公開日:2026.06.11
更新日:2026.06.11
ナフサとは何か|価格変動・供給不安が中小企業の資金繰りに与える影響

東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
さらにニューヨーク支店にて国際金融業務も経験し、法務と金融の双方に通じたスペシャリストとして、30年以上にわたり中小企業・個人事業主の“実行型支援”を展開。貸金業務取扱主任者。
東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
さらにニューヨーク支店にて国際金融業務も経験し、法務と金融の双方に通じたスペシャリストとして、30年以上にわたり中小企業・個人事業主の“実行型支援”を展開。貸金業務取扱主任者。
▼ この記事で分かること
-
ナフサの基本
何で、どんな製品の原料になっているのか -
原油・ガソリンとの違い
ナフサを石油化学原料として理解するポイント -
日本の調達構造
国内精製と輸入をどう組み合わせているか -
価格変動の要因
原油価格、為替、需給、輸入価格がどう関係するか -
資金繰りへの波及
粗利・在庫・運転資金へどう表れるか -
マレーシア合意
数量保証ではなく供給網協力としての読み方 -
資金調達の順番
金融機関に相談する前に整えるべき資料
ナフサの供給不安は、石油化学メーカーだけに関係する話ではありません。ナフサは、プラスチック、合成ゴム、塗料、接着剤、包装材、建材、自動車部品、電子部品、医療用品など、多くの産業の上流にある基礎原料です。
そのため、供給不安や価格上昇は、最終的に中小企業の仕入価格、在庫負担、粗利率、価格転嫁、売掛金回収、そして資金繰りにまで波及します。
経営者が見るべき本当の論点は、「ナフサが足りるかどうか」だけではありません。ナフサ価格や供給制約が、自社の損益計算書、資金繰り表、借入返済計画、金融機関への説明資料にどう表れるか――ここが核心です。
資源価格の変動は、時間差を伴って粗利と運転資金を動かし、返済原資の説明難易度を高めることがあります。
特に中小企業では、仕入単価の上昇をすぐに販売価格へ転嫁できないケースが少なくありません。原価上昇、在庫増加、入金遅れが重なると、黒字であっても資金繰りが詰まりやすくなります。
つまりナフサ問題は、単なる資源ニュースではなく、「粗利と運転資金の再設計問題」として読む必要があるのです。
ナフサとは何か
結論:ナフサとは、原油を精製して得られる石油製品の一種であり、プラスチックや合成ゴムなどを作るための基礎原料です。
ナフサは、原油を蒸留・精製する過程で得られる、比較的軽質の炭化水素混合物です。原油は製油所で加熱され、沸点の違いによってガス、ナフサ、灯油、軽油、重油などに分けられます。
このうちナフサは、石油化学工場のナフサクラッカーで高温分解され、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン、キシレンといった基礎化学品になります。
そこからさらに、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、合成ゴム、塗料、接着剤、溶剤などへ加工されていきます。つまりナフサは、消費者が店頭で直接買う燃料ではなく、多くの製品の出発点に位置する原料なのです。
この点を誤解すると、ナフサ問題を「石油会社や化学メーカーの問題」とだけ捉えてしまいます。
しかし実際には、包装フィルム、食品容器、医療用手袋、自動車部品、電線被覆、住宅設備、日用品、物流資材など、さまざまな製品の背景にナフサ由来の石油化学製品があります。
中小企業が直接ナフサを購入していなくても、仕入先からの値上げや納期調整という形で影響を受ける可能性があるのです。
ナフサと原油・ガソリンの違い
結論:原油は精製前の資源、ナフサは原油を精製して得られる石油化学原料、ガソリンは主に燃料として使われる石油製品です。
ナフサを理解するうえでは、原油やガソリンとの違いを整理しておくと分かりやすくなります。原油は地下から採掘される未精製の資源であり、そのままでは多くの用途に使えません。
