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公開日:2026.02.13

更新日:2026.02.13

経営者のためのM&A・事業承継「戦略と決断のタイミング」|元銀行員が教える成功の3基準

日の出を背景に、戦略地図、かみ合う歯車、砂時計を前にM&Aと事業承継の重大な決断を下そうとする経営者の真剣な姿。

経営者の皆さまが、会社の将来やご自身の資産承継について考えたとき、必ず直面するのが「M&Aや事業承継のタイミング」という極めて重い課題です。

事業を誰に、いつ、どのような形で託すのか。

この判断は、これまでの経営人生で築き上げてきた努力の集大成であり、同時にその後の人生や従業員の未来、そして地域社会の経済をも左右する、最も重要な経営判断といえます。

しかし、多くの場合、日々の激務の中でこの課題は「まだ先のこと」として後回しにされがちです。

一方で、いざ検討を始めたときには選択肢が狭まっており、理想とは程遠い形での承継を余儀なくされるという現実も少なくありません。

本記事では、三坂流の視点から、M&A・事業承継の基本概念を再定義し、企業価値を最大化させるための適切なタイミング、そして経営者が今見据えるべき本質的な視点について詳しく解説します。

皆さまが、会社という大切なバトンを最高の状態で次世代へつなぐための指針としていただければ幸いです。

この記事の要点
  • M&Aの正体:会社を売ることは「終わり」ではなく、成長を加速させる「攻め」の戦略である。
  • 決断の旬:業績が良いとき、社長が健康なとき、そして業界が再編されている「今」が最大の好機。
  • 価値の磨き上げ:「社長がいなくても回る組織」を構築することが、譲渡価格を最大化する最短ルート。
  • 経営者の責任:廃業による損失を回避し、次世代へバトンを繋ぐことは創業経営者「最後の仕事」。

事業承継とM&Aを「攻め」の戦略として再定義する

結論:M&Aは「身売り」ではなく、外部資源を取り込み企業の成長スピードを劇的に加速させるための「攻め」の経営判断です。

かつて、日本におけるM&Aには「身売り」というネガティブなイメージがつきまとっていました。しかし、現在の経営環境において、これは完全な誤解であり、非常にもったいない考え方です。

事業承継やM&Aは、決して「幕引き」のための手段ではありません。むしろ、停滞した経営資源を再編し、成長のギアを一段上げるための最強の「攻め」の戦略に他ならないのです。

親族内承継から「第三者承継(M&A)」へのパラダイムシフト

多くの中小企業が、親族内での後継者不在という深刻な課題に直面しています。しかし、これは見方を変えれば「血縁という枠を超えて、最もふさわしい経営者に事業を託せるチャンス」でもあります。

プロのアドバイザーが介在する現場では、M&Aによって大手企業の資本力や販売網が加わり、会社が劇的に若返り、成長を遂げる姿が数多く見られます。

後継者がいないことを嘆くのではなく、M&Aという選択肢を経営の選択肢に加えることで、企業の可能性は無限に広がります。

「選択と集中」による経営基盤の強化

M&Aは、会社全体の譲渡だけではありません。特定の不採算部門を切り離し、得意とする中核事業にリソースを集中させる。あるいは、自社に足りない機能を他社から取り込む。

こうした動的な経営判断こそが、不透明な時代を生き抜くための鍵となります。事業承継を一つのきっかけとして、自社のドメイン(事業領域)を再定義する姿勢こそが、経営者に求められる「攻め」の姿勢です。

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専門家の介在によって、実際に事業承継やM&Aを成功させた企業の【活用事例・支援実績】を詳しくご紹介しています。自社の未来を描くヒントとしてご活用ください。

