ヒューマントラスト株式会社

2025
05 / 27

現代経営者に求められるスキルセットとは?

経営者のリーダーシップの変化

現代のビジネス環境は、技術革新だけでなく社会情勢やグローバルな文化変化など、多方面から大きな影響を受けています。コンサルティングクライアントの社長さんの中には、お世辞にも現代的な経営に関心があるとは言えない方もいます。情報通信技術を活用した業務から距離を置いて、オンラインミーティングもしなければ、LINEなどのコミュニケーションツールも使いません。メールすら使わない社長さんがいたりします。

しかし、経営者が現代の激しい事業環境変化に適切に対応し、企業を成長へ導くためには、従来の経営知識だけでなく、先端技術の導入や柔軟な経営思考や国際的な視点が不可欠です。

そして、従業員のモチベーションを高めながら、時には方向性を大胆に変え、失敗を恐れずに新たな挑戦を行うことが求められます。

ここでは「経営者の資質とは?」というテーマを軸に、経営者のタイプや役割、さらには成功や失敗の事例を紹介しながら、事業ステージに応じてどのようなスキルや視点が必要なのかを整理して解説します。

 

経営者の資質の類型とは?

経営者の資質(リーダーシップ、決断力、ビジョン、実務能力など)には多様なパターンがあり、大きく分けると「慎重派」「革新派」「調整派」「先導派」といった分類が考えられます。

たとえば慎重派はリスク管理を重視し、財務面や組織面で地道に安定を図るタイプです。一方、革新派は新しいビジネスモデルやイノベーションを起こす経営者として知られています。

調整派は社内外の意見を吸い上げて問題解決を図り、社内コミュニケーションを円滑にすることが得意です。そして先導派はカリスマ的なリーダーシップを発揮し、自ら強いビジョンを示して組織を引っ張っていきます。

実は、経営者にとっては、これらのタイプのどれもが必要な資質であり、一人の経営者が、場面に合わせて複数の特徴を持ち合わせるケースも珍しくありません。大切なのは、自社の事業フェーズや環境に合った経営資質を伸ばし、時には自分に足りない要素を周囲の人材で補う柔軟性を持つことと言えます。

 

事業ステージごとの経営者の役割

そもそも、企業の成長には段階があり、経営者の使う戦略や必要なスキルが、企業成長のフェーズごとに変化するのが当然です。

スタートアップから成熟期、さらには事業再生が必要なタイミングまで、それぞれの事業ステージに合わせたリーダーシップを発揮できるかが重要なのです。

ここでは4つの事業フェースに分けて、経営者がどのような役割を担い、どのように組織や従業員を動かすかを具体的に検証します。

経営者が自社の置かれた状況を常に客観視し、必要であれば、経営者自身のスキルや発想を切り替えることが不可欠です。経営の一貫性は大切ですが、むしろ事業環境の変化に柔軟に対応する「適応力」が求められます。

スタートアップフェーズ

スタートアップフェーズでは、ビジョンの明確化と市場機会の発見力が重要になります。

まだ顧客基盤も組織体制も弱い時期ですから、経営者には新規市場を見つけたり、不確定要素に素早く対応したりするリスク管理能力が不可欠です。

また、少数精鋭のチームを率いる上で、コミュニケーション能力が大変大切になります。経営幹部同士の意思疎通がスムーズであるほど、事業の方向性を素早く定められるからです。

失敗を恐れずに試行錯誤を繰り返し、素早くピボット(方向転換)を行うこともスタートアップの醍醐味です。経営者は事業現場に近い立場で判断を下し、必要とあれば即座に手を打つ力ことが重要だと言えます。

成長フェーズ

事業が軌道に乗りはじめ、組織が拡大する成長フェーズでは、経営者のマネジメントスタイルが試されます。

人員を増やす際に組織文化を根付かせることや、チームを適切に編成して役割分担を明確にすることが求められます。

さらに、質量ともに急激に増える業務量や新規顧客への対応力が試されるため、適切な管理手法と目標設定が不可欠です。この時期には、経営者がビジョンや事業コンセプトを継続して強く社内外に発信し、従業員を巻き込むモチベーションづくりが大切になります。

