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公開日:2026.01.20

更新日:2026.01.20

【資金調達】借金は“悪”なのか?現場で見る「借り手」と「貸し手」の本音

資金調達で架かったお金の橋で、借り手の経営者と貸し手が手を伸ばし合う様子。借金を成長の活力と捉え、事業発展を目指す前向きなビジネスシーン。

私が日々立つコンサルティングの現場では、「借り手(経営者)」の熱い情熱と、「貸し手(金融機関)」の冷静な論理がぶつかり合っています。まるで自分の中に二つの人格が同居しているような感覚になるほど、資金調達における両者の視点は異なります。

これまでのコラムでは「貸し手」の視点を解説してきましたが、今回はあえて「借り手」の気持ちに焦点を当てます。
多くの経営者が抱く「借金への罪悪感」は本当に正しいのか?資金調達の現場から、成長企業が持つべきマインドセットについて深掘りします。

この記事の要点
  • 「無借金経営」への固執は、不測の事態や成長機会の損失リスクになり得る。
  • 金融機関と企業は「資金を運用したい」「資金を使いたい」というWin-Winの関係にある。
  • 重要なのは「借りるか否か」ではなく、自社のフェーズに合った金融機関との「マッチング」である。
  • 時には「今は借りずに実績を作る」という我慢も、将来の大型調達に向けた高度な戦略となる。

「借金=悪」という固定観念からの脱却

結論:ビジネスにおいて「無借金=善」ではありません。借金は事業成長の時間を買う「エンジン」であり、適切なレバレッジ活用は社会貢献につながる正当な経営判断です。

日本人の多くは、勤勉で真面目です。それは経営においても同様で、「収入(売上)の範囲内で支出(経費)を抑えること」こそが美徳であり、堅実な経営の理想形であると考える方が少なくありません。

確かに、個人の家計や、すでに安定期に入った企業の財務管理として、この考え方は正解の一つです。無駄遣いをせず、身の丈にあった生活や経営をすることは、リスク管理の基本中の基本と言えるでしょう。
しかし、ビジネスの「成長」や「継続性」という観点から見たとき、この「無借金=善」という思考停止は、時に大きなリスクへと変わります。

「無借金」に潜む経営リスクとは

自己資金だけで経営を行うことは、一見安全に見えます。誰にも頭を下げず、金利も払わず、自由に経営ができるからです。
しかし、人生やビジネスには「まさか」が付き物です。不慮の事故、自然災害、パンデミック、あるいは主要取引先の倒産など、突然収入源が断たれるリスクは常に存在します。

そうした不測の事態に陥った際、手元の資金だけで事業と従業員の生活を守り切れるでしょうか?

地道に積み上げた内部留保だけで戦おうとすると、どうしても成長スピードは緩やかになり、有事の際の耐久力も限定的になります。
もちろん、保険や投資で備えることも重要ですが、それだけで企業のすべてのリスクをカバーし、かつ成長資金を賄うことは、現実的な社会の仕組みの中では非常に困難です。
「無借金であること」にこだわりすぎるあまり、手元の流動性を欠き、黒字倒産してしまうケースさえあるのが現実です。

金融機関はなぜ「貸したくて仕方がない」のか

銀行や保険会社、資産運用会社といった金融機関は、皆さまから預金や保険料という形で莫大な資金を預かっています。
ここで重要なのは、「お金には時間的価値がある」という事実です。

今日の手元にある10万円と、1年後の10万円では価値が異なります。インフレや機会損失を考慮すれば、お金は寝かせておけばその価値を目減りさせていきます(現在価値と将来価値の概念)。
金融機関は、預かった資金をただ金庫にしまっているわけではありません。預金者や契約者に対して、将来的に利息や配当を支払う約束をしています。つまり、金融機関自身もまた、資金を運用して増やさなければならない「プレッシャー」の中にいるのです。

  • 借り手の心理: 「審査に通るだろうか」「お金を借りるのは申し訳ない気がする」
  • 貸し手の心理: 「安全に運用できる貸出先はないか」「資金を使って収益を上げてほしい」

