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公開日:2026.01.30

更新日:2026.01.30

【M&A・事業承継を成功させる】第3の選択肢「メザニンファイナンス」とは?自己資金を抑えて買収を実現する攻めの財務戦略

M&Aや事業承継を支えるメザニンファイナンスを象徴する、銀行と資本の架け橋となる光り輝く道と、未来を見据えるビジネスパーソン。

「会社を買収したいが、銀行融資だけでは届かない」
「後継者に譲りたいが、株価が高すぎて買い取れない」
経営戦略が高度化する今、こうした壁に突き当たる中小企業が急増しています。

従来の「銀行借入(デット)」か「自己資金・増資(エクイティ)」か、という二択の思考では、M&Aや事業承継のパズルは完成しません。

ここで、成約への決定打となるのが、両者の「いいとこ取り」をした第3の選択肢「メザニンファイナンス」です。

本記事では、この高度な金融スキームを実務レベルで徹底解説します。

この記事のポイント

  • メザニンファイナンスは「借入(デット)」と「増資(エクイティ)」の中間に位置する第3の資金調達手法
  • M&Aや事業承継において、銀行融資では足りない「資金のギャップ」を埋める調整役として機能する
  • 経営権の希薄化を抑えつつ、レバレッジを効かせた大規模な買収や円滑なMBOを実現できる
  • 設計には高度な「LBOモデリング」が必要なため、金融実務のプロによる伴走が不可欠

「メザニン」とは何か? 負債と資本の「中二階」

結論:メザニンファイナンスとは、借入(デット)と増資(エクイティ)の中間に位置する資金調達手法で、劣後ローンや優先株が代表例です。

聞き慣れない言葉かもしれませんが、「メザニン(Mezzanine)」とは、元々建築用語で「中二階」を意味する言葉です。一階(デット)と二階(エクイティ)の間にあることから、金融の世界では「中二階ファイナンス」とも呼ばれます。

リスクとリターンの位置づけ

資金の出し手(投資家・金融機関)から見たとき、メザニンファイナンスは「ミドルリスク・ミドルリターン」の商品です。

  • ローリスク・ローリターン:銀行融資(シニアローン)
  • ミドルリスク・ミドルリターン:メザニンファイナンス(劣後ローン、優先株など)
  • ハイリスク・ハイリターン:株式出資(普通株式)

企業側から見れば、「銀行よりは金利コストが高いが、株式のような経営権の希薄化は避けられる(または限定的)」という、まさに両者の中間的な性質を持っています。

会社が倒産した時の「並び順」で理解する

結論:メザニンは、銀行融資(シニアローン)より弁済順位が低く、株主よりは優先される「ミドルリスク・ミドルリターン」の立ち位置にあります。

メザニンファイナンスの本質を理解するには、「万が一会社が倒産・清算したときに、誰から順にお金が返ってくるか」という優先順位(弁済順位)を知るのが近道です。

弁済順位のウォーターフォール

資金調達手法のリスク・リターンと弁済順位

① シニアローン(銀行融資)

  • リスク:低 / リターン:低
  • 弁済順位が最も高く、金利コストが低い経営の土台。

② メザニン(中二階)

  • リスク:中 / リターン:中
  • 劣後ローン、優先株など。シニアの次、株主より先に弁済。

③ エクイティ(普通株)

  • リスク:高 / リターン:高
  • 弁済順位は最後。経営権への影響が最も大きい。
  1. 最優先:公租公課(税金など)、従業員の給与
  2. 第2位:銀行からの借入金(シニアローン)
    ※担保を設定している場合、ここが最も手堅く保護されます。
  3. 第3位:メザニンファイナンス(劣後ローンなど)
  4. 最後:株主(エクイティ)

メザニンファイナンスの提供者は、銀行(シニアローン)への返済がすべて終わった後でなければ、自分たちの資金を回収できません。銀行よりもリスクを取って貸してくれる存在であるため、その分、金利は高めに設定されます。
一方で、株主よりは優先されるため、株式投資ほどのリスクは負いません。この絶妙な立ち位置が、複雑な資金調達の現場で「調整役」として機能するのです。

