ヒューマントラスト株式会社

2025
06 / 24

物価高に負けるな!企業活動を支える経済政策:今年のキーポイントとは―①

物価高と経済政策の現状

近年、日本では物価高が続いていると感じる人が増えています。日常の買い物で以前よりも出費がかさんでいると感じるのは、多くの企業家や消費者が実感しているところでしょう。以前、ブログで「卵が高い」というのを掲載しましたが、その後、卵に限らずいろんな物価が上がっていると実感しています。レジ前の金額予想をするのですが、毎回外れてしまうほど、物価高の進行は確実かつ決定的になっています。物価高対策として政府はさまざまな経済政策を打ち出してきましたが、実質賃金がなかなか上がらない現状では、企業活動支援や消費行動をどう促すかが大きな課題になっています。

実はこの物価高、単に物の値段が上がっているだけではなく、企業の運営コストや人件費にも影響しています。日本のGDP停滞が長引く背景には、政治と経済政策の連動や、従来の経済政策の功罪など多くの要因が絡んでいます。そこで本記事では、経済政策の必要性について改めて整理し、分かりやすく解説します。

本記事の流れとしては、まず物価高の背景やGDP成長が停滞してきた理由を確認し、これまでの経済政策の効果や限界を学びます。その上で、新しい経済政策の提案として、いわゆるMMT(現代貨幣理論)の考え方や短期経済政策の方向性を紹介し、企業がどう対策を講じればいいかを具体的に検討していきます。最後には、今後の経済政策の改革や経済政策の未来を見据えた上で、ビジネスチャンスを掴むためのポイントをまとめてみようと思います。

ここでは、ベンチャー企業や中小企業の経営者をはじめとするビジネスリーダーの方々が、経済政策が企業活動にどう影響するかを理解し、自社の戦略に生かせるようにすることを目指します。従業員の生活実感改善や消費行動への刺激など、具体的な成果にもつながる視点を数多く盛り込みましたので、ぜひ参考にしてください。

 

物価高の背景と企業に与える影響

物価が上昇する原因はさまざまですが、供給コストの上昇や海外市場の変動、金融政策上の緩和なども一因とされています。こういった状況で、企業は原材料費の高騰や人件費削減の圧力に直面しやすくなります。特に実質賃金が伸び悩むと、企業側は給与の引き上げに踏み切れないため、消費行動に勢いが出にくいのです。

さらに、経済成長を期待するには、日本のGDP停滞を打破する必要があります。経済成長が思うように進まないと、投資や雇用が縮小気味になり、そこからまた消費が伸び悩むという悪循環に陥ります。このような背景を踏まえて、企業活動をいかに支えていくかが重要な論点になってきます。

企業経営者の方々は、短期的な業績だけでなく、長期的な安定も見すえて戦略を立てたいところです。物価高は、一方では販売価格アップにつながる可能性もありますが、なかなかコストアップを価格転嫁できないような需要の落ち込みがあったり、事業の運営コスト増の方が大きいと、中長期の成長が見込みにくくなるのが現実です。そこで、従来の経済政策の分析や経済政策提案、新しい経済政策の展望をきちんと理解し、企業活動支援につなげていくことが欠かせません。今後、国全体の経済政策の戦略がどのように変わるかを常にウォッチしながら、自社に有利なビジネス環境を整えていきましょう。

この章では、物価高と企業の相互関係を把握することの大切さを解説し、次の小見出しで実質賃金の停滞やGDP成長の停滞が引き起こす具体的な影響を説明していきます。

実質賃金の停滞とその影響

実質賃金とは、名目賃金(給料の額面)から物価上昇の影響を差し引いて、実際にどのくらいの購買力を持っているかを示す指標です。この実質賃金が長らく停滞している日本の現状は、従業員の生活実感改善につながりにくい大きな原因になっています。

これは、日本の実質賃金(現金給与総額ベース、消費者物価指数(持家の帰属家賃除く、2020年=100基準)で調整)の過去30年分(1995〜2024年)の年次指数と前年比増減率の一覧表です。(厚生労働省「毎月勤労統計調査」)

