2025年参議院議員選挙の争点を三坂流に分析!

まず最初に2025年参議院議員選挙における主な争点を6つに絞ってみました。
① インフレ対策と景気浮揚策
2022年以降、物価上昇が急速に進み家計負担が増大。(出典:総務省「消費者物価指数(CPI)」)
30年に及ぶ実質賃金の伸び悩みの中で、生活支援・経済成長(積極財政)と財政健全化(緊縮財政)のバランスとタイミングが大きなテーマになっています。
*具体的な争点:
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- 消費税減税の是非
⇒消費税の撤廃も含めた消費税減税と給付金の実施の可否
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- 所得税・社会保険料負担軽減
⇒いわゆる「103万円の壁」問題を含む手取りを豊かにする政策
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- 中小企業支援策、賃上げ促進
(出典:内閣官房「年収の壁・支援強化パッケージ」)
⇒全ての企業が賃上げを実施することによる可処分所得の増加
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- 日銀の金融政策の正常化と円安対応
⇒海外輸入コストの上昇に起因する物価高騰への対応策
② 少子高齢化
70万人を切った年間出生数(出典: 厚労省「人口動態統計速報(令和5年)」)の減少と高齢化の進行により、社会保障制度や労働力維持が危機的水準を迎えるという共通認識のもと、その具体的な対策についての方針が日本の国力維持の上での重要なテーマとなっています。
*具体的な争点:
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- 子ども家庭庁の政策立案及び施策の見直し
(出典:子ども家庭庁「こども大綱2023」)
⇒予算規模年間7.3兆円の使い道)
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- 児童手当・出産育児一時金の拡充
⇒子ども出産後家庭に対する支援策拡充
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- 教育費負担の軽減・無償化
⇒子どもの生育に関わるコストに対する政府支援施策の拡大
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- 働き方改革と若者の生活安定
⇒若者世代が結婚し家庭を作り、出産育児を自然に目指せる社会環境の整備
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- 年金制度改革や高齢者雇用の推進
⇒高齢化世帯の経済環境を安定化させるための持続可能な社会制度構築
③ 安全保障
ウクライナ情勢・台湾有事懸念・北朝鮮ミサイル問題・イスラエルとイランの紛争・中印国境紛争などで国際的な安全保障環境が緊迫してきています。日米安保を基軸とする日本の安全保障体制の強化見直しを進めることが、国民の安全を守るための重要な論点になります。
*具体的な争点:
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- 防衛費のGDP比2%以上への増額継続(出典:防衛省「我が国の防衛と予算(令和6年度)」)
⇒EU各国に対してアメリカ要望するGDP比5%の軍事予算要求の考え方
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- 反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有是非
⇒憲法が規定する専守防衛を目的とする反撃能力の範囲と規模の基準評価
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- 日米同盟の役割強化
⇒同盟国アメリカを軸とするインド太平洋地域の安全保障体制の強化
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- 憲法改正を含む安全保障法制の見直し
⇒自衛隊の存立基礎の法制整備と国際視点での日本の防衛力の考え方
④ 外国人問題(移民・労働・治安)
人手不足を背景とする外国人労働者の受入拡大、留学生等による技術盗用事件の発生、不法滞在外国人の増加による治安悪化、インバウンド需要と地域経済の関係性、外国人参政権の問題、など外国人との共生を図るための法整備、ルール化の要請が重要な論点になります。
*具体的な争点:
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- 特定技能制度の恒久化・拡充(出典:出入国在留管理庁「特定技能制度の概要」)
⇒労働力を確保する方策としての技能実習生の実態把握と制度の適正運用
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- 帰化を含む永住要件のルールの見直し
⇒居住年数や日本語能力などの認定基準の評価の問題