製油所で精製されることで、ナフサ、ガソリン、灯油、軽油、重油などに分けられます。
| 原油 | 精製前の地下資源。製油所で加熱・蒸留され、さまざまな石油製品に分けられる。 |
|---|---|
| ナフサ | 原油を精製して得られる石油製品の一つ。主に石油化学製品の基礎原料として使われる。 |
| ガソリン | 主に自動車などの燃料として使われる石油製品。一般消費者が直接購入する用途が多い。 |
つまり、ナフサはガソリンのように消費者が直接使う燃料ではなく、プラスチック、合成ゴム、塗料、接着剤、包装材などの「材料を作るための原料」です。
この違いを押さえておくと、ナフサ問題が燃料費だけでなく、仕入価格や原材料価格に波及する理由が理解しやすくなります。
ナフサは何に使われているのか
結論:ナフサは、食品包装、建材、自動車部品、医療用品、電子部品、物流資材など、幅広い製品の原料として使われています。
ナフサが重要なのは、日本の産業活動が石油化学製品に深く依存しているためです。食品会社は包装フィルムや容器を使い、建設会社は断熱材、樹脂管、防水材、塗料、接着剤を使います。
自動車関連企業は樹脂部品、ゴム部品、内装材、塗料を、医療・介護分野では手袋、チューブ、容器、衛生用品を必要とします。電気・電子分野でも、樹脂部材、絶縁材、フィルム、梱包資材が欠かせません。
こう見ていくと、ナフサの影響を受けるのは化学メーカーだけではないことが分かります。中小企業にとって重要なのは、「自社がナフサを直接買っているか」ではなく、「自社の仕入構造のどこにナフサ由来製品が含まれているか」です。
ナフサの影響は、ナフサ価格そのものではなく、包装資材、樹脂部品、塗料、接着剤、ゴム製品、物流資材などの仕入価格として表れることが多くなります。
| 食品・小売関連 | 包装フィルム、食品容器、プラスチック容器、物流資材などの値上がり |
|---|---|
| 建設・内装関連 | 断熱材、樹脂管、防水材、塗料、接着剤、シンナーなどの価格上昇や納期変動 |
| 製造業 | 樹脂部品、ゴム部品、梱包資材、副資材などの仕入負担増加 |
| 自動車・機械関連 | 合成ゴム、樹脂部材、内装材、塗料、部品包装材などのコスト上昇 |
| 医療・介護関連 | 医療用手袋、チューブ、衛生用品、容器などの調達条件変化 |
このように、ナフサの影響は業種によって表れ方が異なります。自社が直接ナフサを購入していなくても、仕入明細や見積書の中にナフサ由来製品が含まれていれば、価格改定や納期調整の影響を受ける可能性があります。
日本はナフサをどう調達しているのか
結論:日本のナフサ調達は国内精製と海外輸入の組み合わせですが、国内精製も輸入原油を前提とするため、国際情勢や為替の影響を受けます。
日本のナフサ調達は、大きく二つに分かれます。一つは国内の製油所で原油を精製してナフサを得る方法、もう一つは海外からナフサそのものを輸入する方法です。
経済産業省の資料では、2024年のナフサ調達元は次のように整理されています。
ここでいう「国産」は、日本国内で原油を精製して得られるナフサという意味であり、日本が地下資源として十分な原油を持っているという意味ではありません。
| 国産(国内精製) | 39.4% |
|---|---|
| 中東 | 44.6% |
| その他輸入 | 16.0% |
また、日本石油化学工業協会の統計によると、2024年の石油化学用原料ナフサの輸入量は合計2,056万キロリットルで、そのうち中東からの輸入が73.6%を占めています。
国別ではアラブ首長国連邦、クウェート、カタールなどの比重が大きく、一方でマレーシアからの輸入は2024年時点で4千キロリットルにとどまり、統計上は0.0%と表示されています。
ここから分かるのは、日本のナフサ調達が「国内精製」と「中東からの輸入」に大きく依存しているということです。国内精製が一定割合あるため、すべてを海外ナフサ輸入に頼っているわけではありません。
ただし、その国内精製も原油輸入を前提とするため、原油調達、海上輸送、製油所稼働、為替、国際情勢の影響を避けられないのです。
ナフサ価格は何で決まるのか
