ヒューマントラスト株式会社

2025
05 / 09

事業改革のタイミングと資金調達のベストプラクティス

はじめに:事業改革の重要性とタイミング

事業を運営していると、業績が伸び悩んだり、市場環境が急激に変化したりすることがあります。このような状況に対応して事業改革(事業再構築やビジネスリストラクチャリング)を断行し、経営革新を図ることは、企業の持続的な成長を目指すうえでとても大切です。

ただ、事業転換や大幅なテコ入れを行うには、タイミングを見極める必要があります。このタイミングを見誤ると、資金繰りが急激に悪化したり、売上不振に陥ったりして、会社の存続自体が厳しくなることもあり得ます。早すぎるとリソースを無駄にする恐れがあり、遅すぎると競合に遅れをとり、場合によっては廃業や倒産のリスクもあります。

そこで、今回の記事では「いつ事業改革を行うべきか」「どれくらいの資金が必要なのか」「どのように最適な資金調達(資金調達方法)を選択し、タイミングを合わせるか」などをわかりやすく解説します。中小企業やスタートアップ企業で資金調達を検討中の方に向けて、具体的な根拠と実行手順を示します。

 

事業改革を決断するタイミング

事業改革のタイミングを決める際は、市場動向だけでなく、自社の内部要因やステークホルダーの声を総合的に検討する必要があります。また、最近では政府補助金や事業再構築ローンなど、事業の再構築や支援に役立つ制度も充実してきています。こうした外部リソースを活用するタイミングを逃さないことも、会社の持続可能性を高める大きなカギです。

実際には、事業再構築には、破産手続きのような究極の選択を採る場合でも、一定の資金が必要です。まして、会社の存続を確保するためには、さらに大きな資金が必要になるケースが多いです。しかしながら、そのような窮境に陥ってしまうと、こうした資金の確保は困難を極めます。どんなに優れた技術やアイデア、ビジネスモデルも、結局はこうした経済的な理由だけで、他社に奪われたり、埋没したりしてしまうのです。その意味でも、事業再構築を検討するタイミングを適切に見定めることが大変重要だと実感しています。

市場と競争環境の分析

事業再構築のタイミングを判断するうえで、まず注目したいのが市場や競合の動向です。競合他社が新製品を続々と投入している場合や、顧客の消費行動が予想以上に変化しているときは要注意です。例えば、既存の商品やサービスの需要が減ってきている、あるいは新たなデジタル技術が台頭してきたといった兆候は重要なシグナルです。事業再構築計画を立てる際は、業界のレポートや公開情報などを調べ、事業革新の必要性が高まっていないかチェックしましょう。こうしたファクト(客観的事例)をきちんと集めれば、「今のままでは将来が危うい」という具体的な根拠を得やすくなります。これにより、経営戦略の変更のタイミングが判定えきると言えます。但し、過去に事例の少ない事業領域では、市場や競合が存在しないために、こうした分析には限界があります。国際的なトレンドや国の行政方針なども情報源としてチェックしていく必要性もあります。

内部リソースと能力の評価

さらに重要なのは、自社内部のリソースとスキルです。事業を継続しながら大規模な変革を進めるには、社内の人材の専門性や、必要となる設備・技術への投資が不可欠だからです。必要な人材や技術が不足しているなら、新たな採用や研修、それから提携する外部パートナーを探す必要があります。この段階で、事業再構築コストや事業再構築費用のトータル金額を想定しておくことで、資金計画が立てやすくなります。具体的には、現場の業務効率を上げるソフトウェア導入や、自動化技術の活用、技術的なイノベーションなどが考えられます。一方で、こうした施策にはそれなりの資金が必要なので、今の社内体制でどこまで対応できるのかを客観的に判断しなくてはいけません。

株主をはじめとするステークホルダーの期待と要求

事業改革を進めると、ときに従業員や取引先、株主などから様々な要望が生じます。彼らの期待と要求は、事業再構築成功事例の多くでも重要な検討ポイントになります。ステークホルダーが納得してくれなければ、何も進めることが出来ないからです。私の経験では、株主だけでなく、従業員すらも、事業改革に反対して会社がつぶれてしまい訴訟沙汰になった例を知っています。事業再構築に関わる必要資金の捻出も出来なくなり、会社倒産によって従業員や株主、取引先など、全てのステークホルダーが損失を被ることになったのです。

ここで大切なのは、こうしたステークホルダーの声を「いつ」取り込み、どう調整するかという点です。早い段階からコミュニケーションを密に行い、計画の段階で一体感を作っておくことにより、混乱を抑えなくてはいけないのです。

