2025.11.04
AIを用いた融資とは?仕組みと従来型融資との違い、審査で見られるポイントを解説
融資は、時間がかかる資金調達方法というイメージを持つ方は多いかもしれません。従来の融資では、膨大な書類準備や長い審査期間が必要で、資金が必要なタイミングに間に合わないことも少なくありませんでした。
そんな中、近年注目を集めているのが、AIを活用した融資サービスです。AIが経営データを分析し、短時間で融資の可否を判断するため、スピーディーな資金調達が可能になっています。
この記事では、AI融資の仕組みや特徴、従来型融資との違い、そして審査で見られるポイントまで詳しく解説します。
- AI融資とは、AIが経営データ(会計、銀行取引など)を分析し、最短即日で融資判断を行う仕組みです。
- 従来型融資と比べ、審査が高速で、手続きや必要書類が大幅に簡素化されています。
- 審査では過去の決算書だけでなく、直近のリアルタイムなデータ(キャッシュフローなど)が重視されます。
- AI融資を有利に進めるには、日頃からの正確な会計データの管理と、銀行取引の最適化が鍵となります。
AI融資とは
AI融資は、人工知能(AI)を活用した新しい融資の形です。従来は人間が行っていた審査プロセスの多くをAIが担うことで、効率化とスピードアップを実現しています。
AI融資の基本的な仕組み
AI融資は、経営データをAIが分析し、融資の可否や条件を判断するシステムです。具体的には、申込者の財務データや取引履歴などをAIが学習し、返済能力を予測します。
このシステムでは、膨大なデータを高速で処理できるAIの特性を活かし、従来は数週間かかっていた審査を、数分から数時間に短縮することが可能です。
オンラインで完結する手続きが特徴で、店舗に行く必要がなく、24時間いつでも申込みができます。
審査から融資実行まで全てデジタルで完結するため、経営者は本業に集中しながら資金調達を進められるのです。
AI融資サービスの登場した背景
AI融資サービスが登場した背景には、テクノロジーの発展と中小企業の資金調達ニーズがあります。従来型の融資では対応しきれなかった、「素早い審査」「少額融資」などのニーズに応えるべく開発されました。
特に、フィンテック企業の台頭により、銀行やノンバンクといった既存の金融機関も、競争力維持のためにAI技術を融資プロセスに取り入れるようになっています。
また、コロナ禍をきっかけとしたオンライン取引の普及も、AI融資サービスの成長を後押ししました。対面での手続きが難しい状況下で、完全オンラインで完結するAI融資は、多くの企業から支持を集めたのです。
AI融資の従来型融資との違い
AI融資は、従来型融資とは異なる特徴を持っています。両者の違いを理解することで、自社に最適な融資方法を選択できるようになります。
- 審査基準: 決算書、事業計画書、担保・保証
- 審査プロセス: 対面での面談、書類の精査
- 審査期間: 数週間〜1ヶ月以上
- 特徴: 過去の実績・信頼性重視、金利は低め
- 審査基準: リアルタイムデータ (会計, 銀行取引)
- 審査プロセス: オンライン完結、データ連携
- 審査期間: 最短即日〜数日
- 特徴: スピード重視、将来性・直近の業績重視
審査のスピード
AI融資の最大の特徴は、そのスピードにあります。従来型融資では、審査に数週間から1ヶ月以上かかることもありましたが、AI融資では、最短数分で審査結果が出ることもあります。
このスピードの違いは、審査プロセスの自動化によるものです。AIは、提出されたデータを瞬時に分析し、過去の膨大な融資データと照らし合わせて判断します。
急な資金需要への対応が可能になるため、ビジネスチャンスを逃さずに済むメリットがあります。
例えば、大型案件を受注したものの、資材調達のための資金が不足している場合など、従来型融資では間に合わないケースでも、AI融資なら対応できる可能性が高まります。
必要書類や手続きの負担
従来型融資では、決算書や事業計画書、担保関連書類など、多くの書類を準備する必要がありました。これに対し、AI融資では、必要書類が大幅に簡素化されています。
多くのAI融資サービスでは、会計ソフトとの連携やオンラインバンキングのデータ連携により、自動的に必要情報を取得します。これにより、経営者は書類準備の負担から解放されます。
また、従来型融資では、融資担当者との面談や店舗訪問が必要でしたが、AI融資ではそうした対面プロセスが不要です。時間と場所を問わず手続きを進められるため、経営者の業務効率を損なわずに資金調達が可能になります。
審査基準と判断プロセス
