巧な詐欺や架空請求も増えているため、慎重な確認が必要です。
最初に確認すべきは、債権者の情報(名称、住所、連絡先など)と請求内容の詳細です。取引先や金融機関からの督促であれば、過去の取引記録や契約書と照合してください。請求金額や遅延損害金の計算に誤りがないかも確認しましょう。
不明点があれば督促状に記載された連絡先に問い合わせることが重要です。特に身に覚えのない請求や、記載されている取引内容に疑問がある場合は、直接確認することで詐欺や誤請求を見分けることができます。
架空請求の特徴としては、差出人の情報が曖昧、具体的な取引内容の記載がない、威圧的な文面、連絡手段が限られているなどが挙げられます。これらの特徴が見られる場合は、安易に連絡したり支払ったりせず、消費生活センターや弁護士に相談することをお勧めします。
支払い可能な場合の対応
督促状の内容を確認し、請求が正当であり支払い可能と判断した場合は、速やかに支払い手続きを行うことが最善の対応です。迅速な対応により、遅延損害金の増加や信用低下などのリスクを最小限に抑えることができます。
まず、督促状に記載された支払方法に従って、期日内に支払いを行います。振込の場合は、指定された口座に送金し、入金確認ができるよう振込明細を保管しておきましょう。支払いを行った後は、債権者に支払い完了の連絡を入れることで、相互の認識のズレを防ぐことができます。
支払いが完了したら、可能であれば、債権者から領収書や債務の完済証明書を受け取ることをお勧めします。これにより、将来的に同じ債務について再請求されるリスクを防ぐことができます。また、督促状や支払い証明書などの関連書類は、少なくとも時効期間経過後も一定期間保管しておくことが望ましいでしょう。
なお、遅延の原因を分析し、今後同様の事態を防ぐための対策を講じることも重要です。例えば、支払い管理システムの導入や、期日前のアラート設定など、支払い忘れを防ぐ仕組みを構築することで、経営リスクを減らすことができます。
支払いが困難な場合の対応
督促状の内容は正当だが、現時点で全額の支払いが困難な場合は、債権者との交渉を検討する必要があります。多くの債権者は、全く支払いがない状況よりも、計画的な返済を受け入れる傾向にあります。
まず、督促状を受け取った後、なるべく早く債権者に連絡し、現在の状況を誠実に説明することが重要です。その際、具体的な返済計画を提案できると交渉が円滑に進むことが多いものです。例えば、分割払いの提案や、返済開始日の延期、一時的な利息のみの支払いなど、状況に応じた提案を検討しましょう。
交渉が成立した場合は、合意内容を書面で残すことをお勧めします。口頭の約束だけでは後々トラブルの原因になる可能性があるため、返済条件の変更合意書や確認書などの形で記録に残しておきましょう。
また、資金繰りが厳しい状況では、専門家のアドバイスを求めることも検討すべきです。中小企業の場合、商工会議所や中小企業支援センター、信用保証協会などの公的機関に相談することで、資金繰り改善のためのアドバイスや支援を受けられる可能性があります。状況が深刻な場合は、弁護士や税理士などの専門家に早期に相談し、債務整理や事業再生の選択肢も検討することが賢明です。もし緊急の資金調達が必要な場合は、**無担保・無保証で利用できるビジネスローン**も選択肢の一つとなります。
法的知識が必要な場合の専門家への相談
督促状の内容に法的な判断が必要な場合や、複雑な債務問題を抱えている場合は、専門家への相談が必要不可欠です。適切な専門家のサポートを受けることで、最善の解決策を見出すことができます。
弁護士への相談が適しているケースとしては、請求内容に疑義がある場合、多額の債務を抱えている場合、複数の債権者から督促を受けている場合、既に法的手続きが開始されている場合などが挙げられます。弁護士に依頼すると債権者との交渉窓口が弁護士に移るため、直接の督促や取立てから解放されるメリットもあります。
司法書士も、140万円以下の債務については債務整理の代理人となることができます。特に少額の債務問題や、簡易裁判所での手続きに関しては、司法書士への相談も選択肢の一つです。
また、経営全体の改善が必要な場合は、税理士や公認会計士への相談も検討すべきです。彼らは、財務状況の分析や税務面でのアドバイス、資金繰り改善のための具体的な提案など、経営改善に向けた総合的なサポートを提供してくれます。
専門家への相談は、有料の場合が多いですが、初回相談を無料で受け付けている事務所も少なくありません。また、日本司法支援センター(法テラス)では、資力の乏しい方向けに法律相談や弁護士費用の立替制度を提供しています。問題が深刻化する前に、早めの専門家相談が問題解決の鍵となります。
まとめ
督促状は、単なる支払い通知ではなく、放置すれば様々なリスクを伴う重要な文書です。遅延損害金の増加、一括返済請求、信用情報への悪影響、連帯保証人への影響拡大、そして最終的には法的手続きによる財産差押えなど、無視することで状況は確実に悪化します。
督促状を受け取った際は、まず内容を確認し、支払い可能であれば速やかに対応するのが最善です。支払いが困難な場合でも、債権者との交渉や専門家への相談など、取るべき対応策は複数あります。状況に応じて債務整理を検討することも、長期的な経営安定のための選択肢となり得ます。資金繰りの改善や専門家への相談を通じて、事業を継続しながら債務問題を解決していきましょう。
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