実は、この両者の利害は完全に一致しています。
借り手は、審査に対して「資金を出したくないのではないか」と身構えがちですが、実態は逆です。貸し手は、適切な貸出先を見つけて資金を市場に供給し、自らの収益(利息収入)を確保しなければ、ビジネスとして成り立たないのです。

つまり、経営者がしっかりとした事業計画を持ち、堂々と資金調達を申請することは、金融機関にとっても「渡りに船」であり、歓迎すべきビジネスチャンスなのです。

経済成長と「金融」の切っても切れない関係

結論:企業が借金をして事業拡大し利益を上げることは、税収を通じて行政サービスを支える社会貢献です。渋沢栄一が銀行を創設したように、金融は社会発展の必須インフラです。

もし、世の中のすべての企業や個人が「収入の範囲内」だけで活動し、誰もお金を借りなくなったらどうなるでしょうか?

金融事業は成り立たなくなり、お金の循環(マネーサプライ)は滞り、経済全体が縮小均衡に陥ります。それは、私たちの社会生活を支える「行政サービス」の崩壊にもつながりかねません。

行政コストを支えているのは誰か

私たちが安全で平和に暮らすためには、警察、消防、インフラ整備、教育、医療といった行政サービスが不可欠です。
しかし、行政そのものはビジネスを行わないため、自ら収益を生み出すことはありません。行政はひたすら「お金を使う(サービスを提供する)」存在です。

この膨大なコストを賄っているのは、民間企業や個人が納める「税金」です。
企業がリスクを取って資金を調達し、事業を拡大させ、利益を上げる。その結果として納められる法人税や、従業員の所得税が、国のインフラや社会保障を支えています。

つまり、「借金をして事業を成長させること」は、単なる私利私欲ではなく、社会貢献そのものと言っても過言ではないのです。国の安定性やカントリーリスクの低減は、こうした経済活動の活発さに支えられています。

渋沢栄一が拓いた「金融」というインフラ

2024年、新一万円札の顔となった渋沢栄一。彼が日本で最初の銀行である第一銀行(現みずほ銀行)を創設したことは有名です。
彼がなぜ銀行を作ったのか。それは、バラバラに存在している「お金」を集め、大きな「資本」として産業に供給する機能がなければ、近代国家としての発展はないと見抜いていたからです新しい日本銀行券特設サイト(国立印刷局)

以来、金融という機能は、企業の成長と人々の生活向上における「必要条件」となりました。「借金=悪」という古い道徳観にとらわれず、「資金調達=成長へのエンジン」と捉え直すこと。現代の経営者には、そうしたマインドセットの転換が求められています。

資金調達の成否を分ける「マッチング」と「タイミング」

結論:資金調達の成功は、自社のフェーズ(創業期・成長期・再生期など)に合った金融機関を選び、適切なタイミングと条件ですり合わせる「マッチング」にかかっています。

もちろん、闇雲にお金を借りれば良いというわけではありません。
資金調達には、明確な「目的」と、それに適した「相手(金融機関)」との出会いが不可欠です。

経営者のニーズと金融機関のシーズ

中小企業の資金ニーズは多岐にわたります。

  • ・新規事業や新製品開発のための「攻めの資金」
  • ・設備投資や拠点拡大のための「投資資金」
  • ・人材採用や育成のための「人件費」
  • ・業況悪化や赤字補填のための「守りの資金」
  • ・事業再生やリストラのための「構造改革資金」

いずれの場合も、貸し手(金融機関や投資家)には、それぞれの組織が決めた「審査基準」や「得意分野」があります。
例えば、メガバンクは大規模な融資を好みますが、スタートアップの小規模な融資には消極的な場合があります。逆に、信用金庫や信用組合は、地域密着型できめ細やかな対応をしてくれますが、金利や融資額に制限があることもあります。

あわせて読みたい:地域密着型の信用金庫活用のポイントはこちら

経営者に求められるのは、自社の状況を客観的に分析し、そのニーズに合った金融機関を選定すること。そして、相手の審査基準に沿った情報提供と、綿密なコミュニケーションを行うことです。