事業再構築に必要な資金の計画

事業再構築に着手する前に、どれくらいの資金が必要になるかを明確にしておくことは非常に重要です。漠然と「お金が必要だ」というだけでは、どのくらいの規模でファイナンスに動くべきか判断できず、結局、資金不足に陥り事業は破綻します。

そこで、コスト構造の詳細を明らかにし、必要額を算出して資金調達(事業再構築資金)のファイナンスプランを策定することになります。

以下では、資金計画の立て方と調達戦略について具体的に解説します。

コスト構造の詳細分析

まずは、事業改革に必要なコストを整理しましょう。大きく分けると「設備投資」「人件費」「マーケティング費用」「開発費用」などが挙げられます。設備投資には新規機器の導入、情報システムの変更などが含まれ、「人件費」にはリストラ等に関わる退職金などの資金も含まれます。また、業務効率化に向けたツール導入や外注費などの「隠れコスト」も見逃せません。専用ソフトを導入すると、それに合わせた教育やメンテナンス費用がかかることも念頭に置かなくてはいけません。

このように、あらゆる費用項目を洗い出し、優先度を付けたうえで必要金額を算出すると、無駄な支出を減らしながら事業再構築のファイナンス規模が算出でき、再構築計画を進めやすくなると言えます。

資金調達の選択肢と戦略

そこで最も難しいのが、資金調達方法(ファイナンス手段)の選択です。銀行融資、ベンチャーキャピタル、エンジェル投資、クラウドファンディングなど、事業規模や目的に合わせて多様な方法がありますが、一般的に事業再構築を検討しなくてはいけない企業にとっては、これらの外部資金の導入のハードルは相当高いと言わざるを得ません。そこで、中小企業の事業再構築支援としての政府補助金や事業再構築助成金は見逃せません。ただこれらには申請条件や締め切りなどがあるため、申請のタイミングを事前にチェックしておく必要があります。あとは、経営者の血縁者や親しい人脈からの借入金や出資を求める必要もあると言えるでしょう。また、スタートアップ企業の資金調達においては、投資家から資金を得る場合、経営への一定の干渉を受ける可能性があります。したがって、自社が求める経営の自主性や方針とのバランスを念頭に置き、最適な組み合わせを選ぶことが重要です。

 

資金調達の方法とタイミング

続いて、具体的な資金調達の方法と、そのタイミングを最適に合わせるにはどうすればよいかについて見てみます。事業再構築戦略を成功させるためには「どこからお金を集めるか」だけでなく、「いつ集めるか」も重要だからです。無計画に資金調達を進めると、最終的に必要な金額に届かずに再構築が失敗し事業破綻になってしまうリスクが高まります。逆に早すぎる段階から過剰な借入れを行うと、余計な金利負担を背負い収益を圧迫することにもなりかねません。

そこで、事業再構築を目的とするファイナンスに関わる伝統的な手段から革新的なオプションまで比較しながら、資金調達のタイミングをどのように最適化するか検討してみましょう。

伝統的な資金調達方法

銀行融資や、既存の株主や経営陣から増資してもらう方法が、いわゆる伝統的な調達手段です。メリットとしては、銀行融資ならば比較的安定した金利でまとまった金額を借りられることがあります。また、事業再構築ローンなど特別枠を設定した制度融資も活用できる可能性があります。一方で、追加で担保や保証人を求められる場合があるため、経営者の個人保証の拡大などの大きなリスクを負うことになる点には注意が必要です。増資で資金を集める場合は出資者との協力関係を作りやすい一方、経営方針に口出しされるケースもあるため、事前の合意形成が欠かせません。こうした伝統的な手段は、信用力や安定した事業実績のある企業にとって、安心感のある選択肢となりやすいです。しかしながら、事業再構築を検討する会社にとっては、こうした伝統的な信用力を大前提とするファイナンス手法は大変ハードルが高いので、なかなか成功しない事例が多いと言えます。従った、伝統的な手法を検討しつつ、他の方法についても検討する必要があるのです。

革新的な資金調達オプション

近年注目を集めているのがクラウドファンディングやエンジェル投資などの新しい調達方法です。革新的なサービスやアイデアを持つビジネスなら、インターネットを通じて多くの投資家や支援者から資金を得ることも可能だと言えます。

クラウドファンディングは、資金を出してくれた人々に商品やサービスの先行販売特典を付けるなど、応援者と直接つながりやすいのが特徴です。一方、エンジェル投資家からの投資を受けると、経験豊富な経営者や専門家から助言を得られるメリットが期待できます。

ただし、これらの方法はアイデアの魅力が大きくモノを言うため、説得力のある事業再構築計画をしっかりと打ち出す必要があり、相当緻密な市場分析や事業戦略を策定する必要性があると言えるでしょう。