従来型融資では、融資担当者の主観的判断が大きく影響する場合がありましたが、AI融資では、データに基づく客観的な判断が行われます。
従来型融資が主に過去の財務状況(決算書)を重視するのに対し、AI融資では直近の取引状況や入出金履歴など、よりリアルタイムなデータを活用して判断します。
データに基づく一貫した判断が行われるため、融資担当者による判断のブレが少ないのも特徴です。
また、AI融資では、従来型融資では重視されなかった要素(ウェブサイトの評判やSNS上の情報など)も審査対象になることがあります。これにより、財務データだけでは評価しきれない企業の潜在力や成長性を見出せる可能性があります。
AI融資の審査で使われるデータの種類
AI融資では、さまざまなデータを活用して審査が行われます。どのようなデータが重視されるのかを理解することで、融資審査に向けた準備ができるようになります。
会計データと財務情報
AI融資において、最も基本的な審査材料となるのが、会計データと財務情報です。これには、決算書データだけでなく、会計ソフトから抽出される日々の経理情報も含まれます。
多くのAI融資サービスでは、freee、MFクラウド、弥生会計などの主要会計ソフトとの連携機能を備えており、これらのソフトから直接データを取得します。
最新の財務状況を正確に反映させるため、会計データの定期的な更新が重要です。
AIは売上の推移、利益率の変化、運転資金の状況などを分析し、事業の安定性や成長性を評価します。また、季節変動や業界平均との比較など、人間では難しい複雑な分析も瞬時に行います。
銀行取引データと入出金履歴
AI融資では、銀行口座の入出金履歴も重要な審査材料となります。リアルタイムのキャッシュフローを把握することで、より正確な返済能力の評価が可能になるためです。
多くのAI融資サービスでは、申込者の同意のもと、オンラインバンキングのAPIを通じて銀行取引データを取得します。これにより、手動でのデータ提出が不要になるだけでなく、データの正確性も担保されます。
AIは入出金パターン、残高の推移、取引先との関係性などを分析し、ビジネスの健全性を評価します。例えば、安定した入金パターンがある企業は、返済能力が高いと判断される傾向にあります。
取引の安定性と計画性が高く評価されるため、資金繰り管理の徹底が審査通過のポイントになります。
その他のビジネスデータと信用情報
AI融資では、従来の融資では使われなかった多様なデータも審査に活用されます。具体的には、以下のようなデータが審査対象となることがあります。
まず、信用情報機関に登録されている情報は、重要な判断材料です。過去の借入返済履歴や債務不履行の有無などが審査に大きく影響します。
また、ウェブサイトやSNSの評判情報も分析対象となることがあります。顧客からの評価や業界内での評判は、数字には表れない企業の信頼性を測る指標となります。
さらに、ECサイトでの販売データや決済サービスの利用状況なども審査材料になる場合があります。特に、自社のECプラットフォームで融資サービスを展開する企業(Amazon、楽天、PayPalなど)は、これらのデータを重視する傾向にあります。
オンライン上の企業評価も審査に影響するため、デジタルプレゼンスの管理も重要になってきています。
AI融資の申込みから融資実行までの流れ
AI融資を受けるプロセスは、従来型融資とは大きく異なります。ここでは、申込みから融資実行までの一般的な流れを解説します。
オンラインでの申込み手続き
AI融資はまず、オンラインでの申込み手続きから始まります。一般的には、以下のような流れで進みます。
まず、融資サービスのウェブサイトやアプリにアクセスし、会員登録を行います。基本的な企業情報(法人名、代表者名、設立年月日など)の入力が求められます。
次に、身分証明書のアップロードや電子署名などで本人確認を行います。多くのサービスでは、スマートフォンで撮影した画像をアップロードするだけで完了します。
データ連携の設定が重要なステップとなります。会計ソフトや銀行口座との連携を許可することで、審査に必要なデータが自動取得されます。
最後に、希望融資額や返済期間などの融資条件を設定します。この際、システムが提示する融資可能額の範囲内で金額を選択するケースが多くあります。
オンライン申込みの所要時間は、15分から30分程度のケースが多く、全て手元のデバイスから完結できます。
AIによる自動審査
申込み完了後、AIによる自動審査が開始されます。このプロセスは、以下のように進行します。
