公開日:2025.12.01
更新日:2025.12.01
「創業支援融資が借りられない!」と諦める前に。審査の壁を乗り越えるプロの資金調達術
創業支援融資は、新たに事業を始めようとする起業家や中小企業者にとって、事業の命運を分ける重要な資金調達手段の一つです。
創業期は、どれほど優れたアイデアがあっても、それを実行に移すための資金が不足しがちです。特に自己資金が限られている場合、外部からの資金調達は必要不可欠と言えるでしょう。適切な資金調達ができれば、設備投資や人材確保がスムーズに進み、ビジネスの成功確率は飛躍的に高まります。
しかし、「創業融資は誰でも借りられる」わけではありません。実際に申請しても、残念ながら審査に落ちてしまうケースは後を絶ちません。
なぜ、借りられる人と借りられない人がいるのでしょうか?
今回は、2025年現在の創業支援融資の現状やトレンド、審査で見られるポイント、そして融資を成功させるための具体的な対策について詳しく解説していきます。
- 創業融資の審査落ち原因のNo.1は「自己資金の根拠」と「信用情報の傷」
- 2025年は金利上昇局面にあるが、革新的事業への支援は継続して手厚い
- 銀行は「担保」よりも「事業性評価(儲かる仕組み)」を最重要視する
- 「借りられない」と諦める前に、専門家による事業計画の再構築が有効
創業支援融資とは?基本をおさらい
創業支援融資とは、主にこれから事業を立ち上げようとする個人や法人、または創業して間もない企業(概ね創業7年以内など)に対して、金融機関や政府系機関が提供する融資制度の総称です。
通常、銀行融資は「過去の実績(決算書)」を重視して審査を行いますが、創業企業には実績がありません。そのため、実績の代わりに「将来性」や「事業計画の確度」、「経営者の資質」を評価して融資を行うのが最大の特徴です。事業の運転資金や設備投資など、創業初期に必要となる資金を借り入れるための手段であり、一般的なビジネスローンに比べて金利や返済期間などの借入条件は優遇されています。
日本においては、以下の3つのルートが代表的です。
日本政策金融公庫(JFC)の創業融資
日本政策金融公庫(公庫)は、政府が100%出資する金融機関であり、創業融資における「最後の砦」とも言える最大の機関です。民間の銀行がリスクを取れないような創業間もない段階でも、積極的に融資を行っています。
最大の特徴は、「無担保・無保証人」で利用できる制度(新創業融資制度の特例など)がある点です。万が一事業に失敗しても、代表者個人が連帯保証債務を負わなくて済むケースがあるため、起業家のリスク軽減につながります。また、金利も固定金利で比較的低く設定されており、資金繰りの計画が立てやすいのもメリットです。
現在は「新創業融資制度」が「新規開業資金」に統合され、より幅広い創業支援が行われています。
詳細:新規開業資金|日本政策金融公庫
地方自治体の創業支援融資(制度融資)
都道府県や市区町村が、地域経済の活性化を目的として提供しているのが「制度融資」です。これは、自治体、民間金融機関、そして「信用保証協会」の三者が連携して行う仕組みです。
自治体が金利の一部を負担してくれたり(利子補給)、保証料を補助してくれたりするため、実質的なコストは日本政策金融公庫よりも安くなる場合があります。地域ごとの特性に応じたメニューが豊富で、例えば「商店街での開業」や「Uターン・Iターン起業」などに特化した優遇措置も存在します。
民間金融機関の創業支援融資(プロパー融資など)
都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合なども独自の創業支援融資商品を持っています。ただし、創業直後の企業が、信用保証協会の保証をつけずに銀行から直接借りる「プロパー融資」を受けるのは、極めてハードルが高いのが現実です。
そのため、多くの場合は前述の「自治体の制度融資」や「信用保証協会の保証付き融資」を利用することになります。一方で、民間金融機関と創業期から付き合いを始めることは、将来的に事業が拡大した際の追加融資や、ビジネスマッチングなどの支援を受けやすくなるという大きなメリットがあります。
- 難易度:中創業者の利用実績No.1
- 金利:低(固定)計画的な返済が可能
- 特徴:無担保・無保証人の制度あり
- 難易度:低〜中保証協会がサポート
- 金利:非常に低い利子補給等の支援あり
- 特徴:着金まで時間がかかる傾向
- 難易度:高実績がないと厳しい
- 金利:条件による信用力に依存する
- 特徴:将来の取引拡大に有利
創業支援融資の利用状況と2025年のトレンド
近年、起業家支援の動きが活発になり、創業支援融資の利用者は増加傾向にあります。特に2025年現在、インフレや人手不足といった社会課題解決型のビジネスが増え、融資のトレンドも変化しています。
近年の創業者数の増加と背景
新型コロナウイルスの影響を経て、働き方の多様化が進み、フリーランスや副業から法人化するケースが増加しました。政府も「スタートアップ育成5か年計画」などを掲げ、開業率の向上に力を入れています。
特に最近では、ITやWebサービスだけでなく、高齢化社会に対応した介護・福祉事業や、キッチンカーなどの飲食業、地域の空き家を活用したビジネスなど、多種多様な業種で創業融資が活用されています。女性起業家やシニア起業家の増加も顕著で、それぞれの属性に合わせた特例措置(女性、若者/シニア起業家支援資金など)も積極的に利用されています。
こうした政府の支援方針については、以下の記事でも詳しく解説しています。
関連記事:産業育成と政府の新方針―成長産業へのシフトを解説
銀行の融資姿勢の変化
かつて銀行の審査は「担保と保証人」が全てでしたが、現在は「事業性評価」へとシフトしています。つまり、「そのビジネスがどれだけ儲かるか」「地域にどう貢献するか」を重視するようになっています。
特に金融機関が重視しているのが、以下の3点です。
- 市場のニーズ:独りよがりのアイデアではなく、顧客が存在するか。
- 実現可能性:絵に描いた餅ではなく、具体的なアクションプランがあるか。
- 資金繰りの安全性:売上が多少下振れしても返済できる余裕があるか。
創業支援融資の課題:なぜ審査に落ちるのか?