結論:ナフサ価格は、原油価格、為替、国際需給、輸送コスト、在庫状況、国内精製の稼働状況などの影響を受けます。
中小企業にとって重要なのは、ナフサ価格そのものを日々予測することではありません。むしろ、自社の仕入価格や見積条件が、どのタイミングでナフサ価格や原油価格の変動を反映するのかを確認することです。
ナフサ価格は、原油価格の動きと無関係ではありません。原油を精製して得られる石油製品である以上、原油調達コストが上がれば、ナフサのコストにも影響が及びやすくなります。
加えて、日本は原油やナフサの多くを海外から調達しているため、円安が進むと輸入コストが上がり、国内の原材料価格にも波及しやすくなります。
| 原油価格 | ナフサは原油から得られるため、原油価格の上昇はナフサ価格に影響しやすい。 |
|---|---|
| 為替 | 円安になると、輸入原油や輸入ナフサの円建てコストが上がりやすい。 |
| 国際需給 | アジアや中東、米州などの需給が逼迫すると、調達価格や納期に影響することがある。 |
| 輸送・地政学リスク | 海上輸送、ホルムズ海峡などの安全性、船舶手配、保険料などが影響する場合がある。 |
| 国内精製・在庫 | 製油所の稼働状況、定期修理、在庫水準によって国内供給の余裕度が変わる。 |
実務上は、仕入先からの値上げ通知、見積有効期限、価格改定の基準日、契約上の価格改定条項を確認することが重要です。
ナフサ価格の上昇がすぐに自社の支払額へ反映されるのか、数か月遅れて反映されるのかによって、必要な運転資金の時期と金額が変わるためです。
ナフサの供給不安・価格変動は中小企業にどう波及するのか
結論:ナフサの影響は、仕入単価の上昇、在庫負担の増加、価格転嫁の遅れ、資金調達負担の増加として中小企業に表れます。
- 01原材料価格の上昇(仕入単価アップ)
- 02在庫負担の増加(現金が棚卸資産に固定)
- 03価格転嫁の遅れによる粗利圧迫
- 04資金調達負担の増加
第一に、原材料価格の上昇です。
ナフサ価格が上がると石油化学製品の原価が上がり、樹脂、フィルム、ゴム、塗料、接着剤、溶剤、包装材などの価格に波及します。
中小企業にとっては、仕入先からの値上げ、見積有効期間の短縮、納期の不安定化、最小ロットの変更といった形で影響が出やすくなります。
第二に、在庫負担が増えます。
供給不安があると、企業は欠品を避けるために通常より多く仕入れようとします。しかし在庫を増やすことは、現金が棚卸資産に固定されることを意味します。
売上が増えていなくても仕入資金だけが先に必要になるため、資金繰り上は非常に大きな問題です。
第三に、価格転嫁の遅れが粗利を圧迫します。
大企業との取引では、価格改定のタイミングが四半期ごと、半期ごと、あるいは年1回というケースもあります。
仕入価格はすぐ上がる一方で販売価格の改定が遅れれば、その差額は中小企業の利益を直接削ります。利益が削られると、金融機関から見た返済原資も弱く映ります。
第四に、資金調達負担の問題があります。
原材料高で運転資金が増えた会社は、短期借入、当座貸越、手形割引、売掛債権を活用した資金化、ビジネスローンなどを検討することがあります。
ただし、調達コストの高い手段を継続的に使えば、粗利の圧迫に加えて金融費用も増え、資金繰りの再建はかえって難しくなります。
ナフサ問題は、「仕入価格の問題」であると同時に、「運転資金の膨張」と「返済原資の説明難化」の問題でもあります。
政府はナフサ供給と中小企業支援をどう整理しているのか
結論:政府は、国内精製、中東以外からの輸入、在庫活用、川中・川下製品の輸入を組み合わせて供給を維持しつつ、中小企業には相談窓口や金融支援、価格転嫁対策を用意しています。
経済産業省は、ナフサについて、国内での精製継続、中東以外からの輸入拡大、中間段階の化学製品の在庫活用、川中・川下製品の輸入などを組み合わせ、日本全体として必要量を確保する考えを示しています。
あわせて、ナフサの「生産量」と「供給量」は分けて考える必要があるとも説明しています。
生産量は国内で精製して作られる量を指しますが、供給量には在庫の取り崩しや輸入も含まれます。国内全体で必要量が確保されている場合でも、個別企業が必要なタイミングで必要な材料を確保できるとは限りません。