まず、連携した会計ソフトや銀行口座から取得したデータをAIが分析します。売上推移、利益率、キャッシュフローなどの基本的な財務指標をチェックします。
次に、AIは過去の膨大な融資データと照らし合わせ、申込者の返済能力を予測します。この際、機械学習のアルゴリズムを用いて、返済確率を数値化します。
また、信用情報機関のデータを参照し、過去の借入状況や返済履歴をチェックします。延滞や債務不履行の記録がないかも確認されます。
総合的な信用スコアが算出され、このスコアに基づいて融資の可否や条件が決定されます。
AIによる自動審査は、通常数分から数時間以内に完了します。審査結果は、メールやアプリ内の通知で連絡されるケースが一般的です。
融資実行から資金受け取りまで
審査通過後は、融資の実行と資金受け取りのプロセスに移ります。このフェーズも、従来型融資と比較して大幅に迅速化されています。
審査通過の通知を受けたら、多くの場合はオンライン上で融資契約を締結します。電子契約システムを利用することで、契約書への印鑑押印や郵送は不要になります。
契約締結後、指定した銀行口座に融資金が振り込まれます。振込のタイミングはサービスによって異なりますが、即日〜3営業日以内というケースが多いでしょう。
最短即日での資金化が可能なサービスも増えており、急な資金需要にも対応できます。
融資実行後は、管理画面で返済スケジュールや残高確認が可能です。多くのサービスでは、自動引き落としが設定されるため、返済忘れの心配もありません。
全体として、申込みから資金受け取りまでの期間は最短で数時間、一般的には1〜3営業日程度で完結します。これは、従来型融資の数週間〜1ヶ月以上と比較すると、圧倒的な速さといえるでしょう。
AI融資の注意点
AI融資には多くのメリットがある一方で、いくつかの注意点も存在します。これらを理解し、適切に利用することが重要です。
金利や手数料の高さ
AI融資は便利さとスピードが魅力ですが、金利や手数料については、従来型融資と比較して高めに設定されていることが多くあります。
金利は、一般的に年5%〜15%程度と、銀行融資(年1%〜5%程度)と比較すると高めです。これは、審査の簡素化やスピード、担保不要などのメリットに対するコストと考えられます。
複数のサービスを比較検討することで、より有利な条件を見つけられる可能性があります。金利だけでなく、手数料体系や返済条件なども含めた総合的な比較が重要です。
また、融資期間も注意が必要です。短期間(3ヶ月〜1年)の融資が中心で、長期融資は金利が高くなる傾向があります。返済負担を考慮した、適切な期間設定が必要です。
さらに、早期返済手数料や遅延損害金などの条件も必ず確認しましょう。これらの条件は、サービスによって大きく異なるため、契約前の確認が重要です。
AI判断と人間の判断の関係性
AI融資といっても、全ての判断をAIだけで行っているわけではありません。多くのサービスでは、AIによる一次審査の後に、人間による最終確認が入るハイブリッド型の審査体制を採用しています。
このため、AIが肯定的な判断をしても、人間の判断で融資が否決されるケースもあります。特に融資額が大きい場合や、特殊な業種の場合などは、人間の判断が重視される傾向にあります。
透明性の確保は、AI融資における課題の一つです。審査基準や判断根拠が明確でないケースもあるため、融資が否決された場合の理由が分かりにくいことがあります。
また、AIの判断はあくまでも過去のデータに基づいているため、新しいビジネスモデルや前例のない事業展開については、適切に評価できない可能性もあります。
こうした限界を理解した上で、必要に応じて従来型融資と併用するなど、柔軟な資金調達戦略を立てることが重要です。
例えば、AI融資が難しい場合の代替手段として、売掛債権を迅速に資金化する「ファクタリング」もスピード重視の資金調達として有効です。
信用情報とオンライン評価の管理の重要性
AI融資では従来型融資以上に、信用情報や企業のオンライン上の評価が重視されます。これらの管理も重要な注意点です。
まず、信用情報機関に登録されている情報は定期的にチェックし、誤りがあれば修正を依頼しましょう。特に、過去の延滞情報や借入状況は審査に大きく影響するため、正確性の確認が重要です。
また、会社のウェブサイトやSNSアカウントの評判も、審査対象となる可能性があります。ネガティブな口コミや批判的なコメントへの適切な対応は、企業の信頼性向上につながります。
デジタルプレゼンスの戦略的管理が、AI融資の審査に影響を与える可能性があることを認識しておきましょう。
さらに、取引先との関係性も審査データとして活用されることがあります。特に大手企業との取引実績は、事業の安定性を示す指標として評価される傾向にあります。
