デジタル金融の世界へ!新しい資金調達で事業拡大-①

はじめに:デジタル金融とは何か?
近年、インターネットやスマホの普及に伴って誕生した、新しい金融サービスの総称が「デジタル金融」です。たとえば、オンラインで手軽に小口出資を募れるクラウドファンディングや、個人同士で直接資金を融通し合うP2P金融(ピアツーピアレンディング)など、従来の金融機関を介さずに資金を動かせる取り組みが次々と出てきました。
こうしたデジタル金融は、フィンテック(金融技術)やブロックチェーン、仮想通貨(暗号資産)といったテクノロジーの進化が大きな支えになっています。そのため、スマートコントラクトを使って自動的に契約を実行する仕組みが生まれたり、デジタルトークンによって小口の株式や権利を扱えるようになったりと、さまざまな形で金融革新が進んでいます。
スタートアップ企業では、事業戦略に対応する迅速な資金調達が成否を分けることが多く、デジタル金融の技術を上手に取り入れることで、従来よりスピーディかつ透明性の高い資金繰りが可能になります。これにより、起業直後の段階で大きな投資を受けられるチャンスを得られ、経営者としては非常に魅力的な選択肢となっています。
事実、コンサルティングの内容にも、従来の銀行借入や補助金・助成金、ファクタリングなどの資金調達手法に加えて、クラウドファンディングやP2P金融の可能性を検討するケースが増えてきています。ヒューマントラストでは、そうしたクライアントの要望に合わせて、デジタル金融の基礎的な説明から実際の資金調達のサポートを実施しています。三菱銀行出身の事業統括三坂大作によって、デジタル金融の情報が整理され、クライアントの実情に合わせた検討を加えていけるように推進しています。
この章では、まずデジタル金融がなぜ注目されているのか、そしてどんなメリットがあるのかについて簡単に確認し、続くセクションで詳しく説明を深めていきます。
デジタル金融の基本概念
デジタル金融には、さまざまなサービス形態や仕組みがあります。一般的には、インターネットを通じて資金を集めるクラウドファンディングや、個人間でお金を貸し借りできるP2P金融などが代表的な事例です。
また、仮想通貨の発行や暗号資産を活用した資金調達も進化してきました。これにはイニシャルコインオファリング(ICO)やセキュリティトークンオファリング(STO)など、新興企業がブロックチェーンを用いて独自トークンを発行し、投資を募るしくみも含まれます。
これらをうまく使い分けることによって、スタートアップ経営者はより幅広い資金提供者とつながる機会を得やすくなります。自社の製品・商品・サービスがどのような層にアピールできるのかを見極め、それに合った金融ツールを選ぶことが重要です。
次項では、それぞれの手段がどのように機能し、どういったメリット・デメリットを含んでいるのかを具体的に見ていきましょう。
クラウドファンディングの概要
クラウドファンディングとは、インターネット上のクラウドファンディングプラットフォームを通じて、不特定多数の個人から資金を集める仕組みです。特定のプロジェクトや製品開発に興味を持った人が少額ずつ出資してくれるので、一度に大きな資金を集めることも夢ではありません。
基本的にはリターン(製品やサービスの先行提供など)を設定することで投資家を惹きつける点が特徴です。出資者は完成後のプロダクトをいち早く手にできるので、応援したい気持ちと実利の両方を得られます。
スタートアップでは、製品の試作段階から一般ユーザーの反応を得られるため、テストマーケティングとしても有効です。調達した資金で本格開発が可能になると同時に、将来的な顧客となるファン層も獲得できます。
ただし、公開したプロジェクト内容が注目を集めなければ資金が集まらない点には注意が必要です。
P2P金融のメカニズム
P2P金融は、ピアツーピアレンディングとも呼ばれ、個人や企業がオンラインを介して直接お金を貸し借りする仕組みです。中間に大手金融機関が入らないため、金利や手数料を抑えられるという魅力があります。
