資金調達

公開日:2025.04.25

更新日:2026.07.30

政策金融公庫の金利一覧【2026年最新】|基準利率・特別利率と引き下げる方法

監修者三坂 大作

政策金融公庫(日本政策金融公庫)は、中小企業や個人事業主に対して低金利かつ長期の融資制度を提供する政府系金融機関です。ノンバンクのビジネスローンが年10〜14%程度であることを踏まえると、公庫の利率はおおむねその3分の1から4分の1の水準にあり、資金調達コストを大きく抑えられます。

ただし「低金利」とひとことで言っても、実際に適用される利率は事業区分・融資制度・担保の有無・税務申告の期数によって変わります。同じ公庫でも、国民生活事業と中小企業事業では水準がまったく異なります。

本記事では、2026年7月1日現在の利率をもとに、公庫の金利体系と引き下げる方法、制度別の融資限度額・返済期間を整理します。数字を把握したうえで資金計画を立てられるよう、公式の一次情報に基づいてまとめました。

政策金融公庫とは

政策金融公庫は正式名称を日本政策金融公庫といい、政府が100%出資する政策金融機関です。2008年10月に国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫などが統合して設立され、全国152支店を展開しています。

株式会社日本政策金融公庫法では、その役割が「一般の金融機関が行う金融を補完すること」を旨とすると定められています。民間金融機関と顧客を奪い合うのではなく、民間では対応が難しい領域を引き受けることが法律上の任務です。だからこそ、業歴の浅い創業期の事業者や、業績が悪化している事業者にも融資の可能性があります。

融資の対象となる業種

製造業、小売業、サービス業など幅広い業種が対象です。飲食店や理容室・美容室、旅館・ホテル、クリーニング店などの生活衛生関係営業には、専用の生活衛生貸付が用意されています。技術開発に取り組むスタートアップや、農林水産業・食品産業も対象です。

ただし、業種や経営内容によっては利用できない場合があります。また制度ごとに要件が定められているため、自社がどの制度に該当するかを事前に確認しておくことが重要です。

政策金融公庫の金利【2026年7月1日現在】

公庫の利率は「基準利率」と「特別利率」に分かれ、事業区分・担保の有無・税務申告の期数によって水準が変わります。順に見ていきましょう。

国民生活事業の利率

小規模事業者・個人事業主が窓口とする国民生活事業の利率は、次のとおりです。

区分基準利率特別利率A特別利率B特別利率C
無担保・税務申告2期終えている3.50〜5.20%3.10〜4.80%2.85〜4.55%2.60〜4.30%
無担保・2期終えていない3.45〜5.15%3.05〜4.75%2.80〜4.50%2.55〜4.25%
有担保2.50〜4.80%2.10〜4.40%2.00〜4.15%1.95〜3.90%

同じ区分のなかでも幅があるのは、返済期間が長くなるほど利率が上がる仕組みになっているためです。表のとおり、担保を差し入れられる場合は無担保より1ポイント程度低い水準から始まります。

なお、マル経融資(小規模事業者経営改善資金)と生活衛生改善貸付には特別利率Fが適用され、年2.60%です。挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)は、毎年の業績に応じた利率が適用されます。

遅延損害金は年9.10%

返済が遅れた場合の遅延損害金は年9.10%です(2026年4月1日から2027年3月31日までの貸付け)。低金利で借りられる制度であっても、延滞すれば負担は一気に重くなります。

中小企業事業の利率

中小企業事業は、原則として長期資金・有担保を前提とした窓口です。国民生活事業より水準が低く設定されています。

貸付期間基準利率特別利率①特別利率②特別利率③
5年以内2.65%2.25%2.00%1.95%

貸付期間が長くなるほど利率は上がります。国民生活事業の無担保基準利率が3.45%以上であることと比べると、同じ公庫でありながら1ポイント近い差があります。どちらの窓口に相談するかで調達コストが変わるということです。

最新の利率および貸付期間ごとの詳細は、公庫の金利情報ページでご確認ください。

基準利率と特別利率の違い

基準利率は、特別な要件に該当しない場合に適用される標準の利率です。これに対して特別利率は、国の政策目的に沿った取り組みを行う事業者に対して、基準利率より低く設定される優遇利率です。

重要なのは、特別利率は制度ごとに適用される種類が決まっているという点です。たとえば創業者向けの新規開業・スタートアップ支援資金では、適用されるのは特別利率A・B・Cの3種類のみで、それ以外の特別利率は対象外です。金利情報ページに並んでいる最も低い数字が自社に適用されるわけではないので、注意してください。