M&Aの現場で活躍する「LBOファイナンス」の仕組み

結論:LBOでは、銀行が評価しにくい「のれん代(将来の収益力)」による資金ギャップを埋めるため、メザニンが不可欠なピースとなります。

メザニンファイナンスが最も活用されるのは、M&A、特に「LBO(レバレッジド・バイアウト)」と呼ばれるスキームにおいてです。
LBOとは、買い手企業の信用力ではなく、「買収される対象企業の将来のキャッシュフロー」を担保にして資金を借り入れ、買収を行う手法です。

「のれん代」が生む資金の穴(ギャップ)

優良企業を買収しようとすると、買収価格は純資産額(解散価値)よりも高くなるのが一般的です。この上乗せ部分を「のれん代(営業権)」と呼びます。
しかし、日本の銀行の融資審査は、依然として「有形資産(担保価値)」を重視する傾向があります。「のれん代」のような無形の将来価値に対しては、十分な融資枠が出ないことが多いのです。

例えば、買収に10億円必要なのに、銀行からは「資産評価額の6億円までしか貸せない」と言われたとします。
残り4億円をどうするか。全額を自己資金や増資(エクイティ)でまかなおうとすると、巨額の資金負担や、持ち株比率の低下(株式の希薄化)を招くリスクがあります。

ここで、銀行融資では足りないが、エクイティで出すには重すぎる部分を埋めるために、メザニンファイナンスが利用されるのです。これを具体的な数字でシミュレーションしてみましょう。

【ケーススタディ】買収資金10億円をどう集める?

あなたが企業を買収するために10億円が必要だとします。しかし、手元の自己資金は2億円しかありません。残り8億円を調達する必要があります。

  • 銀行(シニアローン):対象企業の資産を担保に5億円まで融資可能と言われました。金利は1%と安いです。
  • 不足分:10億円 - 2億円(自己資金)- 5億円(銀行)= 残り3億円が足りません。

この「残り3億円」を諦めるか、あるいは別の投資家を呼んで株式を渡す(経営権を一部渡す)か。ここで第三の選択肢としてメザニンファイナンスを活用します。

  • メザニン(劣後ローン等):金利は8%と高いですが、担保なしで、かつ経営権を渡さずに3億円を貸してくれました。

結果として、2億円の自己資金で10億円規模の買収を実現する「レバレッジ効果」を引き出しつつ、理論上、経営権を100%維持したままスキームを完結させることが可能です。

高い金利は、買収した会社が生み出す将来の利益(キャッシュフロー)から支払えば良いのです。

このように、メザニンはM&Aを成立させるための「ラストワンマイル」を埋める重要なピースとなります。

事業承継(MBO)における「後継者」の強い味方

結論:後継者が自社株を買い取る資金が不足する場合、メザニンを活用すれば、経営権(議決権)を確保しつつ多額の買収資金を調達できます。

この仕組みは、第三者へのM&Aだけでなく、親族外承継や従業員承継(MBO/EBO)でも極めて有効です。

優秀なナンバー2や役員に会社を譲りたいと考えても、今の会社の株価が数億円になっている場合、サラリーマンである後継者個人には買い取る資金がありません。

この時、金融機関と組んで「後継者が設立した受け皿会社(SPC)」が資金を借りて株を買い取る形をとりますが、ここでも銀行融資だけでは届かないケースが多々あります。

そこでメザニンファイナンス(優先株式など)を組み合わせることで、後継者は過半数の議決権(普通株式)を確保しつつ、資金調達を行うことが可能になります。

メザニンファイナンスは、事業承継問題という社会課題を解決する切り札としても注目されているのです。

貴社のケースでメザニン活用は可能か?

