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公開日:2026.01.15

更新日:2026.01.15

資金調達を成功させる事業計画書|プロが教える作成ポイントと「審査に通る」リスク開示術

若い起業家の二人が光る事業計画書を広げ、リスクを避けながら資金調達の成功が待つ輝く都市へ進む。

中小企業の経営者にとって、資金繰りは片時も頭から離れない最重要課題です。「売上の入金」よりも「コストの支払い」が先行するビジネスの世界において、資金調達はまさに経営の生命線と言えます。

今回は、その資金調達の成否を握るツール「事業計画書」について、作成時に陥りやすい罠や、審査担当者が実際に見ている「リスク情報の取り扱い」を中心に解説します。

記事の要点

  • 資金調達の成否は「事業計画書」の質で9割決まる
  • 中小企業の融資審査では「夢」より「返済の確実性」が最重視される
  • リスクを隠蔽した「盛った計画」は投資家の信頼を損ない破綻する
  • 不都合なリスク情報の開示と対策こそが、金融機関の信頼を勝ち取る鍵

💡 失敗事例から学ぶ

数億円を調達しながら、実態と乖離した計画書で破綻しかけたバイオベンチャーの実話。

この「生々しい失敗事例」を先に読む ▼

資金調達の多様化と事業計画書の必要性

結論:資金調達には多様な手段がありますが、どの相手も「返済能力」や「成長性」を証明する根拠として、必ず質の高い事業計画書を要求します。

企業の規模が大きくなればなるほど、必要となる資金の額も増大します。それに伴い、資金調達の手法や相手先(出し手)も多様化していきます。

資金の出し手とその動機

資金調達の相手は、フェーズや目的に応じて以下のように多岐にわたります。

  • 社長個人、親族、知人
  • 銀行、信用金庫などの民間金融機関
  • 日本政策金融公庫などの公的金融機関
  • ベンチャーキャピタル(VC)、投資ファンド
  • エンジェル投資家、外国人投資家
  • ファクタリング会社、ノンバンク

それぞれの出し手が資金を提供する動機や審査基準は異なります。銀行であれば「返済能力」を重視しますし、投資家であれば「将来の成長性(キャピタルゲイン)」を重視します。

しかし、どのような相手から資金を調達する場合であっても、共通して求められる資料があります。それが「事業計画書」です。
事業計画書は、経営者の頭の中にあるビジョンを可視化し、第三者にその実現可能性を証明するための「パスポート」のような役割を果たします。

参考リンク:日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード(創業計画書など)」

コンサルタントが支援する事業計画書の全体像

結論:優れた計画書には「定量(数値)」と「定性(ビジョン)」の両輪が不可欠です。コンサルタントは経営者の想いを論理的な言葉と数字に変換し、信頼性を担保します。

私たちは経営コンサルタントとして、数多くの事業計画書作成に携わってきました。単に数字を並べるだけではなく、事業の全体像をロジカルに説明するための構成要素が不可欠です。

一般的に、質の高い事業計画書には以下の要素が含まれます。

  • 企業理念・ビジョン:会社が目指す方向性
  • 事業コンセプト:誰に、何を、どのように提供するか
  • SWOT分析:自社の強み・弱み、市場の機会・脅威の分析
  • 客観的な業界分析:市場規模や競合の動向
  • ビジネスモデル:収益を生み出す仕組み
  • 事業組織図:実行体制の明確化
  • 中期事業計画(数値計画):向こう5年間の損益・資金繰り計画

定量評価と定性評価の融合

事業計画書の作成支援は、単なる代筆作業ではありません。
専門家としての知識を提供しつつも、あくまで主役は社長や経営陣です。

ビジネスモデルの優位性や数値の根拠についてディスカッションを重ね、経営者の想いを論理的な言葉と数字に変換していく作業です。
いわば、コンサルタントは登山におけるガイドや、作業工程の指南役です。

完成した事業計画書を通じて、資金の出し手は事業の「定量評価(数字)」と「定性評価(事業の質)」の両面を検討します。
この両輪が揃って初めて、希望する条件での資金調達が可能になるのです。

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上場企業と中小企業における計画書の違い

結論:上場企業は「成長ストーリー(株価)」を、中小企業は「返済の確実性(融資審査)」を最重視します。相手の視点に合わせた書き分けが資金調達成功の鍵です。

事業計画書を作成する目的は「資金調達」で共通していますが、企業のステージによって重視されるポイントが異なります。

上場企業:株価形成とIR活動

上場企業における事業計画書の作成は、IR(インベスター・リレーションズ)活動の一環として非常に重要です。
投資家に対して「この会社は将来どれくらい成長するのか」を示し、新株発行などの資金調達を有利に進めるために行います。
ここでは、中期経営計画を発表することで期待感を醸成し、株価の上昇や安定を図ることが主な目的となります。つまり、「成長ストーリー」の魅力が強く求められます。

中小企業:融資審査と返済能力

一方、中小企業の実務においては、主に金融機関への借入申請資料としての側面が強くなります。
銀行や信用金庫の審査担当者は、「貸したお金がきちんと返ってくるか」を最優先に考えます。そのため、夢のような成長物語よりも、足元の収益性や資金繰りの安全性、そしてリスクに対する備えが現実的であるかが厳しくチェックされます。