出資する側にとっては、銀行金利より高めの利回りが期待でき、資金を求めるスタートアップにとっては、融資審査のハードルが比較的低いというメリットが大きいです。また、投資家とのコミュニケーションが活発になりやすく、将来的な追加投資の相談もしやすい環境となります。
一方で、返済が滞るリスクには注意が必要です。信用度の低いプロジェクトに資金を貸し出すと、投資家にとって資金が戻らない可能性があります。そのため、多くの運営プラットフォームではリスク分散の方法や信用調査の仕組みを用意して、利用する投資家の自己判断のサポートを実施しています。
スタートアップとしては、しっかりと事業計画や将来の収益モデルを示すことで、魅力ある投資対象と見なしてもらうことが大切です。
ICOとは
ICO(イニシャルコインオファリング)は、ブロックチェーン技術と暗号資産を使った資金調達の手法です。企業や団体が独自のデジタルトークンを発行し、投資家は仮想通貨や法定通貨でそれを購入してプロジェクトに資金供給を行います。
ICOの大きな利点は、国境を越えた投資を一気に募れる点です。ブロックチェーン技術のおかげで、世界中どこからでもトランザクションが可能になり、投資家層が広がるのが特徴です。
ただし、この仮想通貨マーケットは過去には国ごとの規制が整備されていない状況で詐欺的なICOやマネーロンダリングが横行したこともありました。現在では各国の金融規制当局がルールを強化し、安全性を高める動きが見られています。
スタートアップにとっては、大きな可能性を秘めた手段ですが、法的リスクや技術面の信頼性をきちんと担保することが重要です。
STOの特徴
STO(セキュリティトークンオファリング)は、有価証券扱いとして認められるトークンを発行し、投資家を募る方法です。ICOに比べると金融規制が厳しい反面、法的に明確な根拠に基づいており、投資家にとっては安心感があります。
具体的には、トークンを株式や債券のようにデジタル資産として発行するので、配当や議決権など、通常の証券と同じようなメリットを提供できます。ブロックチェーンを使ったトークン化によって、小口化や国際的な流通が容易になるのが大きな特徴です。
より厳格な金融サービス規制に則りながらも、グローバルに資金を集められる点で、スタートアップからの支持を集めています。投資家の目線からも、情報開示の義務が整備され、透明性が高いことから信頼を獲得しやすいスキームになっています。
導入するには、法的手続きや発行プラットフォームの選択など、専門家のサポートが欠かせません。
その他のデジタル金融ツール
上記以外にも、電子マネーやモバイルペイメント、デジタルウォレットといった、日常生活の支払い手段にも広く使われるサービスが存在します。スタートアップが自社アプリと連動させて独自ポイントやデジタル通貨を発行し、ユーザーを囲い込むケースも増えています。
また、金融アプリを活用して少額投資を行うマイクロインベストメントや、人工知能を使った自動資産運用サービスも登場し、多様化が進んでいます。こうしたサービスの一部を取り入れることで、資金調達だけでなく、ユーザーとの継続的な関係を築ける可能性があります。
特にブロックチェーンを使った分散型の取り引き環境は、手数料削減や透明性向上につながり、金融市場全体を大きく変える力を持っています。
ここまで紹介したツールをうまく活用しながら、事業内容に合致した資金調達方法を探ることがカギになります。
ここで代表的なデジタル金融手法を一覧表にまとめておきますので、参考にしてください。
こうしたデジタル金融の世界は、従来の金融手法とは異なり、情報通信技術の発展により発明されてきました。これからの事業経営における資金調達手段が多様化することが予想され、従来の金融機関やノンバンク、ファクタリング会社などにおいても、その動向は注視されています。次回のブログでは、このデジタル金融を使った資金調達によって、ビジネスモデルがどのように変化するのか、またデジタル金融に内在する事業リスクは何なのかについて、説明していきたいと思います。