実質賃金が上がらないと、個人消費は冷え込みがちになります。企業の商品やサービスの売上にも伸び悩みが出て、経済全体の成長にブレーキがかかるわけです。さらに、この状況を打破しようと、企業は企業活動支援についての政策や助成制度を期待します。しかし、従来の経済政策の効果が限定的だった場合、新しい経済政策の新提案がなければ、実質賃金の減少傾向に拍車がかかる危険性もあるのです。

また、実質賃金の上昇が鈍いと、働く人たちのモチベーションや生産性が下がる恐れもあります。経済成長を実現するためには、高い生産性やイノベーションが重要です。政治と経済政策が密接に絡む中で、国全体としては経済政策の改革を進めつつ、企業は職場環境や雇用形態の改善策を進めることが重要になります。

GDP成長の停滞:その原因と影響

ここ30年ほど、日本GDP停滞が続いているのは多くの専門家が指摘しているところです。原因の一つには、国内だけの市場に依存したビジネスモデルが急激な人口減少の影響を受けている側面があります。国内産業の広汎なマーケットに及ぶ悪影響が見られます。

  1. 地方百貨店(山形の「大沼百貨店」破綻)
  • 背景:人口減少と高齢化により、地方都市の購買層が縮小。若年層の都市流出やネット通販の普及も打撃に。
  • 影響:来店客数の減少と売上減少により、2020年に山形市の老舗百貨店「大沼」が破産。創業300年超の歴史に幕。
  • 内容:地域密着型モデルでも、購買人口の減少と都市機能の空洞化には対応しきれなかった。
  1. コンビニ業界(セブン-イレブン・ジャパンの出店戦略変更)
  • 背景:店舗拡大戦略を国内中心に続けてきたが、地方や郊外では労働力不足・人口減少で採算が悪化。
  • 影響:セブン-イレブンは2020年前後から**「ドミナント戦略の見直し」**に着手。新規出店を抑え、都市部への集中や海外展開へシフト。
  • 内容:人口密度と人材確保に依存する業態は、労働市場縮小の影響も受けやすい。
  1. 住宅産業(大手ハウスメーカーの国内着工件数減少)
  • 背景:少子高齢化・人口減によって新築需要が鈍化。
  • 影響:積水ハウスや大和ハウス工業などは、国内新築住宅市場が飽和状態となり、近年は海外事業の売上比率拡大を図っている。
  • 内容:「家を建てる」ライフスタイル自体が縮小する中、ストック住宅やリフォームなどへの転換が必須に。
  1. 自動車教習所(地方の教習所の統廃合)
  • 背景:若年人口の減少および都市部での車離れ。
  • 影響:2000年代以降、全国の自動車教習所の数は減少。特に地方では採算割れにより閉鎖が相次ぐ。
  • 内容:「18歳人口」に依存するビジネスモデルの脆弱性が顕著に。
  1. 学習塾・予備校業界(例:東進・河合塾の地方校閉鎖)
  • 背景:少子化で生徒数が減少、競合も激化。
  • 影響:大手でも地方の拠点閉鎖が続き、都市部・オンライン型への転換が進行中。
  • 内容:人口構造の変化に加え、「教育のデジタル化」が生き残りのカギに。