創業融資で特別利率が適用される主な要件

新規開業・スタートアップ支援資金で特別利率が適用される主な要件は次のとおりです(原則として土地にかかる資金を除く)。

適用主な要件
特別利率A女性の方/35歳未満または55歳以上の方/認定特定創業支援等事業を受け認定市区町村の証明書を取得した方/中小企業の会計に関する基本要領等を適用し、認定経営革新等支援機関の指導および助言を受けている方/地域おこし協力隊関連/Uターン等により地方で創業する方
特別利率B上記証明書の取得者のうち女性・35歳未満・55歳以上の方/日本ベンチャーキャピタル協会の会員等から出資を受けている方(見込みを含む)/ローカル10,000プロジェクトの交付決定を受けた方/過疎地域で創業する地域おこし協力隊・Uターン等の方
特別利率C地域未来交付金を活用した起業支援金および移住支援金の両方の交付決定を受けて創業する方

技術・ノウハウ等に新規性がみられる方は、内容に応じて特別利率A・B・Cのいずれかが適用されます。

該当要件は申込み前に洗い出す

特別利率Aの要件である「女性・35歳未満・55歳以上」は、該当する方が多い実用的な優遇です。基準利率との差は0.4ポイント。1,000万円を10年で借りた場合、総利息で20万円以上の違いになります。認定経営革新等支援機関の指導を受けるルートも含め、申込み前に該当要件を確認しておきましょう。

金利を下げる3つの方法

公庫の利率は制度と要件で機械的に決まるため、民間銀行のような交渉の余地はほとんどありません。下げるには次の3つの手段しかありません。

  • 担保を差し入れる:無担保と有担保では1ポイント程度の差があります。ただし創業期に無理に担保を提供する判断は慎重に
  • 特別利率の要件に該当させる:上表の要件を確認し、該当するよう準備を整える
  • 特例制度を併用する:賃上げ貸付利率特例制度など、所定の要件を満たすことで利率の引き下げを受けられる制度があります

なお、経営者保証を不要とする「経営者保証免除特例制度」については、各種融資制度に定める利率がそのまま適用され、上乗せ利率はありません。保証を外すために金利を上げる必要はないという点は、押さえておきたいポイントです。

制度別の融資限度額と返済期間

金利とあわせて確認しておきたいのが、限度額と返済期間です。国民生活事業の主な制度を整理しました。

制度融資限度額返済期間(うち据置期間)担保・保証人
新規開業・スタートアップ支援資金7,200万円
(うち運転資金4,800万円)
設備20年以内(5年以内)
運転10年以内(5年以内)
相談のうえ決定
一般貸付運転4,800万円
設備4,800万円
特定設備7,200万円
運転5年以内・特に必要な場合7年以内(1年以内)
設備10年以内(2年以内)
特定設備20年以内(2年以内)
相談のうえ決定
マル経融資2,000万円10年以内(2年以内)無担保・無保証人
経営環境変化対応資金
(セーフティネット貸付)
7,200万円設備20年以内(3年以内)
運転10年以内(3年以内)
相談のうえ決定
危機対応後経営安定資金
(セーフティネット貸付)
別枠7,200万円20年以内(2年以内)相談のうえ決定

据置期間は、元金の返済を猶予して利息のみを支払う期間です。創業直後や業況悪化局面で資金繰りの負担を抑えられる仕組みで、新規開業・スタートアップ支援資金では最長5年まで設定できます。

ただし据置期間中の利息支払いは、返済実績としてカウントされません。追加融資を視野に入れている場合は、あえて据置期間を短く設定する判断もあり得ます。

政策金融公庫で融資を受けるメリット

民間のノンバンク融資より金利が低い

前述のとおり、ノンバンクのビジネスローンが年10〜14%程度であることと比べると、公庫の利率は基準利率でもおよそ3分の1、特別利率が適用されれば4分の1以下の水準です。しかも固定金利なので、借入時点から完済まで返済額が変わりません。

返済期間が長く、据置期間を設定できる

設備資金なら最長20年、運転資金でも最長10年。これに据置期間を組み合わせることで、月々の返済負担を大きく抑えられます。売上が立ち上がるまでに時間がかかる事業ほど、この条件面の価値は大きくなります。

担保や保証人なしで利用できる制度がある

マル経融資は無担保・無保証人です。新規開業・スタートアップ支援資金も、創業期については原則として無担保・無保証人での取り扱いが可能です。資産や保証人を用意できない事業者にも調達の道があります。

