2025.10.14
資金ショートを防ぐ「つなぎ資金」の作り方|融資以外の選択肢と経営者が知るべき注意点
「大型案件を受注できたのに、先に支払う材料費や外注費が足りない…」 「売掛金の入金サイトが長く、次の仕入れ資金や人件費の支払いが厳しい…」
このような、事業における一時的な**「資金のタイムラグ」**によって、大きなビジネスチャンスを逃したり、資金ショートの不安に悩まされたりしていませんか?
その悩みを解決するのが**「つなぎ資金」**という考え方です。
つなぎ資金とは、将来的な入金を待たずに、目先の支払いや投資に必要な資金を確保すること全般を指します。その調達方法には、金融機関からの**「つなぎ融資」はもちろん、売掛債権を活用する「ファクタリング」**や、国や自治体の制度を利用する方法など、様々な選択肢があります。
しかし、それぞれの方法にはメリットだけでなく、手数料や利用条件、将来の経営に与える影響などの注意点も存在します。
この記事では、金融のプロの視点から、事業者向けのつなぎ資金の基本から、各調達方法の具体的な比較、そして貴社の状況に合わせた最適な選び方まで、どこよりも分かりやすく解説します。
銀行融資の審査ポイントは3つ
銀行融資を受ける際には、金融機関がどのような点に着目しているのかを理解しておくと審査対策がしやすくなります。
銀行は融資を行う際に、企業の返済能力や事業の将来性を総合的に評価します。融資目的や必要な金額が根拠をもって提示されているか、明確なデータや根拠が示されているかを特に重視します。さらに、銀行に過度なリスクを負わせないように、経営計画や業績の推移などを丁寧に説明することが重要です。
納得させられる資金用途や融資額
銀行が最初に気にするのは、融資金を何に使うのかという資金用途です。例えば設備投資や運転資金など目的がはっきりしていれば、金融機関も判断しやすくなります。必要金額の妥当性を論理的に説明し、実際の事業活動と結びつけて説得力を高めることが大切です。
「事業計画書」や「見積書」などで説明
会社経営を維持するために必要な資金を得る目的であれば、過去の経費などを根拠として額を決定し、支払い済みの明細などを添付して正当性を示しましょう。また事業計画書や見積書を作成しておくことで、今後どのように資金を使い会社を維持・発展させていくかをわかりやすく伝えることが可能となります。ふわっとした説明ではなく、できるだけ具体的に数字で説明するのが効果的です。
現在の経営状況と将来性
過去の売上高や利益率、手元資金の推移など、現在の経営状況を具体的な数字で示すことが求められます。そして単に数字を開示するだけでなく、今後の販路拡大や新商品の開発など、将来の成長シナリオもしっかりと説明してください。銀行側は、投融資判断において安定性だけでなく将来性も重視するため、ポジティブな情報を十分に提供することで信用度を高めることができます。
「損益計算書」や「貸借対照表」で経営状況を証明
会社の経営状況を説明するには、「損益決算書」や「貸借対照表」を用意しておくと正確に情報を伝えることができるようなります。これらの書類は正確な記載内容であることが絶対条件であり、あまり芳しくない状況だとしても正直に記載しましょう。今の状況に陥ってしまった理由や、今後の打開策を論理的に説明できれば融資を受けられる可能性はあります。
無難な返済計画
融資後の返済計画が無理のないものであることは、金融機関にとって極めて重要です。毎月の返済負担が過剰になってしまうと資金繰りが苦しくなり、業績にも悪影響を及ぼしかねません。返済期間や返済方法を踏まえながら、資金繰りをしっかりとシミュレーションして計画を提示しましょう。
事業計画に沿った「資金繰り表」を準備
返済計画を説明するには「資金繰り表」を準備しておくのが効果的です。返済の財源をアピールし、計画的な返済を進めることが可能であると伝えることができれば銀行側も納得してくれるはずです。早く完済できると伝えることが大切なのではありません。融資を成功させるには、無理な返済計画はマイナス要素にもなるかねないということを忘れないようにしてください。
審査落ちしてしまう理由と対象法
銀行からの融資審査に通らない場合、根本的な原因を把握し対策を練ることが重要です。
審査に落ちる背景には、企業の実態と融資案件の内容が合わずに銀行の不安材料になってしまうことが多いです。例えば、売上が大きく減少しているにもかかわらず大量の資金を一度に求めるような場合、銀行は返済リスクを高く見積もるケースがあります。こうしたリスクは、審査に不利になるだけでなく、企業自体が返済に苦労する原因になりかねません。
