2025.10.21
会社の赤字、いつまで耐えられる?倒産までのリミットを見極め、今すぐ打つべき資金繰り改善策
「売上は立っているのに、なぜか手元にお金が残らない…」「今月の支払いを乗り切れるだろうか…」
会社の損益計算書が赤字で染まっている時、多くの経営者がこのような尽きない不安に苛まれます。しかし、日本の中小企業の約7割が赤字というデータがあるように、「赤字=即倒産」というわけでは決してありません。
事実、赤字でも力強く経営を続けている会社は数多く存在します。その一方で、黒字にも関わらず資金がショートし、倒産に至る「黒字倒産」も後を絶ちません。
この違いは一体どこにあるのでしょうか?
本記事では、赤字経営の渦中にいる経営者のあなたのために、なぜ赤字でも会社が存続できるのか、その資金繰りのメカニズムを徹底解剖します。さらに、あなたの会社の「限界点」はどこにあるのかを正確に見極め、最悪の事態を回避するための具体的な方策を、資金調達のプロの視点から分かりやすく解説します。
あなたの会社はどのタイプ?赤字経営の主な5つの原因
赤字から脱却するための第一歩は、その根本原因を正確に特定することです。ここでは、中小企業が陥りがちな5つの赤字原因を解説します。自社の状況と照らし合わせてみましょう。
1. 売上不振・売上減少による赤字
最も一般的で分かりやすい原因です。市場の変化、競合の台頭、顧客ニーズの多様化など、外部環境の変化に対応できずに売上が減少するケースです。特に、主要取引先への依存度が高い場合、その一社の業績不振が自社の経営を直撃することもあります。
2. コスト構造の問題(売上原価・販管費の高騰)
売上は順調でも、それを上回るペースでコストが増加しているケースです。
- 売上原価の高騰: 原材料費や仕入れ価格の上昇、外注費の増加などが挙げられます。価格転嫁が難しい場合、利益を圧迫し続けます。
- 販管費の高騰: 人件費の上昇、広告宣伝費の使い過ぎ、事務所家賃などの固定費の増大が原因です。特に、創業期の過剰な設備投資が後々まで重荷になることも少なくありません。
3. 過剰な設備投資による減価償却費の増大
将来の成長を見越した大規模な設備投資は、会計上「減価償却費」として数年間にわたり費用計上されます。この減価償却費は、実際には現金の支出を伴わない「非資金費用」ですが、損益計算書上では利益を押し下げ、赤字の原因となります。ただし、このタイプの赤字は手元資金が潤沢な場合も多く、一概に危険とは言えません。
4. 資金繰りの悪化(回収サイトと支払サイトのズレ)
商品やサービスを販売してから現金が入金されるまでの期間(売掛金回収サイト)が、仕入れ代金などを支払う期間(買掛金支払サイト)よりも長い場合に発生します。帳簿上は黒字でも、手元の現金が不足し、支払いが滞ることで経営が悪化。いわゆる「黒字倒産」に繋がる危険な状態です。
5. 創業赤字・先行投資による戦略的な赤字
事業開始直後の創業期や、新規事業立ち上げの際には、売上が安定するまでの間、人件費や広告費などの先行投資が売上を上回り、戦略的に赤字を計上することがあります。事業計画の範囲内であれば問題ありませんが、計画通りに売上が伸びない場合は注意が必要です。
これらの原因は複合的に絡み合っていることも少なくありません。まずは客観的に自社の状況を分析することが重要です。
【原因別】今すぐできる資金繰り改善アクションプラン
赤字の原因が特定できたら、次はその原因に応じた具体的な対策を講じます。ここでは、即効性のあるものから中長期的な改善策まで、具体的なアクションプランを提案します。
売上不振・コスト高騰が原因の場合
資金繰りの改善と並行して、収益構造の抜本的な見直しが不可欠です。
- 遊休資産の売却: 使用していない機械、不動産、有価証券などを売却し、現金化を図ります。