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- 地域社会への適応支援策と地域社会の秩序保全
⇒異文化生活者の文化や生活習慣との軋轢拡大に対応する共生の問題
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- 不法滞在・送還問題と治安対策(出典:警察庁「来日外国人犯罪の検挙状況」)
⇒不法滞在者による犯罪発生、治安悪化による地域住民の不安
⑤ トランプ関税への対応(米中摩擦・通商政策)
トランプ米国大統領「アメリカ第一主義」による自国産業復興、雇用拡大を目的とした輸入品に対する高関税政策。25~35%の関税措置による国内輸出産業に対する影響が大きい。(出典:日本貿易振興機構(JETRO)「米国の関税政策」)
各国が、個別にアメリカとの交渉テーブルについている中で、日本の交渉の行方が未だに方向性が見えない状態に対する先行き不安が増大しています。
*具体的な争点:
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- 対米自動車関税・再交渉の備え
⇒EU・メキシコ・カナダには30〜35%の包括関税が予定され、鉄鋼・自動車分野では既に高率課税や報復措置が行われています。中国には当初125%の累積的関税が提示されたものの、現在は30%程度へ引き下げられ、相応の報復も実施中。日本・韓国・ASEANは25〜49%と高い関税を課され、日本や韓国は交渉継続、ASEANは経済打撃が顕著。小国にも高率課税が波及しており、グローバルな混乱が広がっています。
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- サプライチェーンの再構築支援
⇒中国産輸出品に対する高関税措置が想定されることで、中国産原料を使用した製品の輸出が困難との見通し。
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- 経済安全保障政策の強化
⇒今回のトランプ関税の解決は、単純な輸出入貿易に関わる経済政策という側面に加え、防衛装備品などの購入を要望する安全保障的取引との面もあると言われています。
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- 対中経済戦略とのバランス
⇒米中貿易戦争の手段の一つとしてトランプ関税を考えると、中国産違法薬物の米国蔓延など国内問題も絡めた世界的な中国包囲網の戦略という見方もあります。
⑥ 選択的夫婦別姓
ジェンダー平等や多様な家族の在り方を巡り、長年議論されてきましたが、法改正は実現していません。現時点でいまだに国民の意思も明確にできずにいますが、伝統的な戸籍制度や家族観を大切にする方法を備えた
*具体的な争点:
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- 選択的夫婦別姓制度の導入是非
- 最高裁判決や世論調査の反映
- 家族観の多様化への政治対応
- 政党間で明確な立場の違いが表面化
以上のように、今回の参議院選挙では内政・経済・外交・価値観の多様性を含む幅広いテーマが問われ、各政党の政策・立場が大きな判断材料となる選挙になると見られます。
ポイント
こうした多くの争点の中で、特に、①インフレ対策と景気浮揚策と④外国人問題(移民・労働・治安)が、党首間の論争になっている印象があります。自民党、公明党の与党と野党各党の考え方の相違度に幅はあるものの、①と④のポイントについては、議論の応酬が見られます。一方、有権者の方でも、過去の選挙において比較的強い意志表明をしてこなかった若年層や30代~50代の現役世代が、個別案件ごとに自分の考えと各党の意見を詳しく照らし合わせる行動に出ているように思います。
既存のテレビ、新聞といったメディアに加え、SNSによる情報流通量の著しい拡大が、選挙期間中の各党幹部や各候補者の演説や動静を、情報として容易に取り込むことを可能としているために、有権者の意識変化が起こっていると思われ、それが実際の投票行動に大きな影響を及ぼすのではないでしょうか?
まとめ
選挙戦終盤の情勢分析なども、各マスコミやSNSで頻繁に実施される中で、過去30年間の経済停滞(GDP成長鈍化、実質賃金マイナス成長)、45.1%〜45.8%の国民負担率(税+社会保障/国民所得)(出典:財務省「国民負担率の推移(PDF)」)を理由に、与党の政策失敗と評価する意見が強く、与党の大幅な敗北を予想する向きを強く感じます。
いずれにしても、今回の参議院議員選挙の結果で、各党の勢力図が大きく変化することが予想されており、選挙後の政権の枠組みや、争点となっている政策課題への日本国としての対応方針がどのようになるかについては、余談を許さないのではないかと思います。
少なくとも、8月一杯は、個人の生活や企業経営に関して、大きな影響の及ぶような変化が次々と起こる可能性がありますので、注意深く情報収集することが大切です。年内の衆議院議員選挙の実施も否定できないほど、今の日本の政治環境は液状化する可能性があると感じています。
7月20日の投開票の結果がどのようになるかは、注目に値するでしょう。