流通の目詰まり、取引規模、地域差、仕入先との関係、与信枠、前払い条件などによって、実務上の影響は変わってきます。
中小企業向けには、資金繰り相談、セーフティネット貸付、セーフティネット保証5号、価格転嫁・取引適正化、再生支援などの対応が整理されています。
| 特別相談窓口 | 中東情勢、原油価格上昇、石油関連製品の調達難などに関する資金繰り・経営相談の窓口。 |
|---|---|
| セーフティネット貸付 | 外部環境の変化により資金繰りに影響を受ける事業者向けの政府系金融機関による貸付。要件により金利引下げの対象となる場合がある。 |
| セーフティネット保証5号 | 業況が悪化している指定業種に属する中小企業者を対象に、信用保証協会が通常枠とは別枠で保証する制度。市区町村長の認定や売上高等の要件確認が必要。 |
| 価格転嫁・取引適正化 | 原材料費やエネルギーコストの上昇分について、取引価格へ適切に反映するための相談・要請・取引適正化の取り組み。 |
| 中小企業活性化協議会 | 資金繰りの悪化や返済負担が重い場合に、収益改善、金融機関調整、再生支援などを相談できる公的支援機関。 |
ただし、これらの支援策は、すべての会社が無条件で利用できるものではありません。制度ごとに対象業種、売上高等の減少要件、原油等仕入額の割合、利益率低下、市区町村長の認定など、確認すべき要件があります。
制度名を挙げるだけでなく、自社がどの要件に該当し得るのか、どの資料で説明するのかまで整理しておく必要があります。
マレーシアとの合意をどう読むべきか
結論:マレーシアとの合意は、ナフサの数量・価格・期間を無条件に保証する契約ではなく、エネルギー・化学製品の安定的な貿易フローを確認した供給網協力として読むべきです。
2026年6月10日、日本とマレーシアは首脳会談を行い、共同声明を発出しました。
共同声明では、マレーシア側が、日本向けにLNG、ナフサ、尿素、医療用手袋などを含む重要なエネルギー・化学製品について、開かれた安定的な貿易フローを促進することに最大限取り組む、とされています。
この支援は「マレーシア国内の優先事項と利用可能な余剰能力に沿う形で検討される」という条件付きの表現です。したがって、「マレーシアが日本に一定量のナフサを無条件で供給する契約」と読むのは正確ではありません。
少なくとも公開情報上は、数量・価格・期間を明示した長期売買契約というより、エネルギー安全保障と供給網強靭化の文脈で安定貿易と供給協力を確認したものと見るべきです。
なお、同じタイミングで、ペトロナスとJERAのLNG長期供給契約も公表されています。これは2028年から20年間、年間約200万トンのLNGを供給する内容とされています。ただし、これはLNGの契約であり、ナフサそのものの数量契約とは区別して整理する必要があります。
中小企業経営者にとっての実務的な意味は、マレーシア合意によって直ちにナフサリスクが消えるわけではない、ということです。
とはいえ、日本が中東依存を下げ、東南アジアを含む複数地域からの供給網を厚くしようとしていることは読み取れます。
これは長期的には、原材料供給の安定性向上や価格変動リスクの緩和につながる可能性があります。
国内精製の現状と今後の限界
結論:国内精製は重要な供給基盤ですが、輸入原油、製油所能力、精製バランス、需要構造に制約があるため、国内だけで問題を解決できるわけではありません。
国内精製については、「国内でナフサを作る」ことと「日本国内に原油資源がある」ことを分けて考える必要があります。日本の国内ナフサ供給とは、主に輸入原油を国内製油所で精製してナフサを得ることを指します。経済産業省資料の2024年「国産39.4%」も、国内精製による供給という意味です。
短期的には、製油所の定期修理が終わり稼働が戻れば、国内精製によるナフサ生産量は回復しやすくなります。経済産業省も、ナフサ生産量の低下について、製油所の定期修理の影響があり、一定時期以降に戻る見通しを示しています。
しかし、国内ナフサ生産を中長期的に大幅に増やせば解決する、というほど単純ではありません。国内製油所には設備能力、原油調達、精製バランス、需要構造、環境対応、採算性といった制約があります。
