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公開日:2026.01.19

更新日:2026.01.19

経営改善計画が「絵に描いた餅」になる理由とは?銀行交渉の成功が倒産を招く罠と回避策

銀行員と握手する経営者の足元に倒産の罠が潜む。机上の経営改善計画書からは豪華な幻影が浮かび、見せかけの成功と実態の乖離を表現。
この記事の要点
  • 金融機関主導の罠:認定支援機関の計画は「銀行審査の通過」が目的化しやすく、実態と乖離しやすい。
  • 破綻へのプロセス:根拠なき売上増加計画は、リスケ後の資金繰りをさらに悪化させ、倒産リスクを高める。
  • 真の再生戦略:数値合わせではなく、事業ドメイン(市場・顧客・強み)の再定義こそが不可欠である。

資金繰りの悪化に苦しむ企業にとって、認定支援機関と共に策定する「経営改善計画」は、金融支援を引き出すための命綱です。
しかし、銀行を納得させることに特化した計画は、往々にして実態を伴わない「絵に描いた餅(実現不可能な計画)」となり、数年後にさらなる苦境を招くケースが後を絶ちません。

なぜ、プロが作った計画が失敗するのか。本記事では、実際にあった失敗事例を紐解きながら、認定支援機関制度に潜む構造的な問題点と、真の経営再生に必要な視点について解説します。

認定経営革新等支援機関の役割と「金融支援ありき」の構造的問題

結論:認定支援機関の多くは「銀行審査を通すこと」をゴールに設定しており、実効性よりも金融機関の論理(債務者区分や償還年数)を優先した計画を作る傾向があります。

まず、経営改善計画策定のパートナーとなる「認定経営革新等支援機関(以下、認定支援機関)」について、その役割と実情を整理しておきましょう。

認定支援機関とは何か

認定支援機関は、2016年に施行された「中小企業等経営強化法(旧:中小企業経営力支援法)」に基づき、中小企業に対して専門性の高い支援事業を行う者として国が認定した個人や法人です(参照:認定経営革新等支援機関|中小企業庁)。
主に税務、金融、企業財務に関する専門知識や実務経験を有する税理士、公認会計士、中小企業診断士、民間コンサルティング会社などが認定を受けています。

多くの経営者は、資金繰りが悪化した際に「専門家に相談すれば解決策が見つかるはずだ」と考え、これらの機関に助けを求めます。
そして、認定支援機関の主要な役割の一つが、金融機関の要請に基づいて企業の「経営改善計画(再建計画)」を策定し、融資条件の変更(リスケジュール)や新規融資などの金融支援を取り付けることにあります。

研修テキストに見る「官製コンサルティング」の限界

認定支援機関になるためには、一定の研修や試験を経る必要がありますが、そこで使用されるテキストやカリキュラムにはある特徴があります。
それは、内容が極めて「銀行からの金融支援を前提としたもの」になっている点です。

具体的には、「債務者区分」や「債務償還年数」といった金融用語が重視されます。

  • 債務者区分:金融機関が融資先を格付けする際に用いる区分(正常先、要注意先、破綻懸念先など)。公には廃止されたと言われることもありますが、実務の現場では財務諸表の数値を基準としたこの区分が、依然として審査判断の根幹にあります。
  • 債務償還年数:「有利子負債 ÷ キャッシュフロー」で算出される指標。経営改善計画においては、計画策定から5年経過した時点で、この年数が「10年以内」に収まる(または全借入金額 ÷ 期末現預金残高 < 10年となる)ような計画を作ることが強く推奨されます。

つまり、認定支援機関向けの研修は、ある意味で「官製の理想的なコンサルティング方法」を学ぶ場であり、そのゴールは「金融機関の審査基準を満たす書類を作ること」に設定されてしまいます。
これこそが、実効性のある経営改善と乖離(かいり)を生む、制度の構造的な欠陥です。

【実録ケーススタディ】リスケ承認から3年で破綻した企業の悲劇

では、金融機関の意向を優先した計画が、実際の企業経営にどのような影響を与えるのでしょうか。ある電設事業会社の事例をモデルに、その問題点を具体的に見ていきましょう。