さらに、政治と経済政策が変化しても、既存の制度や規制が追いつかず、経済政策の効果が十分に発揮されていないことも挙げられます。

  1. アベノミクスにおける成長戦略の不発(構造改革の遅れ)
  • 背景:2012年以降のアベノミクス(金融緩和・財政出動・成長戦略の三本の矢)で景気浮揚を狙ったが、第3の矢である「成長戦略=構造改革」は実効性を欠いた。
  • 制度的障壁:
    • 規制緩和(農業・医療・雇用)の調整が進まず、既得権益層(業界団体・政治的圧力)に配慮。
    • 特区制度は創設されたが、全国展開に至らず、革新的なビジネスが定着しづらかった。
  • 結果:企業収益は回復したが、労働市場改革や女性活躍、地方創生などの政策効果は限定的。
  • 要点:経済政策の方向性に対して、制度整備が追いつかず、“言うは易し、行うは難し”を体現した例。
  1. デジタル庁設立と行政のデジタル化の停滞
  • 背景:2021年にデジタル庁が発足し、行政のデジタル改革を強力に推進。
  • 制度的障壁:
    • 地方自治体ごとに異なるシステムや規格(縦割りの「ガラパゴス化」)が障壁に。
    • 公的個人認証(マイナンバー制度)の普及が遅れ、民間との連携にも支障。
  • 結果:コロナ禍で必要性が高まったにもかかわらず、オンライン申請や給付金の支給に遅延。
  • 要点:政治的に「変革」を打ち出しても、制度の互換性・技術基盤・人材不足が障壁に。
  1. 労働市場改革(同一労働同一賃金など)の制度遅れ
  • 背景:非正規労働者の待遇改善を目指して、「同一労働同一賃金」が2020年から段階導入。
  • 制度的障壁:
    • 実際の運用では、企業側が制度を「最低限順守」するだけで、待遇差の根本解消に至らず。
    • 派遣法や労働契約法の制限と整合性に問題があり、労働者の立場が依然として弱い。
  • 結果:賃金格差の縮小は限定的で、正社員と非正規の二重構造は依然温存。
  • 要点:制度は導入されたものの、実効性ある運用や監督の仕組みが不十分だった。
  1. 再生可能エネルギー推進政策と系統接続規制の遅れ
  • 背景:2012年のFIT(固定価格買取制度)導入により、再生エネルギー投資が急増。
  • 制度的障壁:
    • 電力系統(送電網)の接続ルールや容量制限が旧来の規制に基づいており、太陽光発電などの系統接続が困難に。
    • 送電線の所有権が地域電力会社に集中し、新規事業者との競合が発生。
  • 結果:発電所を建設しても売電できず、「空転案件」が大量に発生。
  • 要点:エネルギー転換政策があっても、送電インフラと制度改革が連動していなければ意味をなさない。

こうした行政施策の実効的な運用が出来なかった問題点を整理すると次の通りになるのではないかと思います。

既存の制度、システム、事業関係のしがらみなどによる経済政策の停滞は、大きな問題だと言えます。

現在のようなGDPが伸びない環境下では、給料やボーナスを上げにくくなり、実質賃金の停滞にも拍車がかかります。特に、中小企業やベンチャーは大企業よりも経済の逆風をダイレクトに受けがちです。従来の経済政策では、企業規模別の対策が不十分だったケースもあり、新たな経済政策の提案が求められています。

GDP成長が停滞すると、企業が研究開発や海外進出に投資する余裕もなくなり、長期的な経済成長がさらに伸び悩むという悪循環に陥ります。ここを打破するためには、経済政策の必要性を再確認し、経済政策の展望を踏まえた上で、企業活動支援に重点を置く取り組みが重要だと言えるのです。

 

従来の経済政策の分析

日本はこれまでにも多くの経済政策を打ち出してきましたが、結果を振り返ると必ずしも順調に成果が得られてきたとは言えません。一時的には景気が回復しても、長期的な視野に立った場合、GDP停滞を抜本的に解決できていないのが現実です。ここで重要になるのが、従来の経済政策の評価や比較です。功罪をしっかりと見極め、新しいアプローチを考える必要があります。

また、企業経営者にとっては経済政策が日々のビジネスに影響するため、これらの政策がどう企業活動支援につながるのかを冷静に分析しなくてはいけません。政治と経済政策が連動している以上、政権が変われば基本路線が揺らぐ可能性もあります。そうしたリスクに対して企業はどのように対応すべきか、考える習慣をつけておきたいところです。

過去の政策を振り返ると、公共投資や金融緩和などの短期的手法ばかりが注目され、実際に生活実感改善や消費行動の活発化につながりにくかったケースも目立ちました。そこで、従来のアプローチに加えて、中長期的視点の経済政策の転換が求められています。