財務状況が芳しくない
赤字が続いていたり、債務超過の状態であるなど、財務指標が著しく悪化していると審査でマイナスに働きます。とはいえ、すぐに黒字化が難しい場合でも、新規顧客の獲得見込みやコスト削減計画などの具体策を示すことで前向きに評価される可能性は残っています。貸し手側に安心感を与えるためにも、定期的な財務分析や改善策の検討を怠らないようにしましょう。
担保や保証人を用意する
担保や保証人を用意することができれば、財務状況の問題をある程度はカバーすることが可能です。あくまで銀行の目的は融資したお金をトラブル無く返済してもらうことですが、返済が滞った時には担保や保証人で賄えるとなればリスクを大きく減らすことが可能となります。信用保証協会からの保証付きの融資を利用することでも、審査通過の確率を高めることができます。
税金などの滞納があれば解消する
もし税金などを滞納しているとすれば、融資の申込みを行う前に解消しておくことをおすすめします。他の金融機関からの融資に関して、返済遅延などがあれば大きな問題になるのは多くの方が理解されていると思いますが、税金の滞納も審査にはかなりの悪影響となります。滞納していた場合、返済よりも税金の支払いを優先しなくてはいけない状況にもなると考えられてしまいますので、しっかりと支払いを済ませておくことも大切です。
負債の額を増やさない
新たな融資を申込む際にすでに負債の額が多いとなれば、貸す側が不安になってしまうのは仕方のないことです。この状況を改善させるためにはファクタリングの利用がおすすめです。売掛債権の早期の現金化による資金調達は、負債の額を増やすこと無く資金を得ることを可能としてくれます。ファクタリングを活用することで貸借対照表のスリム化を実現できれば、融資を受けられる可能性を高められます。
急ぎすぎている
融資を早く受け取りたいあまり、十分な準備がないまま相談に行くことは避けなければなりません。銀行は、提出書類の不備や事業計画の粗さから、借り手への信頼度を疑問視するかもしれません。審査をスムーズに進めるためにも、面談や資料提出のタイミングに余裕を持って計画し、事前準備を入念に行うことが大切です。
つなぎ資金の主な調達方法と特徴
一時的な資金不足を補う「つなぎ資金」には、様々な調達方法があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自社の状況に合わせて最適な手段を選ぶことが重要です。ここでは代表的な方法を比較してみましょう。
| 調達方法 | メリット | デメリット | こんな会社におすすめ |
|---|---|---|---|
| 銀行融資 | ・金利が比較的低い ・社会的な信用力が向上する |
・審査が厳しく、時間がかかる ・担保や保証人が必要な場合がある |
信用力や実績があり、時間に余裕がある会社 |
| ビジネスローン (ノンバンク系) |
・審査が比較的スピーディ ・無担保・無保証人の商品も多い |
・銀行に比べて金利が高い ・借入額が大きくなると返済負担が増す |
銀行融資が難しく、早急に資金が必要な会社 |
| ファクタリング | ・最短即日で資金化可能 ・借金ではないため負債にならない ・売掛先の信用力が重視される |
・手数料が融資の金利より割高 ・売掛金の範囲内でしか調達できない |
売掛債権が多く、急いで運転資金を確保したい会社 |
| 公的融資 (日本政策金融公庫など) |
・金利が非常に低い ・創業期や赤字でも相談可能 |
・審査に時間がかかる ・必要書類が多い |
時間に余裕があり、少しでも有利な条件で借りたい会社 |
| 補助金・助成金 | ・返済不要 ・事業の信頼性が増す |
・後払いが原則で、即効性はない ・申請手続きが複雑で時間がかかる |
特定の事業投資(設備導入など)を計画している会社 |
つなぎ資金の目的が「今すぐ運転資金が必要」ということであれば、スピードの速いビジネスローンやファクタリングが有力な選択肢となります。一方で、時間に余裕があるなら、金利の低い公的融資を検討するのが賢明です。
参考情報:中小企業庁:金融サポート
つなぎ資金を活用する際の注意点
