ヒューマントラスト株式会社

2025
06 / 18

事例に基づく価値創造:NPOとの協業による事業の持続可能性の向上-②

前回に続けて、NPOとの協業による事業の持続可能性の向上について説明してきます。

前回のブログはこちら

企業活動の本質と収益向上の追求

企業活動の本質は利益の創出と持続的な成長ですが、それに加えて企業の社会的責任(CSR)としての貢献活動も欠かせません。一時期には主として株式利益を最優先する株主資本主義の基づき収益向上だけが最優先される経営方針が主流でしたが、昨今は、国連の提唱するSDGsなどの持続可能性の向上を目的とする企業活動を求める社会環境の変化もあって、より広い視野をもつ企業経営に高い評価が与えられています。

「社会問題 解決」に積極的に取り組むことで企業の存在価値が高まり、結果的にブランド価値向上や社員のモチベーションアップにも直結します。中期的にはこうした取り組みが直接的な売上貢献につながるケースもしばしばあります。

つまり、収益向上を追求するだけでなく、NPO法人の支援や協業を通じて持続可能なビジネスモデルを構築することが、今後の企業の生き残り戦略になり得るのです。こうした考え方こそが、現代の企業が求める「企業の持続可能な成長戦略」の要と言えるでしょう。

 

NPO法人の収益活動

収益活動の目的

NPO法人は非営利組織といっても、まったく収益を得ないわけではありません。むしろ、事業を継続するためには一定の資金確保が必要不可欠です。例えばイベントや講座を有料で実施したり、企業のNPOスポンサーシップを募ったりしています。

こうした「NPO法人のビジネスモデル」の中核には、資金調達によって活動を継続し、社会問題を解決するというミッションが存在します。利益を出しても、それがNPO法人の資金調達や運営資金として再投資される点が、一般企業の「営利目的」と異なるポイントです。

企業とNPOが連携する際に、双方のメリットを引き出すためには、お互いの目的や収益構造を理解することが大切です。その土台がしっかりしていると、協業プロジェクトで得られる成果も十分に期待できるでしょう。

実際の収益活動事例

例えば、あるNPO法人は地域イベントを定期開催して、参加費や企業スポンサーシップからの収益を獲得しています。また別のNPO法人では、自作の商品やオリジナルグッズを販売し、その収益を社会的課題の解決に活用しているケースもあります。

企業側からすると、こうしたNPOの収益活動に協力することで、社会貢献 企業戦略を明確化できます。具体的には、イベントを共同開催し、その一部収益をNPOの活動へ寄付する仕組みを作ったり、商品開発の段階からNPOと連携してブランド価値を高めたりと、多様な「NPO 収益活動」のサポート形態が考えられます。

こうした事例を学ぶことで、企業のNPO支援がどのように企業のイメージ刷新や社員のモチベーションアップに役立つか、そして長期的には収益向上 企業としての成長にどう結びつくかが見えてきます。

 

このような、NPO法人と事業法人(企業)がコラボレーションする機会は、今後ますます重要視されていくことが予想されます。サステナビリティやESG経営という統合報告書にも記載されるような事項に関して、NPO法人のもつ専門性、知見やノウハウは、企業にとって一層の価値創造のアウトカムにつながると思われます。

次回のブログでは、具体的なNPO法人と企業の協業の在り方、と協業の効果についてお話しようと思います。実際にNPO法人を設立し、「子どもたちへの教育機会の提供」という非営利活動を実施していた経験に基づいたお話をしてみたいと思います。

 

NPOと企業の協業モデル

協業の方法論

NPOと企業がコラボレーションする際には、まず協業の目的を明確に設定することが重要です。例えば、環境保護なら具体的な削減目標を設定する、教育支援なら指導プログラムや教材開発の方向性を確定する、といった具合です。

続いて、協業プロジェクトの進め方を双方で話し合い、責任分担を明文化しておく必要があります。NPO側が得意とする分野(専門知識や現場ネットワーク)と、企業側が得意とする分野(資金や技術力)を上手に合わせることが、最大の成果を生み出すコツです。