ナフサだけを増やすには原油処理量全体や他の石油製品とのバランスも関わり、ガソリン、軽油、灯油、重油などの需要が変化するなかで、ナフサだけを独立して増産することには限界があります。
さらに、化学産業全体では脱炭素化や原料転換も課題です。今後は化石由来ナフサだけに依存せず、再生原料、バイオ原料、廃プラスチックのケミカルリサイクル、代替炭化水素原料などを組み合わせる方向へ進む可能性があります。
ただし、コスト、品質、供給量、認証、設備投資の問題があるため、中小企業が短期の資金繰り対策として期待しすぎるのは危険です。
今後のナフサ調達は「複線化」で考える
結論:今後のナフサ調達は、中東依存を下げるだけでなく、国内精製、代替輸入、中間製品輸入、川下製品輸入、原料転換を組み合わせる複線化が必要です。
- 01中東以外からのナフサ調達を増やす
- 02国内精製の安定稼働(原油調達先の分散とセット)
- 03中間製品・川下製品の輸入を組み合わせる
- 04東南アジアとの供給網協力
- 05長期的な原料転換
第一に、中東以外からのナフサ調達を増やすことです。
政府資料でも、米国や南米などからの代替調達を進める方向が示されています。中東依存を下げることは、ホルムズ海峡など地政学リスクへの備えになります。
第二に、国内精製の安定稼働です。
国内製油所でナフサを確保できる体制は、輸入ナフサに偏らないための重要な基盤です。ただし国内精製も原油輸入を前提とするため、原油調達先の分散とセットで考える必要があります。
第三に、ナフサそのものだけでなく、中間製品や川下製品の輸入を組み合わせることです。
ナフサが不足する局面でも、エチレン系・プロピレン系の中間化学品や樹脂製品、包装資材などを輸入できれば、国内の供給制約を一部緩和できます。
第四に、マレーシアを含む東南アジアとの供給網協力です。
マレーシアとの共同声明はナフサ単体の数量保証ではありませんが、LNG、ナフサ、尿素、医療用手袋などエネルギー・化学製品の安定的な貿易フローを確認した点に意味があります。
日本にとっては、中東、米州、東南アジアを組み合わせる調達網の一部として位置づけられます。
第五に、長期的には原料転換です。
バイオナフサ、再生ナフサ、廃プラスチック由来原料などの活用が広がれば、化石由来ナフサへの依存度を下げられる可能性があります。
ただし、短期の仕入不足や資金繰り悪化をすぐに解決する手段ではないため、経営判断では時間軸を分けて考える必要があります。
中小企業が今、先に確認すべきこと
結論:中小企業は、ナフサそのものではなく、自社の仕入構造、在庫方針、価格転嫁余地、資金繰り表、金融機関への説明資料を先に確認すべきです。
中小企業がナフサ問題に備える際、最初に確認すべきは、直接ナフサを買っているかどうかではありません。自社の仕入構造の中に、ナフサ由来の製品がどの程度入っているかです。
仕入構造で確認すべき項目
- 原材料・包装資材・樹脂部品・ゴム部品
- 塗料・接着剤・溶剤・建材・物流資材・衛生用品
- 仕入先からの値上げ通知が来ていないか
- 見積期間が短くなっていないか、納期が延びていないか
- 代替品の提案が出ているか
次に、資金繰り表を更新します。仕入単価が10%、20%、30%上がった場合に月次の支払額がどれだけ増えるか。価格転嫁まで何か月かかるか。在庫を1か月分増やすと追加でいくら資金が必要か。これらを数字で出すことが必要です。
金融機関への説明資料
- 直近試算表・資金繰り表・借入一覧
- 仕入価格上昇の根拠資料
- 主要取引先への価格改定交渉状況
- 在庫方針・売掛金回収予定
- 返済計画
価格転嫁の前に整理すべき資料
- 仕入先からの値上げ通知、価格改定案内、見積書
- 過去単価と現在単価の比較表
- 原価率・粗利率の推移
- 価格改定を行わない場合の利益圧迫額
- 販売先ごとの契約条件、価格改定可能時期、見積有効期限
- 代替材料や代替仕入先の検討状況
価格転嫁を進める場合も、単に「原材料が上がったため値上げしたい」と伝えるだけでは、取引先の理解を得にくい場合があります。どの費目が、いつ、どの程度上がり、どこまで自社努力で吸収し、どの部分を価格へ反映する必要があるのかを資料で示すことが重要です。