いずれの場合も、コンサルタントの仕事は「作成した資料の効果を最大化させること」に尽きますが、相手が何を見ているかを理解して書き分ける戦略が必要です。

あわせて読みたい:「創業支援融資が借りられない!」と諦める前に。審査の壁を乗り越えるプロの資金調達術

資金調達目的別:事業計画書の重点ポイント

上場企業・ベンチャー

  • 主な目的:
    株価形成、IR活動、大型資金調達
  • 重視される点:
    成長ストーリー、市場拡大の可能性
  • キーワード:
    キャピタルゲイン、ビジョン、期待感

中小企業・実務型

  • 主な目的:
    銀行融資、運転資金・設備資金の確保
  • 重視される点:
    返済能力、資金繰りの安定性、堅実さ
  • キーワード:
    返済原資、実績、リスク管理、保全

【ケーススタディ】バイオベンチャーに見る「盛った計画」の末路

結論:一時的な資金調達のために実態とかけ離れた「盛った計画」を作っても、組織の混乱や投資家の信頼喪失を招き、長期的には事業存続そのものを危うくします。

ここで、事業計画書作成にまつわる、ある難しい局面の事例をご紹介しましょう。これは、情報の開示とリスク評価のバランスを考える上で非常に示唆に富むケースです。

ある動物向けの再生医療(ペット用医薬品など)を手掛けるバイオベンチャー企業がありました。
ペット市場の拡大という追い風もあり、独自の研究開発と特許技術を武器に「事業性評価」のみで数億円の資金を調達し、創業からわずか数年で株式上場を果たした企業です。

表面化していなかった重大なリスク

この企業は、医師資格を持つ創業社長がアメリカの製薬会社との提携を強みに成長戦略を描いていました。しかし、実態は売上がほぼゼロの状態。当初の出資金は研究施設やラボの設置で底をつきかけていました。

さらに上場後、経営方針を巡って大株主との対立が激化し、創業社長が解任されるという「お家騒動」が勃発します。ベンチャー企業との合併による新体制への移行、財務担当役員の不在など、社内は混乱を極めました。

この局面で、新体制での再出発を図るための新たな事業計画書作成と、新株発行による資金調達が必要となりました。コンサルタントの視点から事業を精査した際、以下の重大な懸念事項が浮かび上がりました。

  1. 経営体制の不連続性:創業社長と役員の大半が解任され、組織図や指揮系統が根本から変わってしまったこと。
  2. 提携継続の危機:資金難によりアメリカのパートナー企業への開発負担金支払いが遅延し、提携解消を打診されている事実。

リスクを隠した「上方修正」の危険性

本来であれば、これらのネガティブな情報は投資家や取引所に正直に開示すべきリスクファクターです。しかし、会社側の方針は「新株発行による資金調達を成功させるため、マイナス要因は盛り込まない」というものでした。

結果として作成された計画書は、合併による顧客拡大などのシナジー効果のみを強調し、数値計画を上方修正したバラ色の内容でした。
確かに、その計画書によって一時的な資金調達は達成できたかもしれません。
しかし、実態(開発遅延や組織の混乱)と乖離した計画は、中長期的に見れば投資家への裏切り行為となりかねません。

株価を支えるためにリスクを隠蔽し、単純な増収増益だけを描くことは、極めてリスキーな判断です。
このようなケースでは、専門家として支援を継続することがコンプライアンスや倫理の観点から難しくなる場合もあります。

リスクファクターの開示こそが信頼を生む

結論:不都合な真実を隠す計画書は審査で見抜かれます。リスクを正直に開示し、その対策(コンチンジェンシープラン)を示すことが、逆に金融機関からの深い信頼を獲得します。

上記の例は極端かもしれませんが、資金調達の現場では「少しでも良く見せたい」という心理から、事業計画書においてリスク要因の記載が省かれたり、過小評価されたりすることが往々にして起こります。

金融機関や投資家は「行間」を読む

資金の出し手、特に金融機関の審査担当者はプロフェッショナルです。提出された事業計画書や決算書を鵜呑みにすることはまずありません。
「話がうますぎる」「リスクへの言及がない」と感じれば、独自に数値を下方修正して評価しますし、疑問が払拭できなければ融資は否決されます。

逆に言えば、自社の弱みや市場のリスク、プロジェクトの不確定要素(リスクファクター)を正直にさらけ出し、それに対する具体的な対策(コンチンジェンシープラン)が記載されている計画書の方が、信頼性は格段に高まります。

  • 開発が遅れた場合、どう資金をつなぐのか?
  • 競合が参入してきた場合、どう差別化を維持するのか?
  • キーマンが退職した場合、組織はどう回るのか?

こうした「不都合な真実」に向き合っているかどうかが、経営者の資質として評価されるのです。

まとめ

資金調達と事業計画書は、切っても切り離せない密接な関係にあります。
より多くの資金を、より良い条件で調達したいと願うのは経営者として当然の心理であり、そのために計画を魅力的に見せようと努力することも間違いではありません。

しかし、「事実を盛る」ことや「リスクを隠す」ことは、結果として企業の信用を損なうことにつながります。
SWOT分析や事業環境分析において、プラス面だけでなくマイナス面をどのように表現し、どう乗り越えるかを示すことこそが、事業計画書作成における最大のテーマであり、永遠の課題です。

説得力のある事業計画書とは、夢を語るだけでなく、現実の厳しさをも直視した上で描かれたロードマップなのです。

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三坂 大作
監修者三坂 大作
ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・取締役

東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
さらにニューヨーク支店にて国際金融業務も経験し、法務と金融の双方に通じたスペシャリストとして、30年以上にわたり中小企業・個人事業主の“実行型支援”を展開。

東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
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