- 経営セーフティ共済(倒産防止共済)の活用: 取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐための制度ですが、解約すれば掛金の一部が戻り、資金繰りに活用できます。詳細は中小企業基盤整備機構のサイトをご確認ください。
中小企業基盤整備機構:経営セーフティ共済 - 補助金・助成金の活用: 国や地方自治体は、事業再構築やIT導入、雇用維持など、様々な目的で返済不要の補助金・助成金を提供しています。自社で活用できる制度がないか、中小企業庁の支援サイト「ミラサポplus」などで探してみましょう。
中小企業庁:ミラサポplus
資金繰りの悪化が原因の場合
キャッシュフローの改善が最優先課題です。
- ファクタリングの利用: 売掛債権(請求書)をファクタリング会社に売却し、早期に現金化する方法です。銀行融資が難しい赤字企業でも利用しやすいのが特徴です。
- 支払い猶予(リスケジュール)の交渉: 金融機関や仕入先に対し、一時的に返済額の減額や支払いの延期を交渉します。誠実な対応と実現可能な再建計画の提示が鍵となります。
- 日本政策金融公庫の融資制度: 国の政策金融機関である日本政策金融公庫は、経営が悪化した中小企業を支援するセーフティネット貸付など、様々な融資制度を用意しています。まずは相談してみる価値は十分にあります。
日本政策金融公庫:融資制度を探す
税金や社会保険料の支払いが困難な場合
滞納は延滞税などペナルティが大きく、差し押さえのリスクもあります。支払いが困難な場合は、放置せずに必ず関係機関に相談してください。
- 納税の猶予制度: 災害や事業の著しい損失など、特定の理由がある場合、税務署に申請することで納税が1年間猶予される場合があります。詳しくは国税庁のウェブサイトをご確認ください。
国税庁:納税が困難な方へ
赤字でも経営は続けられる
赤字と聞けば、誰でも危険信号と捉えます。赤字決算の会社に銀行が融資しない理由も、「倒産の危険があり、貸し倒れリスクが高いから」にほかなりません。
しかし実際には、赤字でも経営が存続している会社がたくさんあります。中小企業の約70%は赤字という統計データもあるほど、中小企業に赤字はつきものです。もし「赤字=倒産」ならば、中小企業は激減してしまうはずです。
見方を変えると、非常に多くの中小企業(中小企業数を400万社として計算すると280万社)が、赤字で経営を続けているともいえます。
なぜ赤字でも経営が続くのか、これを具体的に理解すると、資金繰りへの理解が深まります。
資金繰りが続くうちは倒産しない
「黒字」または「赤字」という言葉がありますが、これは会社の利益計算がどうであるかについて、ゼロを基準として大雑把に表現するものです。ゼロより多い(プラス)ならば黒字、ゼロより少ない(マイナス)ならば赤字です。
資金繰りの計算は、利益計算とは全く別です。以前、別の記事(→なぜ黒字なのに倒産する?黒字倒産の仕組みを徹底解説)でも解説したように、利益と資金繰りは異なる基準で行われるものであり、黒字でも資金が不足すれば倒産します。逆に、赤字でも資金が不足しなければ倒産しません。
赤字でも経営を続けている会社は、なんらかの方法によってお金をやりくりする、つまり資金繰りの破綻を回避することによって、倒産を免れているのです。
赤字でも倒産しないための資金繰りには、いくつかのパターンが挙げられます。代表的なものは、
- 手元資金が厚い
- そもそも資金繰りが良好である
- 経営者からの借入れが可能
といったパターンです。
現在は黒字の会社でも、いずれ赤字に見舞われる可能性があります。そのとき、赤字でも経営を続けていくためには、普段から備えておくことが重要であり、これら3パターンが参考になります。
手元資金が厚い
経営が好調な局面では、多くの経営者が油断します。いつまでもその状況が続くと過信し、急激な成長拡大路線に乗り出し、倒産の遠因となるケースも多いです。