実は、過去30年にわたって、日本の公共投資は増加していません。以下に示すのは、1995年度から2024年度までの、一般会計における国による公共投資的な支出(「国土交通関係」+「公共事業関係経費」等)を中心とした推移です(単位:兆円、予算ベース)。

一覧表を見ても分かる通り、30年間公共投資は15~19兆円の小幅な金額推移が続いています。公共投資については、費用対効果(B/C=Benefit/Cost)の計算に基づいて、主に国や自治体がインフラ事業などの妥当性を評価しています。国土交通省などのガイドライン(国土交通省の費用便益分析マニュアル)では、社会的割引率(Social Discount Rate)として、通常「4%」が使用されています(現在は3〜4%が一般的)。この4%という割引率は国内の金利水準としては10年もの長期国債の年利率が1.48%であることから、かなり高めの設定だと言えます。この社会的割引率を長年4%で固定した運用方法を変更し、長期国債の1.48%に連動させるだけで、公共投資の将来価値の目減りを減少させることができ、費用対効果が改善し、公共投資が毎年5~6兆円増加すると言われています。すると、その分を建設国債で財源調達することで、一般会計を毀損することなく公共投資が拡大する計算になるのです。このように、過去の経済政策には、硬直化した数値設定によるものも多く、現代の経済環境に適応していない例も多いと考えられるのです。

従来政策の功罪と学び

過去の基盤整備や金融緩和策は、一定期間の景気刺激には役立ってきました。しかし、それらの従来の経済政策は長期的な経済成長の持続力を高めるには不十分だったとも評価されています。経済政策の事例をひもといてみると、特に中小企業が恩恵を受けにくい仕組みが存在したり、需要喚起が一部の業界に偏ったりする傾向がありました。

この経験から学ぶのは、単に国主導の公共投資のような大型投資に頼るだけでは、下支えにはなるものの、本質的な経済の活性化には時間がかかるということです。さらに、政治の思惑が強く働くと、経済政策提案が途中で修正されたり、またはスピード感を欠いたりする問題が生じます。

そうした従来政策の功罪を踏まえ、企業としては政策に振り回されるだけでなく、自社でイノベーションを起こす努力を続け、柔軟に対応する姿勢が重要です。

政治の影響と経済政策への対応

政治と経済政策の関係は切っても切れません。政権交代や国際情勢によって、政府が推進する枠組みや経済政策の比較対象が変わり、優先度の高い政策領域も変化します。企業が安心して投資や採用活動を進めるためには、そうした政策変動にも柔軟に対応できる戦略が求められます。

例えば、ある政権では所得の底上げを主とした経済政策が力を持ち、別の政権では輸出振興を重視する場合があります。政治と経済政策の交点がどこにあるのか、あるいは自社にとってどの路線がメリットをもたらすのかを見極めることは、企業の成長に直結する問題なのです。尚、過去の所得の底上げを目的とする経済政策の主なものは次の通りです。

このような経済政策の有効性の評価はなかなか難しいですが、専門家による意見を参考にするのも効果的です。とりわけベンチャー企業であれば、新たな経済政策提案に素早く対応し、ビジネスチャンスへ変えていく柔軟性が強みとなります。

新たな経済政策の提案

ここからは、これまでの経済政策の限界を踏まえ、新しい経済政策の方向性について考えていきたいと思います。鍵になるのが、MMTという現代貨幣理論の考え方です。これはざっくり言うと、国が自国の通貨を発行できるのであれば、政府債務の拡大を恐れずに大きな政策を実施できるのではないかという積極財政を支える理論です。ただし、実行の仕方を誤ると、ハイパーインフレーションのようなリスクも指摘されています。

また、短期的経済政策の方向性としては、消費行動を刺激する施策と企業活動支援をセットで行うことが重要です。例えば、低所得者向けの購買支援策や、雇用調整助成金の拡充などが具体例として挙げられます。経済政策の展望を考えるならば、単発の支援だけではなく、需要と供給の両面にアプローチする戦略が求められる訳です。