成長フェーズにおいて成長を持続可能にするためには資金調達力や外部との効率的な連携も必要です。投資家やパートナー企業との連携を強化しながら、経営者本人も学習と自己成長を続ける柔軟な姿勢が大事です。

成熟フェーズ

ある程度の成長を遂げて安定期に入った企業では、市場シェアの維持と緩やかな事業の拡大が経営戦略上の主要テーマになります。

経営者には自社のビジネスモデルや製品・商品・サービスに関して、競合他社との戦略的な比較や、ブランド価値の向上に注力することが求められ、一方でビジネスモデルや製品・商品・サービスのアップデートを促進するイノベーションの推進に注意する必要もあります。

特に、社内の意思決定プロセスが複雑化しやすい時期でもあるため、経営者のリーダーシップと調整力が業績に大きく影響します。企業を取り巻く各種情報の集約を適切に行い、迅速な経営判断を維持することがポイントです。

また、人材育成や後継者の育成もこのフェーズでは非常に重要です。経営者が次の世代にノウハウを継承し、組織全体の持続可能性を高めることが、企業の持続可能な発展に貢献します。

再生・変革フェーズ

業績不振や環境の急変によって、企業が危機に陥ることは珍しくありません。この事業再生・事業変革フェーズには経験豊富な経営者や外部コンサルタントの存在が大きな助けとなります。

まずは企業の窮境に関する現実的な問題点を洗い出し、事業の構造改革やマーケティング戦略の変更など、抜本的な改革を断行するリーダーシップが必要です。バランスシートを見直す財務的視点や、社員のモチベーションを再度高める法的対応力も重要になります。

むやみにリストラを進めるだけではなく、事業再生のために必要なコストや投資をしっかりと見極められるかが勝負の分かれ目です。事業変革を成功させるには、経営者の決断力や問題解決能力が一層試されるのですが、独善的な改革に陥らないためには、外部の専門家やコンサルタントとともに経営革新を進めることも検討することも選択肢だと言えます。

 

歴史を彩る経営者たち

過去には優れたビジョンを持ち、新たな産業を打ち立てた経営者が数多く存在します。また、逆に失敗を経験しながら多くの教訓を残した経営者もいます。

これらの過去の事例を学ぶことは、現代のビジネスにも大きく役立ちます。歴史的経営者のリーダーシップや戦略、そしてどんな環境下で成功や失敗が起こったのかを知ることで、経営者が今後直面する課題を広い視野で捉えることができるのです。

先人たちの経験を活かすことで、リスクを最小限にとどめながら企業を前進させる指針を得られるでしょう。

成功した経営者の事例

世界的に有名な成功談としては、革新的な製品を出し続けたテクノロジー経営者が挙げられます。彼らは経営者のビジョンを明確に掲げ、商品やサービスを通じて新たな市場を作り出しました。

例えば、当初は無名でも画期的な製品・サービス・ビジネスモデルを発表し、消費者の行動を変化させた企業があります。そこでは、トップのリーダーシップとコミュニケーション能力が重要な役割を果たしたのです。スティーブ・ジョブスや松下幸之助などは典型だと言えるでしょう。また、事業再生においてはアメリカの自動車産業を支えたリー・アイアコッカなども挙げられるかと思います。

成功者の多くは自社の強みを正しく把握し、市場でのポジションを迅速に確立する戦略をもっていました。また、厳しい局面でもあきらめずに挑戦し続け、周囲を鼓舞しながら前進する姿勢が共通点といえます。

失敗した経営者の教訓

一方で、失敗した経営者の事例には共通する落とし穴が見られます。自社の成功に過信して市場や顧客の声に耳を傾けず、競合への対応が遅れた結果、売り上げが急激に減少してしまったケースもあります。

また、社内の独裁的な経営や倫理観の欠如が深刻な不祥事を招き、企業ブランドを毀損した例もあります。経営者の倫理観やガバナンスを軽視すると、信頼回復に多大な時間とコストを要することになりかねません。