売上が拡大すれば、支払いが増えて資金繰りが苦しくなります。売上至上主義に陥っているため、手元資金を留保する意識は乏しく、足りなくなれば銀行融資で対応しよう、と考えています。
しかし、売上がいつまでも伸び続けることはなく、やがて横ばいになり、減少傾向に突入します。赤字に転落することもあるでしょう。このとき、手元資金が少なく、業績悪化を理由に銀行融資も断られてしまうと、資金繰りが続かなくなり、赤字から倒産に至ります。
赤字でも資金繰りを長く続けられる会社の特徴は、経営者が現金主義であることです。経営が好調な局面では、安易に経営拡大を目指すのではなく、現金の留保に努めます。
また、経営が好調であれば、銀行から好条件で融資提案を受けることも多いです。このとき、明確な資金需要がなくとも、あえて融資を受けて手元資金を厚くしておきます。
利益の留保や融資によって手元資金を厚くしておくと、赤字になってもラクに経営を続けることができます。世界的な不況などにより、赤字の改善に時間がかかる場合でも、余裕をもって対処できます。
資金繰りが苦しいために冷静な経営判断ができなくなり、悪条件での取引や資金調達に手を出すこともなく、着実に経営改善に取り組むことも可能です。
赤字でも資金繰りを続けるためには、手元資金を厚くしておくことが何より重要です。
そもそも資金繰りが良好である
赤字に転落しても、元から資金繰りが良好な会社は容易につぶれることがありません。
顕著な例は、現金商売の割合が多い会社です。消費者に直接販売し、常に現金で回収する小売業は、資金繰りが非常に回りやすいビジネスモデルといえます。
もちろん小売業でも、過剰在庫を抱える、売れない商品を仕入れてしまう、設備投資が過剰になる、新規出店を急ぎすぎるなどにより、赤字になるリスクは常にあります。
それでも、現金商売によって日銭を稼ぎ、支払いを間に合わせることができる間は、赤字でも倒産はすることはありません。
現金商売でなくとも、「売上の回収が早く、支払いが遅い」という状態であれば、赤字でも資金繰りを続けやすいです。例えば、
- 商品を500万円分仕入れる。支払いは2ヶ月後とする
- 仕入れの1ヶ月後に1,000万円で売る。回収は1ヶ月後とする
- 仕入れから2ヶ月後=販売の1ヶ月後に売掛金1,000万円を回収し、買掛金500万円を支払う
というように、回収サイトが支払いサイトよりも短ければ、資金不足に陥ることはありません。この例のように、回収と支払いがぴったり噛み合うことは少ないでしょうが、回収サイトが支払サイトよりも短い状態であれば、資金繰りは概ねラクに回っていきます。
なぜラクに回るかといえば、支払いより回収が早いため手元資金が減りにくく、現金を手元に残しやすいからです。決算が赤字になっても、回収した売上から支払うサイクルさえ保つことができれば、資金繰りはなかなか破綻しません。
不利な条件で契約し、回収サイトが長期化している場合にも、ファクタリングを活用して売掛金の早期資金化が可能です。赤字の局面では、銀行融資を受けることが難しいため、様々な方法で資金を調達することが重要になります。特に、現金をスピーディに確保するには、ファクタリングや手形取引の活用が欠かせません。
経営者からの借入れが可能
実際には、多くの中小企業経営者が、資金繰りのコントロールを苦手としています。したがって、好調時に手元資金を厚くしておく、または普段から資金繰りを良好な状態に近づけていくといった工夫ができないまま、赤字での資金繰りを迫られます。
このとき、中小企業に最も多く見られるのが、経営者からの借入れによって資金繰りを回すことです。会社が赤字になり、資金不足が発生した場合、不足分を経営者個人のポケットマネーでカバーできるならば、資金繰りは問題なく回ります。