さらに、プロジェクトの進捗を定期的に共有し、改善点や新しい可能性を探ることも欠かせません。これは「NPO法人のイノベーション」を促すだけでなく、企業とNPOの相互利益にもつながります。

協業による相互利益

協業のメリットは一方向ではなく、企業とNPOが互いにプラスを得られる点にあります。企業は社会的責任を果たすことでブランド価値向上や新規顧客の獲得が期待でき、NPO法人の側は資金だけでなく、企業のマーケティング戦略や技術力などを取り入れることができます。

また、NPOと企業の協力体制が円滑になると、社会的課題の解決策の幅が広がります。共動することで得られる新たなアイデアは、大小さまざまな社会問題に応用可能です。まさに「企業とNPOの成功事例」を増やす原動力と言っても過言ではありません。

結果的に、両者が新しい事業の可能性を発見したり、共通の価値観を形成したりすることで、「NPO法人 パートナーシップ」が強固になります。そこから長期的な「持続可能なビジネスモデル」の基盤が生まれるのです。

NPOと企業の協業モデルの実例紹介

① 【認定NPO法人カタリバ × 日本マイクロソフト】

テーマ:被災地の教育支援とICT活用

協業概要:
東日本大震災後、カタリバが運営する「コラボ・スクール」(被災地の放課後学習拠点)に、日本マイクロソフトがクラウドやICTツールを提供。ITスキルを活かした学びの場を支援。

成果・実績:

  • ICT教育を取り入れた授業を通じ、プログラミングやプレゼン能力を育成
  • 被災3県(宮城・岩手・福島)での支援対象者は延べ1万人以上
  • 日本マイクロソフトは技術支援だけでなく社員ボランティアも派遣し、人的交流も実現

認定NPO法人カラリバのHPはこちらから

② 【NPO法人TABLE FOR TWO × 味の素株式会社】

テーマ:健康と飢餓を同時に解決する「寄付つき商品」モデル

協業概要:
開発途上国の子どもたちの学校給食支援と、日本の生活習慣病予防を目的としたプログラム。味の素は特定商品(例:低カロリー食品)を対象に、1食あたり20円を寄付。

成果・実績:

  • 2007年の開始以来、TABLE FOR TWO全体で累計支援給食数は約9,000万食(2024年時点)
  • 味の素は国内外の複数商品で継続的に寄付を実施
  • 消費者の共感を得るCSRとして社内評価・ブランド価値も向上

NPO法人TABLE FOR TWOのHPはこちらから

③. 【NPO法人ETIC.(エティック) × 株式会社リクルートホールディングス】

テーマ:地域活性化と若手人材育成

協業概要:
ETIC.の「右腕派遣プロジェクト」において、リクルートが若手社員を地方のNPOやベンチャーに「越境研修」として派遣。実践的な課題解決を経験する機会を提供。

成果・実績:

  • 2011年以降、全国30以上の地域に社員を派遣
  • 地域NPOの事業開発・広報支援などで具体的な成果(売上増、雇用創出など)を創出
  • 派遣社員の自己成長・帰任後の社内イノベーションにも好影響

NPO法人ETIC.のHPはこちらから

これらの事例では、企業が単なる資金提供にとどまらず、技術・人材・商品開発・広報といった多面的な支援を行うことで、NPOとの相乗効果を生み出しています。結果として、社会課題解決と企業価値向上の両立を実現した好例と言えます。

 

企業価値と社会的責任の向上

企業イメージの改善

NPOとの連携を積極的に行い事業の社会性を向上させている企業は、社会からの信頼度が高まりやすい傾向にあります。テレビやSNSなどのメディアで取り上げられる機会も増え、企業イメージの改善につながります。特に若い世代は、企業の社会貢献活動や倫理観を重視することが多いため、積極的な協業姿勢は大きな差別化要因となるでしょう。

また、ブランド価値向上によって、採用面でのメリットも期待できます。「社会問題の解決」に真剣な企業のほうが、共感度の高い人材を集めやすいと言われています。今後の少子高齢化時代を考えると、それは非常に大きなアドバンテージです。