つなぎ資金は手数料や金利負担が高くなる場合もあるため、資金繰り全体を見据えて活用することが大切です。例えば、ファクタリングの手数料が大きく利益を圧迫しないか、ビジネスローンの金利が返済計画に十分見合うかなど、総合的に判断しましょう。つなぎ融資は短期的な利用を前提としているため、一般的な事業融資に比べて金利が高めに設定されている傾向があります。もし、より長期的な運転資金が必要な場合や、不動産などの担保を提供できる場合は、より金利を抑えられる事業者向けの不動産担保ローンを検討するのも一つの方法です。安易に目先の資金不足を埋めるだけではなく、今後の返済や経営への影響を考慮したうえで利用を検討する必要があります。
事業者向けつなぎ融資の具体的な活用シーン
事業者向けのつなぎ融資は、具体的にどのような場面で活用されるのでしょうか。代表的な3つのケースをご紹介します。
ケース1:売掛金の入金待ち
商品を納品し請求書を発行してから、実際に入金されるまでには30日〜60日程度のタイムラグ(支払いサイト)が発生します。この間にも、人件費や家賃などの経費は発生し続けます。つなぎ融資は、この入金待ちの期間の運転資金を確保し、資金繰りの悪化を防ぐために活用されます。
ケース2:大型受注に伴う先行投資
大きなプロジェクトや大量の注文を受けた際、材料の仕入れ費用や、人材を確保するための外注費などが先に必要になることがあります。売上が立つ前に多額の先行投資が必要な場合に、つなぎ融資を利用して必要な資金を調達します。
ケース3:納税や賞与などの短期的な資金需要
法人税や消費税の中間申告・確定申告、従業員への賞与(ボーナス)の支払いなど、年間の中で一時的に大きな支出が重なる時期があります。手元のキャッシュが不足する場合に、短期的な資金需要を乗り切るためにつなぎ融資が利用されることがあります。
つなぎ融資の審査で重視されるポイントと必要書類
つなぎ融資の審査は、一般的な事業融資とは少し異なる視点で見られます。ここでは、審査で特に重視されるポイントと、一般的に必要となる書類を解説します。
審査で重視される3つのポイント
- 返済原資の確実性
つなぎ融資は短期融資のため、「何で返済するのか」が最も重要です。確度の高い売掛債権や、完了間近のプロジェクトの受注契約書など、返済原資となる入金が確実であることを証明できるかが最大のポイントです。 - 事業の実態と計画性
なぜ一時的に資金が必要なのか、その資金をどう使い、どのように事業が回っていくのか、事業計画の妥当性もチェックされます。決算書や試算表、資金繰り表などを用いて、事業が健全であることを示す必要があります。 - 経営者の信用情報
法人としての審査だけでなく、代表者個人の信用情報も確認されることが一般的です。過去の借入で延滞などがあると、審査に影響が出る可能性があります。
一般的に必要となる書類
- 決算書(通常2〜3期分)
- 試算表(直近のもの)
- 資金繰り表・事業計画書
- 返済原資の証明となる書類(受注契約書、発注書、請求書など)
- 商業登記簿謄本
- 代表者の本人確認書類
- 納税証明書
これらの書類は金融機関によって異なるため、事前に確認し、準備を整えておくことがスムーズな審査に繋がります。
参考情報:日本政策金融公庫(国民生活事業)各種書式ダウンロード
銀行融資を成功させるには「準備」が大切
しっかりとした資料作成や事前対策を行うことで、融資審査を有利に進めることができます。
まずは事業計画書や経営改善計画など、金融機関に提出する書類の内容を充実させることがポイントです。数字の裏付けがある収益予測や返済シミュレーションを示すことで、具体的な将来展望を伝えることができます。また、担当者からの質問には的確に答えられるように、日頃から経営状況を把握しリスク管理を怠らないようにしましょう。こうした地道な準備が、銀行の信頼を得る大きな鍵となります。
つなぎ融資が難しい場合の選択肢
つなぎ融資の審査に通らなかった、あるいはそもそも融資という選択肢に抵抗がある経営者の方もいらっしゃるでしょう。その場合は、売掛債権を売却して資金化する「ファクタリング」など、融資以外の資金調達方法も数多く存在します。貴社の状況に合わせて、最適な解決策を見つけることが大切です。
つなぎ資金で融資完了まで乗り切る
銀行融資の審査期間中に資金切れを起こさないように、つなぎ資金を活用することは一つの解決策です。
十分な事前準備をしたうえで銀行からの融資審査に臨んでも、実際に資金が振り込まれるまでには時間がかかります。その間の支払いを乗り切るためのつなぎ資金として、ファクタリングやノンバンクのビジネスローンを活用する企業は増えています。ポイントは、つなぎの資金調達でも返済計画を見据え、無理のない範囲で賢く利用することです。
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