最高の成約を導く「3つのタイミング」と判断基準

結論:業績絶頂期の「経済的旬」、心身充実の「身体的旬」、業界再編の「市場的旬」の重なりこそが、最高値での成約好機です。

M&A決断を下すべき「3つの旬」

1. 経済的タイミング

  • 業績ピーク時:利益が出ている時こそ高値がつく。
  • 投資直前:大規模な設備投資が必要なタイミング。

2. 身体的タイミング

  • 60歳前後:準備に3〜10年かかることを逆算。
  • 健康維持期:気力・体力が充実している間に交渉。

3. 外部的タイミング

  • 業界再編:大手が買収を強化している「旬」。
  • 市場飽和前:需要がなくなる前にバトンを渡す。

M&Aにおいて「いつ動くか」という問いは、譲渡価格だけでなく、成約後の従業員の処遇を左右する最大の要因です。

三坂流の支援において、私が最もこだわり、経営者に徹底して問いかけるのが以下の3つのタイミングです。

業績のピークを見据えた「経済的タイミング」

買い手が最も高い評価をつけるのは、当然ながら「今まさに利益が出ており、将来も成長が見込める会社」です。

実務上の指標で言えば、営業利益に減価償却費を加えた「EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)」が最大化している時期こそが、最高の売り時です。

多くの中小企業M&Aでは、このEBITDAの数年分(EBITDA倍率)に純資産を加味して譲渡価格が算出されるため、業績が少しでも陰りを見せると、受け取れる対価は数千万、数億円単位で目減りしてしまいます。

また多くの経営者は、業績が悪化し始めてから検討を始めますが、それでは足元を見られ、希望条件を通すことは極めて困難になります。

いわゆる「右肩上がり」の時期、あるいは「これからさらなる投資が必要な時期」にこそ、出口戦略を具体化させるべきです。

自社の価値がピークにある瞬間にバトンを渡すこと。

これこそが、長年共に歩んできた従業員の未来を守り、同時に経営者が心血を注いで築いた成果を「創業者利益」として正当に受け取るための、経営者として最も賢明な決断だと私は確信しています。

経営者の心身に余裕がある「身体的タイミング」

M&Aのプロセスは、想像以上にエネルギーを消耗するものです。買い手との面談、膨大な資料の準備、そして最終的な苦渋の決断。これらを完遂するには、経営者自身が健康であり、冷静な判断力を保っている必要があります。

一般的に、事業承継の本格的な準備には3年から5年、長ければ10年かかります。気力が充実している60歳前後を、一つの大きな「決断のデッドライン」として設定しておくべきでしょう。

不測の事態が起きてから急いで進めるM&Aは、買い手から足元を見られるリスクを孕んでいます。

市場環境と業界再編の波を捉える「外部的タイミング」

自社の状況だけでなく、業界全体の動向も無視できません。例えば、特定の業界で大手による再編(ロールアップ)が進んでいる時期は、買い手の意欲が非常に高く、通常以上のプレミアム価格がつくことがあります。

逆に、市場が飽和し、衰退期に入ってからでは買い手を見つけることすら困難になります。常にアンテナを張り、業界の「旬」を逃さない鋭い観察眼が、経営者には求められます。