真面目な下請け企業を襲った「突然の梯子外し」

モデルとなるA社は、年商2億円程度の電設工事会社です。大手ゼネコンを頂点とする建設業界のピラミッド構造において、下請けの下請けの下請け、いわゆる「曾孫(ひまご)請け」のポジションに位置していました。

社長を含めて正社員は5名。社長の右腕となる技術者と作業員、そして事務員という小規模な体制で、案件の規模に応じて一人親方の職人を手配して現場を回していました。
社長は非常に真面目で、細かく丁寧な仕事ぶりには定評がありましたが、多重下請け構造の末端であるため利益率は低く、営業利益はトントンという状況が続いていました。

ある時、A社は大手ゼネコンの大規模開発案件に関わっていましたが、開発規模の縮小が決定し、確保していた人員や資材が無駄になる形で失注してしまいます。
社長は挽回しようと営業に奔走しましたが、急場で取れる仕事は収益性の低い案件ばかり。結果として売上も利益も大幅に下振れし、月商1,000万円程度に対し、借入金は1億5,000万円という過剰債務の状態に陥りました。

毎月100万円の元利返済は不可能です。ファクタリング(売掛債権の売却)で当座の現金を工面して凌いでいましたが、限界が近づき、認定支援機関の協力を得て「経営改善計画書」を作成。銀行へリスケジュール(返済条件の変更)を申し出ることになりました。

見せかけの成功と、その後の転落

認定支援機関が作成した立派な計画書のおかげで、銀行交渉は奏功しました。「1年間の元本据置(利払いのみ)」が承認され、会社は一時的に資金繰りのプレッシャーから解放されました。これで経営を立て直せると、社長も安堵します。

しかし、現実は非情でした。リスケ承認からわずか3年後、この会社は自己破産の申立を行うことになります。銀行が認めた計画があったにもかかわらず、なぜこのような結末を迎えてしまったのでしょうか。

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なぜ計画は失敗したのか?「数値合わせ」の限界と戦略の欠如

結論:失敗の主因は、返済原資を確保するために根拠のない「売上V字回復」を設定し、高コスト体質や現場の実態を無視した帳尻合わせを行うことにあります。

この事例における経営改善計画の内容を詳細に分析すると、多くの中小企業が陥りやすい「計画策定の罠」が浮き彫りになります。

根拠なき「V字回復」の売上計画

最大の問題は、売上計画が完全に「絵に描いた餅」であったことです。A社の売上は過去数期にわたって減少傾向にありました。
にもかかわらず、策定された計画では、今後の5年間で売上が右肩上がりに回復し、5年前の水準に戻るというシナリオが描かれていました。

前述した通り、金融機関が求める「債務償還年数10年以内」などの基準を満たすためには、将来の利益を大きく見積もる必要があります。
その結果、客観的な根拠がないまま「帳尻合わせ」のために売上目標が高く設定されてしまったのです。
(正しい計画策定の考え方については、資金調達を成功させる事業計画書の作成ポイントでも詳しく解説しています。)

実際には、計画1年目から売上は15%の未達となり、リスケによる資金繰り改善効果はすぐに消失してしまいました。

資金繰りを悪化させる「高コスト体質」の放置

計画通りの売上が上がらない中、資金繰りは再び逼迫(ひっぱく)します。銀行に追加融資を頼むことは難しいため、会社は再びファクタリング等の債権譲渡に依存せざるを得なくなりました。
(あわせて読みたい:ファクタリングのリスクと正しい活用法

ファクタリングは即金性がありますが、手数料が高額になるケースが多く、営業利益を著しく圧迫します。
売上が回復しない中で高コストな資金調達を続けた結果、利益が出ない体質がさらに悪化し、最終的に行き詰まってしまったのです。

現場を無視した「空虚な改善施策」

数字を作るための計画書には、それを裏付けるための「アクションプラン(具体的施策)」も記載されます。しかし、A社の計画書に書かれていたのは、以下のような項目でした。

