2025.08.13
生命保険を担保に借り入れをする「契約者貸付制度」とは?メリットやデメリットを解説
企業が急な資金需要に直面した場合、どのように資金を調達すればよいか悩むことがあります。銀行融資は審査や手続きに時間がかかり、カードローンは審査基準が厳しいため、希望どおりの資金調達が難しいことも少なくありません。そのような状況において、すでに加入している生命保険を活用する方法があります。
生命保険には、契約者貸付制度という仕組みがあり、これは加入している保険の解約返戻金を担保として借入ができる制度です。この制度は審査が不要であり、迅速に資金を調達できることから、緊急の資金需要に対処する手段として役立つことがあります。
この記事では、生命保険の契約者貸付制度の仕組みや利用条件、具体的な手続きの方法について詳しく解説します。また、他の資金調達方法と比較した際のメリットやデメリットについても紹介します。
契約者貸付制度の基本
契約者貸付制度は、生命保険契約者が、自分の保険を担保にして資金を借りることができる仕組みです。
契約者貸付制度の仕組み
契約者貸付制度とは、生命保険契約者が保有している保険契約の解約返戻金の範囲内で融資を受けられる制度です。保険会社が提供するこのサービスは、契約者が資金を必要とする際に利用できる便利な選択肢となっています。
この制度は、保険契約者が支払ってきた保険料の一部を借りるような形となりますが、保険契約自体は継続します。そのため、保障内容はそのまま維持されるという大きな特徴があります。
借入限度額は、一般的に解約返戻金の70〜90%程度で、保険会社によって異なります。保険契約の価値を担保にした融資なので、通常の融資と異なり審査がほとんど行われません。
対象となる保険種類
契約者貸付制度が利用できる保険は、解約返戻金が発生する保険契約に限られます。主に、以下のような保険商品が対象となります。
- 終身保険
- 養老保険
- 定期付終身保険
- 変額保険(最低保証がある場合)
- 積立型の医療保険
- 学資保険
一方、掛け捨て型の保険(定期保険や収入保障保険など)は、解約返戻金がほとんど発生しないため、通常は契約者貸付の対象外となります。また、保険種類によっては、契約後一定期間(1〜2年程度)経過していないと利用できない場合もあります。
保険契約の種類によって借入可能額や条件が変わるため、自分の契約内容を確認することが重要です。契約内容を事前確認して、実際にどの程度の借入が可能か把握しておくとよいでしょう。
生命保険を担保に借り入れするメリット
生命保険の契約者貸付制度には、通常の融資と比較していくつかの優れた特徴があります。
審査なしで迅速
契約者貸付制度の最大の魅力は、信用審査が不要である点です。通常のローンやカードローンでは、収入証明や信用情報の審査があり、それらが通過するまでに時間がかかります。また、過去の借入状況や返済履歴によっては、審査に通らないこともあります。
しかし、契約者貸付では、すでに契約者が保有している解約返戻金の範囲内での貸付となるため、収入証明書の提出や信用情報のチェックは必要ありません。そのため、信用情報に不安がある場合でも利用可能です。
必要書類も本人確認書類と保険証券程度と簡素で、手続きが非常にシンプルです。多くの保険会社では電話一本で申し込みができ、最短で即日〜数日以内に指定口座に振り込まれます。急な資金需要に対応できるスピード感は、大きな利点です。
資金使途が自由
契約者貸付で借り入れた資金の使いみちに制限はありません。事業資金、教育費、医療費、住宅リフォーム費用など、どのような目的に使用してもかまいません。用途証明が不要なため、柔軟な資金活用が可能です。
銀行の目的別ローンでは資金使途が限定され、それ以外の用途に流用できないケースが多いのに対し、契約者貸付では資金の自由な活用ができるため、多目的な資金需要に対応できます。
例えば、事業者が運転資金として利用したり、個人が冠婚葬祭の急な出費に充てたりするなど、さまざまなシーンで活用できます。自由度の高さは、経営者や個人事業主にとって大きなメリットといえるでしょう。
保険保障が継続する
契約者貸付制度の重要な特徴として、貸付を受けても保険契約は継続するという点があります。つまり、生命保険や医療保険などの保障内容はそのまま維持されます。
解約した場合と異なり、保障を失うことなく資金調達ができるのは、大きな安心感につながります。特に健康状態に不安がある方や、年齢が上がって新規に保険に加入しづらい方にとっては、既存の保障を維持したまま資金を借りられることは非常に重要です。
また、保険料の支払いも続けることで、契約者貸付を利用した後も保険金額が減額されることなく保障が継続します。これは経営者など、保障の維持が重要な方には特に大きなメリットといえるでしょう。
生命保険を担保に借り入れをするデメリット
契約者貸付制度にはメリットがある一方で、いくつかの注意点やデメリットも存在します。資金調達の選択肢として検討する際には、これらのデメリットもしっかりと理解しておくことが大切です。
利息の負担が重い
契約者貸付制度を利用する際の大きなデメリットの一つは、利息の負担です。貸付金には金利が発生し、その金利は保険会社によって異なりますが、一般的に年1%〜8%程度となっています。特に近年の低金利環境下でも、比較的高めの金利設定となっている会社もあります。