「銀行融資が足りない」「経営権を守りたい」など、具体的なお悩みをご相談ください。専門家がスキームの可能性を診断します。

代表的なメザニン手法:劣後ローンと優先株式

結論:「資本性劣後ローン」は銀行から自己資本とみなされやすく、「優先株式」は経営権を渡さずに資本増強ができるという、それぞれ異なる強みがあります。

中小企業の現場で実際に使われるメザニンファイナンスの代表的な手法を紹介します。

資本性劣後ローン(劣後債)

「借入」でありながら、銀行の査定上は「自己資本」とみなしてもらえるローンです。

返済順位が低いため(劣後するため)、これが入っているとメインバンクなどの他の金融機関は「資本が厚い会社」と見てくれ、通常の融資(シニアローン)が受けやすくなるという「呼び水」効果があります。

日本政策金融公庫などが提供している「資本性ローン」もこれに該当し、再生局面や創業期によく活用されます。

優先株式

普通株式とは異なる条件がついた株式です。一般的には「議決権(経営への口出し権)はないが、配当を優先的に受け取れる」という設計にします。

経営者にとっては、経営権を維持したまま資本増強ができるメリットがあります。投資家にとっては、経営には関与しない代わりに、安定した配当利回りを確保できるメリットがあります。

高度な設計には専門家(LBOモデリング)が不可欠

結論:メザニンは将来のキャッシュフローを原資とするため、精緻な収益シミュレーション(LBOモデリング)と高度な実務知識が成功の鍵を握ります。

メザニンファイナンスは、非常に自由度が高い反面、設計が複雑です。
「将来のキャッシュフローで返済できるか?」を厳密にシミュレーションする必要があり、これを「LBOモデリング」と呼びます。

将来の売上予測、コスト削減効果、設備投資計画などを綿密に計算し、「これなら金利〇〇%のメザニンを入れても5年で完済できる」というモデルを構築しなければなりません。

これには高度な金融知識が必要となるため、顧問税理士だけでなく、M&Aアドバイザーや専門的な金融コンサルタント、あるいは投資ファンドの担当者など、プロフェッショナルの力を借りることが成功の条件となります。

詳細は、国の認定を受けた中小企業庁の経営革新等支援機関制度をご確認ください。

メザニン活用のメリットと注意点

結論:少ない自己資金で大きな買収を可能にする「レバレッジ効果」が最大の利点ですが、金利コストが通常の融資より高い点には注意が必要です。

最後に、経営者にとってのメリットと注意点を整理します。

メリット:M&Aの成約率を高める「潤滑油」

最大のメリットは、資金調達の総量を増やせることです。
シニアローンとエクイティの間にメザニンを挟むことで、少ない自己資金で大きな買収(レバレッジ)が可能になります。これにより、本来なら手が出ないような規模のM&Aを実現させ、事業成長の時間を買うことができます。
また、議決権の希薄化を抑えられるため、オーナー経営者としての支配権を守りながら資金調達ができる点も大きな魅力です。

注意点:高コストと専門知識の必要性

一方で、コストは割高です。銀行融資が1〜2%程度だとすれば、メザニンファイナンスは数%〜10%台後半になることも珍しくありません。

高いリターンを求められるため、買収後の事業計画(PMI)が予定通り進まないと、金利負担が経営を圧迫することになります。

まとめ:ファイナンスは「経営の武器」である

全4回にわたり、資金調達の多様化について解説してきました。

  1. デットファイナンス(融資):低コストで確実な、経営の土台。
  2. 社債・直接金融:経営者の信用力でファンを作る応用編。
  3. エクイティファイナンス(増資):リスクを共有し、爆発的成長を狙うエンジン。
  4. メザニンファイナンス:M&Aなどの特殊局面を突破する切り札。

「銀行とどう付き合うか」だけが財務だった時代は終わりました。今やファイナンスの選択肢は、かつてないほど広がっています。

大切なのは手法の優劣ではありません。「自社の現在地と、成し遂げたい未来に、どのピースをはめるべきか」を見極める決断力です。

財務は単なる「お金の工面」ではなく、企業の未来を切り拓く最強の武器になります。 攻めの財務戦略で、次なる成長への一歩を共に踏み出しましょう。

攻めの財務戦略:資金調達シリーズ

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三坂 大作
監修者三坂 大作
ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・取締役

東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
さらにニューヨーク支店にて国際金融業務も経験し、法務と金融の双方に通じたスペシャリストとして、30年以上にわたり中小企業・個人事業主の“実行型支援”を展開。

東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
さらにニューヨーク支店にて国際金融業務も経験し、法務と金融の双方に通じたスペシャリストとして、30年以上にわたり中小企業・個人事業主の“実行型支援”を展開。

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