  • ・営業担当者の強化
  • ・営業日報の励行
  • ・顧客への提案営業への転換
  • ・ホームページの刷新

一見するとまともな施策に見えます。しかし、A社は社長一人が営業を行っている「曾孫請け」の会社です。
大手ゼネコンからの仕事を待つ受動的なビジネススタイルであった会社に対し、「提案営業」や「ホームページ刷新」といった施策は、現実の商習慣や社長のマンパワーとかけ離れており、現場を知らない、机上の空論でしかありません。

本来必要だったのは、これまでの成功体験(大手の下請け仕事)から脱却し、ビジネスモデルそのものを見直すような抜本的な改革でした。
しかし、計画書に並んでいたのは、実効性のない「小手先の戦術」ばかりだったのです。

「銀行向きの計画」vs「真の再生計画」
× 失敗するパターン
  • 目的:銀行の審査を通すこと
  • 根拠:希望的観測の売上増
  • 結果:3年後に資金ショート・破綻
○ 成功するパターン
  • 目的:利益が出る体質への変革
  • 根拠:事業ドメインの再定義
  • 結果:キャッシュフロー改善・再生

真の経営改善に必要な「事業ドメイン」の再定義

結論:真の再生には、単なる数値合わせや小手先の戦術ではなく、市場環境の変化に合わせて「誰に、何を、どう売るか(事業ドメイン)」を根本から見直す戦略的転換が必要です。

金融機関から融資を引き出すためのテクニックとして計画書を作ることは、延命措置にはなっても、根本的な治療にはなりません。
では、本当に会社を再生させるためには、どのような視点が必要だったのでしょうか。

過去の延長線上に未来はない

A社の場合、今回の危機以前から財務数値は悪化しており、収益力が低下していることは明らかでした。
社長自身も売上の減少傾向を理解していたはずですが、「認定支援機関がついているから大丈夫だ」「リスケができればなんとかなる」という安心感に依存してしまった側面があります。

市場環境が変化し、既存の事業内容が陳腐化しているのであれば、過去の売上水準に戻すことを目標にするのではなく、「会社の経営戦略、サービス、顧客ターゲット」を一から見直す必要があります。
これを経営学用語で「事業ドメインの再定義」と呼びます。

「弱み」を「強み」に変える柔軟な発想

例えばA社の場合、大手ゼネコン頼みの受注体質を見直し、小回りが利くという「小規模であること」を逆に活かす戦略も考えられました。
具体的には、個人宅や小規模店舗のリフォーム事業への転換や、特定の技術に特化したニッチ市場への参入などです。

しかし、金融機関向けの計画書作成に終始してしまうと、こうした「戦略的な議論」がおざなりにされがちです。
「今の事業のまま、もっと頑張って売上を伸ばします」という精神論に近い計画ではなく、市場のニーズに合わせたイノベーションの視点こそが、窮境期の企業には不可欠なのです。

まとめ:銀行のための計画作りから脱却し、真の再生へ

認定支援機関や銀行の支援は強力な武器ですが、審査を通すだけの「作文」になってしまっては会社を救えません。本記事の要点は以下の通りです。

  • 制度の罠:認定支援機関の計画は「銀行審査」が目的化しやすく、実態と乖離しやすい。
  • 破綻リスク:根拠のない売上増加計画(絵に描いた餅)は、リスケ後の資金繰りをさらに悪化させる。
  • 真の対策:数値合わせではなく、事業ドメイン(誰に何を売るか)の再定義こそが不可欠である。

真の経営改善とは、銀行の格付けを上げることではなく、環境変化に適応して「利益を生む体質」に生まれ変わることです。
金融機関の都合ではなく、御社の未来のための計画を作りましょう。

現状の計画に少しでも不安がある方は、まずは以下のフォームより専門家へご相談ください。

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三坂 大作
監修者三坂 大作
ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・取締役

東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
さらにニューヨーク支店にて国際金融業務も経験し、法務と金融の双方に通じたスペシャリストとして、30年以上にわたり中小企業・個人事業主の“実行型支援”を展開。

東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。
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