創業支援融資の環境は整いつつありますが、それでも「融資を断られた」という声は後を絶ちません。現場で見えてくる、審査落ちの主な原因と課題について解説します。
審査の厳格さと「自己資金」の壁
「創業支援だから甘い審査だろう」と考えるのは大きな間違いです。政府系金融機関であっても、貸したお金は国民の税金が原資であるため、返済の見込みがない事業には融資できません。
最も多い否決理由は「自己資金不足」または「自己資金の出処が不明」なケースです。
融資審査では、単に通帳の残高を見るだけでなく、「コツコツと事業のために貯蓄してきたプロセス」を評価します。急に親から借りて入金しただけの「見せ金」や、タンス預金で出処が証明できない現金は、自己資金として認められないことが多々あります。
信用情報の傷(CIC等の履歴)
意外と見落とされがちなのが、起業家個人の信用情報(クレジットカードやローンの利用履歴)です。
過去に支払いの延滞があったり、携帯電話端末代金の分割払いが遅れていたりすると、信用情報機関(CICなど)にネガティブな情報が記録されます。創業融資は「経営者個人の信用力」に依存する部分が大きいため、ここに傷があると、どんなに素晴らしい事業計画でも一発で否決される可能性があります。
起業家の認識不足と準備不足
「とりあえず窓口に行けば何とかなるだろう」という安易な姿勢で申請を行い、準備不足を露呈して失敗するケースが目立ちます。
特に多いのが以下のパターンです。
- 事業計画書の甘さ:売上予測に根拠がない。「頑張れば売れるはず」という希望的観測で書かれている。
- 面談での受け答え:面接官からの「競合他社との違いは?」「もし売上が半分だったらどうする?」といった質問に答えられず、経営能力に疑問符がつく。
- 資金使途の不明確さ:「とりあえず多めに借りたい」では通りません。見積書を用意し、何にいくら必要なのかを1円単位で説明する必要があります。
融資審査は、申込書類を提出した瞬間ではなく、その半年〜1年前からの準備で決まっています。「毎月決まった額を貯金する」「公共料金や家賃の支払いを遅らせない」「業界経験を積んでおく」。これらの一つ一つの積み重ねが、審査担当者に『この人なら貸しても大丈夫だ』と思わせる最大の材料になります。
審査落ちの履歴がつく前にご相談ください
一度審査に落ちると、再申請のハードルは跳ね上がります。ヒューマントラストなら、元銀行員による模擬面接や事業計画書の添削で、万全の対策が可能です。
今後の展望と、融資を勝ち取るための解決策
より柔軟な審査基準と金利情勢への対応
2025年以降、金利のある世界へと移行する中で、創業融資の金利も緩やかに上昇する可能性があります。しかし、国としては開業率を上げたい方針に変わりはないため、革新的なビジネスや地域課題解決型ビジネスに対しては、引き続き手厚い支援が続くでしょう。
一方で、既存のビジネスモデルをただ模倣するだけの起業に対しては、審査の目が厳しくなることも予想されます。「なぜあなたがやるのか?」「なぜ今なのか?」というストーリー作りがより重要になります。
起業家教育と専門家の活用
創業支援融資を確実に受けるためには、起業家自身のレベルアップが必要です。最近では、商工会議所などが主催する「特定創業支援等事業(創業スクールなど)」を受講することで、登録免許税の減免や融資要件の緩和といったメリットを受けられる制度もあります。これらを活用し、知識を身につけることが近道です。
また、自分一人で悩まず、創業融資に強い税理士やコンサルタントなどの専門家を頼るのも有効な戦略です。彼らは審査のツボを心得ており、事業計画書のブラッシュアップや模擬面接など、具体的なサポートを提供してくれます。
資金調達の多様化(ハイブリッド調達)
融資だけに頼らない資金調達も視野に入れましょう。
例えば、クラウドファンディングでテストマーケティングを兼ねて資金を集め、その実績(支援者数や金額)を武器に銀行融資を申し込むという手法も増えています。また、返済不要の「補助金・助成金」を融資と組み合わせて活用することで、借入額を抑えつつキャッシュフローを安定させることも可能です。
また、融資以外の資金調達手段として「売掛金の活用」も有効です。
関連記事:ファクタリングの基本とは?中小企業の資金調達・資金繰り改善に
まとめ:準備をした者だけが、スタートダッシュを切れる
創業支援融資は、起業家にとって強力な武器ですが、それは「正しく準備し、正しく使った場合」に限られます。
審査の厳格さや自己資金の要件など、ハードルは決して低くありません。しかし、それらは裏を返せば、「事業を長く続けるために必要な基礎体力があるか」を問われているテストでもあります。
「借りたいけれど、借りられるか不安」「自分の事業計画で通用するのか知りたい」
そう思われた方は、申請を出して「否決」という履歴がつく前に、まずは専門家にご相談ください。
しっかりと準備を行い、万全の体制で審査に臨むことで、あなたのビジネスは理想的なスタートを切ることができるはずです。