資金調達のタイミングの最適化

伝統的手法と革新的手法の他にも、保有する資産売却による資金調達も検討できます。会社の遊休資産の売却や売掛金のファクタリングなどがそれに当たります。しかし、どの方法を選んでも重要なのは、資金調達の「タイミングをどう設定するか」です。例えば、新製品やサービスをリリースする直前や、事業再構築プロセスの途中で予想外のコストが発生する前に、計画的にお金を確保しておく必要があるのです。事業再構築を実施するためには、場当たり的な資金繰り対策では、必ず失敗します。タイミングが早すぎると、自社に余計な返済負担や株式の希薄化が起きる恐れがあります。逆に遅すぎると、必要な経営資源を取り逃がしてしまい、結果として企業再生や経営改善計画が失敗するリスクが高まります。

おすすめは、実行フェーズに入る前の段階で「最低限必要な資金」と「余裕をみた追加資金」の2段階を確保することです。これにより、リスクヘッジをしながらも機動力のある事業再構築を実現しやすくなります。

 

事業再構築のスタートライン

資金調達のめどが立ったら、いよいよ事業再構築の本格的なスタートになります。ここでは、プロジェクトの計画策定やチームづくり、実行フェーズに入るための手順が重要な経営課題になります。事前準備や人材配置が不充分なままプロジェクトを開始すると、後で修正が必要となり、余計な時間と労力、コストがかかってしまいます。適切な手順や進め方を踏まえ、スムーズにスタートさせることが重要です。

プロジェクトの初期計画

最初に行うべきは、他社の事業再構築事例を参考にしつつ、実現可能なゴールと目標を具体的に設定することです。漫然と「新サービスを作る」「業務効率を上げる」というだけでは、チームは何を優先すればいいのか分かりません。いつまでに、どの分野で、どれだけの成果を上げることを目指すのかを数字などで示すことで優先順位が明確になります。同時に、想定リスクと対応策もリストアップしておくことで、問題が起きたときに素早く対処できます。このように明確化した計画をまとめた経営戦略資料や事業再構築アドバイザーとの相談内容は、チーム全体で共有しておくことも忘れてはいけません。

チームとリーダーシップの構築

次に重要なのが、事業再構築に取り組むチーム編成です。リーダーを中心に、各部門のキープレイヤーを集め、新しい発想やノウハウを持つメンバーを加えるとよいでしょう。また、幅広い第三者の視点を加味するために、外部のHTファイナンスのような経営コンサルティング会社や専門家を活用するのも一手です。外注費は増えるかもしれませんが、短期的に大きな成果を上げたい場合は有効な選択肢と言えます。

リーダーシップがしっかり機能する体制なら、各メンバーのモチベーションや責任感が高まり、スピーディーな判断と行動が可能になります。ここで大事なのは、互いに情報をオープンに共有し合う文化を作ることです。そのために、情報通信技術の活用した緊密なコミュニケーションは必須だと言えます。

実行フェーズへの移行

プランが決まりチームが整ったら、実行フェーズに入ります。具体的なタスクやスケジュールを決め、誰がどのタイミングで何を担当するのかをはっきりさせましょう。実行段階では、事業再構築プロセスの進捗状況を定期的に可視化し、予算やスケジュールのズレを早期に発見して修正していくのがポイントです。プロジェクト管理ツールやコミュニケーションツールを活用すると、メンバー間の情報共有が円滑になります。具体的には、ガントチャートを策定し、メンバー全体での行動スケジュールを実践管理することが大切です。

もし計画時に想定しなかった事態が起きた場合でも、柔軟に対応しながら、必要に応じて追加の資金調達を検討するなど、常に前向きな計画実行意識が大切です。

 

まとめ:事業改革と資金調達の成功への道

事業再構築に関わるタイミングの見極め方や資金計画、調達方法、スタートラインに至るまでの手順を総合すると、事業改革(事業再構築)を成功させるためにはいくつかの重要なポイントがあります。

第一に、市場や競合を含む外部環境のみならず、内部リソースやステークホルダーの期待を的確に評価すること。第二に、必要なコストを洗い出し、それに合った資金調達戦略を早めに立案することです。そして最後に、十分な準備を終えたら、計画的かつ柔軟に実行フェーズへ移行することが求められます。適切なタイミングと方法で資金を確保し、チームを結集させることで、経営革新の実現に近づけることが出来ます。

このように、明確な根拠に基づく判断と、綿密な資金調達計画があれば、事業転換をスムーズに進められ、長期的な企業成長と競争力強化が達成できるでしょう。

事業再構築に関して、HTファイナンスは、経営革新を支援する中小企業庁の認定機関として、計画策定からファイナンス支援までの相談を受けることができます。一度、相談してみる価値はあると思いますので、ご連絡をお待ちしております。