公開日:2026.01.09
更新日:2026.01.09
老舗企業の「第2創業」成功事例|成熟産業でもV字回復するライフサイクル戦略
企業の経営改善や中期事業計画の策定において、もっとも難易度が高く、かつ重要なテーマの一つが「製品・サービスのライフサイクル」の見直しです。
資金や人材が豊富な大手企業であれば、常に新しい製品やサービスの開発(R&D)を行い、市場のニーズに合わせてポートフォリオを入れ替えていくことが可能です。
しかし、多くの中小企業、特に歴史のある老舗企業では事情が異なります。
「創業者の思い入れ」や「伝統」が重視されるあまり、時代の変化に対応した改変に対して社内の抵抗感が強く、イノベーションが阻害されるケースが後を絶ちません。
本記事では、成熟しきった、あるいは衰退期に入ったと思われる事業環境において、どのように製品・サービスのライフサイクルを見直し、事業再生(リ・ブランディング)を図るべきかについて解説します。
具体的な事例として、地方の葬儀会社が取り組んだ大胆な改革案を紐解きながら、その要諦を解説します。
- 老舗企業の改革を阻むのは「創業者の思い」と「社内の抵抗」。打破には数値による客観視が不可欠。
- 【成功事例】地方葬儀社が資産を「ホテル・観光業」へ転換し、衰退市場からV字回復を実現。
- ライフサイクルを見極め、異業種連携やM&Aで「次なる収益の柱」を作ることが経営者の責務。
成熟産業が陥りやすい「現状維持」の罠と危機感の欠如
結論:「創業者の思い入れ」や「社内の抵抗」を数値とロジックで説得し、製品ライフサイクルのステージ(衰退期など)を客観視することが、改革の第一歩です。
多くの中小企業経営者、特に事業承継を控えた後継者や若手経営者が直面するのが、既存事業の陳腐化です。しかし、そこには「変化」を拒む大きな壁が存在します。
伝統と変化の板挟みになる後継者たち
例えば、創業家が代々経営を担ってきた企業では、扱っている製品やサービスに対する愛着が深く、少しでも仕様を変えたり、新しいサービスを導入しようとしたりすると、「先代のやり方を否定するのか」といった反発が社内外から起こることがあります。
また、外部のコンサルタントや専門家が客観的なデータに基づいてアドバイスを行っても、経営トップの「勘」や「こだわり」が優先され、受け入れられないことも珍しくありません。
しかし、製品やサービスには必ず「寿命(ライフサイクル)」があります。どんなに優れた製品でも、市場環境が変われば売上は低下し、利益を生み出さなくなります。
重要なのは、製品・サービスが現在どのステージ(導入期・成長期・成熟期・衰退期)にあるのかを冷徹に見極め、感情論ではなく数値とロジックで次の手を打つことです。
【成功事例】地方葬儀会社に見る、逆境からの事業再構築
ここで、ある地方都市に拠点を置く葬儀会社の事例をご紹介します。この事例は、市場縮小、保守的な地域性、社内の抵抗勢力という「三重苦」の中で、いかにしてライフサイクルを意識した経営改善計画を策定したかを示す好例です。
閉鎖的な商圏と縮小する市場
その会社は、歴史的な寺社仏閣が多い地方都市にありました。
地域には古くからの檀家制度が根付いており、葬儀ビジネスも「どの寺の檀家か」によって依頼する葬儀社が決まっているような、非常に固定的な市場でした。
また、交通の便も決して良くはなく、大都市からのアクセスには数時間を要します。競合他社が入りにくい反面、新しい情報やイノベーションが流入しにくい環境でもありました。
この会社の経営課題は深刻で、以下のような状況に陥っていました。
- 市場の縮小:少子高齢化と人口減少により、既存の顧客ベース(檀家)だけでは案件が減少する一方である。
- 単価の下落:葬儀の小規模化(家族葬など)が進み、客単価が下がっている。
- 資産の低稼働:過去の投資で建設した大きな葬儀会館を複数保有しているが、稼働率は50%を切っている。
- 社内の抵抗:先代社長の時代を知る会長(親族)や古参幹部が、現状維持を強く主張し、新しい取り組みに反対している。
事業を継承した若い社長兄弟は強い危機感を持っていましたが、具体的な打開策を見出せず、社内の説得にも苦慮していました。まさに、事業の「衰退期」における典型的な悩みです。
既存資産を活かし、異業種と連携する「攻め」のリストラ戦略
結論:単なるコスト削減ではなく、保有資産(不動産・顧客網)を「ホテル」や「観光」など異業種と掛け合わせ、新たな収益源へ転換する再定義が必要です。
この状況を打破するために策定されたのが、製品・サービスのライフサイクルを抜本的に見直す経営改善計画です。単なるコストカットではなく、持てる資産を再定義し、新たな価値を生み出す戦略が練られました。