では、その新しい経済政策によって具体的にどのようなメリットがあるのか、そしてどのようなリスクも伴うのか、次の小見出しで解説していきます。

MMTの考え方とその応用

MMT(Modern Monetary Theory)と呼ばれる学説は、国が財政支出を積極的に行うべきだと主張しており、経済政策の新提案として近年話題になりました。一般的な考え方とは異なり、政府が借金を重ねても、自国通貨建ての負債であればデフォルト(債務不履行)にはならないという概念がポイントです。

しかし、その一方で経済政策の影響として、通貨の信用不安やインフレ率の高騰が懸念されるため、実際に導入するには慎重な検討が必要です。経済政策の効果を最大化するには、財政出動による需要拡大と同時に、企業が生産能力を高める準備を整えておかなければいけません。

例えば、財政規模を拡大して公共事業や社会保障を充実させれば生活実感改善へつながりやすく、消費行動の活性化が期待できます。一方で、財政支出の増大が継続すれば、インフレが過度に進み、物価高対策が難しくなる恐れもあります。このようにMMTの導入には利点とリスクが表裏一体であり、各国の事例や経済政策のトレンドを参考に、適切なバランスを取る必要があるのです。

短期的経済政策の方向性

まず、短期経済政策では、消費行動の刺激策と企業活動のサポートが両立されるように組み立てることがポイントです。たとえば、給与面や税制を調整して実質賃金を底上げしつつ、企業の税負担を軽減する施策を組み合わせることで、雇用を維持しながら内需を拡大できる可能性があります。

さらに、経済政策の改革を現実的に進めるためには、政策のメリットとデメリットを短期間で検証し、順次調整していくアプローチが求められます。経済政策の専門家だけでなく、企業家や市民も議論に加わりながら決定していくことが、経済政策の必要性を認識してもらううえでも有効でしょう。

企業側としては、新たな短期政策が打ち出された際に即座に対応策を検討する重要性があります。業種によっては恩恵を受けやすい政策がある一方で、逆にコスト増を招くような制度変更に備えなければならないこともあるからです。

企業活動への具体的な対策

新しい経済政策の発表や法改正が出てきた際、企業が何をしたら良いのか具体的な手掛かりを持っているか否かで、その後の経営成績は大きく変わることがあります。ここでは、企業家が取り組める対策として、コンサルティング会社を使った戦略立案や生活実感改善と消費行動刺激の関係性に着目してみます。

多くの経営者が感じているように、今の日本では経済政策の課題が山積しています。そのため、経済政策の未来を考えるとき、企業側にも自律的な取り組みが求められます。コンサルティング会社に頼るだけでなく、企業自ら従来の経済政策の比較や経済政策の評価を行い、新しい波に合わせる形で戦略を作り上げる視点が大切です。

また、生活実感改善が消費行動を活発化させるとの観点から、広い意味で企業経営においても社会貢献要素を見直す機会が増えています。今後は、単に売上だけを追いかけるのではなく、社会全体の経済成長につながる活動が評価されやすくなるでしょう。そういった意識の変化が、企業にも長期的な安定利益をもたらす可能性があります。

コンサルティング会社の活用方法

経済政策のトレンドを読み解き、経済政策の戦略を具体化するにあたり、コンサルティング会社は強い味方になり得ます。たとえば、ヒューマントラストのような企業は、最新の政策動向や政策の実務面のサポート、そして企業特有の課題に合わせたソリューションを提案してくれます。

しかし、ただコンサルに丸投げするだけでは意味がありません。依頼する側である企業自身が、自社の経営方針や強みを明確に整理し、どの部分に経済政策の効果を取り込みたいかを考え、その方針をコンサルタントと共有することで、はじめて企業活動支援が具体化されます。そうして得られた施策をもとに、実質賃金上昇のための給与体系改革や、経済政策の限界をふまえたリスクヘッジ策などを計画的に進めていくことが大切でしょう。

