参議院議員選挙の結果を受けたこれからの政権枠組みと重点政策を三坂流に分析!

前回の特別ブログに続き、自民党・公明党の与党が47議席にとどまり、参議院でも少数与党になった結果を踏まえて、今後について考えてみようと思います。ここで挙げるいくつかのシナリオの通りになるかは分かりませんが、個人生活や企業活動に大きな影響が予想されますので、ある程度の認識を持って準備しておくことも大切だと思います。
まずは、前回ブログで注目した6つの政策課題を復習してみます。
① インフレ対策と景気浮揚策
30年に及ぶ実質賃金の伸び悩み、生活支援・経済成長(積極財政)と財政健全化(緊縮財政)のバランスとタイミングが個人の日常生活や企業の事業推進に大きな影響があります。各党によって、物価高対策や企業支援策、景気刺激策には相違点も多く、政権の枠組みの形によって結果が大きく異なると考えられます。
◎消費税減税の是非
◎所得税・社会保険料負担軽減
◎中小企業支援策、賃上げ促進
◎日銀の金融政策の正常化と円安対応
② 少子高齢化
68万人という年間出生数の減少と高齢化の進行、社会保障制度や労働力維持が危機的水準。具体的な対策が見えない状況での各党の方針もバラバラ感があります。
◎子ども家庭庁の政策立案及び施策の見直し(予算規模年間7.3兆円の使い道)
◎児童手当・出産育児一時金の拡充
◎教育費負担の軽減・無償化
◎働き方改革と若者の生活安定
◎年金制度改革や高齢者雇用の推進
③ 安全保障
ウクライナ情勢・台湾有事懸念・北朝鮮ミサイル問題・イスラエルとイランの紛争・中印国境紛争などで国際的な安全保障環境の緊迫。日米安保を基軸とする日本の安全保障体制の強化見直し。より具体的な防衛力強化が重要な論点になります。
◎防衛費のGDP比2%以上への増額継続(防衛予算の確保)
◎反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有是非
◎日米同盟の役割強化(アメリカを軸とするインド太平洋地域の安全保障の中での役割)
◎憲法改正を含む安全保障法制の見直し
④ 外国人問題(移民・労働・治安)
人手不足を背景とする外国人労働者の受入拡大、留学生等による技術盗用事件の発生、不法滞在外国人の増加による治安悪化、インバウンド需要と地域経済の関係性、外国人参政権の問題、など外国人との共生を図るための法整備、ルール化など、従来の日本社会が想定してこなかった事象への対応。
◎特定技能制度の実態把握と適正運用及び規制
◎帰化を含む永住要件のルールの見直し
◎地域社会への適応支援策と地域社会の秩序保全
◎不法滞在・送還問題と治安対策
⑤ トランプ関税への対応(米中摩擦・通商政策)
トランプ米国大統領「アメリカ第一主義」による自国産業復興、雇用拡大を目的とした輸入品に対する高関税政策。7月23日早朝に相互関税15%、自動車関連製品課税15%、日本の市場開放に関わる協議の継続という方向性が発表されました。今後、関連産業、関連事業に関わる予算を伴う政策対応が検討されていくことになると予想されます。
◎サプライチェーンの再構築支援
◎経済安全保障政策の強化
◎対中経済戦略とのバランス
米中貿易戦争の手段の一つとしてトランプ関税を考えると、中国産違法薬物の米国蔓延など国内問題も絡めた世界的な中国包囲網の戦略という見方もあります。
⑥ 選択的夫婦別姓
ジェンダー平等や多様な家族の在り方を巡る議論。現時点でいまだに国民の意思も明確にできずにいますが、伝統的な戸籍制度や家族観を大切にする方法を備えた
◎選択的夫婦別姓制度の導入是非
◎最高裁判決や世論調査の反映
◎家族観の多様化への政治対応
◎政党間で明確な立場の違いが表面化
こうした主要政策課題に対応する主体としての政権の枠組みをどのように考えるかは、リベラルから保守にいたる政権の属性によって(政策決定に影響を及ぼす政党の性格によって)、方向性は大きく振れる可能性があります。
今回の参議院選挙の結果を踏まえた現状
*自民・公明の与党は衆議院・参議院とも過半数割れの「少数与党」。
*内閣は「国会運営が困難」で、立憲・維新・国民などの協力なしに法案通過不可。
*野党は政権交代を目指すが衆議院解散がない限り即座の交代は困難。
*自民党保守派による現執行部の交代や臨時国会における内閣不信任案が焦点。
以上を踏まえていくつかの政権枠組みの想定シナリオを見てみましょう。
【ケースA】維新や国民が与党を支援し、「補完勢力」として政権延命
- 自民党の保守派による指導部交代(首相交代)を前提として、維新・国民に譲歩し政策合意形成。
- 維新・国民:影響力を高め、部分連立・閣外協力で実績作り。
- 公明:存在感維持のため維新・国民との協議にも参加。
