公開日:2026.02.02
更新日:2026.02.03
【元銀行員が解説】事業承継を成功させる計画の立て方|経営承継円滑化法で廃業リスクを回避する3つの急所
多くの中小企業経営者にとって、避けては通れない最重要課題が「事業承継」です。近年では、業績が堅調であっても後継者不在によって、金融機関や取引先から企業の持続可能性を不安視されるケースも増えています。
本記事では、事業承継を単なる代わりの行事ではなく、企業の持続的成長を担保するための「戦略的プロセス」と捉え、計画策定の具体的な方法や、支援制度「経営承継円滑化法」の活用法について詳しく解説します。
次世代へ確かなバトンをつなぐためのガイドとしてご活用ください。
この記事の要点:3分でわかる事業承継の急所
- 事業承継は「経営の信用格付け」:後継者の不在は金融機関からの融資条件悪化に直結する。
- 経営承継円滑化法のフル活用:贈与税・相続税が実質ゼロになる「納税猶予」は必須の出口戦略。
- 10年スパンの計画策定:後継者教育と自社株対策は、早期の「事業承継計画書」による可視化が成功の鍵。
- 専門家をハブにする:親族間で話しにくい「お金」と「権利」を第三者視点で最適化する。
なぜ今、中小企業に戦略的な事業承継が求められるのか
結論:事業承継は単なる引退準備ではなく、後継者の有無が「企業の信用格付け」に直結し、将来の資金調達力や技術伝承の成否を左右する最重要の経営戦略だからです。
現代のビジネス環境は変化が激しく、経営者には日々、迅速かつ長期的な判断が求められます。事業承継は単に「社長の椅子」を譲るだけのことではありません。
これまで築き上げてきた企業理念、独自の技術、そして従業員やその家族の生活を守り、次世代へ繋ぐという、経営者としての「最後の、そして最大のミッション」です。
後継者の有無が「企業の信用力」を左右する時代
例えば、70歳を超える経営者が事業拡大のための増資や長期の資金調達を検討する場合、投資家や金融機関から必ず問われるのが「後継者の有無」です。
支援者側からすれば、現社長がいつまで陣頭指揮を執れるのか、また技術の要となる責任者に後継者がいるのかという点は、投資回収の安全性を判断する最重要項目となります。
たとえ現在の業績が素晴らしくても、後継者が不透明であれば「経営の属人化」がリスクと見なされ、融資条件の悪化や事業提携の見送りにつながることもあります。
事業承継の準備状況そのものが、現在の企業の信用力や格付けを左右する重要な指標となっているのです。
地方企業が直面する人的資本の課題と技術伝承
日本の経済機能が大都市圏に集中する中で、地方の中小企業は特に後継者不足の波を強く受けています。どれほど高い技術力や地域ネットワークを持っていても、次期リーダーが不在であれば、その価値は一代で途絶えてしまいます。
特に特殊な技術を持つ責任者が高齢化している場合、若手へのスムーズな技術伝承が行われているかどうかが、企業の存続価値を決めます。
優秀な人材を確保するためにも、「この会社には未来がある」というメッセージを、具体的な承継準備を通じて示す必要があります。
スムーズな事業承継を実現する「事業承継計画書」の重要性
結論:計画書は、親族間の感情的対立や自社株の資金問題、法的リスクを「可視化」し、5〜10年スパンのロードマップとして客観的な合意形成を可能にするための必須ツールです。
事業承継を成功させるための必須ツールが「事業承継計画書」です。これは、中長期経営計画に「誰が、いつ、どのように引き継ぐか」という時間軸を加えたロードマップです。
親族経営が多い日本の中小企業では、感情的な問題や利害対立が絡みやすいため、客観的な文書による合意形成が不可欠となります。
事業承継を阻む「目に見えない壁」を可視化する
多くの経営者が抱える悩みには、共通のパターンがあります。これらを放置せず、まずは可視化することが解決への第一歩です。
- 「現在の業績では後継者に苦労をかけるのではないか」という心理的負担
- 「自社株の評価が高すぎて、後継者が買い取る資金がない」という資金的問題
- 「相続時に株式が分散し、経営権が不安定になる」という法的リスク
- 「莫大な贈与税・相続税を支払う余裕がない」という税務的課題
これらの壁は、5年、10年といったスパンで計画に落とし込むことで、解決可能な「経営課題」へと変わります。頭の中で悩むのではなく、数値とスケジュールに置き換えることが肝要です。
第三者の専門家を「情報のハブ」として活用する
事業承継は、経営判断だけでなく、高度な法務・税務の知識が求められる複合プロジェクトです。
親族間では話しにくいお金や責任の所在についても、税理士や中小企業診断士、弁護士といった第三者を交えることで、客観的なデータに基づいた建設的な議論が可能になります。
専門家を交えて策定された計画書は、金融機関に対しても「未来を見据えて計画的に動いている」という強い信頼の証となります。
事業承継で検討すべき3つの主要領域:経営・人事・税務
結論:「経営(収益性向上)」、「人事(後継者教育と体制構築)」、「税務(資産移転と納税猶予)」の3軸を統合的に進めることで、盤石な承継と第二の創業を実現できます。
事業承継を支える3つの柱(領域別チェック)
【経営】企業の磨き上げ
- 収益性の向上不採算事業の整理・スリム化
- ノウハウの可視化社長の暗黙知をマニュアル化
【人事】後継者の育成
- リーダーシップ移譲5〜10年かけた現場指揮権の委譲
- 番頭役の確保後継者を支える幹部チームの構築
【税務】経営権の安定
- 自社株対策株価算定と納税資金の確保