この整理は、取引先への説明だけでなく、金融機関に対して返済原資や今後の粗利回復見通しを説明する際にも役立ちます。
金融機関は、外部環境が悪化していること自体は理解しています。しかし会社ごとに影響の大きさは異なります。
だからこそ、「ナフサ高で苦しい」という説明ではなく、「どの費目に、いくら、いつまで影響し、その間の必要資金はいくらで、どのように回収・返済するのか」を示すことが重要なのです。
資金調達の順番をどう考えるべきか
結論:先に商品を探すのではなく、必要資金、資金使途、返済原資、価格転嫁の見通しを整理したうえで、銀行融資、制度融資、短期資金、売掛債権活用を順番に検討すべきです。
この局面で中小企業が避けるべきなのは、資金不足を感じた時点でいきなり調達手段を探すことです。重要なのは、まず資金需要の原因を分けることです。
原材料の値上がりによる一時的な運転資金なのか、価格転嫁できない構造的な粗利不足なのか、在庫を積み増したことによる資金固定なのか、売掛金回収サイトとのズレなのか――原因によって適切な対応は変わります。
資金調達の順番としては、まず既存金融機関への早期相談、制度融資・セーフティネット関連制度の確認、当座貸越や短期運転資金枠の見直し、借換え余地の確認を行います。
そのうえで、売掛金の回収サイトが長く、入金までの時間を短縮する必要がある場合には、売掛債権を活用した短期資金化も選択肢になります。
ただし、売掛債権の早期資金化は、あくまで入金までの時間を確保するための手段です。恒常的な粗利不足や価格転嫁不能を解決するものではありません。
ビジネスローンや短期借入も、返済原資の説明が弱いまま使い続ければ、資金繰りの再建をかえって難しくする場合があります。
したがって資金調達を考えるときは、「いくら必要か」だけでなく、「なぜ必要か」「いつまで必要か」「どう返すか」「何を改善すれば次回以降の資金需要を抑えられるか」まで整理する必要があります。
これが、金融機関や取引先に対して説明可能な資金調達の出発点です。

過剰反応を避けるための注意点
結論:国内全体の供給見通しと、個別企業の調達リスクは別問題です。見出しだけで判断せず、自社の商流と数字に引き直す必要があります。
ナフサ問題では、過剰反応も避ける必要があります。政府資料では、国内全体として必要量の確保や代替調達、在庫、国内精製などによる対応が示されています。
したがって、「すぐに全産業でナフサ由来製品が不足する」と決めつけるのは適切ではありません。
一方で、国内全体で供給が足りていることと、個別企業が必要なタイミングで必要な材料を確保できることは別です。
流通の偏り、地域差、取引規模、仕入先との関係、与信枠、前払い条件などによって、中小企業ほど影響を受けやすい場合があります。
価格転嫁も一律には進みません。大企業相手の下請取引、公共工事、長期契約、固定価格契約では、原材料高をすぐに転嫁できないことがあります。反対に、短期契約や見積更新がしやすい業態では、比較的早く転嫁できる場合もあります。
つまり経営者は、「ナフサが危ない」という見出しだけで判断するのではなく、自社の商流、仕入構造、在庫方針、価格改定余地、借入状況、回収サイトを見て判断する必要があります。
ニュースを読む目的は、不安になることではなく、自社の数字を点検するきっかけにすることです。
よくある質問(FAQ)
結論:ナフサ問題でよくある疑問は、「何に使われるのか」「中小企業に関係するのか」「資金調達でどう対応するのか」に集約されます。
ナフサとは何ですか?
ナフサを直接買っていない中小企業にも影響しますか?
マレーシアとの合意でナフサ不足は解消されますか?
原材料価格が上がった場合、まず何をすべきですか?
ファクタリングやビジネスローンで対応すべきですか?
売掛債権の早期資金化や短期借入は時間を確保する選択肢であり、構造的な収益不足を解決するものではありません。
ナフサ価格はどこで確認できますか?
ナフサと原油・ガソリンの違いは何ですか?
ナフサ価格の上昇で使える融資制度や保証制度はありますか?