地方葬儀会社の事業再構築(リ・ブランディング)戦略図
1. ハード(資産)の転換
- 施設の集約・売却低稼働施設を整理し原資確保
- 業態転換(ホテル化)葬儀場を宿泊施設へリノベーション
2. ソフト(サービス)の革新
- 交通インフラ整備シャトルバスで商圏を拡大
- 檀家・寺院への優待ホテル・飲食割引で関係強化
3. エリア・連携戦略
- 異業種・行政連携観光ルート開発で公的支援獲得
- 同業他社とのM&A近隣エリアのネットワーク吸収
固定資産のリストラクチャーと用途転換
まず着手したのが、低稼働となっていた「箱モノ(不動産)」の改革です。
- 施設の集約と開放:5つあった葬儀会館を3つに集約し、稼働率を向上させました。さらに、そのうちの1つを葬儀専用ではなく、コンサートや展覧会などが開催できる「多目的施設」として地域に開放しました。
- 業態転換(ホテル化):余剰となった施設のうち1つを、大手ホテルチェーンのフランチャイズホテルへと改築しました。これにより、遠方からの参列者の宿泊需要を取り込むだけでなく、観光客の誘致も可能にしました。
- 遊休資産の売却:活用が見込めない残りの施設は売却し、改革のための原資を確保しました。
エリア戦略とマーケティングの刷新
ハード面の改革に加え、ソフト面(サービス)でもイノベーションを行いました。
- 交通インフラの整備:主要駅やバスターミナルと、自社の施設(葬儀場・ホテル)を結ぶシャトルバスの運行を開始し、アクセスの悪さを解消しました。
- 檀家・寺院への付加価値提供:提携する寺院や檀家に対し、葬儀費用の割引だけでなく、ホテル宿泊や併設飲食店の優待サービスを提供し、関係性を強化しました。
- 観光ルートの開発:地域の寺社仏閣や史跡を巡る観光ルートを開発し、ホテルを拠点とした観光事業を展開しました。これには行政とも連携し、地域振興(地方創生)の文脈を取り入れることで、補助金などの公的支援も活用しました。(参考:中小企業庁「事業再構築補助金」)
同業他社との「合従連衡」
さらに画期的だったのは、競合エリアへのアプローチです。後継者不足に悩む近隣地域の同業他社と連携(M&Aや業務提携)することで、これまで入り込めなかった他地域の寺院や檀家のネットワークを取り込むことに成功しました。
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ヒューマントラストは、金融と法務の専門家として、客観的な数値分析に基づいた「実行可能な事業改善計画」を共に策定します。
ライフサイクル・マネジメントがもたらす波及効果
この事例から学べることは、単に「葬儀」というサービスを売るのではなく、事業のライフサイクルを再定義することで、複数の波及効果が生まれるということです。
- 収益源の多様化:葬儀単体への依存から脱却し、ホテル、観光、飲食といった複数のキャッシュポイント(収益柱)を構築できます。
- 地域貢献と行政連携:一企業の生き残り戦略が、地域の観光活性化や雇用維持(地方創生)につながるため、行政や金融機関からの支援が得やすくなります。
- 事業承継問題の解決:未来への展望が開けることで、社内の保守的な層を説得できるだけでなく、地域の同業他社の受け皿(M&Aの譲受側)としても機能します。
将来的には、情報化を進めることでリモート葬儀や、地域での起業支援(インキュベーション)など、さらなる新しい産業の育成も視野に入ってくるでしょう。
まとめ:変化を恐れず、常に「次の芽」を育てる
製品やサービスは、放置すれば必ず陳腐化し、斜陽化します。今回の事例のように、一見すると変革が難しそうな伝統的な産業や閉鎖的な地域であっても、ライフサイクルの視点を取り入れることで、劇的なイノベーションを起こすことは可能です。
重要なのは、現在の「売れている状態」に安住せず、「いつか売れなくなる」というリスクを常に意識することです。事業数値の推移と同じように、自社の製品・サービスがライフサイクルのどの位置にあるかをモニタリングし続けることが、経営者の責務です。
弊社では、こうした事業改善計画の策定や、異業種・他社の事例をベースにしたコンサルティングを行っています。現状のビジネスモデルに閉塞感を感じている経営者様は、ぜひ一度ご相談ください。
事業転換や設備投資に必要な資金計画については、事業再構築のための資金調達サポートも併せてご参照ください。
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