さらに重要なのが、多くの保険会社では利息が複利で計算されるという点です。一定期間ごと(半年または1年)に利息が元金に加算され、次の期間ではその合計額に対して再び利息が計算されます。そのため、返済を長期間放置すると、借入額が予想以上に膨らむ可能性があります。
例えば、100万円を金利5%で借り入れた場合、単利計算なら5年で125万円になりますが、複利計算では約128万円に増加します。返済計画を立てる際には、この複利の影響を十分に考慮する必要があります。
借入限度額の制約がある
契約者貸付で借りられる金額には、上限があります。一般的に、解約返戻金の70%〜90%程度が借入限度額となり、保険会社や保険商品によって異なります。
例えば、解約返戻金が100万円の保険契約で借入限度が80%の場合、最大で80万円までしか借り入れできません。借入限度額は契約内容に依存するため、加入している保険の積立金額が少ない場合は、必要な資金を全額調達できない可能性があります。
また、契約年数が浅い場合は解約返戻金自体が少額であるため、十分な借入ができないケースもあります。特に契約初期(3年以内程度)は、解約返戻金がほとんど発生していないことが多く、実質的に制度を利用できないことがあります。
返済しない場合のリスクが大きい
契約者貸付を利用する際の最大のリスクは、返済しなかった場合の影響です。貸付金と利息の合計額が解約返戻金を超えると、保険契約が失効するケースがあります。
また、保険金や給付金が支払われる事由が発生した場合、貸付元利金が自動的に差し引かれます。例えば、死亡保険金から貸付金が控除されるため、遺族が受け取る金額が減少します。
さらに、解約返戻金が減少するため、将来的に資金が必要になった際の選択肢が狭まることも忘れてはいけません。特に、長期間返済せずに利息が複利で増加し続けると、保険契約の価値が大きく目減りする可能性があります。
契約者貸付の利用方法
実際に契約者貸付制度を利用するには、どのような手続きが必要なのでしょうか。申込から受取までの流れを詳しく解説します。
申込方法
契約者貸付の申込方法は、保険会社によって多少異なりますが、一般的に以下のような方法があります。
- 保険会社へ電話で申し込む
- インターネット(マイページ等)から申し込む
- 保険会社の窓口や営業担当者を通じて申し込む
申込時に必要な情報は主に、保険証券番号、契約者の氏名、希望貸付金額、振込先口座情報などです。手続きの簡便さが大きな特徴で、多くの保険会社では、申込から数日以内に資金を受け取ることができます。
必要書類としては、本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)のコピーと保険証券が基本となります。保険証券を紛失している場合は、本人確認書類だけで対応できることもありますが、保険会社によっては再発行手続きが必要な場合もあります。
また、契約者と受取口座名義人が同一であることが原則です。異なる場合は追加の書類や手続きが必要になることがあるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
貸付金の受取方法
契約者貸付の資金は、指定した銀行口座に振り込まれるのが一般的です。振込までの期間は、保険会社によって異なりますが、以下のような目安となります。
オンライン申込 | 最短即日〜3営業日程度 |
電話申込 | 1〜5営業日程度 |
窓口申込 | 当日〜3営業日程度 |
緊急性の高い資金需要に対応するため、早急な資金調達が可能という点は大きなメリットです。特に、オンラインや電話での申込に対応している保険会社では、書類の郵送が不要なため、手続きがよりスピーディーに完了します。
ただし、申込のタイミングや手続き方法によっては、即日対応が難しい場合もあります。例えば、夕方以降の申込や土日祝日の申込は、翌営業日以降の対応となることが多いでしょう。緊急性が高い場合は、平日の午前中に申し込むことで、より早く資金を受け取れる可能性が高まります。
借入可能額の確認方法
契約者貸付で借り入れできる金額は、保険契約の解約返戻金をベースに算出されます。一般的には、解約返戻金の70%〜90%程度が上限となりますが、具体的な借入可能額を知るには以下の方法があります。
- 保険会社のコールセンターに電話で問い合わせる
- マイページ(オンラインサービス)で確認する
- 最新の保険証券や契約内容のお知らせで解約返戻金を確認する
- 担当の営業職員に確認する
借入可能額は、契約後の経過年数や保険料の払込状況によって変動します。最新の借入可能額を事前確認しておくことで、資金計画を立てやすくなります。
また、複数の保険契約がある場合は、それぞれの契約ごとに借入が可能です。全ての契約を合わせることで、より大きな資金調達が可能になることもあります。まとまった資金が必要な場合は、保有する全ての保険契約の借入可能額を確認するとよいでしょう。
生命保険を担保にした借り入れの返済方法
契約者貸付を利用する際は、返済方法や計画についても理解しておくことが重要です。適切な返済計画は、将来的な財務負担を軽減するために欠かせません。
返済方法の種類
契約者貸付の返済方法は、通常以下の3つの選択肢があります。
随時返済 | 任意のタイミングで好きな金額を返済 |
一括返済 | 借入金を一度に全額返済 |