ただし、すべての会社が無条件で利用できるわけではなく、指定業種、市区町村長の認定、売上高等の減少、原油等仕入単価の上昇などの要件確認が必要です。
三坂大作の視点|ナフサ問題は「説明可能な経営」の問題である
結論:ナフサ問題の本質は、外部環境の変化を自社の数字に置き換え、金融機関や取引先に説明できる状態を作ることです。
ナフサは、単なる石油製品ではありません。日本の製造、包装、建設、医療、物流、日用品を支える基礎原料です。だからこそ、ナフサの供給不安や価格上昇は、川上の化学産業だけでなく、川下の中小企業にまで広く波及します。
しかし経営者がこの問題を見るとき、最初に考えるべきは「どこからナフサを買うか」ではありません。自社の損益と資金繰りに、どの経路で、どの程度影響するかを確認することです。
影響は、必ずしも売上減として表れるとは限りません。むしろ、仕入単価の上昇、在庫増加、価格転嫁の遅れ、売掛金回収とのズレ、短期借入の増加として表れます。
そしてその結果として、金融機関から見た返済原資の説明が難しくなるのです。
この局面で必要なのは、慌てて資金調達手段を探すことではありません。まず資金繰り表を更新し、粗利率の変化を試算し、仕入先と販売先の条件を整理し、金融機関に説明できる資料を整えることです。
そのうえで、短期資金で時間を確保すべき局面なのか、価格転嫁と事業構造の見直しを優先すべき局面なのかを分けて判断する必要があります。
ナフサ問題の本質は、資源の話でありながら、最終的には「説明可能な経営」に行き着きます。外部環境が不安定なときほど、金融機関や取引先は、会社の現状認識、数字の鮮度、資金使途、返済原資、価格転嫁の方針を見ているのです。
まとめ|ニュースを自社の資金繰りに引き直す
結論:ナフサ問題は、供給量のニュースとして読むだけでなく、自社の粗利、在庫、回収サイト、必要運転資金、返済原資に置き換えて判断することが重要です。
中小企業にとって重要なのは、ニュースに振り回されることではなく、自社の数字に引き直すことです。ナフサ価格が上がったとき、どの原価が上がるのか。何か月後に粗利へ出るのか。資金繰り上の谷はいつ来るのか。
そこを説明できる会社は、金融機関との対話でも選択肢を残しやすくなります。
資金調達の判断では、手段を先に選ぶのではなく、資金需要の原因、必要期間、返済原資、価格転嫁の見通しを先に整理する必要があります。
銀行融資、制度融資、短期運転資金、売掛債権の早期資金化、ビジネスローンは、それぞれ役割が異なります。自社の状況に応じて、順番と使い方を整理することが重要です。
経営全体の資金調達方針を整理したい場合は、資金調達エージェントのように、銀行融資、制度融資、補助金・助成金、短期資金、売掛債権活用まで含めて全体像を確認する方法があります。
短期運転資金や借換えを含めた再設計が必要な場合はHTファイナンス、売掛金の入金までの時間を短縮したい場合はHTペイのような選択肢も、資金使途と返済・回収見通しを整理したうえで検討するとよいでしょう。
ナフサ問題を経営者が読むべき視点は、供給不安そのものではありません。外部環境の変化を、自社の粗利、運転資金、価格転嫁、返済原資の説明にどう落とし込むか――そこにあります。
これが、資源価格が不安定な局面で中小企業が取るべき、実務的な向き合い方です。
本記事は、当サイトのコンテンツポリシーに基づき、ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・三坂大作が執筆し、資金調達顧問・丹下浩一が監修しています。
- >経済産業省「ナフサについて」(2026年3月26日)
- >経済産業省「赤澤経済産業大臣の閣議後記者会見の概要」(2026年6月2日)
- >外務省「Japan-Malaysia Joint Statement」(2026年6月10日)
- >外務省「Japan-Malaysia Summit Meeting and Luncheon Meeting」(2026年6月10日)
- >JERA「JERA Expands LNG Procurement Portfolio with New Long-Term Agreement with PETRONAS」(2026年6月10日)
- >中小企業庁「中東情勢等を踏まえた中小企業・小規模事業者向け支援について」
- >中小企業庁「セーフティネット保証制度(5号)」
- >日本石油化学工業協会「石油化学用原料ナフサ」

早稲田大学理工学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。法人営業・国際業務・市場営業・支店長・内部監査を歴任し、退職後は事業会社にて経営企画・業務統括責任者を経験。銀行の審査側の論理と事業会社経営の実情の双方に通じた資金調達のスペシャリストとして、中堅中小企業の"実行型支援"を展開。
早稲田大学理工学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。法人営業・国際業務・市場営業・支店長・内部監査を歴任し、退職後は事業会社にて経営企画・業務統括責任者を経験。銀行の審査側の論理と事業会社経営の実情の双方に通じた資金調達のスペシャリストとして、中堅中小企業の"実行型支援"を展開。