ただし、すべての制度が無担保・無保証というわけではありません。有担保にすれば利率が下がる関係にあるため、どちらを選ぶかは総合的に判断する必要があります。

民間金融機関とは異なる基準で審査される

民間の銀行は、過去の実績と現在の財務内容から返済能力を測ります。実績がなければ判断材料がなく、融資は難しくなります。公庫はここに事業計画の実現可能性という軸を持ち込むため、創業前の事業者でも融資の対象になります。

誤解されがちですが、これは「審査が甘い」という意味ではありません。判断材料が異なるだけで、その材料に対する厳しさは民間以上の場面もあります。公庫は審査基準を公表していないため、何が評価されるのかを理解して準備することが不可欠です。

融資実績が今後の信用につながる

公庫から借り入れて約定どおり返済していけば、それ自体が返済能力の実証になります。民間金融機関との取引実績を持たない創業期の会社にとって、この返済実績はその後の銀行融資や信用保証協会付き融資の交渉で明確な好材料として働きます。

知っておきたいデメリット

素早い資金調達には向かない

申込み、書類提出、面談、審査、契約という手順を踏むため、初回であれば融資実行までにおおむね1か月から1か月半程度を見ておく必要があります。書類の不備があればさらに延びます。今月末の支払いに間に合わせるという使い方はできません。

手続きに手間がかかる

決算書、試算表、納税証明書、通帳の写し、事業計画書など、提出書類は民間金融機関より多いのが実情です。設備資金であれば見積書も求められます。準備そのものに一定の工数がかかると考えてください。

金利の交渉余地がほとんどない

民間の銀行融資では、取引深耕や融資シェアを背景に金利の優遇を受けられることがあります。公庫にはこの余地がありません。特別利率の要件に該当するかどうかを事前に確認し、該当するように準備を整えることが唯一の対策です。

日本公庫にある3つの窓口の違い

日本政策金融公庫は、国民生活事業・中小企業事業・農林水産事業の3つの窓口に分かれています。どこに相談すべきかは、事業規模で大きく変わります。

国民生活事業中小企業事業
主な融資制度の限度額7,200万円7億2,000万円
1先あたりの平均融資残高 約800万円融資金額 約9,000万円
利用先の特徴約9割が従業者9名以下約8割が従業員20名以上
約9割が資本金1,000万円以上
利率の水準(2026年7月1日現在)無担保の基準利率 3.45〜5.20%貸付期間5年以内の基準利率 2.65%

国民生活事業は、限度額7,200万円の制度を持ちながら、1先あたりの平均融資残高は約800万円にとどまります。限度額まで借りられる前提で資金計画を立てると、まず狂います。この平均値を目安に据えたうえで、必要額と使いみちを積み上げて計算してください。

農林水産事業

農業・漁業・林業などの一次産業と、食品産業を支援する窓口です。自然災害で被害を受けた場合の特別融資や、6次産業化に取り組む事業者向けの制度も用意されています。

銀行融資と日本公庫はどちらを選ぶべきか

銀行融資は、事業実績が十分にあり、比較的短期で資金を調達したい場合に有利です。一方の公庫は、実績が乏しい創業期や、経営改善を目指す局面で選択肢になります。低金利かつ長期・据置期間ありという条件は、事業が立ち上がるまでの時間を買うという意味を持ちます。

なお、両者は排他的な関係ではありません。公庫からの融資と信用保証協会付きの銀行融資を組み合わせ、調達枠を分散させる方法も有効です。返済に回せるキャッシュフローの見通しを踏まえて、総合的に判断してください。

金利を把握したうえで、審査対策に進みましょう

公庫の金利は、事業区分・制度・担保の有無・申告期数によって決まります。まず自社がどの制度に該当し、どの特別利率を狙えるのかを確認することが出発点です。

そのうえで必要になるのが、審査への準備です。公庫は審査基準を公表していませんが、評価される軸は実務から読み取れます。事業計画の実現可能性、財務内容、経営者個人の信用情報など、押さえるべき論点は日本政策金融公庫の審査基準で詳しく解説しています。

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筆者ヒューマントラスト編集部

資金調達・資金繰りの実務に精通したヒューマントラスト編集部が、最新の制度・実務動向をふまえて記事を作成しています。

三坂大作(資金調達30年の実績を持つ認定経営革新等支援機関 統括責任者)
監修者三坂 大作
ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・取締役

東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
さらにニューヨーク支店にて国際金融業務も経験し、法務と金融の双方に通じたスペシャリストとして、30年以上にわたり中小企業・個人事業主の“実行型支援”を展開。

東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
さらにニューヨーク支店にて国際金融業務も経験し、法務と金融の双方に通じたスペシャリストとして、30年以上にわたり中小企業・個人事業主の“実行型支援”を展開。

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