こうした多角的な情報が審査に影響することを理解し、日頃から企業の評価や信用を高める取り組みを行うことが、AI融資を有効活用するためのポイントです。
AI融資の審査や条件に不安を感じたら
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AI融資に向けた対策
AI融資を効果的に活用するためには、事前の準備と対策が重要です。ここでは、融資審査を有利に進めるためのポイントを解説します。
会計データの正確な管理
AI融資の審査では会計データが重要な判断材料となるため、正確な管理と定期的な更新が不可欠です。
まず、会計ソフトの活用がおすすめです。freee、MFクラウド、弥生会計などのクラウド会計ソフトは、多くのAI融資サービスと連携しており、データ提供がスムーズに行えます。
リアルタイムでの経理処理を心がけ、常に最新の財務状況が反映されるようにしましょう。月次決算を行うことで、定期的に財務状況を把握できます。
また、経費の計上漏れや売上の記録ミスなどがないよう、日々の取引記録を丁寧に行うことも重要です。AIは提供されたデータに基づいて判断するため、データの正確性が審査結果を大きく左右します。
さらに、融資申請前には会計データの整合性チェックを行いましょう。数字の不自然な変動や矛盾がある場合は、修正してから申請することをおすすめします。
銀行取引と入出金管理の最適化
AI融資では、銀行口座の入出金状況も重要な審査材料となるため、適切な管理が必要です。
まず、事業用の銀行口座と個人用の口座は明確に分離しましょう。私的な支出と事業支出が混在していると、キャッシュフローの評価に悪影響を与える可能性があります。
また、資金繰り計画を立て、計画的な入出金管理を行うことが重要です。特に、定期的な固定費の支払いが滞りなく行われていることは、事業の安定性を示す指標となります。
口座残高の適切な維持も意識しましょう。頻繁な残高不足や極端な残高変動は、資金繰りの不安定さを示すシグナルとして評価される可能性があります。
さらに、取引先との関係性が明確に分かる入出金パターンは、事業の信頼性を示す材料となります。特に、大手企業からの継続的な入金実績は、高く評価される傾向があります。
オンラインバンキングを活用し、常に最新の取引状況を把握しておくことも、AI融資の準備として有効です。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
AI融資を有効活用するためには、企業全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することも重要です。
まず、クラウドサービスの活用が基本となります。会計ソフトだけでなく、販売管理、在庫管理、顧客管理などもクラウド化することで、経営データの一元管理が可能になります。AI融資と企業のDXは親和性が高く、AIを中心とする融資審査において経営データの一元管理ができていることは、大きなプラス評価につながります。
また、キャッシュレス決済の導入も推奨されます。クレジットカードやQRコード決済などの取引データは、売上の安定性や顧客層の分析に役立ちます。
データ活用の体制構築を進め、経営判断にデータを活用する文化を醸成することが、長期的には重要です。
さらに、ウェブサイトやSNSなどのオンラインプレゼンスを強化することも、企業評価を高める要素となります。特に、顧客からの良好な評価や口コミは、事業の信頼性を示す材料として審査に影響する可能性があります。
こうしたデジタル化の取り組みは、AI融資の審査に有利に働くだけでなく、事業全体の効率化や競争力向上にもつながる投資といえるでしょう。
まとめ
AI融資は、従来型融資と比較して審査スピードの向上、手続きの簡素化、審査対象の拡大など、多くのメリットを持つ新しい資金調達方法です。特に、急な資金需要への対応や、小規模事業者・成長企業の資金調達機会の拡大に貢献しています。
一方で、金利がやや高めであることや、AI判断の透明性の課題、信用情報管理の重要性など、いくつかの注意点も存在します。こうした特徴を理解した上で、自社の状況に合わせて従来型融資とAI融資を使い分けることが重要です。AI融資を有効活用するためには、会計データの正確な管理、銀行取引の最適化、そして企業全体のデジタルトランスフォーメーションを進めることをお勧めします。
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