失敗例を他山の石とすることで、問題解決能力やリスク管理の大切さを再認識できます。教訓をしっかり受け止め、組織全体で共有していくことで同じ過ちを繰り返さないようにしましょう。

 

現代の経営者に求められるスキルと知識

現代の劇的に変化する社会や経済状況においては、経営者は多角的な能力を求められています。特に、テクノロジーへの適応、持続可能な経営と社会的責任、そしてグローバル視点の3つについては、現代の経営者にとって必須の経営課題だと言えるでしょう。

どの要素も気候変動や国際関係、デジタル化といった現代の課題に取り組むうえで大きな意味を持つからです。

革新的な技術を使いこなしながらも、企業活動が社会全体に与えるインパクトを考慮し、多様な文化や価値観を受け入れる対応力が、現代の経営環境においてはとくに重要になっているのです。

テクノロジーとデジタル化への適応

企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)は、単なるシステム導入にとどまりません。経営者が自らデジタル技術のメリットを理解し、それを社内戦略に組み込む力が求められます。DXはいままでのビジネスモデルや業務プロセスを抜本的に改革する経営意識が極めて重要です。

具体的にはビッグデータの分析力、リモートワーク体制の整備、SNSを活用したマーケティング戦略などが挙げられます。これらは単にコストを抑えるだけではなく、新たな収益源を開拓する手段にもなります。

必要があれば外部コンサルタントや専門家を活用することも効果的です。経営者としては従業員に最新技術に対する教育機会を提供し、学習環境を整備することも重要な役割になるのです。

  • 持続可能な経営と社会的責任

環境保護への配慮や地域社会への貢献は、昔に比べると格段に注目度が高まっています。経営者の倫理観と持続可能性への意識が弱いと、消費者や投資家からの信頼を失いかねません。いわゆるESG経営に対する取り組みは、企業の持続可能性を測る重要な経営課題となっています。

社会的責任を果たすために、環境に配慮した生産工程の見直しや、フェアトレードなどの取り組みを導入する企業も増えています。こうした動きは時としてコスト増加の要因にもなりますが、長期的には企業イメージの向上や新規市場の開拓につながることが多いです。

直接利益につながらない活動でも、企業文化やブランディングに大きく寄与しますので、時間管理とコスト管理を強化し、未来への投資として社会的な取り組みを経営理念に組み込む必要があります。

グローバルな視点と多文化理解

近年、外国人労働者の受け入れや海外市場への展開が当たり前になり、企業のグローバル化が加速化しています。そのため、異文化コミュニケーションのスキルを備え、グローバル戦略を検討することが経営者に求められます。

外国人従業員を含めた多文化チームを統率するには、一方的に指示を出すのではなく、異なる文化的背景を尊重して意見を引き出す力が不可欠です。こうした多様性を活かすマネジメントスタイルによって、企業組織を活性化するイノベーションが起きやすい環境が整います。

国際的な市場調査やアライアンス構築の際にも、現地の文化やビジネス慣習を理解しておくとリスクが減ります。世界的な視点でマーケットを捉える経営者であれば、社会変化に対して柔軟かつ先進的な対応が可能になるでしょう。

まとめ:現代の経営者に求められる資質とは?

現代の経営者は、市場の変化や技術革新のスピード、ごく短期間で起こりうる社会的価値観の変動に自身のリーダーシップをしっかり順応させる必要があります。

どのタイプの経営者であっても、大切なのは適切な自己認識と、事業ステージや経営環境に合わせて自分のアプローチを柔軟に変えられる対応力です。成功例や失敗例から学び、歴史的経営者の事例を研究しながら、多面的な視野を養うことも有効な経営判断につながります。

今後は生成AIなどの先端テクノロジーを戦略的に活用し、持続可能性や社会的責任の意義を理解し、多文化を包含するリーダーシップを発揮できる人材が、企業をさらなる成長へと導くと考えられます。経営者の資質を深く追究し、それを実践に移す姿勢こそが、未来を切り拓く鍵になるのです。

ヒューマントラストでは、クライアントにESG経営やデジタル化、グローバル化といった現代的な経営を導入することを推奨していますので、是非、気軽に相談いただければと思います。

 

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