「2025年問題」の現実化と後継者不在:今、経営者が直面している真の危機

結論:ポスト2025年、黒字廃業の危機は「予測」から「現実」へ。雇用と技術を次代へ繋ぐM&Aは、経営者最後かつ最大の使命です。

日本の中小企業が長年危惧してきた「2025年問題」。その年を越えた今、私たちが目にしているのは、危惧されていた事態の「現実化」です。

経営者の高齢化に伴い、黒字でありながらバトンを渡せないために廃業の瀬戸際に立たされる企業が、今まさに急増しています。

これはもはや「いつか来る問題」ではなく、今この瞬間、日本の経済基盤を揺るがしている現在進行形の危機に他なりません。

「廃業」という選択肢がもたらす連鎖的損失

もし皆さまが「自分の代で終わりにする」と決断し、廃業を選んだ場合、何が起きるでしょうか。長年苦楽を共にしてきた従業員は職を失い、その家族の生活も脅かされます。

また、皆さまを支えてきた仕入先や外注先とのネットワークも断絶され、地域経済の重要な歯車が一つ、確実に止まってしまいます。

これは一企業の幕引きという枠を超えた、地域社会全体の取り返しのつかない損失です。

次世代へのバトンタッチは経営者最後の仕事

企業を存続させることは、経営者の公的な責務です。M&Aを通じて、自社が培ってきた技術、ノウハウ、顧客リスト、そして企業文化という「無形の財産」を次世代へつなぐ。

最良の形でバトンをつなぐための準備を早くから始めること。それは自分自身のためだけではなく、会社に関わるすべての人への「最後の愛の形」ではないでしょうか。

詳細は、中小企業庁が策定した「中小M&Aガイドライン」をご参照ください。専門家を選ぶ際の基準が示されています。

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企業価値を最大化する「磨き上げ」の具体的なアプローチ

結論:財務諸表に載らない「独自の強み」を言語化し、「社長不在でも回る組織」を早期に構築することが、譲渡価格を最大化させます。

企業価値を左右する「磨き上げ」のチェックポイント

▲ 評価が下がるリスク要因

  • 社長の属人化:社長がいないと現場が回らない状態。
  • 不透明な財務:私的な経費混入や不明瞭な勘定科目。
  • コンプラ未整備:未払い残業代や契約書の不備。

◎ 高値がつくプラス評価要因

  • 組織的経営:マニュアル化され、次世代リーダーがいる。
  • 強みの言語化:独自の技術や顧客基盤が数値化されている。
  • 成長余地の提示:買い手の資本が入ることで伸びる根拠。

企業価値は、決算書に記載された数字だけで決まるものではありません。買い手が「この会社をいくら出しても欲しい」と思うかどうかは、数字の裏側にある「強み」の透明性にあります。

財務諸表に表れない「目に見えない資産」の言語化

M&Aの実務において、評価を大きく左右するのは、現場に根付いた「無形資産」です。

例えば、他社には真似できない独自の製造工程、長年離職者が少ない安定した組織、特定のニッチ市場における圧倒的なシェアなどです。これらは決算書には載りませんが、買い手にとっては最も価値のある情報です。

これらの強みを客観的なデータやストーリーとして言語化し、プレゼンテーションできるようにしておくこと。

これが、企業価値を劇的に高める「磨き上げ」の第一歩であり、買い手の心を動かす最大の差別化ポイントになります。

「属人化」からの脱却と持続可能な組織作り

中小企業に多いのが、社長一人の能力や人脈に依存している「属人化」の状態です。買い手から見れば、これは「事業継続性への懸念」という、致命的なマイナス評価に直結してしまいます。

マニュアルの整備や権限移譲を進め、「社長がいなくても回る組織」を構築しておくことは、M&Aにおける評価額を最大化させるための最も実効的な準備となります。

内部統制やコンプライアンスの整備も含め、会社の「健康診断」を定期的に行うことが重要です。

磨き上げには、法務・財務の両面から経営を俯瞰できるパートナーが不可欠です。ヒューマントラストが提供する【経営革新等支援機関としてのサポート】の詳細は、こちらをご覧ください。

まとめ

M&A・事業承継は、経営者が人生をかけて築き上げてきた「価値」を次代へつなぐ、崇高なバトンタッチです。

その決断をいつ下すか、どのように準備するかによって、会社の未来、従業員の人生、そして経営者ご自身の第二の人生の質は180度変わります。

「まだ早い」という考えは、時に最大の機会損失を招きます。まずは、自社の現状を客観的に見つめ直し、今の会社が市場でどのように評価されるのか、どのような課題があるのかを知ることから始めてください。

適切なタイミングで適切な準備を行うこと。それこそが、会社に関わるすべての人を幸せにする唯一の道です。

次回の記事(後編)では、決断を下した後に具体的にどのようなステップを踏むべきか、実務プロセスの詳細と、有利な条件を引き出すための「プロの交渉術」について徹底解説します。

成約を確実なものにしたい方は、ぜひ続けてご覧ください。

「まだ検討段階だが、自社の価値を知っておきたい」「タイミングを逃したくない」といった、最初の一歩に迷われている方は、以下のフォームよりお気軽にご相談ください。
三坂をはじめとする専門スタッフが、貴社の想いに寄り添い、共に最善の道を探ります。

Professional Message

「経営者が、最後の一日まで経営に集中できるように。その先のバトンは、私たちが責任を持って引き受けます。」

ヒューマントラスト株式会社 取締役 三坂 大作

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三坂 大作
監修・執筆者三坂 大作
ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・取締役

東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
さらにニューヨーク支店にて国際金融業務も経験し、法務と金融の双方に通じたスペシャリストとして、30年以上にわたり中小企業・個人事業主の“実行型支援”を展開。

東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
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