コンサルタントが担う「翻訳」と「調整」

ここで重要になるのが、私たちのようなコンサルタントの存在意義です。
資金調達は、単なる書類作成代行ではありません。最も重要なのは「マッチング」です。

資金調達成功の4つの調整ポイント
タイミングと規模
  • 今すぐか、実績後か?攻めの時期を見極める戦略眼
  • 身の丈か、勝負か?返済余力と成長投資のバランス
条件とバランス
  • 条件の最適化金利・返済期間・担保設定の交渉
  • Win-Winの設計貸し手の収益と借り手の負担の均衡

これらを総合的に判断し、企業と金融機関の双方が納得できる着地点(条件のすり合わせ)を見つけること。これこそが、資金調達コンサルティングの真髄であり、成功の鍵を握るポイントです。

御社に最適な金融機関はどこですか?

「攻めの資金」か「守りの資金」か。状況によって選ぶべきパートナーは変わります。
元銀行員の視点で、御社のフェーズに合った資金調達プランを無料診断いたします。

あえて「今は借りない」という戦略的決断

資金調達の相談を受ける中で、時には「今は借りないほうがいい」「出資を受けるべきではない」とアドバイスすることもあります。
ここで、ある技術開発型企業の事例を、特定を避けた形でご紹介しましょう。

【事例】技術はある、売上はない。その時どうする?

その企業は、環境問題を解決しうる画期的な特許技術を持っていました。学術機関や研究者からの評価は非常に高く、将来性は誰の目にも明らかでした。
しかし、市場自体がまだ成熟しておらず、社会実装には時間がかかる段階でした。つまり、「技術はあるが、売上が立っていない」状態です。

研究開発費、特許維持費、人件費と、毎月の固定費が出ていく中で、資金繰りは綱渡り状態でした。
そんな中、いくつかの投資ファンドや海外資本からアプローチがありました。喉から手が出るほど資金が欲しい状況です。
しかし、提示された条件を精査すると、経営権を脅かしかねない条項や、将来の成長利益を過大に吸い上げられるような、企業側にとって極めて不利な内容が含まれていました。

苦渋の決断が未来を拓く

社長は悩みました。しかし最終的に下した決断は、「安易な資金調達(出資受け入れ)の拒否」でした。
目先の楽さを捨て、既存の株主や身内の協力を仰ぎながら、まずは徹底的に「売上を作る」ことに全精力を注ぐ道を選んだのです。手数料の高いファクタリング等にも手を出さず、歯を食いしばって耐えました。

その結果どうなったか。
社員一丸となって実証実験やデモンストレーションを重ねた結果、海外からの受注が決まり始め、自力での売上が立ち始めました。実績という「数字」が見えたことで、企業の評価額(バリュエーション)は劇的に向上します。

この企業は近い将来、非常に有利な条件で大規模な資金調達を実現させるでしょう。
もしあの時、目先の資金繰りの苦しさに負けて不利な条件で契約していたら、今の成長曲線は描けなかったはずです。

経営者に求められる「大局観」

資金繰りに追われると、どうしても視野が狭くなります。「今月の支払い」に頭がいっぱいになり、将来的な事業価値を毀損するような契約をしてしまいがちです。

しかし、経営者には「待つ勇気」も必要です。
「今は手元資金の範囲内で最大限の努力をし、実績を作ってから堂々と借りる」
そう信じて、耐えるべき時期を見極めることもまた、重要な資金調達戦略の一つなのです。

まとめ:最適な「資金の道筋」を描くために

資金調達は「未来を作る手段」であり、それ自体が目的ではありません。
「借金は怖い」と縮こまらず、かといって安易に飛びつかず、自社のフェーズに合ったタイミングとパートナー(金融機関)を見極めることが重要です。

判断に迷った時は、双方の視点を持つ専門家を頼ってください。ヒューマントラストには、借り手と貸し手、両方の論理を深く理解するスタッフが揃っています。
御社にとって最良の「資金の道筋」を、一緒に描いていきましょう。

▼ 具体的なご相談は、以下のフォームより承っております

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三坂 大作
監修者三坂 大作
ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・取締役

東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
さらにニューヨーク支店にて国際金融業務も経験し、法務と金融の双方に通じたスペシャリストとして、30年以上にわたり中小企業・個人事業主の“実行型支援”を展開。

東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
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