⇒可処分所得増加策としての消費税減税、103万円の壁の178万円化、ガソリン暫定税率廃止などが進む可能性が高くなります。
<政策重点>
- 規制改革・成長戦略(維新要求):雇用・医療・農業分野の規制緩和。
- 子育て・教育無償化(国民・維新要求):高校・大学無償化部分導入。
- 防衛・安保強化(維新賛成):防衛費維持、敵基地反撃能力保有維持。
- 物価対策:補正予算で給付金・公共料金補助を継続。消費税・所得税の減税措置の実施
⇒このケースでは、早期の衆院解散はなされず、政権が政策実績を積んでからの衆議院解散になると思われます。
【ケースB】維新・国民を含め全ての野党の共闘により、「内閣不信任案」成立で現政権崩壊
このケースは、各党の異なる思惑が表面化し、政界の液状化が進むと予想されます。
- 立憲:「政権交代・選挙管理内閣」へ移行を目指す。
- 維新・国民・参政・保守:次期衆院選での優位確保を狙い、内閣不信任案賛成へ。
- 自民・公明:解散総選挙での敗北の可能性が大。分裂含みで指導部交代。
<政策重点>
各野党の政策構想をすり合わせ共通公約化の流れが進む可能性が大きいと思います。
- 物価・生活支援の拡充:低所得者・年金生活者への追加給付。
- 消費税減税:立憲・維新の食品重点及び期間限定減税、国民の段階的減税議論、参政・れいわの消費税廃止など、消費税の扱い方に関する共通公約化の交渉。
- 子育て支援拡充:児童手当の所得制限撤廃。
- 脱原発・再エネ推進(立憲・共産)VS原発容認・再エネ見直し(国民・参政)
- 農業・医療改革・と地域分権。
⇒このケースは、選挙管理内閣(全党合意で中立首相を立てる)、または野党連立内閣樹立から早期解散総選挙への流れになると思われ、かつ、重点政策に関わる各党の主張の隔たりも大きいために、実現可能性は少ないと思われます。
【ケースC】自民分裂・再編型政局
- 自民内で現首相及び内閣・執行部「責任論・退陣論」が保守派や地方組織を中心に顕在化。
- 維新・国民・自民改革派が合流し「新保守中道政権」形成の動き。
- 公明は自民との関係維持を模索するが、新勢力との協調余地を探る。
<政策重点>
- 物価・生活支援の拡充:低所得者・年金生活者への追加給付。
- 消費税減税:立憲・維新の食品重点及び期間限定減税、国民の段階的減税議論、参政・れいわの消費税廃止など、消費税の扱い方に関する共通公約化の交渉。
- 社会保障・税財政改革:医療・年金改革議論開始。
- デジタル・半導体・防衛産業強化。
- 地方分権・道州制。
- 外交安全保障:日米同盟重視、台湾有事対応強化。
- 子育て・人口減少対策:出産費用無償化。
⇒このケースは、自民単独ではなく、「維新・国民・改革派自民」による拡大連立政権もしくは政策目的毎の政党連携が現実になると思われます。衆院解散・総選挙は体制確立後になる可能性が大きいです。実は、7月31日に開催される自民党の「両院議員懇親会」の開催に注目する必要があります。この懇親会が党内決議可能な「両院議員総会」に動議によって変わると、党則によって総裁選挙を求める議決か可能になります。その議決において全国会議員+地方県連の半数の賛成があれば石破総裁のリコールが成立し、新たな自民党総裁の選出が為されます。
このケースは、自民党総裁の変更にともなうシナリオだと言えるのです。
【ケースD】総選挙に直行
これは、極めてストレートで分かりやすいシナリオです。
- 臨時国会冒頭で、野党による内閣不信任案提出。
- 与党が内閣不信任案提出・可決を受け、内閣による解散権行使。
- 野党は「政権交代」を旗印に総選挙態勢へ。
- 維新・国民・参政は単独での議席増狙い。
⇒このケースは、下記のような急激な政権枠組みの変化につながります。
- 与野党どちらが勝つかでその後の枠組みが大きく変わる。
- 自民党が負ければ立憲・維新・国民中心の「野党連立政権」誕生の可能性も。
以上のような4つのシナリオが想定される現局面の要点としては、次のようだと思われます。
- 衆参少数与党の下では「維新・国民」の動向がキャスティングボートを握る。
- 野党側は「不信任案・予算否決」を使い政権交代・総選挙圧力をかける。
- 政策課題は「物価高・少子化・外国人問題・防衛強化・規制改革・社会保障改革」が中心
- 最終的に「解散総選挙」が避けられない。
まとめ
私たちとしては、どのようなシナリオに進むかに注視しつつ、これからの政策内容と施行スケジュール、政策効果を理解することに努める必要があります。最終的には、衆議院の解散総選挙が早晩実施されることになると思われますので、その結果に至る現時点の動向に配慮する必要があるでしょう。今回の政界動向は、私たちの日常生活や事業推進に少なくない影響があるので、要注意です。