つまり、協業を通じて生まれた企業の社会的企業イメージが、結果的には社員や顧客、投資家といったステークホルダー全体から支持されることにつながるのです。

持続可能な経営と長期的な成長

企業とNPOの連携を深めることは、企業の経営リスク軽減にも一役買います。環境問題や人権問題などに迅速に対応できる体制があれば、社会的批判や規制強化によるダメージを最小限に抑えられるからです。

さらに、こうした協業で培ったノウハウは、他の分野や海外展開にも応用できます。国際的な基準を考慮すると、社会や環境を意識した経営をしている企業は、海外でも評価されるケースが多いのです。これは「企業 成長 戦略」を長期的に支える土台となるでしょう。

そもそも持続可能な経営の実現には、イノベーションが欠かせません。NPO法人の独自の発想と企業のリソースが融合すれば、全く新しいサービスやプロダクトが誕生する可能性も大きく、長期的な企業成長に貢献します。

社会問題への対応と企業文化の向上

NPOと言うと、どうしても「優しい人たちが行う慈善活動」と捉えられがちですが、実際には高度な専門知識と現場力を伴う組織です。彼らとパートナーシップを組むことで、企業内部にも社会課題への意識が芽生え、組織全体が一体感を育む好機にもなります。

例えば、社員ボランティア制度を整える企業もあります。NPO法人への支援の一環として、社員が定期的にNPOのプロジェクトに参加し、そこで得た経験や学びを企業に還元する仕組みです。このようなプログラムは企業文化そのものを豊かにし、離職率の低下やチームワークの強化にも寄与します。

やがては自社内でのアイデア創出力が高まり、新事業の検討や顧客満足度の向上につながります。社会的責任を果たす姿勢が社内外で評価されることで、ポジティブな企業風土が根付くのです。

まとめ:新しいビジネスモデルとしてのNPOとの協業

ここまで、NPO法人が担う社会的役割や収益活動、そして企業との協業事例や方法論を見てきました。非営利組織の持つ専門性と企業の資金力・技術力を組み合わせることで、相乗効果が生まれ、社会問題の解決と企業の成長を同時に実現できることがお分かりいただけたと思います。

中堅企業のCEOをはじめ、企業経営者にとっては、こうしたNPOとの連携が新たな事業チャンスやブランド価値向上をもたらすだけでなく、長期的な企業イメージの維持やステークホルダーからの信頼獲得へとつながります。これは「企業の社会的責任」を強化するだけでなく、収益向上にも寄与する絶好の手段と言えるでしょう。

社会活動 成功事例をもっと増やしていくためにも、ぜひNPO 企業 コラボレーションを前向きに検討してみてください。新しいビジネスモデルとしてのNPOとの協業は、いまや企業の成長戦略に不可欠であり、社会全体をより豊かにする大きな原動力となってくれます。

 

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監修者 三坂大作
筆者・監修者 ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・取締役三坂 大作(ミサカ ダイサク)

略歴
・1985年:東京大学法学部卒業
・1985年:三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行 表参道支店:法人融資担当
・1989年:同行 ニューヨーク支店勤務 非日系企業向けコーポレートファイナンスを担当
・1992年:三菱銀行を退社、資金調達の専門家として独立
資格・登録情報
・経営革新等支援機関(認定支援機関ID:1078130011)
・貸金業務取扱主任者(資格者:三坂大作)
・貸金業登録:東京都知事(1)第31997号
・日本貸金業協会 会員番号:第006355号
専門分野と活動実績
企業の成長を資金面から支えるファイナンスの専門家として、30年以上にわたり中小企業の財務戦略・資金調達を支援。
国内外の法人融資・国際金融業務の経験を基に、経営者に寄り添った戦略的支援を展開。

現在の取り組み
ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・取締役として、以下の事業を統括:
・法人向けビジネスローン事業「HTファイナンス」
・個人事業主向けファクタリングサービス
・資金調達および財務戦略に関する経営コンサルティング

経営革新等支援機関として、企業の持続的成長を実現するための財務戦略策定や金融支援を行い、貸金業登録事業者として、適正かつ信頼性の高い金融サービスを提供しています。