年商が数億円規模になると、数千万円単位の不足が発生することもあり、経営者個人でのカバーは難しくなります。しかし、年商数千万円の中小企業では、数百万円程度の不足資金を経営者個人の私財によって賄えるケースも多いです。
また、中小企業では、好調時に役員報酬を増やしているケースが多いです。たくさんの利益が得られた年は、役員報酬をできるだけ多くすることで利益を減らし、法人税を減らすことができます。
したがって、好調時に役員報酬を多く受け取り、私財を蓄えていた経営者は、赤字で厳しい時期になると会社に私財を投入し、資金繰りを賄うことが多いのです。
経営者個人の財力がキーポイントになるため、赤字の場合に必ず使える方法ではありませんが、多くの中小企業がこの方法によって倒産を回避していることも事実です。
倒産までのリミットを考える
赤字でも資金繰りが続く理由と方法を解説してきました。しかし、会社とは本来稼ぐことが目的であり、赤字は目的と真逆の状態です。赤字でも資金繰りが続くとはいえ、早急に黒字転換を目指す必要があります。
このとき、倒産までのリミットを正しく把握しておくことが何より重要です。
倒産までのリミットが短い場合、コンサルタントを入れて早急な立て直しを図らなければ、倒産は避けられないでしょう。
逆に、倒産までのリミットに余裕があり、赤字が一時的なものであることが明確であれば、それほど慌てることなく、堅実な経営を続けることが重要となります。
あるいは、赤字の原因が深刻である場合には、倒産までの長いリミットを最大限に活用し、時間をかけて抜本的な経営改善に取り組むことも考えられます。この時にも、コンサルタントの協力が欠かせません。
まずは資金繰り表の作成を
倒産までのリミットの把握は、それほど難しくありません。資金繰り表を作ればよいのです。
現在、資金繰り表を作っていない会社は、早急に資金繰り表を作る必要があります。
すでに資金繰り表を作っている会社も、再度作り直すべきでしょう。資金繰り表の作り方、見方、考え方に問題があると、リミットを正確に把握できません。
もし、資金繰り表の作り方が分からない、現在の資金繰りに問題があるかチェックしたいという場合には、税理士やコンサルタントに依頼すると安心です。
ただし、税理士・コンサルタント選びには注意が必要です。
税理士は、あくまでも税務の専門家であり、経営目線での資金繰りの専門家ではありません。したがって、税理士に依頼する場合には、資金繰りに強い税理士に依頼することを心がけてください。コンサルタントも同様です。
リミットの把握
資金繰り表を作成し、お金の流れを将来にわたって見ていくと、
- 手元資金がどこで尽きるか
- 経営者個人からの借入れがどこまで続くか
を大まかに知ることができます。経営内容に突発的な変化が起こらなければ、把握した時期が大きくずれることはありません。
リミットが分かれば、「リミットまでに経営を立て直すにはどうすべきか」という視点でスタートを切ることができます。この視点があるかないかによって、立て直しの成功率には雲泥の差が生じます。
税理士やコンサルタントの協力があれば、資金繰り表の作成、リミットの把握に加えて、立て直しの計画・遂行でもアドバイスを受けることができ、成功率は更にアップします。
まとめ
本稿では、赤字の会社が経営を続けられる理由と、リミットの把握について解説しました。
赤字になると、銀行融資を受けることは難しく、資金繰りが苦しくなります。その時に備えて、好調時に利益をしっかり留保し、手元資金を厚くしておくことが大切です。
また、赤字の局面では、黒字の局面とは全く異なる視点での資金繰りや取り組みが必要となります。銀行融資以外の資金調達方法の多様化や、税理士・コンサルタントなどの協力も重要性が高まります。
現在、黒字・好調の会社も、いずれ赤字になった時のために、手元資金や知識を蓄えておくことが大切です。
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