分割返済 | 毎月一定額を計画的に返済 |
返済方法は自由に選択可能で、月々の返済義務はありません。ただし、利息は借入残高に対して継続的に発生するため、できるだけ早く返済するほど利息負担を抑えられます。
返済手続きの方法としては、銀行振込や口座引き落とし、保険会社の窓口での支払いなど、複数の選択肢が用意されています。多くの保険会社では、インターネットバンキングやATMからの振込による返済も可能です。
特に注目すべき点として、契約者貸付では、返済期限が設定されていないケースが多いことが挙げられます。これは一見便利に思えますが、返済を後回しにしがちになり、結果的に利息負担が増大するリスクがあることを認識しておく必要があります。
返済計画の立て方
契約者貸付を利用する際は、効率的な返済計画を立てることが重要です。以下のポイントを考慮して、返済計画を作成しましょう。
まず、借入期間を可能な限り短くするよう計画します。利息は、借入期間が長くなるほど増加するため、計画的な返済で利息負担を最小化することが重要です。例えば、月々の返済可能額を算出し、計画的に返済する方法が効果的です。
次に、複数の借入がある場合は、金利の高いものから優先的に返済するのが基本です。ただし、契約者貸付の金利が他の借入(クレジットカードやカードローンなど)より低い場合は、高金利の借入から返済するほうが合理的です。
また、ボーナスや臨時収入があった際に、まとまった返済を行うことも有効な戦略です。特に、複利で利息が計算される契約者貸付では、早期の返済が利息負担の大幅な軽減につながります。
返済遅延のリスク
契約者貸付には、明確な返済期限が設定されていないことが多いですが、返済を後回しにすることには大きなリスクが伴います。
最も重大なリスクは、貸付金と利息の合計額が解約返戻金を超えた場合に、保険契約が失効する可能性があることです。契約失効を防ぐための定期確認が非常に重要です。
また、保険金請求事由が発生した場合、貸付金と利息は、自動的に保険金から差し引かれます。例えば、死亡保険金を相続人が受け取る際に、貸付残高が差し引かれるため、遺族の受取額が減少することになります。
さらに、解約返戻金が目減りするため、将来的な資金ニーズに対応しづらくなる点も見逃せません。特に、高齢になってからの医療費や介護費用の準備として保険を活用することを考えている場合は、契約者貸付の返済を先延ばしにするリスクを十分に認識する必要があります。
契約者貸付と他の借入方法の比較
資金調達の選択肢は、複数あります。契約者貸付制度が自分に合っているかを判断するために、他の借入方法と比較検討してみましょう。
銀行ローンとの違い
契約者貸付と銀行ローンには、いくつかの重要な違いがあります。まず、審査プロセスについて、銀行ローンでは収入証明書の提出や信用情報の照会が必要です。一方、契約者貸付では基本的に審査がなく、収入や信用状況に関係なく借入可能です。
金利面では、住宅ローンなど一部の銀行ローンは、契約者貸付より低金利である場合が多いですが、フリーローンなどは、契約者貸付と同等かそれ以上の金利が設定されていることがあります。借入期間についても、銀行ローンでは明確な返済期限が設定されるのに対し、契約者貸付では返済期限が柔軟である点が異なります。
担保や保証人についても大きな違いがあります。銀行ローンでは、担保設定や保証人が必要なケースがありますが、契約者貸付では保険契約自体が担保となるため、追加の担保や保証人は不要です。また、契約者貸付は資金使途に制限がない点も、目的別の銀行ローンと比較して柔軟性が高いといえます。
カードローンやクレジットカードとの違い
契約者貸付を、カードローンやクレジットカードのキャッシングと比較すると、いくつかの特徴的な違いが見えてきます。
金利の面では一般的に、カードローンは年利7〜18%程度、クレジットカードのキャッシングは15〜18%程度となっており、契約者貸付(年1〜8%程度)の方が低金利であることが多くみられます。金利面での有利性を確認することで、長期的なコスト削減につながります。
限度額については、カードローンやクレジットカードは審査に基づいて設定されるため、収入や信用状況によって大きく変わります。一方、契約者貸付は解約返戻金に連動するため、長期間加入している保険ほど借入可能額が大きくなる傾向があります。
利便性の観点では、カードローンやクレジットカードはATMでの引き出しが可能で、24時間いつでも利用できる利点があります。契約者貸付は、申込から入金までに数日かかることもあるため、緊急性の高い少額の資金需要には向かない場合もあります。
まとめ
生命保険の契約者貸付制度は、審査なしで迅速に資金調達できる便利な仕組みです。解約返戻金を担保に借り入れできるため、信用情報に関係なく利用でき、保険契約そのものの保障も継続します。資金使途の自由度も高く、事業資金から教育費、医療費まで幅広く対応できます。
一方で、金利負担や複利計算による元利金の増加、返済が滞った場合の保険契約への影響など、注意すべき点も存在します。自分の保険契約の内容を確認し、返済計画をしっかり立てたうえで利用することをおすすめします。各種ローンとの比較検討も行い、状況に応じた最適な資金調達方法を選びましょう。
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