- 遺言の活用議決権の分散を防ぐ法的準備
計画書を策定する際には、以下の3つの視点からバランスよく対策を講じる必要があります。これらを統合的に進めることが、盤石な承継を実現する鍵となります。
【経営面】企業の磨き上げと価値の適正化
後継者が「この会社なら継ぎたい」と思えるよう、財務体質を整えることを「磨き上げ」と呼びます。不採算事業の整理による収益性向上、社長の「頭の中」にあるノウハウの共有資産化、そして現状の適正な株価算定。
これらは承継をスムーズにするだけでなく、日常の経営においても高い競争力を生み出します。事業承継の準備は、経営改善そのものなのです。
あわせて読みたい:次世代へ繋ぐ「企業の磨き上げ」に不可欠な最新のDX戦略と資金調達の秘訣
【人事面】後継者教育とリーダーシップの移譲
後継者の育成には一般的に5年から10年かかると言われています。社内各部門での実務経験を通じたリーダーシップの養成はもちろん、後継者を支える「番頭役」となる幹部チームの構築も欠かせません。
外部研修や経営者ネットワークへの参加を促し、社内の常識に縛られない広い視野と決断力を養わせることも、承継後の混乱を防ぐために重要です。
【税務・法務面】経営権の安定と資産移転
どれほど経営が優秀でも、相続トラブルで経営権が分散しては元も子もありません。
贈与税・相続税のシミュレーションと納税資金の確保、遺言書の活用による議決権の集中、そして親族内での不公平感を無くすための財産分配計画。
これらを早期に整理しておくことで、万が一の事態が発生しても事業を止めることなく、スムーズな運営を維持することが可能になります。
まずは、貴社の「承継リスク」を可視化しませんか?
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「経営承継円滑化法」を活用した支援策の全体像
結論:この法律を活用すれば、非上場株式の納税猶予(事業承継税制)や遺留分対策、金融支援など、承継の大きな壁となる資金・税金・法務の課題を劇的に軽減できます。
事業承継の大きな障壁となる「資金・税金・法務」の問題を解決するために、国が用意した強力な武器が「経営承継円滑化法」です。この法律を活用することで、承継に伴うリスクやコストを劇的に抑えられる可能性があります。
詳細な申請要件や最新のマニュアルについては、中小企業庁:経営承継円滑化法による支援(公式サイト)をご確認ください。(※リンク切れの場合は、中小企業庁トップページより「経営承継円滑化法」と検索してください)
事業承継税制による「納税猶予・免除」の活用
一定の要件を満たせば、後継者が取得した非上場株式に係る贈与税・相続税の全額が猶予される特例措置があります。事業を継続する限り実質的に税負担をゼロにできるこの制度は、キャッシュフローを重視する中小企業にとって最大のメリットです。
適用には「特例承継計画」の提出が必要なため、早めの確認が求められます。
遺留分に関する民法の特例と金融支援
後継者に株式を集中させたくても、他の親族から「遺留分」を主張され経営権が分散するリスクがあります。本法では、全相続人の合意を得て株式を遺留分の対象外にするなどの特例が認められています。
また、日本政策金融公庫による低利融資や信用保証の別枠設定といった金融支援も充実しており、株式買い取りや設備投資の資金ニーズに応えています。
親族内承継からM&Aまで:多様な出口戦略の検討
結論:親族承継が困難な場合でも、社内承継(MBO)や第三者への売却(M&A)を早期に検討することで、企業価値を維持し、従業員の雇用と技術を未来へ繋ぐことが可能です。
事業承継は、必ずしも「子に継がせる」ことだけが唯一の正解ではありません。企業の持続可能性を最優先に考え、多様な選択肢を検討することが経営者の責任です。
「継ぎたくない」と言われた時の向き合い方
親族が承継を躊躇する背景には、負債への個人保証や将来性への不安が隠れていることが多いものです。
無理に強いるのではなく、個人保証解除の計画や経営改善によるビジョンの提示など、本人が「挑戦したい」と思える土壌を整えましょう。
それでも難しい場合は、社内幹部への承継(MBO)や、シナジー効果を期待できる第三者への売却(M&A)へと速やかに舵を切るべきです。
M&Aにおける支援制度の有効活用
経営承継円滑化法の金融支援策は、社外の第三者による買収の際にも活用できる場合があります。中小企業の小規模なバイアウトやM&Aにおいて、制度融資を活用することで資金負担を軽減し、成約率を高めることができます。
どのような形であれ、早期に企業価値を向上させておくことが、最良の承継先を見つけ、従業員の雇用を守るための唯一の道となります。
まとめ
事業承継は、経営者が築き上げてきた「価値」を次世代へ託す、最後にして最大のプロジェクトです。それは組織を若返らせ、新たな成長フェーズへと導く「第二の創業」とも言えます。
経営者の想い、従業員の安心、そして法的な制度活用。これらを一つにまとめるには、数年単位の準備期間と「早めの決断」が欠かせません。
まずは自社の現状を正しく把握し、「事業承継計画書」の策定から着手してみてください。
国が提供する支援制度をフル活用し、信頼できる専門家と共に歩むことで、あなたの会社が積み上げてきた伝統と技術は、必ず未来へと繋がっていくはずです。今日から始める具体的な準備が、会社と地域の未来を創ります。
事業承継の準備に「早すぎる」ことはありません。
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