コンサルティング会社はあくまで補助輪の役割であり、最終的な経営判断を下すのは経営者自身です。従来の経済政策を検討するだけでなく、経済政策の事例や、海外の成功例を取り入れながら柔軟に変化していく心構えを持っておきたいところです。

生活実感の改善と消費刺激

企業経営で見落とされがちなのが、生活実感改善と消費行動の関係です。人々が経済成長を実感できるときこそ、積極的に買い物をし、サービスを利用する傾向が強まります。消費が活性化すれば、企業の売上は上がり、さらなる投資や給与引き上げが可能になるでしょう。

一方で、物価高対策が不十分だと、生活の負担感が大きくなるため、むしろ消費が落ち込むリスクもあります。たとえば、従業員の働き方や福利厚生を改善して企業内部で生活実感を高めることは、外部からの人材確保にも有利に働くかもしれません。そうした取り組みが企業のイメージアップにつながり、顧客や取引先への信頼にも良い影響を与えます。

最終的に、生活実感の向上は各種経済政策の効果をより実感しやすくする要素と言えます。経済政策の限界が指摘される中であっても、企業が自ら消費者目線を取り込み、継続的に需要を作り出していく新しいビジネスモデルを模索すれば、経済を回していく原動力となるでしょう。

結論:企業が取るべき戦略と政策への対応

ここまで見てきたように、物価高、実質賃金の停滞、日本GDP停滞などの問題は複合的な要因で引き起こされており、従来の経済政策だけでは十分な打開が難しい場面が多々あります。それでも、政治と経済政策の関係を理解しながら、企業は経済政策の改革や新しい経済政策提案を自社のビジネスに取り込むことで、成長余地を広げることが可能です。

MMTを含む新たな経済政策の展望には、まだ未知数の部分もありますが、短期経済政策や生活実感改善を通じて消費行動を刺激していく路線は、多くの企業にとってもチャンスにつながるでしょう。コンサルティング会社の助けを借りながら、経済政策の戦略を自社の強みに合わせて最適化する工夫を重ねることで、リスクを抑えつつ企業活動支援を最大限に活用する道が開けるはずです。

いずれにせよ、経済政策の必要性がこれほど叫ばれている今こそ、企業家は自ら情報をキャッチし、経済政策の評価や比較を行い、柔軟で戦略的な行動を取ることが求められます。最終的には、社会全体の生活実感改善と経済成長がまとまって前進する形こそが、企業の安定と拡大に最も寄与するからです。こうした視点を大切に、現在の物価高に負けず、未来を見据えたビジネスを展開していきましょう。

 

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監修者 三坂大作
筆者・監修者 ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・取締役三坂 大作(ミサカ ダイサク)

略歴
・1985年:東京大学法学部卒業
・1985年:三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
 表参道支店:法人融資担当
・1989年:同行 ニューヨーク支店勤務
 非日系企業向けコーポレートファイナンスを担当
・1992年:三菱銀行を退社、資金調達の専門家として独立
資格・登録情報
・経営革新等支援機関(認定支援機関ID:1078130011)
・貸金業務取扱主任者(資格者:三坂大作)
・貸金業登録:東京都知事(1)第31997号
・日本貸金業協会 会員番号:第006355号
専門分野と活動実績
企業の成長を資金面から支えるファイナンスの専門家として、30年以上にわたり中小企業の財務戦略・資金調達を支援。
国内外の法人融資・国際金融業務の経験を基に、経営者に寄り添った戦略的支援を展開。

現在の取り組み
ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・取締役として、以下の事業を統括:
・法人向けビジネスローン事業「HTファイナンス」
・個人事業主向けファクタリングサービス
・資金調達および財務戦略に関する経営コンサルティング

経営革新等支援機関として、企業の持続的成長を実現するための財務戦略策定や金融支援を行い、貸金業登録事業者として、適正かつ信頼性の高い金融サービスを提供しています。